空が青ければそれでいい

Jekyll

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「風間、わかったから…。俺、逆上せてきた」
長いこと風呂に浸かって、風間の謎の行動に頭に熱あがってヤバイと訴えかけると、初めて逢った時にされたん同様のお姫様抱っこ。しかも互いに生まれたままの姿。所謂全裸。文句言おうにも、マジで逆上せとってなされるがまま。
あれなんて言った?まな板の上の何とか。そんな状態。
軽く身体拭かれて、バスタオルで包まれてそのままリビングまでお姫様抱っこ。ソファーに寝かされて、赤い顔にキスされる。
「水持ってくるわ」
キッチンに消える風間を目で追う。引き締まった腰に巻かれたバスタオル。
あれだけの身体が自分にあれば、自分はどうしたやろ。間違えても男のケツは追い回さんな。
「頭おかしいんちゃうか」
「オマエがか?」
額に冷え冷えのミネラルウォーターのペットボトルをつけられ、風間が片眉だけあげて聞いてくる。
独り言に返事すんなよ。
「俺ちゃうわ、オマエや」
「何で…?」
風間は言いながらソファーに寝転がる俺の身体をちょっと持ち上げると、身体の下に入り込んできた。
何か…風間がソファーみたい。
「何で俺が頭おかしいん」
後ろから抱っこされ、耳朶にやわやわと噛みつきながら囁かれて肌がゾワッと粟立った。
泣きそうな、淡い快感が襲う。
「こーゆー…ことっ、男相手にするからっ」
「威乃やからするねん」
サラリと言われて眩暈がする。アホや…こいつ。
俺みたいな何もない奴、余計にあかんやん。
風間のゴツゴツした長い指が、火照った俺の身体を這い回る。風間が耳朶舐めたり項に吸い付いたりして、硬く主張してる小さな二つの粒を指の腹で円を書くように撫で回す。
ゾワゾワと、そこから快感が波みたいに打ち寄せてきて、バスタオルで隠された股間がジンジンする。
もっと…したい。とか、アホみたいな事さえ思う。
「っ…はっ、あっ…」
いつの間に乳首なんかで声が出るようになったんか、鼻から抜ける甘い声に我ながらうんざりする。
「威乃」
甘く、女に囁くみたいに名前呼んで、そっと内股を撫でる。瞬間、身体中の血が逆流したみたいな、何とも言えん波に襲われた。
吐きそうな、息も出来ん。息が詰まって、頭が白なって目の前がスパーク。グッと唇を噛み締めて、波に抗う。
身体がガクガク震えて、一瞬、硬直した。
「う…ぁ…ま、マジかよ…」
ハアハアと、肩で息しながら自分の股間を見つめる。
あろうことか…俺イッた。触られてない、扱かれてない。ただ乳首弄られて、内股撫でられただけ。小学生以下…?
「ちょうどええ」
風間は訳の分からん事言うて、勝手に達した俺のモノの奥に手を差し込んだ。
「い、いやや!風間!」
何をされんのかがわかって、風間の腕を掴むが敵う訳ない。
風間は俺の放った液を窄まりに塗りたくり、滑りの良くなった指を一本、ぐっと差し込んだ。
「あっ!あっ…あっ!」
あの快感が思い出されて、目尻に涙が滲んだ。
目の前で広げられた脚の間に、風間の腕。それが、抜き差ししてる動きに合わせて動いてる。
「い…あっ!風間っ…風間!」
「もっと指、増やす?」
耳元に告げられる甘い誘惑。俺はただ、頷いた。あの快感が欲しい…っ!ただそれだけ。
グッと圧力かかって、指が増やされたんがわかった。バラバラと狭い中で蠢いて、あのポイントを探してる。いや…焦らしてる。
「はっ…あぁ…焦らすな…!」
「焦らしてへん…もっと気持ちよーなって欲しいから」
もう十分!!ぎゅっと瞑った眼眸から、ポロポロと涙が零れ落ちた。
それを風間が舐めあげ、キスをせがむように頬に顎を当ててくる。されるまま顔を向けると、深いキスと共に痛いくらい前立腺を擦られた。
「―――――!!!!」
声にならん叫びは風間に飲み込まれ、二回目の絶頂に身体が痙攣する。
せっかく風呂で綺麗にした身体は、もうなす術もなくベタベタ。
「…威乃」
「はぁ…またソファーで…グダグダやん…」
こないだもソファーでめちゃくちゃされた。今日も。
「風間…お前とーか交換て、俺、お前に何もしてへん」
「威乃に触れたらええ」
