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しおりを挟む「気にしなくていい。自己紹介がまだだったな。私はモーガンだ。妻はセリニアという」
微笑んで挨拶してくれるモーガンとセリニアに慌ててツーツェイも『私はツーツェイです』とメモ帳に書く。
「ツーツェイ。さっそくだが今日、私たちは帝国に帰る予定なんだが一緒に来てもらえるかな」
モーガンにコクコクと頷くと頭を撫でられる。そばにつけてあるという馬車に向かえば、すっと手を差し伸べられて一人用の立派な馬車に乗せられた。そのままツーツェイを一人乗せて扉が閉められる。
(え……)
ツーツェイは首を傾げた。おかしいと。これは使用人にする者に対する扱いではない、ご夫妻は自分を使用人にするのではないのかと。
(まさか妻にとは本気では……いやいや有り得ないでしょう。あれは私を助けるために言ったことで……)
ぐるぐると頭を駆け巡る疑問。その後、七日はかかる帝国までの長い道のりの間、お姫様のごとく扱われた。一人用の宿舎部屋、立派な食事。すべてにツーツェイは目を丸くすることしかできず、夫妻に疑問の目を投げかけたが伝わっているのかいないのか微笑みを返されるだけだった。
けれどもそこはポジティブ短絡思考のツーツェイ。
(あぁ、きっと七日間だけのご褒美? さすが帝国の方は使用人にもお優しいのね!!)
なんて単純な結論付けをして満喫したのだった。
◇◇◇
(わぁ……さすが大帝国……)
馬車の中から見える帝国の城下の街並み。ツーツェイがいた国とは桁違いの栄えぶりだった。たくさんの人で溢れていて活気に満ちている。それに立派な王宮が遠くからでもわかるくらい、その威厳を放ちながらそびえている。
(あれは魔術師様!? 初めてみたわ、すごい、すごい!!)
黒と白のローブをそれぞれ羽織って歩く魔術師たち。本の中でしか知らなかった魔術師が本当に存在していたんだと目を輝かせて見てしまう。
窓に張り付いていれば、馬車が立派な屋敷の前に停まる。扉が開かれれば、セリニアが笑顔でツーツェイに手を差し出してくるので慌ててその手をとって馬車を降りた。
「お帰りなさいませ、旦那様、奥様」
ずらりと屋敷の門から玄関先まで並んだ使用人たちが頭をさげる。その人数の多さに圧倒される。
(私、こんなところでやっていけるかしら? でもキャリアだけなら十六年あるから大丈夫なはず!)
『一生懸命働かせて頂きます!!』
高揚感に胸を弾ませてメモ帳を取り出して、そう書いたメモ帳をモーガンとセリニアに見せると二人は首を傾げてから目線を合わせてふっと笑う。
「なにを言ってるの? ツーツェイは息子のお嫁様になると言ったでしょう」
「なんだ、使用人にでもなるつもりだったのか? あれほど伝えたのに」
(――――はい?)
二人が笑いながら屋敷に入って行ってしまう。ツーツェイは呆然と立ち尽くしていたが、後ろにいた執事に急かされて足を動かさざるを得なかった。
(え? ちょっと待って……待って、待って)
呆然としていれば、いつの間にか屋敷の中で使用人たちに囲まれて、綺麗なドレスを着させられて髪の毛を整えられている。
「わぁ、さすが旦那様と奥様が選ばれただけありますね! 磨けば綺麗になると思ってたんですよ!」
なんて口々にうっとりと眺められて、なおさら呆然とするしかなかった。
少しここで待つように使用人に言われて、だだっ広い部屋の真ん中に置かれたソファにちょこんと座らされる。
(待って……いや待って!? どういうこと?)
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