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第3章〜逆転世界の電波少女〜⑪
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自室に桃を招いて、学習用の椅子を彼女に譲り、オレがベッドに腰掛けると、同居人の後輩女子は、
「なんだか、司さん、誤解してるみたいだね……」
気まずそうに苦笑しながらつぶやく。
「ウチの母親が、変なことを言い出して、申し訳ない」
オレが、そう言って頭を下げると、桃は慌てて、
「そんな! 謝ってくれなくてイイって! ワタシは、ずっと司さんにお世話になってるし、感謝してるから!」
と、我が母親を擁護する言葉を発したかと思うと、そのあと、小声で、
「それに、お兄ちゃんにも……」
と、続けた。
生活全般の面倒を見ていると言っても良い母親のことをありがだく想ってくれているというのは、なんとなく想像がつくが、彼女がオレに対して感謝している、という件については、その理由に思い当たる節がなかった。
ただ、消え入りそうな声で語られた彼女のその言葉に、普段の桃とは違うようすを見て取ったオレは返答する。
「いや、母親はともかく、オレは、そんなに大したことはしていないぞ?」
そんな風に何気なく発した一言だったが、予想に反して、桃は、オレの言葉に反発してきた。
「大したことはしてない、ってそんなことはない!」
その剣幕に、少々驚いて目を丸くしていると、桃は、さらに持論を展開する。
「お兄ちゃん……ううん、くろセンパイは、いつも、ワタシの部活の悩みや相談を真剣に聞いてくれるし……今日だって、新しいアイデアに前向きに応えてくれてるじゃん!」
同居人にして、クラブ活動の後輩でもある彼女は、拳を握らんばかりに熱く語るが……。
ただ、それは、彼女とともに放送・新聞部の活動を行うオレにとって、取り立てて特別なことではなく、クラブの上級生として、当然のことをしているだけだ。
それに、さっき、彼女が語ったように、部活の一環としてVTuberのキャラクターを創るなど、桃の出してくるアイデアは、オレの好奇心を刺激するモノが多かった。
オレは、そのことを彼女自身に伝えることにする。
「桃が感謝してくれるのは、嬉しいと思うが、オレにとっちゃ、クラブのセンパイとして当たり前のことをしてるだけだ。それになにより、桃が出してくるアイデアは、面白そうなモノばかりだからな! オレは、楽しみながら話しを聞いてるだけだぞ」
そうして、オレの本心を語ると、彼女は、顔を真っ赤にしながら、抗議の声をあげた。
「サラッとそう言うことを言うのやめてください! 恥ずかしくなるじゃないですか!?」
「オレだって、珍しく桃に褒めてもらえたんだから、おあいこだろう?」
苦笑しながら返答すると、後輩女子は、ふて腐れたように反論する。
「珍しくって一言は余計ですよ……そりゃ、ワタシは、くろセンパイにツッコミを入れたり、イジったりすることの方が多いですけど……」
「いや、桃にそう言ってもらって、純粋に嬉しかったんだよ。オレは、桃だけじゃなくて、三葉や河野にも迷惑をかけっぱなしだったからな……」
自分自信の軽率な行動と、クリーブラットから伝えられた言葉を思い出しつつ、表情が強張らないように注意しながら、そう伝えると、桃は、またも憤慨したようすで声を張り上げる。
「迷惑をかけてるなんて、そんなことない! ワタシは、そう想ってるし、あの幼なじみの歌だって……!!」
「あの歌って……三葉の歌が、どうかしたのか?」
唐突に、オレのよく知る幼なじみの歌のことが会話に出てきたので、不思議に感じて問い返すと、彼女は、一瞬、気まずそうな表情になって、
「いや、歌はどうだって良いんです! とにかく、自分を卑下するような言い方は止めてって言ってるの!」
と、逆ギレに近いような口調で反論してくる。
それが、なんなのかはわからないが、なにか、彼女の感情の敏感な部分に触れてしまったことを察したオレは、
「オーケー! わかった!! この話しは、ここまでにしよう」
と言って、話題の変更を試みる。
そうして、こちらの提案に桃がうなずいたことを確認して、彼女が提案してきたVTUberの企画化に関する具体案を話し合うことになった。
我ながら単純な性格だとは思うが、オレは、桃から掛けられた言葉を心の底から嬉しく感じていた。
さっきも、つい口をついて出てしまったように、オレは、三葉や河野、そして、目の前の桃自信に迷惑をかけ、彼女たちの心を傷つけてしまったこと、そして、三葉本人と価値観を共有していると言って良いクリーブラットから、三葉に近づかないでほしいという意味のことを伝えられたことで、自己嫌悪に陥っていた。
自分の存在意義を見出すことが出来ない状態で、
(いっそ、このまま、このセカイ全てから消え去りたい……)
と、考え始めたときに、桃から掛けられた言葉は、オレの乾いた心に沁み入るようにうるおいを与えてくれた。
(オレは、まだここに居ても良いんだ……こんな嬉しいことはない……)
