【R18】再会した幼なじみの執着系弁護士に結婚を迫られても困ります!

前澤のーん

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7.恐怖の婚姻届?②

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◇◇◇


「ふぁ~……にしても夢だったのかなぁ……」

 いつものボロアパートに戻って、欠伸をしながらベランダから遠くのビル群を眺める。
 土曜日だったから今日は仕事に行かなくてもいいことに安心する。休日出勤当たり前になっていて、珍しく純粋な休みだった。

(もしかするとあのキモオヤジに抱かれる前提で休みにされた?)

 そうに違いない。

 そうだとわかればベランダの錆びた取っ手を握る手に力が入って震える。まぁ抱かれることはなかったからいいとするかと怒りを自身で必死に宥めた。

「どれかはわからないけどあそこの一番上にいたんだよなぁ」

 ぼんやりとビル群を眺めると昨夜のことを思い出して顔が熱くなる。婚姻届を見た瞬間は少し怖かったけれど、どうせもう会うことはないからと怖さもアパートに向かう途中で紛れてきた。

 その怖さが紛れると同時に甘い情事が蘇ってきて、恥ずかしさもありつつ身悶えてしまう。

(いい思い出だわ……)

 顔の熱さから吹き出してくる汗を手で扇いで冷やす。冷たい風も吹いてきたおかげか火照っていた顔が落ち着いてきたのにベランダから部屋に戻る。

 騙されていたとしても、こんな甘い思い出なら経験してよかったのかもしれない。

「この思い出のおかげでもう少し頑張れそう」

 ふふんと陽気な鼻息を漏らしつつ、小腹がすいてきたので両親からの仕送りの野菜を狭いキッチンに置く。久しぶりにゆっくりとした朝を迎えられたから好きな料理でもしようかなと包丁とまな板を棚から取り出していれば……。

 ────ピンポーン。

 玄関先のチャイムが鳴って覗き穴から見れば、そこには宅配のお兄さん。

(あれ? 一昨日に仕送りきたばっかりなのに?)

 たくさん収穫できたのかなと鍵を外して扉を開く。

「ちーす。ダンボールたくさんあるんで扉開けといてもらってもいいっすか?」
「え? は、はい」

 すでに大きなダンボールが三箱くらい宅配のお兄さんの脇に置いてある。まだあるのか?と不思議に思いつつ伝票にハンコを押してダンボールを部屋に入れていれば、宅配のお兄さんがまた新たなダンボールをせっせと運んでくる。

(お、多くない? お父さんお母さん、さすがにこの量は食べきれないよ)

 何往復かして何箱も積み重ねられるダンボールに開いた口が閉まらない。

「はぁっ、なに頼んだんすか? お姉さん」
「いや……私も知りたいというか……」
「まぁいいや。これで以上になるんで……よっと」
「あ、ありがとうございました」
「いいえ~」

 最後の一箱を置いて宅配のお兄さんが帽子を外して頭を軽く下げてから、伝票を持って去っていく。

 玄関先に積み重ねられたダンボール。軽く十箱はあるかもしれない。とりあえず、廊下に置いていては他の住民たちに迷惑がかかるので部屋の中に慌てて入れる。
 野菜かと思えば、軽いダンボールもあってますますなにを送ってきたんだろうかと深まる疑問。

「ふぁ~! 疲れた!!」

 全てを部屋に入れ終わって疲労感からベッドに腰掛ける。クール便もあるから生ものかもしれないから、とりあえず開けようと一番上にあったダンボールの封を切る。

「なんだろうなー……って、ん?」

 中に入っていたのは袋に入れられた洋服。それにバックや靴まで入っている。

(なんで服?)

 島の誰かのお下がりかと、じーっと見つめればロゴが見覚えのあるもの。それはさすがの島育ちの私でもわかる海外の超ハイブランド。一着三十万円以上は当たり前の高級ブランドたち。

「ひぃ!?」

 初めて目の当たりにしたハイブランドに恐ろしさのあまり壁に向かって放り投げてしまう。

(島のみんな、こんなすごいの持ってたの? って私はハイブランドになんてことを!?)

 慌てて放り投げたハイブランド服を綺麗に畳む。とりあえず着るかどうかは置いておいて箱に戻そうとダンボールを再び開く。
 他のものは有難く使わせてもらおうかな~と靴やバッグを取り出せば、また目に入るハイブランドのロゴたち。

「ぎゃー!? また高級ブランドーー!!」

 今度は投げずにすぐ手から離して、尻もちを着きながら自らがダンボールから後ずさりする。

 開いたままのダンボールから見えるのは大量のハイブランドの服とバッグ、靴、アクセサリーで。こんなボロアパートに絶対に存在したことがないだろう品々に身体が固まってしまう。

「な、なんで……しかもよく見たら新品じゃない……」

 どれもがタグがついたままのピカピカの新品。こんなもの島のみんなが持っている、または買うわけがない。

(だとしたら……)

 はっと伝票の送り主を確認する。私に送り物をするのなんて両親しかいなかったし、ネットショッピングをするお金もなかったから確認なんてしていなかった。
 高級ブランドだらけのダンボール。こんなものを買って送ってこれる人なんて、思い当たるのは一人しかいない。


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