竜使いの伯爵令嬢は婚約破棄して冒険者として暮らしたい

紗砂

文字の大きさ
35 / 69

34

しおりを挟む

そして、強化合宿当日。
私達戦闘科の生徒は早朝から走っていた。
目的の場所へ向かって。
40Kmの長い道のりを。

それは、集合した時の事だ。
教官の挨拶、紹介が終了すると教官のうちの1人が高らかに叫んだのだ。


「よし、まずは移動からだ!
いいか!
もう既に強化合宿は始まっている!
さぁ、行け!
目的地は『霊山』だ!
仕方ない、魔法もありにしてやる!
3時間後までにこれないグループにはペナルティだ!
分かったら行け!」


そう言われ、私達はただ、走るしかなかった。
ただ、思うのだ。
魔法を使ったところで…全速力で行かなければ絶対に遅れるだろうと。
そして魔法を使いすぎて魔力切れを起こしてもどうせペナルティがあるだろうと。

まぁ、それは私達で無かったら、の話だ。


「エデン、リアン、お願い致しますわ」

「うむ、任せよ」

『ギャッ!』


2人は了承の意を示すと私達のグループは街を出て皆が走っているところか外れると早速エデンとリアンに頼み込む。
するとすぐにリアンとエデンは元の姿へと戻り乗れと言った風にしゃがみこむ。


そんな2人に私達は乗り込むとすぐに飛び立つ。


「いつもは走ってたんだがなぁ……」

「なんか拍子抜けですね……」

「教官もこんな手を使うとは思ってないだろうな……」

「…………普通は、できない……」


それぞれ苦笑をもらしていることに私は気付かずエデンと話込んでいた。


「エデン、お願いですから着地の際はゆっくりでお願いしますわ」


それは最早話ではなくお願いであったが……。


『主らよ。
そろそろだ。
準備はよいか?』


エデンはすぐに着地の体制に入る。
すると、段々と地面が近付いてきて上空の冷たい風から解放される。



そして、ようやく着地しエデンとリアンが姿を変えると私達グループは森の中にあるはずのテントの密集地へと向かっていく。
……そう。
ここには寮なんてものはないのだ。
つまりは野宿、テントだ。


「そろそろつくはずだぜ!」


先頭を歩くラン先輩の声が聞こえ、私はホッとする。
さすがにこんなに木や草が密集している場所にいると本当にテントがあるのかと心配になってくるのだ。

そして、ようやくテントに着くと先輩達は奥にある、大きなテントの中へ入る。


「俺らも行くぞ」


ロイド先輩はやはり面倒見がいい先輩らしく私達の背を押してくれる。
それに従いテントの中にはいるのだが…その中は意外にも毛布などが揃えられていた。
調理器具は私が作れるので問題はない。
全て銀製だが。


「テントは来たグループから好きなところに入るようになっているんだ。
毛布やら必要な物があるのはこっち側の大テントだけだからな」

「ロイ、これかけてきてくれる?」

「仕方ないな……。
トール、それよこせよ」

「ありがとう、ロイ」


トール先輩は鞄からなにか札の様なものを取り出しロイド先輩に渡す。
それを受け取ったロイド先輩は面倒くさそうにしつつも1度テントから出るとすぐに戻ってきた。
多分だがあの札はこのグループの印のようなものだろう。


「さて……教官はまだ来てねぇと思うが…一応赤のテントに行っておくか?」

「…………あぁ」

「んじゃ、行くか」


まずは到着の報告ということで赤いテントに行くらしい。
赤いテントは教官で緑は冒険者、青は生徒となっている。


「失礼します、ライ・ラナスグループですが到着致しましたのでご報告を致します」


どうやら教官がいたようでラン先輩は言葉使いをガラリと変えた。


「……手段は何を使った?
50Kmだぞ?」

「それはアメリアから。
アメリア、説明を…」

「はい」


私は巻き込まれた様な気がしたがすぐに考えを切り替えた。
そして、一礼をしてから説明を始めた。


「アメリアと申します。
手段ですが…エデンとリアンに協力を求めさせていただきました」

「グループ内以外での協力は禁止されている筈だ」


教官の声は固く、怒りの含んだ声となっていた。
だが、それに動揺する私ではない。
何より教官よりも怒ったお母様の方が余程怖い。


「それは承知しております。
ですが…契約獣の協力を求めてはいけないとは言われておりませんわ。
契約者は2人で1つ…そう言われております。
ですから、私の力を使用しただけですわ」