イッた余韻も冷めん身体を起こして、風間と向き合う。
触れたらなんて、俺はそんなええもんちゃう。崇め奉るみたいな、そんなんやない。
「俺とやりたいんやろ」
俺を宝物みたいに扱うな。自分が壊れそうなる。甘えて縋りそうなる。
「…やろうや…風間」
そう言った俺を、風間は表情ない顔で見つめた。何や、その顔。
蔑むか?哀れむか?こないなことしか出来へんねん…俺は。お前みたいに、高いとこにおる人間が縋りつく価値ないねん。
「…やらん」
「は?」
「自分から言うた人間が、一番傷ついた顔しとる」
「ふ、ふざけんな…!」
「何が怖い?」
「は?」
「俺が裏切るとでも?」
「何言うてんねん、裏切るとか怖いとか、気持ちよくなれたらいいやん」
身体だけの関係。
しかも、とーか交換ゆう契約の上に成り立つ関係。怖いとか、裏切るとか関係ない。
「言うたやろ、威乃がせがむまで待つゆうて」
バシッ…。渇いた音が部屋に響いた。
それにハッとなる。その音を出したのは俺やった。俺が、力一杯風間の頬を殴ってた。
女みたいな平手打ち。何で殴ったんか自分でも分からんけど、後悔しても遅いんは肌で感じた。
「…あ」
殴られた風間やなく、殴った俺が声を漏らした。
風間が張られた頬を擦って、こっちに視線送ってきた。“殺される!”と、身体がビクッと跳ねた。
喧嘩なんか馴れてるし殴られるのも馴れてんのに、風間の視線に怯えた。
「殴るとでも思ってんのか」
風間の声に、怒気が混じった。初めて向けられた凶器。
「俺が威乃を殴ると思ってんの?」
「殴ればええやん。お、…お前おかしいねん…俺、男やぞ。ヤりたいならヤったええやんけ、女やないんや、遠慮いらんやん…。それをグダグダお前が訳わからんこと言うて…ちょっと女顔してるからって、俺、…」
言い終わるか否か、ガンッと壁に何か当たった。いや、投げられた。
さっきのミネラルウォーターやいうんは、すぐにわかった。
「オマエが何を思おうが、俺はどーこー言うつもりない。でもな、俺の気持ちをどーこー言う権利は、オマエにはないんじゃ!俺の気持ちは俺のもんじゃ!」
上に乗る俺を押し退けて、風間が立ち上がってリビングから出て行った。
部屋に静寂が漂う。後ろを見ると、壁にぶつけられたペットボトルから水がドクドク溢れてた。
俺はいつまでも床に水与えるペットボトルを拾い上げて、床に広がった水をタオルで拭った。
でも、そんな床にはポタポタと、雫が降ってくる。目から流れて、頬を伝って床に落ちる。
怒らすつもりなんかなかった。ただ、俺の中で混乱が起こっとった。
こないに誰かに求められたことないし、こないに執着されたことない。
俺かて常に自由で、執着することも求めることもなかった。それやのに、いきなり現れた風間は俺の中に入り込んで、俺の調子を狂わせた。
自分の中でこれ以上、築き上げて来たもんが壊れるんが怖かった。
オカンかて、何だかんだ言うても男出来たら家出て、何日も帰ってこんのなんかザラやった。電話なんかあっても、おかんの一方的な話聞くだけ。
温もり知ったらあかん。物心ついた時から俺の中にずっとある、一番の掟。
やのに温もり知ってもうた。風間のでっかい温もり。
これ以上、知ったらあかん。戻れんくなる。温もりなんかいらん。何もいらん。
「…ふっ…うぅっ」
床に落ちる雫は止まることなくて、どないしたらいいんか分からん様なる。
何でこんな弱いんやろ…俺。
ほぼ全裸の格好で、股はさっき自分で放ったもんでぐちゃぐちゃ。
やのに床拭いて、泣いて… 。もう滅茶苦茶。
「…威乃 」
フワッと肩にタオルかけられて、いつの間に戻って来たんか後ろから風間のでっかい身体に抱きしめられたら、ブワッと一気に涙が溢れた。
何で泣いてるんか、俺には全くわからんかった。ただガキみたいに、いつまでも泣きじゃくる俺を抱き上げて、風間は、だだっ広いあの寝室に連れて行った。
風間の匂いのするベッドで風間自身に抱き締められて、俺はどっかで安心してた。嗚咽を漏らすぐらい泣く俺に、風間は“ごめん… ”とだけ言って、いつまでも頭撫でてた。
一回、温もり知ってもうたらあかんねんな。孤独感とか、何ともなかった事が耐えきれん。

