竜使いの伯爵令嬢は婚約破棄して冒険者として暮らしたい

紗砂

文字の大きさ
47 / 69

46

しおりを挟む

イオとの仮契約を済ませた私は皆のもとへ戻り謝罪をしてから訓練に戻ろうとしたが、やはり…というべきか教官に捕まってしまった。
そしてみっちりとイオの件で絞られてから本来のメニューの倍をやらされた。

まぁ、お母様のメニューよりも楽ではあったが。


「アメリア!
何かやる事はないか!」


ただ、イオが先程から自分のやる事を訪ねてきてうるさかった。
しかも、キラキラとした目で見られるので何か頼まなければいけないような気がして辛い。
しかも、1度大丈夫だと言ったら酷く残念そうな顔をするのだ。
はっきり言ってやりにくい。

とはいえ、まさか本人の前で言えるはずもなく私は素振りをしながら考えるという器用な事をやっていた。


「そう、ですわね。
イオには簡単すぎるかもしれませんが…魚を30程捕まえてくださいますか?
とった魚は夕食に出しますので、今はまだ生かしたままでお願いしますわ」 

「あぁ!
任せろ!」


そして、イオがいなくなったことを確認すると私は大きな溜息を吐いた。


「…主よ、済まぬな。
あやつに悪気は無いのだが……」

「えぇ、分かっていますわ。
まぁ、だからこそタチが悪いのですが…」


そう。
イオは単純な善意でやっているだけなのだ。
そこに悪意があるはずもなく……。
だからこそ余計にタチが悪いものであった。
しかも、頼めば目を輝かせて行くのだから断るにも断れない。

そんな状況を思い浮かべ、私は再び盛大な溜息を吐いた。


「…ふむ、いっその事、時間を決めそれまでこの辺に魔物が近ずかせぬように、と頼めばどうだ?」

「その案、採用させていただきますわ」


エデンの考えた作戦で行く事にする。
時間は……私が良いと言うまでにしておけば問題ないだろう。
やっと片付いたイオの問題に私は解放感を感じたがすぐに剣の事を考え始めた。


もっと速く、もっと複雑に、もっと踏み込みを深く、もっと腰を落として……。
様々な直すべき部分が浮かび上がり、それを一つ一つ、順に消していく。
目指すはお母様の隣。

お母様のように鋭く、風のような一撃を。
お母様のように美しく、無駄のない動きを。
お母様のように強く、気高くあることを。

自らの師であり、決して低くはない壁に向かって私は一心不乱に剣を振るう。
ただ強くなりたい一心で。

何も失わなくとも良い程の強さを求めて。


気付けば周りの音は消え去り、ただ剣が風を切る音のみが響き渡る。
その音を聞く度に私は己の欠点を見つけ、直すという作業にも似た訓練を何百、何千と重ねていく。

そして、何時間にも続いたように思えた舞を思わせる動きを止め、見つめるのは既に落ちかけている夕暮れだった。

私は乱れた息を整えると剣を片付け、イオに礼を告げてからレオ達のもとへと戻っていった。

しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

【完結】嫌われ公女が継母になった結果

三矢さくら
恋愛
王国で権勢を誇る大公家の次女アデールは、母である女大公から嫌われて育った。いつか温かい家族を持つことを夢見るアデールに母が命じたのは、悪名高い辺地の子爵家への政略結婚。 わずかな希望を胸に、華やかな王都を後に北の辺境へと向かうアデールを待っていたのは、戦乱と過去の愛憎に囚われ、すれ違いを重ねる冷徹な夫と心を閉ざした継子だった。

夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました

香木陽灯
恋愛
 伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。  これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。  実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。 「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」 「自由……」  もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。  ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。  再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。  ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。  一方の元夫は、財政難に陥っていた。 「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」  元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。 「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」 ※ふんわり設定です

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

裏庭係の私、いつの間にか偉い人に気に入られていたようです

ルーシャオ
恋愛
宮廷メイドのエイダは、先輩メイドに頼まれ王城裏庭を掃除した——のだが、それが悪かった。「一体全体何をしているのだ! お前はクビだ!」「すみません、すみません!」なんと貴重な薬草や香木があることを知らず、草むしりや剪定をしてしまったのだ。そこへ、薬師のデ・ヴァレスの取りなしのおかげで何とか「裏庭の管理人」として首が繋がった。そこからエイダは学び始め、薬草の知識を増やしていく。その真面目さを買われて、薬師のデ・ヴァレスを通じてリュドミラ王太后に面会することに。そして、お見合いを勧められるのである。一方で、エイダを嵌めた先輩メイドたちは——?

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...