竜使いの伯爵令嬢は婚約破棄して冒険者として暮らしたい

紗砂

文字の大きさ
67 / 69

66

しおりを挟む


目が覚めた時、私は要塞と思われるとこの寝台に寝かされていた。
あの後、どうなったのだろうか?
それが聞きたくて、私は寝台から立ち上がろうとする。


「主よ、動かぬ方が良い。
少々魔力を使いすぎたせいで体も上手く動かぬだろう。
あと少し経てば動けるようになる」


エデンの言う通り、上手く体が動かない。
そして、とてつもない疲労感のせいで起き上がることすらままならなかった。


「レオは、他の方々は大丈夫でしょうか?
それに……」

「落ち着け、主よ。
我としても説明したいのは山々ではあるのだが、人の世のことはよく分からぬ。
故に、分かる者を連れてくる。
その間に落ち着くと良い」


エデンは優しく微笑むと、私の頭にポンと手を置き退室していった。
あんな表情は見たことがない。
何かあったのだろうか、と逆に心配になる程に。


「リア、目覚めて良かった!
無茶はやめてくれ……。
心臓が止まるかと思っただろう……」

「申し訳ありませんわ。
ですが……」

「ですが、だと?」

「……分かりました。
善処致しますわ」


いつにも増してレオが怖かった。
レオに恐怖を感じたのはいつぶりだろうか?
なんにせよ、少なかったのは確かだ。


「はぁ……」


レオはため息をついたあと、真面目な顔で私に告げた。


「リアが倒れたのはこれで二回目だ。
前の時も今回も同じ理由でだ。
だが、次も助かるとは限らない」

「えぇ、ですがやらなければ傷付く方が増えてしまいますもの。
私一人くらいで助かるのなら、安いものでしょう?」


それが、貴族としての役目でもあるのだ。
だからこそ、やらなければいけない。
私が倒れるだけで終わったのは僥倖だっただろう。
だが、今回のようなことが続くとは限らない以上、やはりもっと強くなる必要がある。


「安いもの、だと?
そんなわけあるか!
リアがいなくなって悲しむのは私だけではないのだということを何故分からない!
エデンやリアンはどうするつもりだ!
契約者のいない竜は討伐対象となるのだぞ!」


これ程までに感情を顕にしたレオは初めて見たような気がする。
何故、レオはこんなにも私にこだわるのだろうか?
エデンやリアンのことは確かに心配ではある。
だが、エデンたちがそう簡単に負けるはずがないと思うし、お母様以外に倒せる人なんて思い浮かばない。


「大体、お前は私のことをなんだと思っている!
私はリアが好きだと言っただろう。
なのに何故、自分の命が安いものだと言える!?
 ふざけるな!」

「なっ……それは、それが貴族として生まれた私の役目だからですわ!
貴族としての役目も果たさず生きているなど、そんなことできるはずがないでしょう!」


気付けば、私も言い返していて、喧嘩になっていた。
私達がする、初めての喧嘩だった。


「お前のやっていることは貴族としての範疇を超えていると言っているんだ!
それで死にでもすれば貴族としての役目どころではなくなるのだぞ!
それが何故分からない!」

「ですから、それは分かっていると言っていますわ!
ですが、だからといって他の方の命を見捨てろと言うつもりですの!?
そんなこと、許せるはずがないでしょう!」

私も、レオが言っていることは分かっているつもりだ。
だが、だからといってそれを認めてしまえば自らの役目を果たしてもいない貴族を認めることになる。
なにより、そんなことをすれば貴族と平民の間に命の差があることを認めることになるのだ。
それを、認められるはずがない。


「そうは言っても、リアが死んでしまえば助けられる命も助けられなくなるのだぞ!」

「では、なんですの!?
目の前の命を見捨てろと申しますの!?」

「そうは言っていないだろう!」


私達の喧嘩がヒートアップしてくると、ついにエデンが私達を止めた。


「主は目覚めたばかりで疲れている。
喧嘩をするのならば出て行ってもらおう。
だが、主も主だ。
そう無茶ばかりしていてはこちらも心配するだろう。
役目を果たそうとするのは正しいだろう。
だが、それで倒れてしまえばその役目も果たせなくなるのではないか?」


エデンに言われて気付く。
私は目の前のことにしか目がいかない。
だからこそ、その先のことを考えずに動いてしまうのだ。


「今の主の行動は、主の周りの者を信用していないと同義だということも理解しているのか?」


私は、エデンの言葉に今までの行動を振り返ってみた。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

【完結】嫌われ公女が継母になった結果

三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。 わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。

夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました

香木陽灯
恋愛
 伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。  これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。  実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。 「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」 「自由……」  もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。  ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。  再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。  ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。  一方の元夫は、財政難に陥っていた。 「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」  元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。 「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」 ※ふんわり設定です

姉の婚約者と結婚しました。

黒蜜きな粉
恋愛
花嫁が結婚式の当日に逃亡した。 式場には両家の関係者だけではなく、すでに来賓がやってきている。 今さら式を中止にするとは言えない。 そうだ、花嫁の姉の代わりに妹を結婚させてしまえばいいじゃないか! 姉の代わりに辺境伯家に嫁がされることになったソフィア。 これも貴族として生まれてきた者の務めと割り切って嫁いだが、辺境伯はソフィアに興味を示さない。 それどころか指一本触れてこない。 「嫁いだ以上はなんとしても後継ぎを生まなければ!」 ソフィアは辺境伯に振りむいて貰おうと奮闘する。 2022/4/8 番外編完結

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

お掃除侍女ですが、婚約破棄されたので辺境で「浄化」スキルを極めたら、氷の騎士様が「綺麗すぎて目が離せない」と溺愛してきます

咲月ねむと
恋愛
王宮で侍女として働く私、アリシアは、前世の記憶を持つ転生者。清掃員だった前世の知識を活かし、お掃除に情熱を燃やす日々を送っていた。その情熱はいつしか「浄化」というユニークスキルにまで開花!…したことに本人は全く気づいていない。 ​そんなある日、婚約者である第二王子から「お前の周りだけ綺麗すぎて不気味だ!俺の完璧な美貌が霞む!」という理不尽な理由で婚約破棄され、瘴気が漂うという辺境の地へ追放されてしまう。 ​しかし、アリシアはへこたれない。「これで思う存分お掃除ができる!」と目を輝かせ、意気揚々と辺境へ。そこで出会ったのは、「氷の騎士」と恐れられるほど冷徹で、実は極度の綺麗好きである辺境伯カイだった。 ​アリシアがただただ夢中で掃除をすると、瘴気に汚染された土地は浄化され、作物も豊かに実り始める。呪われた森は聖域に変わり、魔物さえも彼女に懐いてしまう。本人はただ掃除をしているだけなのに、周囲からは「伝説の浄化の聖女様」と崇められていく。 ​一方、カイはアリシアの完璧な仕事ぶり(浄化スキル)に心酔。「君の磨き上げた床は宝石よりも美しい。君こそ私の女神だ」と、猛烈なアタックを開始。アリシアは「お掃除道具をたくさんくれるなんて、なんて良いご主人様!」と、これまた盛大に勘違い。 ​これは、お掃除大好き侍女が、無自覚な浄化スキルで辺境をピカピカに改革し、綺麗好きなハイスペックヒーローに溺愛される、勘違いから始まる心温まる異世界ラブコメディ。

処理中です...