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第二章 生まれ変わり(元)騎士令嬢は諦めません
扉を開けてください
しおりを挟む「なぜ騎士の……」
「あっ、ああああ!! ぼ、僕が教えたのですっ! あれは僕の妹でして、も、申し訳ありません!!」
必死にシエルお兄様が頭を何度もさげて謝り倒している。
(シエルお兄様ーーーー!!)
いまだけは頼りになるお兄様に感謝しかない。
「にしては、声の張り方や姿勢の角度もすべてが完璧だったような……」
アルフェント兄様がむむむっと眉に深い皺を寄せつつ私を鋭い目で見てくる。洞察力だけは動物並みの男だ。困る。
「アルフェント、シエル」
「「はっ!!」」
ゆっくりと陛下が視線を兄様に向けたのに、二人がすぐ頭を下げる。やはり目立ってしまったか。
『つまみ出せ』とでも言われるのだろうか。やっとのことで、ここまで来れたのに……。
「あれを連れてこい」
(へ?)
また振り出しに戻るのかとぐっと唇を噛んだが、思いもしない陛下からのお言葉に噛んでいた口を開いた。つまみ出される以前に、どこかに連れていかれる?
昔に罪人の尋問のために出入りしたことのあった地下牢を思い出して、ぞっと血の気が引く。いや、まさかそこまでの不敬は……と思うが、陛下は無表情のまま私を見下ろしていた。
「陛下。しかし、まだ何もお話もされて……」
「いい。とにかく連れてこい」
ガタンと椅子から立ち上がり、部屋から出ていってしまう。どうやらこれにてお開きのような雰囲気だ。
なぜ陛下が使用人決めに参加しているのかは不明だ。だがこれだけは分かる。
(生まれ変わった人生が終わる!!)
ということだけは。
「どうか陛下、ご慈悲を。どうか神よ、ご慈悲を……」
そのまま部屋の外に連れていかれて、外回廊を歩く。前を歩いていたシエルお兄様が十字架を握りしめて、先ほどからずっと祈り続けている。不吉すぎるからやめてほしい。
「お兄様。それ私が死ぬ前の願いごとになってない?」
潤んだ瞳でギッと睨まれた。『リゼのために願っているんでしょう!?』とでも言いたげだ。それに……。
(っうぅ、ゴリラからの視線が痛い)
「お前、完璧な喋りと姿勢だったな。誰よりも騎士らしかったぞ」
「……あはは、そうですか。それはありがとうございますぅ」
「騎士に憧れているのか?」
「あははー。違いますぅ。先ほども申した通りお兄様から教わっただけですぅ」
じーっと私を四方から見つめてくるアルフェント兄様から目線を逸らしながら適当に流す。ちっ、本当にこういったところだけは目ざといゴリラめ。
「あの……それで私はどちらに?」
「あー、そうだな。最終試験場って感じだなー」
「は? 最終試験?」
首を傾げると、シエルお兄様がアルフェント兄様に詰め寄った。
「アルフェント卿! 陛下が使用人を求めていたのはそういうことだったのですか!」
「ったく、うるせぇな。そのまんま募集かけたら誰も寄ってこねーだろうが。それに内密にしなきゃならなかったんだ」
「こんなことならば妹に募集の話などしなかったのに……! これは詐欺です!」
「シエル。いまのは聞き逃してやる。不敬罪に問われたくないならば即刻静かにしろよ」
指先で剣に触れたアルフェント兄様にシエルお兄様がびくりと震える。何度か撃ち合いをしていたので、兄様の本気度合いは分かっていた。
あくまで軽い忠告をしたつもりだろう。だがそんなことは分かるはずもないシエルお兄様は、いまにも卒倒しそうなくらい顔を青ざめさせて怯えている。
(圧が強いんだよ、圧が。まったく)
ビクビクと瞳を潤ませて獣に襲われる兎のように震えるシエルお兄様を見て、愉しそうに笑っているのはタチが悪い。
「うぅ、神よ。どうか妹をお守りください」
それにしてもシエルお兄様の怯え方が尋常ではない気がする。
(何かあるのか? というか、ここは……)
一体どこに連れていかれるのかと思っていれば、古びた屋敷が現れた。
「おら、さっさと入れ。陛下がお待ちなんだ」
アルフェント兄様にポンッと背中を押され、屋敷の中に足を踏み入れる。シエルお兄様が鬼の形相で彼を睨んでいるが、兎がゴリラを睨んでも効果はない。
むしろまた楽しんでいるようなアルフェント兄様の雰囲気に呆れつつ、歩いていけば廊下の先に陛下のお姿がみえた。
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