だからだろう。
私は冷静を保っていられた。
そして、教官の視線は私の頭に向かう。
……正確に言えば、リアンに、だろうが。


「……その頭に乗せているのは」

「リアン……私の契約獣ですわ。
外でそれを証明致しますわ」


私達は教官を連れ、充分に開けている場所へと来るとリアンとエデンにお願いした。


「エデン、リアン、申し訳ありませんが…」

「良い。
分かっておる。
主の命であれば我は引き受けようぞ。
それは、そこにおる銀竜とて同じことだろうに」

『ギャッ!
グルグルッ!』


何故かリアンが任せろと言っているような気がした。
そんな2人の優しさに私は口元を緩めるとエデンは私の頭を撫でてから元の姿へと戻る。
それに倣ってリアンも元の姿に戻ると私に頭をスリスリと寄せてくる。

…リアンはいつもに増して甘えたい様だ。
そんなリアンの様子に私も思わずリアンを撫でるとエデンがピクリと眉を動かした。


『主よ。
銀竜ばかりか?
我とて主を……』


などと言い出したエデンの頭も優しく撫でてやると嬉しそうに目を細めたのだった。


しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」 仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。

王太子に理不尽に婚約破棄されたので辺境を改革したら、王都に戻ってきてくれと言われました

水上
恋愛
【全18話完結】 「君は中身まで腐っている」と婚約破棄されたエリアナ。 そんな彼女は成り行きで辺境へ嫁ぐことに。 自身の知識と技術で辺境を改革するエリアナ。 そんな彼女を、白い結婚のはずなのに「膝枕は合理的だ」と甘やかす夫。 一方、エリアナを追放した王都では、彼女の不在の影響が出始めて……。

「不吉な黒」と捨てられた令嬢、漆黒の竜を「痛いの飛んでいけー!」で完治させてしまう

ムラサメ
恋愛
​漆黒の髪と瞳。ただそれだけの理由で「不吉なゴミ」と虐げられてきた公爵令嬢ミア。 死の森に捨てられた彼女が出会ったのは、呪いに侵され、最期を待つ最強の黒竜と、その相棒である隣国の竜騎士ゼノだった。 しかし、ミアが無邪気に放った「おまじない」は、伝説の浄化魔法となって世界を塗り替える。 向こう見ずな天才騎士に拾われたミアは、隣国で「女神」として崇められ、徹底的に甘やかされることに。 一方、浄化の源を失った王国は、みるみるうちに泥沼へと沈んでいき……?

前世で追放された王女は、腹黒幼馴染王子から逃げられない

ria_alphapolis
恋愛
前世、王宮を追放された王女エリシアは、 幼馴染である王太子ルシアンに見捨てられた―― そう思ったまま、静かに命を落とした。 そして目を覚ますと、なぜか追放される前の日。 人生、まさかの二周目である。 「今度こそ関わらない。目立たず、静かに生きる」 そう決意したはずなのに、前世では冷酷無比だった幼馴染王子の様子がおかしい。 距離、近い。 護衛、多い。 視線、重い。 挙げ句の果てに告げられたのは、彼との政略結婚。 しかもそれが――彼自身の手で仕組まれたものだと知ってしまう。 どうやらこの幼馴染王子、 前世で何かを盛大に後悔したらしく、 二度目の人生では王女を逃がす気が一切ない。 「愛されていなかった」と思い込む王女と、 「二度と手放さない」と決めた腹黒王子の、 少し物騒で、わりと甘い執着政略結婚ラブストーリー。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。

秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。 「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」 第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。 着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。 「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。 行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。 「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」 「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」 氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。 一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。 慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。 しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。 「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」 これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

偽りの婚約者だった公爵令嬢、婚約破棄されてから本物の溺愛をされるまで

nacat
恋愛
平民出身ながら伯爵家に養子に入ったリリアーナは、王太子の婚約者“代役”として選ばれた。 王家の都合で結ばれたその関係に、彼女は決して本気にならないはずだった。 だが、王太子が本命の公爵令嬢を選んで婚約破棄を告げた瞬間、リリアーナは静かに微笑んだ――。 「お幸せに。でも、“代役”の私を侮ったこと、きっと後悔させてあげますわ」 婚約破棄後、彼女は外交の任務で隣国へ。 そこで出会った冷徹な将軍との出会いが、すべてを変えていく。 “ざまぁ”と“溺愛”がスパイラルのように絡み合う、痛快で甘くて尊い恋愛劇。 ///////

処理中です...