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しおりを挟む『今日も遅いのですか?』
朝食の時間、ボードに書いて向かいに座るテオドールに差し出す。それを見て、テオドールが少し申し訳なさそうに眉を寄せてから微笑んだ。
「うん、いま立て込んでて。今日も先に寝てていいからね?」
『はい』
すっと立ち上がって使用人が差し出す白のローブを羽織ってから『また明日』と一言だけ残し、屋敷を出て行ってしまった。
書斎で眩く強い光を放っていたテオドールと話した日以降、顔を合わせることも、ましてや話をするのも減った。それに……。
(距離が遠くなった気がする)
なぜかツーツェイはそう感じる。わざと距離を離されているような、そんな感覚。
(私の気持ちに気が付かれてしまったのかしら)
そう思えば胸が苦しい。『愛したくない』と、つまりテオドールを愛さないという理由で結婚を了承してもらえたのにそれを裏切ってしまった。
――――辛い。苦しい。
なによりもテオドールに嫌われてしまったことが心を締め付ける。自然と目頭が熱くなって視界が歪んで、ポロポロと涙が溢れて止まらない。
(声を出して泣いてしまいたい)
強い衝動にかられる。思いっきり声をあげて泣いてすべてを洗い流してしまいたいと。
だけれどそんなことは許されない。そのときに思ってもみないことを口走ってしまえば、テオドールになにかしてしまうかもしれない。
必死に口を閉ざして震えながら涙を流す。そんな姿に気がついた使用人たちが『なにかあったのか』と一斉にハンカチを持って心配そうに駆け寄ってくる。
『大丈夫です、ありがとう』
ボードにそう書き記せば背中をさすってくれて、その手の温かさが身体に伝わっていく。そんな彼らの優しさだけがいまのツーツェイの心の拠り所だった。
◇◇◇
(泣いていたって仕方がないわ!)
数日間、ツーツェイは部屋に閉じこもっていた。ツーツェイにしては長く落ち込んでいた。だが持ち前のポジティブを引っ張り出して顔を上にあげて立ち上がる。
相変わらずテオドールは屋敷に戻ってくる時間は少ない。夜も魔術省に泊まっているのか、一緒に寝ることもなくなった。着替えに帰ってくる朝食の時間しか顔を合わせる機会がなかった。
(話はしてもらえてるし……というか本当に仕事が忙しいだけかもしれないわ!!)
うんうんと首を縦に振って自身にそう刷り込む。それに直接テオドールから『結婚はやめよう』とは言われていない。そう言われるまではしっかりしようと奮い立たせる。
(言われたときは……)
――――……すぐにこの屋敷を出よう。
ぎゅっと唇を噛むと、またじんわりと瞳に涙が浮かぶ。それに気がついて、すぐにフルフルと首を振って涙を弾く。
(落ち込んでいてもなにもならない!)
そうまた上を向いて、手に雑巾を持って部屋から出る。忘れるように最近疎かになっていた掃除や料理を始めた――……。
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