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第二章 生まれ変わり(元)騎士令嬢は諦めません
ご挨拶しましょう3
しおりを挟む「顔は綺麗なのに、あの子だけオーラが違うんだけど……」
「なんだが、死に別れた両親と会えたような雰囲気ね」
私の感動に周りの使用人たちが離れていく。ぽつんと孤立してしまったのは少し恥ずかしい。
(お兄様に感謝しないとな)
お兄様が推薦してくれたおかげで、書類審査、その後の面接試験はなんなくクリアできた。残すは、この最終試験のみ。どのような試験があるのだろうかと、考えていれば……。
――――ガチャ。
奥の扉が開かれる音がして、辺りが一瞬にして静まり返る。
「ん?」
(んげぇ!? ゴリラ!!)
開かれた扉から入ってきたのはアルフェント兄様だった。いまは五十前後のはずだが、変わらずムキムキな身体をしている。歳をとってなおのことゴリラ感が増した気がする。
アルフェント兄様は何度かパレードなどで陛下の傍で護衛する姿を見ていたので、いまさら特段の驚きはない。
アルフェント兄様には生まれ変わりの件を話して協力してもらってもよかったのだが――――いかんせん彼は嘘がつけないのだ。
そのせいで素性が気づかれて動きにくくなるのも困る。まぁ、それは私も似たようなものだが、彼の方が少し……いや、かなり酷い。
(謝りはしたいが……)
私が死んだことで色々なところから非難を受けたことは間違いがない。殿下の力を抑えて死んだことになっているが、大前提に彼から目を離したこと、それは罪に問われることとなった。
その罪をすべて被ったのがお父様だ。陛下の護衛騎士という立場を責任をとって辞し、爵位も兄様に引き継いだ。いまは帝都から少し離れたところにある別邸で静かに隠居しているという。
(それに現皇帝派のお父様が辞めたことで、貴族内での力のバランスが崩れた)
――――つまりは陛下側の貴族への統制力が弱まったということだ。
そんな中で非難を受けながらも、アルフェント兄様はいまも陛下の護衛騎士として勤めている。彼の苦労を想像すれば申し訳なさが襲ってきて、ぐっと唇を噛んだ。
「何……今度はすっごい負のオーラなんだけど」
「あの子、なんの目的で来たんだろう。怖い」
また私の周りから人が離れていく。いかんいかんと表情を戻そうとしていると、女性の黄色い声が小さく響いた。もちろんそれは……。
(現お兄様か)
アルフェント兄様のあとから入ってきたのはシエルお兄様。ふわりと微笑みながら白地の羽織を揺らす。ここでも変わらない美しさを放ち、周りに花が咲いたようだ。
「やだっ! シエル様もいらっしゃるなら、もっとしっかり化粧してくればよかったわ!」
「シエル様にお会いできただけでも最終試験まで残れたかいがあったわ」
「あぁ、ラルディーニ卿が視界の邪魔ね。少し離れてくれないかしら」
(あー……ゴリラと並べるのは鬼畜の所業だろう。誰か離してやってくれ)
ゴリラの隣に並ぶとシエルお兄様の美しさがさらに際立っている。悲しいような嬉しいような。とにかく感情が複雑になるから勘弁してほしい。
(――――ん?)
「っ! なぜこちらにっ……」
そんなとき、部屋に入ってきた人物にアルフェント兄様が焦っている。何事かと視線をそちらに向けると、部屋にいた者たちが驚きのあまり一瞬にして静かになった。
「気にするな。顔ぶれを確認するだけだ」
「は、はぁ……」
(なぜこのようなところに……)
部屋に集められていた使用人応募者たちが、みなすぐに頭を下げる。
「皇帝陛下……」
小さく呟いた私の声が震えている。視線だけを上に向けると、長い朱色のマントを揺らして歩く月白色の髪をした男性。すぐに用意された玉座に腰掛けて足を組んだ。
いまは四十代だろうか。クレイセント殿下があれほどの容姿をしているだけあって皇帝陛下も美貌を兼ね備えている。
(ここまで近くに……それに同じ部屋の中で……)
久しぶりにここまで近くで、それに皇宮内で陛下をお目にかかれて、胸が熱く込み上げてくるものがある。
「顔を上げよ」
その声に反射的に顔を上げて口を開いた。
「はっ! 帝国の太陽の光、ご尊顔を拝し恐悦至極に存じ奉ります。我が命をかけて一生お守り致しますことを誓います!」
左胸に右手を当てて左手を背中に回し、背筋を伸ばしながら声を上げる。
――――しーん。
その瞬間、静まり返るその部屋。
「……あ」
(しまったあああああぁぁ!!)
あまりの感動に、皇帝陛下向けの騎士の口上を無意識に発してしまった。アルフェント兄様もシエルお兄様も、それに周りの使用人たちも目を丸くしている。
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