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第2章〜Everything Everyone All At Once〜⑦
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「なんで、こんなことに……」
子供のように、無邪気に並行世界での生活を堪能していた楽しみを急に奪われたショックもあるのだが、それ以上に、三葉たち周りの人間をこんな事態に巻き込んでしまったことに対する申し訳なさと、自分の軽率な行動を恥じる気持ちが大きくなっていく。
重たい現実を突きつけられたことで、しばらく放心状態になりかけていたオレに、今度は、ゲルブと呼ばれている男子生徒が説明を加えようと口を開いた。
「雄司は、さっき、ボクたちが何者なのか、って聞いてきたよね? さっき、ブルームが少し話したように、ボクらは、銀河連邦政府 = U・F・Gの捜査官で、一部の急進派が進める『統合補完計画』を阻止するための捜査と、容疑者の追跡を続けているんだ」
「待て、待て! ちょっと待て! ユー・エフ・ジーに、インビスティなんとか……って、いったい何の話しなんだ? 銀河連邦政府だと? このセカイは、いつから、特撮映画やSF小説に乗っ取られたんだ?」
あまりに荒唐無稽な話しと聞き慣れない単語の連続で、オレの脳内はオーバー・フロー状態になり、情報の整理すら覚束ない。
一方的に、自分たちの立ち場を解説する冬馬あらためゲルブの説明に、オレの理解が追いついていないことを察したのか、桜花先輩あらためブルームは、苦笑しながら注釈を付けてくれた。
「銀河連邦政府っていうのは、玄野くんも体験していた多元宇宙を観測し、並行して存在するセカイをまたいだ脅威や犯罪に対応する組織のこと。U・F・Gは、Universal Federal Govermentの頭文字を取ったモノで、いま、ゲルブが話したみたいに、私たちは、そのUFGで捜査官として働いているの」
「なるほど……で、そのUFGの捜査官が、オレになんの用なんだ? 冬馬や桜花先輩は、いったいドコに行ったんだ?」
親友や尊敬する先輩を差し置いて、自分の前にあらわれた横文字の名前で呼び合うふたりに対して、不信感をぬぐえないオレは、つい詰問するような口調で問い詰めてしまう。
「まあまあ、そんなに興奮しないで……キミの認識している桜花先輩と別セカイの冬馬は、ちゃんと存在しているから」
「どういうことだ? アンタらは、冬馬や先輩の身体だか意識だかを乗っ取ってるんじゃないのか?」
オレの不信感のもとになっている、目の前のふたりが、オレの親友や尊敬する先輩の意識などを奪って、話しかけてきているのでないか、疑問を直接ぶつけてみると、ゲルブは、澄ました表情で応じる。
「乗っ取ると言われるのは、心外だな……ボクたち連邦政府のお墨付きをもらった人間は、特殊な手術を施して、並行世界の存在を認識したり、移動できるようになっているんだ。そして、移動した世界では、そのセカイで、自分たちに相当する人物と意識を共有、同期させてから調査や捜査をしているんだよ」
「それが、アンタらが事情通ぶれる理由か……」
ゲルブの解説に返答すると、今度は、ブルームが会話に加わる。
「その感覚は、並行世界に何度も移動している玄野くんになら理解してもらえるわよね? もっとも、貴方は、UFG公認の施術を行っている私たちと違って、移動した先のセカイの自分自身と意識を共有できても、情報の同期 = すべての記憶を受け継ぐことはできていないみたいだけど」
なるほど……たしかに、オレは移動した並行世界で行動したり、他人と話したりはできるが、そのセカイのオレ自身の記憶を受け継いでいるわけではない。
目の前のふたりが、銀河連邦政府の捜査官というのが本当であれば、移動した先のセカイでは、そのセカイに早く溶け込むためにも、情報の同期は必要だろう。
彼らの役職や目的が明確になったため、ブルームとゲルブに対する不信感は、少しづつ薄れていく。
ただ、ブルームやゲルブの仕事が、多元世界・並行世界のをまたいだ脅威や犯罪に対応することだとすれば……。
「もしかして、オレ自身もアンタらの捜査対象になってたりするのか?」
幼なじみやクラス委員、そして、同居人にもなった下級生女子に対する罪悪感はあるものの、自分自身で犯罪を犯したような自覚はない。
それでも、銀河連邦警察とやらが、どんな行動を犯罪の対象として扱っているのか、並行世界における法律の概念を持たないオレには、まったく判断できない。
悪意のない行動が、彼らの制定する法に抵触しているとすれば――――――。
ふたたび、背中に冷たい汗を感じ、目の前のふたりが、オレ自身の身柄の確保に移るのではないか、と全身に緊張が走った瞬間、こちらの顔色をうかがっていたのか、ブルームが、澄ました表情で、
「まあ、たしかに、通常なら貴方が取った行動は、私たちの取り締まりの対象になるところだけど……」
と、思わせぶりなことを語ったあと、やや間をおいて、こう続けた。
「けれど、いまの私たちの捜査目的は、玄野雄司くん、貴方の身柄の確保や拘束ではないの」
彼女の一言に、オレは、ふたたび安堵する。
「オレが対象でないとすれば、それじゃあ……」
緊張がほぐれていくことを感じながら、彼らに問いかけると、今度は、ゲルブが応答した。
