竜使いの伯爵令嬢は婚約破棄して冒険者として暮らしたい

紗砂

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そして、強化合宿当日。
私達戦闘科の生徒は早朝から走っていた。
目的の場所へ向かって。
40Kmの長い道のりを。

それは、集合した時の事だ。
教官の挨拶、紹介が終了すると教官のうちの1人が高らかに叫んだのだ。


「よし、まずは移動からだ!
いいか!
もう既に強化合宿は始まっている!
さぁ、行け!
目的地は『霊山』だ!
仕方ない、魔法もありにしてやる!
3時間後までにこれないグループにはペナルティだ!
分かったら行け!」


そう言われ、私達はただ、走るしかなかった。
ただ、思うのだ。
魔法を使ったところで…全速力で行かなければ絶対に遅れるだろうと。
そして魔法を使いすぎて魔力切れを起こしてもどうせペナルティがあるだろうと。

まぁ、それは私達で無かったら、の話だ。


「エデン、リアン、お願い致しますわ」

「うむ、任せよ」

『ギャッ!』


2人は了承の意を示すと私達のグループは街を出て皆が走っているところか外れると早速エデンとリアンに頼み込む。
するとすぐにリアンとエデンは元の姿へと戻り乗れと言った風にしゃがみこむ。


そんな2人に私達は乗り込むとすぐに飛び立つ。


「いつもは走ってたんだがなぁ……」

「なんか拍子抜けですね……」

「教官もこんな手を使うとは思ってないだろうな……」

「…………普通は、できない……」


それぞれ苦笑をもらしていることに私は気付かずエデンと話込んでいた。


「エデン、お願いですから着地の際はゆっくりでお願いしますわ」


それは最早話ではなくお願いであったが……。


『主らよ。
そろそろだ。
準備はよいか?』


エデンはすぐに着地の体制に入る。
すると、段々と地面が近付いてきて上空の冷たい風から解放される。



そして、ようやく着地しエデンとリアンが姿を変えると私達グループは森の中にあるはずのテントの密集地へと向かっていく。
……そう。
ここには寮なんてものはないのだ。
つまりは野宿、テントだ。


「そろそろつくはずだぜ!」


先頭を歩くラン先輩の声が聞こえ、私はホッとする。
さすがにこんなに木や草が密集している場所にいると本当にテントがあるのかと心配になってくるのだ。

そして、ようやくテントに着くと先輩達は奥にある、大きなテントの中へ入る。


「俺らも行くぞ」


ロイド先輩はやはり面倒見がいい先輩らしく私達の背を押してくれる。
それに従いテントの中にはいるのだが…その中は意外にも毛布などが揃えられていた。
調理器具は私が作れるので問題はない。
全て銀製だが。


「テントは来たグループから好きなところに入るようになっているんだ。
毛布やら必要な物があるのはこっち側の大テントだけだからな」

「ロイ、これかけてきてくれる?」

「仕方ないな……。
トール、それよこせよ」

「ありがとう、ロイ」


トール先輩は鞄からなにか札の様なものを取り出しロイド先輩に渡す。
それを受け取ったロイド先輩は面倒くさそうにしつつも1度テントから出るとすぐに戻ってきた。
多分だがあの札はこのグループの印のようなものだろう。


「さて……教官はまだ来てねぇと思うが…一応赤のテントに行っておくか?」

「…………あぁ」

「んじゃ、行くか」


まずは到着の報告ということで赤いテントに行くらしい。
赤いテントは教官で緑は冒険者、青は生徒となっている。


「失礼します、ライ・ラナスグループですが到着致しましたのでご報告を致します」


どうやら教官がいたようでラン先輩は言葉使いをガラリと変えた。


「……手段は何を使った?
50Kmだぞ?」

「それはアメリアから。
アメリア、説明を…」

「はい」


私は巻き込まれた様な気がしたがすぐに考えを切り替えた。
そして、一礼をしてから説明を始めた。


「アメリアと申します。
手段ですが…エデンとリアンに協力を求めさせていただきました」

「グループ内以外での協力は禁止されている筈だ」


教官の声は固く、怒りの含んだ声となっていた。
だが、それに動揺する私ではない。
何より教官よりも怒ったお母様の方が余程怖い。


「それは承知しております。
ですが…契約獣の協力を求めてはいけないとは言われておりませんわ。
契約者は2人で1つ…そう言われております。
ですから、私の力を使用しただけですわ」


だからだろう。
私は冷静を保っていられた。
そして、教官の視線は私の頭に向かう。
……正確に言えば、リアンに、だろうが。


「……その頭に乗せているのは」

「リアン……私の契約獣ですわ。
外でそれを証明致しますわ」


私達は教官を連れ、充分に開けている場所へと来るとリアンとエデンにお願いした。


「エデン、リアン、申し訳ありませんが…」

「良い。
分かっておる。
主の命であれば我は引き受けようぞ。
それは、そこにおる銀竜とて同じことだろうに」

『ギャッ!
グルグルッ!』


何故かリアンが任せろと言っているような気がした。
そんな2人の優しさに私は口元を緩めるとエデンは私の頭を撫でてから元の姿へと戻る。
それに倣ってリアンも元の姿に戻ると私に頭をスリスリと寄せてくる。

…リアンはいつもに増して甘えたい様だ。
そんなリアンの様子に私も思わずリアンを撫でるとエデンがピクリと眉を動かした。


『主よ。
銀竜ばかりか?
我とて主を……』


などと言い出したエデンの頭も優しく撫でてやると嬉しそうに目を細めたのだった。


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