竜使いの伯爵令嬢は婚約破棄して冒険者として暮らしたい

紗砂

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私は街へと出たところでピタリと足を止めた。
その理由は薬屋の場所を知らなかったからだ。
何のために来たんだ!
と自分を叱咤してから取り敢えずギルドに向かう事にした。


「お?
アメリアじゃねぇか!」


私がギルドに入るなりそう声をかけてきたのは試験の時に知り合ったカインだった。


「お久しぶりですわ」

「おう!
アメリアは何しに来たんだ?
依頼か?」

「いえ…その、ポーションが欲しいのですが薬屋の場所が分からなくて…。
なのでどなたかにお聞きしようと思ったんですの」

「薬屋は紹介出来ねぇが…俺のパーティーのメンバーに質の良いポーションを作るやつはいるぜ。
ちょっと待ってろよ」


どうやら紹介してくれるらしく私を残してカインは酒場となっている方へと向かっていく。
少ししてからカインは緑の髪の凛とした女性を連れてきた。


「アイリーン、こいつはアメリアだ。
俺を負かした奴だな」

「ご紹介に預かりました、アメリアと申しますわ」

「んで、アイリーンだ。
『暁の旅立ち』のメンバーの1人で腕の良い薬師だ。
ランクはBだがな」

「アイリーンです。
えっと…アメリア、様?」


恐る恐るという様に私の名前を口にしたアイリーンさんだったが私の話し方からして貴族だと思ったようで表情は硬かった。


「アメリアで結構ですわ。
突然で申し訳ないのですが…エリクサーとポーションを探しているのです。
依頼という形で出させて頂きますので受けてはいただけないでしょうか?」

「ほ、本当ですか!?」

「受けていただけるようで良かったです。
金額の方は品質を見て、ということで宜しいでしょうか?」

「はい、はい!
ありがとうございます!」


少しばかり過剰な反応ではいたが受けてもらえるようなので私は早速依頼を出すためにアイリーンさんと共に受付へと向かった。


「アメリアさん、マスターが赤い依頼の件について話したいので奥に来て欲しいと……」


赤い依頼の事についてすっかり忘れていた私は思わず目を逸らした。


「…忘れていましたわ。
後で行きます。
今は取り敢えず、指名依頼をお願いしますわ」

「アメリアさんが……ですか?」

「えぇ」


私が肯定すると受付嬢は驚いたように目を丸くした。
流石にその反応は失礼ではないだろうか?


「え…アメリア、待ってください。
赤い依頼って…赤い依頼ってなんですか!?」

「アイリーンさんに対してポーションとエリクサーの作成をお願いします」

「はい、少々お待ちください。
………はい、終了致しました」


依頼を出す事は出来たようなのであとはアイリーンさんが受けるだけだ。
そう思い、アイリーンさんを促すものの赤い依頼について言っている。


「あ、赤い依頼って…Aランク以上ではないと受けられないようになっていると思うのですが!」

「えぇ、そうですわね」

「アメリアさんってその歳で私よりもランクが高いんですか!?」

「……そう、なりますわ」


私が肯定してしまった事により打ち削がれるアイリーンさん。
それよりも早く依頼を受けてはくれないだろうか?


「あ…あの、依頼を受けたいのですが…」

「承知しました。
……受注が完了致しました」


アイリーンさんが受注したのを確認してから私はマスターに話を聞こうと奥へと向かう。


「アメリア、赤い依頼って聞こえたんだが……」

「えぇ、そうですが……」

「お前だけじゃ不安だからな。
『暁の旅立ち』もついていこう」


思わず、結構ですわ、と言いたくなるのをグッと堪え受付嬢へと視線を向けると何故か頷かれた。
……それは合同で依頼を受けろという事だろうか?


「カインさん、皆さんを呼んで来ました!」


既に呼んで来てしまったようでどうやら私には拒否権は無いらしい。


「私はサラシェ、よろしくね」

「あー、ジャンだ。
よろしく」

「アメリアです。
よろしくお願い致しますわ」


自己紹介を軽く済ませると私はそのままマスターの部屋へと入った。
勿論ノックはしていない。


「ちょっと!?
アメリア、君、一応貴族なんだしノックくらいしようよ!?
それと、来るのが遅い!
まさか忘れていたとかじゃ……」


私はスっとマスターから視線を逸らす。
そして小さく呟いた。


「……そのまさかですわ」

「ちょっとぉ!?
……はぁ、まぁいいや。
で……えーと、『暁の旅立ち』はどうしたの?」

「……合同で依頼を受ける事になりましたの」

「………大丈夫?」


その大丈夫は私ではなく『暁の旅立ち』に向けられたものだった。
そしてそのマスターの目はいつもよりも真剣さを醸し出していた。
それほどまでに厳しい依頼なのか、と少しだけ後悔しつつも私はソファーへと腰掛ける。

まさか、マスターが私の非常識さについて大丈夫かと聞いているとは思いもしなかった。

そして暁の旅立ちのメンバーも座ったところでマスターは依頼内容について話を始めた。


「依頼内容は、黒炎竜の討伐、又は無害化。
場所はシーリングの村だ。
黒炎竜は既に成体になっていて騎士団も出たが……」

「……失敗しましたのね」

「……あぁ」


黒炎竜は竜種でも準最強と言われている。
その成体となると…確かに騎士団も難しいだろう。
私もあまり気乗りはしないが近隣住民への被害も考えると断る訳にもいかないだろう。


「分かりましたわ。
シーリングでしたら幸い近いですし……。
学園を休めばなんとか間に合いますもの。
受注致しますわ」

「助かる」


マスターはふっと笑みを零したが、それに対して暁の旅立ちのメンバーは反対し始めた。


「おい、待て!
黒炎竜は流石に……」

「そうです!
アメリアさんは強いかもしれませんが流石に……」

「これはSランク以上推奨だろう!」


確かに黒炎竜はSランク以上推奨だ。
だとしたら私が受けるのに何の問題も無いと思うのだが。


「何か問題がある?」

「あるに決まってんだろうが!
アメリアはまだ…!」

「アメリアはだけど…何か問題は?」


マスターはわざわざSランクという部分を強調して問いただす。
そんなマスターの言葉で暁の旅立ちのメンバーは言葉を失った。


「なっ…」

「えっ…?」

「嘘でしょ…」

「Sランク……?」


どうやら私がSランクとは思っていなかったらしい。
それも無理はないが……。
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