「ボクたちが追いかけているのは、『ラディカル』と名乗る、セカイ統合推進派の過激な一派のメンバーなんだ。そして、そのメンバーのひとりが、このセカイのあいらんど高校に潜伏しているという情報が入ったんだ」
子供のように、無邪気に並行世界での生活を堪能していた楽しみを急に奪われたショックもあるのだが、それ以上に、三葉たち周りの人間をこんな事態に巻き込んでしまったことに対する申し訳なさと、自分の軽率な行動を恥じる気持ちが大きくなっていく。
重たい現実を突きつけられたことで、しばらく放心状態になりかけていたオレに、今度は、ゲルブと呼ばれている男子生徒が説明を加えようと口を開いた。
「雄司は、さっき、ボクたちが何者なのか、って聞いてきたよね? さっき、ブルームが少し話したように、ボクらは、銀河連邦政府 = U・F・Gの捜査官で、一部の急進派が進める『統合補完計画』を阻止するための捜査と、容疑者の追跡を続けているんだ」
「待て、待て! ちょっと待て! ユー・エフ・ジーに、インビスティなんとか……って、いったい何の話しなんだ? 銀河連邦政府だと? このセカイは、いつから、特撮映画やSF小説に乗っ取られたんだ?」
あまりに荒唐無稽な話しと聞き慣れない単語の連続で、オレの脳内はオーバー・フロー状態になり、情報の整理すら覚束ない。
一方的に、自分たちの立ち場を解説する冬馬あらためゲルブの説明に、オレの理解が追いついていないことを察したのか、桜花先輩あらためブルームは、苦笑しながら注釈を付けてくれた。
「銀河連邦政府っていうのは、玄野くんも体験していた多元宇宙を観測し、並行して存在するセカイをまたいだ脅威や犯罪に対応する組織のこと。U・F・Gは、Universal Federal Govermentの頭文字を取ったモノで、いま、ゲルブが話したみたいに、私たちは、そのUFGで捜査官として働いているの」
「なるほど……で、そのUFGの捜査官が、オレになんの用なんだ? 冬馬や桜花先輩は、いったいドコに行ったんだ?」
親友や尊敬する先輩を差し置いて、自分の前にあらわれた横文字の名前で呼び合うふたりに対して、不信感をぬぐえないオレは、つい詰問するような口調で問い詰めてしまう。
「まあまあ、そんなに興奮しないで……キミの認識している桜花先輩と別セカイの冬馬は、ちゃんと存在しているから」
「どういうことだ? アンタらは、冬馬や先輩の身体だか意識だかを乗っ取ってるんじゃないのか?」
オレの不信感のもとになっている、目の前のふたりが、オレの親友や尊敬する先輩の意識などを奪って、話しかけてきているのでないか、疑問を直接ぶつけてみると、ゲルブは、澄ました表情で応じる。
「乗っ取ると言われるのは、心外だな……ボクたち連邦政府のお墨付きをもらった人間は、特殊な手術を施して、並行世界の存在を認識したり、移動できるようになっているんだ。そして、移動した世界では、そのセカイで、自分たちに相当する人物と意識を共有、同期させてから調査や捜査をしているんだよ」
「それが、アンタらが事情通ぶれる理由か……」
ゲルブの解説に返答すると、今度は、ブルームが会話に加わる。
「その感覚は、並行世界に何度も移動している玄野くんになら理解してもらえるわよね? もっとも、貴方は、UFG公認の施術を行っている私たちと違って、移動した先のセカイの自分自身と意識を共有できても、情報の同期 = すべての記憶を受け継ぐことはできていないみたいだけど」
なるほど……たしかに、オレは移動した並行世界で行動したり、他人と話したりはできるが、そのセカイのオレ自身の記憶を受け継いでいるわけではない。
目の前のふたりが、銀河連邦政府の捜査官というのが本当であれば、移動した先のセカイでは、そのセカイに早く溶け込むためにも、情報の同期は必要だろう。
彼らの役職や目的が明確になったため、ブルームとゲルブに対する不信感は、少しづつ薄れていく。
ただ、ブルームやゲルブの仕事が、多元世界・並行世界のをまたいだ脅威や犯罪に対応することだとすれば……。
「もしかして、オレ自身もアンタらの捜査対象になってたりするのか?」
幼なじみやクラス委員、そして、同居人にもなった下級生女子に対する罪悪感はあるものの、自分自身で犯罪を犯したような自覚はない。
それでも、銀河連邦警察とやらが、どんな行動を犯罪の対象として扱っているのか、並行世界における法律の概念を持たないオレには、まったく判断できない。
悪意のない行動が、彼らの制定する法に抵触しているとすれば――――――。
ふたたび、背中に冷たい汗を感じ、目の前のふたりが、オレ自身の身柄の確保に移るのではないか、と全身に緊張が走った瞬間、こちらの顔色をうかがっていたのか、ブルームが、澄ました表情で、
「まあ、たしかに、通常なら貴方が取った行動は、私たちの取り締まりの対象になるところだけど……」
と、思わせぶりなことを語ったあと、やや間をおいて、こう続けた。
「けれど、いまの私たちの捜査目的は、玄野雄司くん、貴方の身柄の確保や拘束ではないの」
彼女の一言に、オレは、ふたたび安堵する。
「オレが対象でないとすれば、それじゃあ……」
緊張がほぐれていくことを感じながら、彼らに問いかけると、今度は、ゲルブが応答した。
「ボクたちが追いかけているのは、『ラディカル』と名乗る、セカイ統合推進派の過激な一派のメンバーなんだ。そして、そのメンバーのひとりが、このセカイのあいらんど高校に潜伏しているという情報が入ったんだ」
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