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しおりを挟む(それに、あの家紋……)
歴史書で見覚えがある。あれは帝国のセオドア侯爵家。白の粒の模様が家紋にあるのは昔から白魔術師を多く輩出してきた魔術師の名門とされているため。
白魔術は術を出すときに、とても綺麗な光の粒が放たれるらしい。その歴史書を読みながら、白魔術を使える方はどれだけ綺麗な光を出すのだろうとツーツェイもうっとりと想像したことがある。
殴られていたせいか、はっきりしない思考でぼんやりと老夫婦を眺めていれば、視線が動いて優しく微笑まれる。
「大丈夫かい。お嬢さん」
主人がゆっくりと身体を持ち上げてくれる。身体につく土を払ってから、またミーシャとシュナウザー伯爵夫人に鋭い視線を向けた。
「この子は君たちの玩具ではない。こちらで引き受ける」
(――――え?)
いきなりの発言にツーツェイはおろか、ミーシャやシュナウザー伯爵夫人、その場にいた使用人たちも目を丸くしている。
「お、お待ちくださいっ! そんな汚い使用人をどうするおつもりですか!? しかもその者は声を出せませんのよ」
ミーシャがたまりかねて口を開く。『声を出せない』ということに周りの使用人たちがまた目を丸く開いている。その驚いた視線がツーツェイの手に握りしめられている分厚く汚いメモ帳にむいて、それが事実であると気づく。
(やっぱり気持ち悪いわよね……声を出せないだなんて)
そっとそのメモ帳を隠すように手の中に隠すように握りしめると、そんなツーツェイに夫人が微笑みかけた。
その優しい微笑みに見蕩れていればそっと背中に手をあてられる。なにかを探るように手を上から下へ動かしてから、主人の方を見つめれば互いに深く頷いた。
「それがなんだと言うのだ」
「なっ!?」
「五体満足な人間が偉いのか? 勘違いも甚だしい。これ以上、私たちを苛立たせるな」
その力強い言葉にもはや二人がなにも言い返せず冷や汗を流しながら固まっている。
どうすればよいの分からずツーツェイがあわあわと手だけを動かしていれば夫人にまた微笑まれる。
「はぁ…旦那様。また勝手なことを……」
執事らしき人が頭を抱えている。そんな執事に主人がふんっと鼻を鳴らす。
「勝手ではない。それに私はこの子を気に入った」
「はい?」
「この子を息子の妻にしようと思う」
「は?」
また辺りにいた使用人たちが目を丸くして固まっている。それはツーツェイも同様で……。
(へ? 息子? 妻?)
「聞こえなかったか? この子を息子と結婚させる」
「はいーーーー!?」
(はいーーーー!?)
見事なまでに、使用人たちの叫び声とツーツェイの心の叫び声がぴったりと重なった。
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