【完結】殿下、お守りしたいだけなので二度目の溺愛は所望しません!

前澤のーん

文字の大きさ
21 / 82
第二章 生まれ変わり(元)騎士令嬢は諦めません

扉を開けてください

しおりを挟む



「なぜ騎士の……」
「あっ、ああああ!! ぼ、僕が教えたのですっ! あれは僕の妹でして、も、申し訳ありません!!」

 必死にシエルお兄様が頭を何度もさげて謝り倒している。

(シエルお兄様ーーーー!!)

 いまだけは頼りになるお兄様に感謝しかない。

「にしては、声の張り方や姿勢の角度もすべてが完璧だったような……」

 アルフェント兄様がむむむっと眉に深い皺を寄せつつ私を鋭い目で見てくる。洞察力だけは動物並みの男だ。困る。

「アルフェント、シエル」
「「はっ!!」」

 ゆっくりと陛下が視線を兄様に向けたのに、二人がすぐ頭を下げる。やはり目立ってしまったか。
『つまみ出せ』とでも言われるのだろうか。やっとのことで、ここまで来れたのに……。

「あれを連れてこい」

(へ?)

 また振り出しに戻るのかとぐっと唇を噛んだが、思いもしない陛下からのお言葉に噛んでいた口を開いた。つまみ出される以前に、どこかに連れていかれる?
 昔に罪人の尋問のために出入りしたことのあった地下牢を思い出して、ぞっと血の気が引く。いや、まさかそこまでの不敬は……と思うが、陛下は無表情のまま私を見下ろしていた。

「陛下。しかし、まだ何もお話もされて……」
「いい。とにかく連れてこい」

 ガタンと椅子から立ち上がり、部屋から出ていってしまう。どうやらこれにてお開きのような雰囲気だ。
 なぜ陛下が使用人決めに参加しているのかは不明だ。だがこれだけは分かる。

(生まれ変わった人生が終わる!!)

 ということだけは。

「どうか陛下、ご慈悲を。どうか神よ、ご慈悲を……」

 そのまま部屋の外に連れていかれて、外回廊を歩く。前を歩いていたシエルお兄様が十字架を握りしめて、先ほどからずっと祈り続けている。不吉すぎるからやめてほしい。

「お兄様。それ私が死ぬ前の願いごとになってない?」

 潤んだ瞳でギッと睨まれた。『リゼのために願っているんでしょう!?』とでも言いたげだ。それに……。

(っうぅ、ゴリラからの視線が痛い)

「お前、完璧な喋りと姿勢だったな。誰よりも騎士らしかったぞ」
「……あはは、そうですか。それはありがとうございますぅ」
「騎士に憧れているのか?」
「あははー。違いますぅ。先ほども申した通りお兄様から教わっただけですぅ」

 じーっと私を四方から見つめてくるアルフェント兄様から目線を逸らしながら適当に流す。ちっ、本当にこういったところだけは目ざといゴリラめ。

「あの……それで私はどちらに?」
「あー、そうだな。最終試験場って感じだなー」
「は? 最終試験?」

 首を傾げると、シエルお兄様がアルフェント兄様に詰め寄った。

「アルフェント卿! 陛下が使用人を求めていたのはそういうことだったのですか!」
「ったく、うるせぇな。そのまんま募集かけたら誰も寄ってこねーだろうが。それに内密にしなきゃならなかったんだ」
「こんなことならば妹に募集の話などしなかったのに……! これは詐欺です!」
「シエル。いまのは聞き逃してやる。不敬罪に問われたくないならば即刻静かにしろよ」

 指先で剣に触れたアルフェント兄様にシエルお兄様がびくりと震える。何度か撃ち合いをしていたので、兄様の本気度合いは分かっていた。
 あくまで軽い忠告をしたつもりだろう。だがそんなことは分かるはずもないシエルお兄様は、いまにも卒倒しそうなくらい顔を青ざめさせて怯えている。

(圧が強いんだよ、圧が。まったく)

 ビクビクと瞳を潤ませて獣に襲われる兎のように震えるシエルお兄様を見て、愉しそうに笑っているのはタチが悪い。

「うぅ、神よ。どうか妹をお守りください」

 それにしてもシエルお兄様の怯え方が尋常ではない気がする。

(何かあるのか? というか、ここは……)

 一体どこに連れていかれるのかと思っていれば、古びた屋敷が現れた。

「おら、さっさと入れ。陛下がお待ちなんだ」

 アルフェント兄様にポンッと背中を押され、屋敷の中に足を踏み入れる。シエルお兄様が鬼の形相で彼を睨んでいるが、兎がゴリラを睨んでも効果はない。
 むしろまた楽しんでいるようなアルフェント兄様の雰囲気に呆れつつ、歩いていけば廊下の先に陛下のお姿がみえた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました

まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました 第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます! 結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

有賀冬馬
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...