BLエッチの後で シチュエーション限定SS

水ノ灯(ともしび)

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舌先の痕

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 体の火照りが消えていき、行為の熱が冷めていく。熱気に満ちていた室内は秋口らしい温度に戻っていた。それでも軽く触れ合った体を離すことなく片側に相手の体温を感じ続けている。佐藤は疲れた体を仰向けに横たえ、サイドランプの明かりのせいで真っ暗に見える天井を眺めていた。うつらうつらとしながら眩しいと思っていれば、それが分かったのか視界を岡田の手が横切って明かりが弱く調節された。
 照らされていた部分が小さくなり、闇が広がる。ぼんやりと橙色に照らされた佐藤の頬を岡田の手が戻っていきがてら戯れに撫でた。

「煙草……」

 佐藤は眠たげにしていながらも一服を求めて呻くように言う。体を動かすのが億劫で手探りでサイドテーブルを探るが指が滑るばかりで目当てのものには触れられない。緩慢に手を動かしていれば、岡田がひょいと煙草の箱を取り上げて一本取り出すと佐藤の口元に近づけた。
 ん、と餌付けされるように唇で挟めば手慣れた仕草で火がつけられる。事後の煙草が美味く感じるのは何故だろう。倦怠感に襲われていてもこれだけはやめられない。湿った空気がそうさせるのか、ただの気のせいなのか、雨の日に吸う煙草と少し似ているような気がした。それなのに不味く感じないのが不思議だ。
 咥えさせてもらった煙草を吸い込むとジンと後頭部の辺りが痛むような、疼くような感覚があった。岡田の細い指が煙草を取り上げ、心地よく煙を吐くことが出来た。光と闇のあわいで白い煙が渦を巻きながら広がっていく。
 煙を吸った瞬間から、いつもの味と違って甘味よりも辛味の強い苦さが口に広がっていた。吸い慣れない味に眉を顰めると、シーツに肘をついて覗き込んだ岡田が悪戯っぽく笑って取り上げた煙草を咥えた。その姿が見慣れたもので、自分が吸ったのが岡田の愛飲している銘柄だったのだと気づく。

「おいしい?」

 眠気で細まった目で眉根を寄せるので不機嫌極まりない顔に見える。それがおかしくて仕方ないと言うようにニマニマと笑いながら見下ろしてくる。
 別段まずかったというわけではないが、想像していたものと違う味がすれば違和感があるのも無理はない。だからといって美味しかったかと言われれば素直に頷く程でもない。

「んん……」

 それを説明するために口を開くのも言葉を組み立てるために頭を使うのも億劫で、ひとつ唸って緩く首を横に振った。散々体を酷使したせいで怠くて仕方ないだけだが、ぐずる子供のような仕草になってしまう。佐藤を疲れさせた張本人はそれを柔らかい目で見ていた。
 拗ねるように尖らせていた唇に不意に口付けが落とされる。唇に柔らかさが触れ、反射的に薄く口を開けばそっと舌が差し入れられた。岡田は吐き残した煙を纏って佐藤の舌を撫でる。とろりとした気持ち良さの中に少しの苦味が混じった。あ、と佐藤は満足そうに目を閉じる。あまりに馴染んだ味がする。口付けのたびに覚えさせられた岡田の味だった。今は自分の口内にも同じ苦味が残っていて、まるで痕をつけられたようだと思う。
 行為後の戯れのような口付けは労わるような優しさで終わった。岡田は煙草を持っていない方の手で佐藤の髪を除けながら顔を離す。力が抜けて今にも眠ってしまいそうになっている佐藤に優しい目を投げると部屋の闇に煙を吐いた。
 室内が岡田の香りで埋まっていく。安心して意識を手放せば何も分からなくなる寸前まで岡田の体温が感じられた。
 寝息を聞いて照明を消せば、すっかり部屋は闇に覆われた。その中にぽつりと煙草の火が浮かんでいる。やがてその赤色も押し潰され、煙を残して黒が部屋を埋めたのだった。
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