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しおりを挟む私はシンと静まり返った広場で剣を片手にラン先輩と向き合う。
そしてラン先輩も片手に槍を持ち、私を見据える。
魔法はありで相手に重傷を負わせない事を条件とした試合が始まる。
「…………始め」
そんな先輩の声で私と先輩は動き出す。
踏み出しは先輩の方が早く、突き出された槍が私の横を掠める。
突き出された槍を寸前のところで避けた私は素早くラン先輩の懐へと入り込むものの、すぐに対応されてしまう。
この試合、リーチが長い分ラン先輩の方が有利であるようにも見えるが私にも分があった。
「1年とは思えないな!」
「お母様に色々と仕込まれてきましたから!」
私とラン先輩は剣と槍をそれぞれ突き出しながら、笑みを浮かべ会話をする。
『オリジナル魔法-銀-槍-発動』
私はこの戦いで初となる魔法を使用した。
それも銀魔法を。
光に包まれた私の剣を見て、ラン先輩も自分自身と槍に強化を施す。
そして、光が晴れると私の剣の形状は槍へと変化していた。
「なっ…!?」
「いかせていただきます」
驚く先輩に対して宣言をすると私は先程よりも早く、駆け抜けた。
さすがは上級生という事もありラン先輩は咄嗟に私へと槍を突き出した。
だが、私はラン先輩の槍を受け流しその手元へと槍を突き出しそのまま薙ぎ払う。
そして一気に詰めてラン先輩の首、スレスレに槍の切先を突き出すと魔法を解除し剣の状態へと戻してから下ろした。
「ありがとうございました」
「おう!
だが、まさか負けちまうとはなぁ……」
先輩の苦笑交じりの言葉に私も苦笑を漏らす。
理由は単純だ。
私が上手く動けなかったから。
もっと上手く動けていればもっと簡単に……とそう思ったのだ。
「アメリア!」
「レオニード様……?」
「まだ本調子じゃないくせにそう動くな…。
あまり過激な運動はするなと言われていただろう」
それは、リアンとの契約後に医者に見てもらった時の事だろう。
だが、私は元気なのだ。
それなのに病人扱いされ剣を握るのも少しの時間しか許されないなんて…そんなのはあんまりだろう。
「……ですが、私は早く感覚を取り戻さなければ…」
「それで倒れたらどうする。
また1年も眠っているつもりか?」
私はその言葉に息を詰まらせる。
1年眠ったせいでこんなにも体が上手く動かなくなるのだ。
感覚を取り戻すだけで苦労しているというのに……また1からやり直しは嫌だ。
「そのようなつもりはありませんわ。
それに、体調管理くらいは自分で出来ます」
私はそう告げるとラン先輩にお礼を言ってからレオニード様に背を向け、自室に戻る。
「む?
主よ、どうかしたのか?
顔色が優れぬようだが…」
「エデン……何でもありませんわ」
「何でもないわけがなかろうに……。
主よ、一旦休め」
エデンは私の髪をすくうとそのまま『休眠』の魔法を唱えた。
私は魔法によりそのまま眠りについた。
ーエデンー
この小さき主が戻って来た時、その顔色は何故か先程よりも顔色が悪くなっていた。
我は原因を問いただそうとするものの、この小さき主は誤魔化そうとした。
そのため休眠の魔法をかけ眠らせると我は小さき主を抱えベットの上へと寝かせた。
「ふっ……我も随分と手間のかかる主を持ったものよ」
我は小さき主の寝顔を眺めながら呟く。
小さき主はすやすやと穏やかに眠っている。
「ディールの子孫よ…。
我は汝を守り抜こう」
ディールと交わした古き誓いを果たすためにも。
「アメリア、いるか?」
また人の子が小さき主を訪ねてきたようだ。
我は煩わしく思いながらも小さき主を起こす訳にもいかず仕方なく出てやると二人の人の子がいた。
「何用だ。
主の代わりに我が言伝を預かろうぞ」
「主……?
ここには使用人の連れ込みは禁止されてんだけどな……」
その人の子は我を使用人扱いし、ここを立ち去るように言った。
「我を汝らと一緒にするな。
失せろ、人の子よ」
我が少し魔力を漏らすと二人の人の子はビクッと体を震わせた。
だが、そこで我は気付く。
片方から小さき主の匂いがすることに。
「…ふむ、仕方あるまい」
我は銀竜に主を頼むと部屋から出て廊下で話す事にした。
部屋てま話すと主が起きるやもしれぬからだ。
「人の子よ、主は今、我が眠らせたところなのだ。
主に何か用があるのであれば我が伝えよう」
「アメリアを飯に誘いに来たんだが…」
「…あと30分だ。
せめてその程度は休ませてやりたい」
「あー、じゃあ待つ事にする」
主の客人だ。
外で待たせると主に怒られるであろうと部屋の中にいれ、お茶を出す。
お茶の淹れ方はディールに教わったものではあるが香りも出ているし特に問題ないであろう。
「……ん……。
エデ、ン……?」
「目覚めたか、主よ」
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