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しおりを挟む私が何をしたのかというと、ただお母さまの言葉通りに行動をしただけです。
お母様の、
『恐怖にのまれるな。
恐怖を感じた時こそ前にでろ。
絶望するのはそれからでも遅くは無い』
その言葉があるからこそ、私はいつでも前に進める。
今回も、最後は危険だと思った。
あの攻撃は、一歩でも間違えれば負けていたから。
お母様の顔に泥をぬることになってしまう可能性があったから。
それが、何よりも怖かった。
私がお母様の顔に泥を塗るような事をしてしまうかもしれないということが、怖かったのだ。
だからこそ、踏み込めたのだけれど。
「一つ、聞かせていただきたい。
何故、あの時アメリア殿は前へと踏み込めたのでしょうか。
普通であればできないはず、にもかかわらずあなたは……」
アルベルト様はよくも悪くも誠実なようだ。
でも、確かに私もお母さまのあの言葉がなければ踏み出せなかっただろう。
「恐怖を感じたから、ですわ。
昔、お母様に言われたことがありますの。
恐怖にのまれるな。
恐怖を感じたときこそ前に出ろ、と。
私はただその通りに行動したまでの事ですわ」
私が事もなさげに口にすると、アルベルト様は驚いたように目を見開き笑みを零しました。
「あなたは、意外と勇気があるらしい。
あの攻撃の中、他人に言われたからと言って出来る事ではありませんよ。
流石はあの、鮮血殿と言うべきなのでしょうね」
「おほめにあずかり光栄ですわ」
アルベルト様の言葉に私は微笑んで言葉を返した。
「アルベルト団長!
大変です!」
「何があった!」
「北門にて、魔物大混乱が発生しました!
確認される最高ランクは、A級です!」
「なっ……。
申し訳ありません、アメリア殿、私は……」
「私も協力させていただきます、と言いたいところですが、強制収集がかけられていると思いますので一旦ギルドに行きますが……。
すぐに向かいますわ」
「ありがとうございます、アメリア殿」
まさか、スタンピードが起こるとは思っていなかったものの、レオがいてくれてよかった。
レオはAランク、かなりの戦力になる。
それに、エデンもいる。
私は、城から出ると、エデンにレオを呼ぶように告げてすぐにギルドへと向かった。
ギルドに行くと、すでに人が集まっていたが、不安そうな顔をするもの、自信あふれるものなどと様々な人たちがいた。
「嬢ちゃん、今は依頼の受け付けはしてないぜ。
また別の機会に……」
「実力も図れないような方は参加しないほうが身のためかと思いますわ。
それより、マスター。
私は先に向かっていても?」
「少し待て。
今、こいつを弱い、依頼の発注に来たと思ったやつは出てけ!
お前らには今回の件は重い」
「なっ、それはないぜ!」
「その女がなんだって……」
マスターがギルドに響き渡るほどの声を上げると、何人かの冒険者が騒ぎ始める。
この無駄な時間は何なのか。
そう思う気持ちもあるが、足手まといがいるほうが困るので仕方ない。
「アメリアは、Sランク冒険者だ。
それをわかって言ってんのか?
今回のスタンピードはアメリアの実力も図れなかった奴には参加させられない。
出ていけ」
マスターは改めてそう口にすると、少しだけ殺気を放った。
その殺気に倒れるものもいるが、一部はおとなしく出て行った。
そして、ようやくスタンピードの話が始まった。
「今回のスタンピードで確認されているのは約、80を超える竜種と、そのほかにもBランクを超える魔物の群れだ!
いいか、無理はするな!
アメリア、このン下での最高ランク冒険者として一言頼む」
「早く行きたいのですが?」
「一言頼む」
強制的に一言何か言うことになった。
早く行きたいのに。
「では、私は先行して向かいますので皆様はごゆっくりどうぞ。
ちょうど、レオも来たようですし」
「リア!
スタンピードが起こったと聞いたが……これはどういう状況だ?」
「お気になさらず。
それよりも、エデン、レオ急ぎますわよ」
「承知した。
乗るか?」
「お願いいたしますわ」
ギルドの入り口でそんなことを話すと、エデンはギルドの外で竜の姿へと変わり、私とレオを背に乗せるとそのまま北門へ向かって飛び立った。
町中でこんなことをしてしまったが、今回は許してもらいたい。
『銀魔法‐身体強化‐発動』
私は、エデンの背に乗りながら、エデン、レオ、自分に身体強化の魔法をかける。
そして、いつでも降りられるように準備をすると、ちょうど目的の場所へと到着した。
「エデン、アルベルト様に私が先行していくと伝えてください」
『承知した』
「お、おいリア!?」
私はそのまま、レオの静止を聞かずにエデンの背から飛び降りるとワイバーンの背にのり剣を突き立てると、ワイバーンは地へ落ちていった。
『防御魔法‐範囲指定‐結界型‐同時発動』
と、あの時のように決壊型の防御魔法を発動させ、街を覆い尽くす、守りの壁を作り上げた。
そして、二ふりの剣を構えると、お母様のように笑みを浮かべた。
もう、あの時のようなことにはならない。
あの時よりも、私は強くなったし仲間もいる。
だから、大丈夫。
そう、自分に言い聞かせると、私は声を上げた。
「アメリア・ヴェノム、二つ名を鮮血の死神、戦火の騎士、白銀騎士!
行きます!!」
私も、だいぶ通り名が増えたものだ。
そんなことを考えながら、私は走り出した。
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