いまや古典的教養と言って良い元祖リアルロボットアニメの主人公に強烈なシンパシーを感じながら、オレは、桃のアイデアを必ず実現させよう、と決意を新たにした。
「なんだか、司さん、誤解してるみたいだね……」
気まずそうに苦笑しながらつぶやく。
「ウチの母親が、変なことを言い出して、申し訳ない」
オレが、そう言って頭を下げると、桃は慌てて、
「そんな! 謝ってくれなくてイイって! ワタシは、ずっと司さんにお世話になってるし、感謝してるから!」
と、我が母親を擁護する言葉を発したかと思うと、そのあと、小声で、
「それに、お兄ちゃんにも……」
と、続けた。
生活全般の面倒を見ていると言っても良い母親のことをありがだく想ってくれているというのは、なんとなく想像がつくが、彼女がオレに対して感謝している、という件については、その理由に思い当たる節がなかった。
ただ、消え入りそうな声で語られた彼女のその言葉に、普段の桃とは違うようすを見て取ったオレは返答する。
「いや、母親はともかく、オレは、そんなに大したことはしていないぞ?」
そんな風に何気なく発した一言だったが、予想に反して、桃は、オレの言葉に反発してきた。
「大したことはしてない、ってそんなことはない!」
その剣幕に、少々驚いて目を丸くしていると、桃は、さらに持論を展開する。
「お兄ちゃん……ううん、くろセンパイは、いつも、ワタシの部活の悩みや相談を真剣に聞いてくれるし……今日だって、新しいアイデアに前向きに応えてくれてるじゃん!」
同居人にして、クラブ活動の後輩でもある彼女は、拳を握らんばかりに熱く語るが……。
ただ、それは、彼女とともに放送・新聞部の活動を行うオレにとって、取り立てて特別なことではなく、クラブの上級生として、当然のことをしているだけだ。
それに、さっき、彼女が語ったように、部活の一環としてVTuberのキャラクターを創るなど、桃の出してくるアイデアは、オレの好奇心を刺激するモノが多かった。
オレは、そのことを彼女自身に伝えることにする。
「桃が感謝してくれるのは、嬉しいと思うが、オレにとっちゃ、クラブのセンパイとして当たり前のことをしてるだけだ。それになにより、桃が出してくるアイデアは、面白そうなモノばかりだからな! オレは、楽しみながら話しを聞いてるだけだぞ」
そうして、オレの本心を語ると、彼女は、顔を真っ赤にしながら、抗議の声をあげた。
「サラッとそう言うことを言うのやめてください! 恥ずかしくなるじゃないですか!?」
「オレだって、珍しく桃に褒めてもらえたんだから、おあいこだろう?」
苦笑しながら返答すると、後輩女子は、ふて腐れたように反論する。
「珍しくって一言は余計ですよ……そりゃ、ワタシは、くろセンパイにツッコミを入れたり、イジったりすることの方が多いですけど……」
「いや、桃にそう言ってもらって、純粋に嬉しかったんだよ。オレは、桃だけじゃなくて、三葉や河野にも迷惑をかけっぱなしだったからな……」
自分自信の軽率な行動と、クリーブラットから伝えられた言葉を思い出しつつ、表情が強張らないように注意しながら、そう伝えると、桃は、またも憤慨したようすで声を張り上げる。
「迷惑をかけてるなんて、そんなことない! ワタシは、そう想ってるし、あの幼なじみの歌だって……!!」
「あの歌って……三葉の歌が、どうかしたのか?」
唐突に、オレのよく知る幼なじみの歌のことが会話に出てきたので、不思議に感じて問い返すと、彼女は、一瞬、気まずそうな表情になって、
「いや、歌はどうだって良いんです! とにかく、自分を卑下するような言い方は止めてって言ってるの!」
と、逆ギレに近いような口調で反論してくる。
それが、なんなのかはわからないが、なにか、彼女の感情の敏感な部分に触れてしまったことを察したオレは、
「オーケー! わかった!! この話しは、ここまでにしよう」
と言って、話題の変更を試みる。
そうして、こちらの提案に桃がうなずいたことを確認して、彼女が提案してきたVTUberの企画化に関する具体案を話し合うことになった。
我ながら単純な性格だとは思うが、オレは、桃から掛けられた言葉を心の底から嬉しく感じていた。
さっきも、つい口をついて出てしまったように、オレは、三葉や河野、そして、目の前の桃自信に迷惑をかけ、彼女たちの心を傷つけてしまったこと、そして、三葉本人と価値観を共有していると言って良いクリーブラットから、三葉に近づかないでほしいという意味のことを伝えられたことで、自己嫌悪に陥っていた。
自分の存在意義を見出すことが出来ない状態で、
(いっそ、このまま、このセカイ全てから消え去りたい……)
と、考え始めたときに、桃から掛けられた言葉は、オレの乾いた心に沁み入るようにうるおいを与えてくれた。
(オレは、まだここに居ても良いんだ……こんな嬉しいことはない……)
いまや古典的教養と言って良い元祖リアルロボットアニメの主人公に強烈なシンパシーを感じながら、オレは、桃のアイデアを必ず実現させよう、と決意を新たにした。
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