BLエッチの後で シチュエーション限定SS

水ノ灯(ともしび)

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執着のかたち

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 吐息とともに白い煙が夜の帳に溶けていく。大きく開いた窓から薄く春が入り込んできていた。しっとりとした夜気が一枚だけ羽織られたシャツの布地に染みる。
 ぽつりとついた火がまた赤く燃え、周平は煙草の煙を肺の深くまで吸い込んだ。散々喘いで掠れた喉に苦い味が沁みた。眼鏡のレンズ越しに見る街は随分静かで、一定に瞬く赤い光だけが生きているように見えた。規則的に吐き出される煙をただぼうっと見つめる。

「……しゅ、へさ……」

 聞き逃してしまいそうなほど微かな声で呼びかけられた。それは先程まで自分を抱いていた男の声で、周平はゆるりと視線を向ける。

「利ちゃん?」

 思ったよりも声は出なかった。囁くように名を呼ぶが利幸から返事はない。
 服も着ないままベッドに横たわった利幸の頬は差し込む街明かりでぼうっと照らし出されていた。閉じられた瞳と小さな呼吸音に、利幸が目を覚ましていないことが分かった。

「行かないで……」

 渇いた唇が微かに開き、吐息のような声が漏れる。この夜があまりに静かすぎるせいで、ぽつんと部屋に落ちた言葉が耳に届いてしまった。
 ほろりと落ちた灰が風にさらわれて街に消えた。利幸の目尻に浮いた光るものがつうっと頬を滑り落ちた。

「……泣くんはうざいで、利幸」

 手元で煙草が灰皿に押し付けられた。開いていた窓は閉められ、吹き込んできた風が部屋に閉じ込められる。
 言葉の割に口から出た声はひどく柔らかかった。素足がフローリングをたどってベッドの前で止まる。シーツに投げ出された手に手を重ねれば体温が伝わってきた。
 利幸はふと顔を緩め、周平の冷えた指先の感触だけで幸せそうにしてみせる。握り返された緩い手の力。少し笑んだ唇の角度。周平は眼鏡を外す。
 利幸に体を押しつけるようにして狭いベッドに潜り込めば、自分の体が冷えていたことに気付かされた。ぬるい湯に浸かっているような心地になる。温かい体が包み込むように抱き締めてくるから離れられない。
 煙草の香りを纏って目を閉じる。冷ややかな耳元には落ち着いた呼吸音が聞こえていた。やはりこの夜は、この部屋は、あまりに静かだった。
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