縋りついてるんは、風間か…俺か…。

翌日は日曜日で、目が覚めたら昼やった。目が何か腫れぼったい。
情けない…年下の風間の前で、おいおい泣いて、あやしてもろて爆睡って…。こんな俺、俺は知らん。
風間は俺自身が知らん俺を引きずり出して、俺を自己嫌悪に陥らす。が、その当の本人がおらん。
いつの間にか、俺はスウェットに着替えさせられてた。全く気が付かんで、身体綺麗にさえて着替えさせられても寝てた俺ってアホやろ。
いつまでも覚醒し切らん頭で寝室を出て、リビングに向かう。やて、リビングから涎垂らしそうな飯の匂い。
「起きたんか」
「…お、おぅ」
バツ悪っ。バツ悪い俺とは対照的に、風間は何もなかったみたいに料理作ってた。
すでにテーブルには玉子焼きとポテトサラダ、それに寝起きから野菜炒め。こんなに食われへんぞ…。
「朝食ったら胃が痛なるんやったか、もう昼やから平気か」
キッチンからあの絶品の味噌汁持った風間が、嫌味含んだ言い方でやってくる。
いつまでも根に持つタイプか、お前は…。
お気にの美紀ちゃんの天気予報では、今日は雨らしい。成る程、窓から見える空はどす黒く、今にも降りそうや。
“美紀ちゃん可愛いな~”と呟いたら、チャンネルをブチッと変えられた。そこキレるとこ?
「雨やて雨」
と言うと愛想ない返事だけ返される。諦めて、飯だけは絶品の風間の作った朝食を頬張る。
今日は雨か…青空やないんか…。空くらい青空見せてくれてもええのに。
町ん中歩いてる奴はみんな、どいつもこいつも腹黒うて今の空色みたいや。
でも、どんだけ腹黒い奴おっても、見上げた空が青かったら、どっか安心する。
「あ、今日バイトや」
腐ったくだもんみたいな腹も痛みも腫れも引いた。痣はまだあるけど、腹見せる訳ちゃうし、かまへん。
いい加減行かなクビや。やられた時はさすがに休みもろたけど、もう金も底を尽きかけてる。
「何時から」
「15時から居酒屋。仕込み手伝わな」
「……」
「何やねん」
明らかに不機嫌な顔。ニコリと笑った顔見たことない、まさに鉄仮面かと思ったけど、キレた時は顔に思いっきり出すあたりがガキや…。
「何時に終わんねん。迎えに行く」
「はぁ!?」
女やあるまいし、何で迎えに来てもらわなあかんねんっ!と言い合いになったけど、風間はタバコ銜えて、片眉をクイッとあげて、今日また泊まるのがとーか交換って…。
とーか交換、代償めちゃくちゃ高いんですけど…。

もう何言うても無駄やと、風間の家出てバイト先に向かった。
バイト先は自分の家から五分くらいのとこにあるんに、風間の家からは、まぁ遠い!
歩いてたら、汗がダラダラ垂れてきた。
結局、余裕持って出たのにギリギリに店に入った
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