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ついに再会のようです
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そして、それから5日後。
私達は王宮にいた。
「お姉ちゃん……」
「大丈夫、私がいるから。
エリー、前を向いて。
教わったことを思い出してやれば大丈夫。
あとは私がカバーするから」
不安がるエリーに優しく声をかける。
『つまんないなぁ。
ルーシャ、僕と遊んではくれないんだもん!』
頭の中に響き渡るのは子供の癇癪のようなうるさい声。
三日前からこの悪魔は遊んで遊んでとうるさく騒いでいる。
あぁ、本当面倒くさい。
『ちょっと!
さすがの僕も傷つくんだからね!?』
「ルーナ、エリアス様、行きましょうか」
「は、はい」
「えぇ、分かりましたわ」
私はすぐにスイッチをいれる。
元貴族として、そしてエリーの姉として失態は出来ないと糸を張り詰める。
私は警戒心を最大限に上げる。
私は巫女とはいえ平民なのだ。
エリーに限っては巫女という盾もない。
だからこそ、失敗するわけにはいかない。
「エリー、何があっても口を開かないようにね」
「は、はい、お姉様」
緊張している様子のエリーの頭を優しく撫でる。
そして国王陛下が来ると、私達は深く頭を下げる。
「頭を上げよ」
その威圧感の溢れる声を聞き私は頭を上げる。
「……名は?」
「ルシャーナと申します。
こちらは妹のエリアスです」
エリーは私の紹介に合わせ頭を下げる。
私の後ろにいるためその姿は見えないが大丈夫だろうか。
そのせいか私の心臓はバクバクとうるさいくらいだ。
『あはっ!
ルーシャ、ルーシャ!
遊ぼ?』
……何故だろうか?
急に緊張よりも怒りが湧いてきた。
あぁ、きっとこの声のせいだ。
この、空気を読まないこの声のせいだ。
「そなたが巫女、か……。
巫女よ、お前は何を望む?」
「私が望むは、家族の日々の平穏を。
妹の無事と、その安全を。
大切な人の未来を、望みます」
私のその答えに満足したのか国王は笑みを浮かべた。
「ふっ…。
面白い。
気に入っ」
「はぁ?
僕のルーシャに何しようとしてんの?
ふふっ……。
僕のルーシャに手を出そうとするならさぁ……殺すよ?」
ふふっ。
ふふふっ……。
「リ・オ?
言いませんでしたか?
私の許可なくやらないと、約束、しましたよね?
それを、それをたった5日で破るだなんて……。
後でじっくり話す必要があるようですね?
リオ」
「ひっ……。
ご、ごごごめんなさいぃぃぃ!
で、でも、でもね!
ぼ、僕だってさ、耐えられなかったというかなんというか……。
ルーシャは僕の契約者なんだ。
そのルーシャに手を出されるなんて……」
怯えるリオに対し私は笑顔で問い詰める。
「で?」
私のたった一言でリオは正座した。
「ご、ごめんなさい……。
ぼ、僕ね、ルーシャに手を出す奴なんて殺しちゃえばいいと……」
「リオ?
約束を破った事について弁明はないかしら?」
そう問い詰めるとリオはヒッと息を詰まらせた。
「……ごめんなさい」
結局リオは私に対して土下座を決め込んだのだった。
「……リオ、詳しい事は後で話しましょう。
一旦戻ってもらえる?
何があったとしても、絶対に出てこないようにしてください」
「は、はいぃぃぃ!!」
本当、あれで七つの大罪(笑)の一員なんだから本当に笑えてくるよね。
と、そんな事言ってる場合じゃないな。
「……先程の者はなんだ?」
「私の契約悪魔ですわ。
この場であのような失態を起こしてしまった事、私の責任です。
申し訳ありません」
私の背後でエリーが悔しそうに唇を噛み締めたのが分かる。
だが、私にはこれしか出来ない。
カッコ悪いお姉ちゃんでごめん。
そう、心の中で謝る。
これも全てリオのせいだと言いたいがそうもいかないだろう。
「……あの悪魔、リオと言ったか?
私の記憶の中にはそのような名の悪魔などいない」
不味い……。
悪魔の名を覚えていたなんて……!
どうする、新しい悪魔と言っておく?
いや、その場合だとリオの力の説明が出来ない。
かと言って知らないのでは、なんて言ったら立場が尚悪くなる。
どうする?
本当の事を言う?
いや、駄目だ。
この場では、言えない。
ここにいる者が信用できるとは思えない。
『ルーシャ、アールリオスと言っておけばいいよ。
僕が活動しやすいように中級から上級くらいの悪魔として名乗ってたんだ』
リオ、ありがとう。
使わせてもらうよ。
「リオは私がつけた愛称なのです。
アールリオスと名乗っておりました」
「アールリオス……?
それは、偽名では無かったか?」
リオ、バレてるんだけど!?
『あ、あれ?
おかしいなぁ?』
「も、申し訳ありません。
10日前に契約を交わしたばかりなので……」
これでどうにかなればいいのだが。
「ふっ……お前と違い面白いな。
なぁ、ベルゼブブ?」
『俺を呼ぶなっての!
テメェのせいだぞからな』
うわぁ……。
蝿の王であり、暴食の悪魔であるベルゼブブか。
『あぁ、あいつがいるのか。
……ごめん、ルーシャ。
バレてるっぽいや』
そうらしいね。
私は深くため息をつき、その後、ハッとしたように国王を見上げた。
「ルシャーナ、エリアス、貴殿らも素で話して構わぬ。
そして、貴殿の悪魔を呼び出してはくれぬか?」
私は少しだけ考えた後、その言葉に従う事にした。
……あの蝿は蝿で可愛いよね?
特にあの目が。
「……なら、お言葉に甘えて。
それと、リオ実体化してもらっていい?」
「勿論さ!
それと、ルーシャの感性は僕には分かんないよ……。
あんな奴が可愛いとかさ……」
えー?
可愛くない?
特にあの目!!
「いや、分かんないよ!?
そんな人、ルーシャ以外に居ないと思うよ!?」
「えー、よく見たら可愛いと思うんだ」
何で分かってくれないかな?
可愛いのに……。
「もういいし!
ねぇルーシャ、遊ぼうよぉ!
僕さ、もう限界!!
こんな奴と顔を合わせただけでも嫌なのにぃ……。
それに、僕はルーシャと遊びたいの!」
「後にして」
ウザイなぁ……。
しかも五月蝿い……。
「……ルーシャのケチィ!!」
「五月蝿い」
あ、やばっ。
つい口に出しちゃった。
「ルーシャのバカァァァァ!!」
「ま、いっか」
「おい、サタン。
そういやお前、契約者なんてめんどくさいもん作んねぇとか言って無かったか?」
私がリオを見るとリオはビクゥッと震わせていた。
それを見てつい、私は笑みを零す。
「へぇ……?
そうなんだ?
面倒くさい契約者なんて思ってたんだ……」
私は後ろを向いて泣くふりをする。
「お姉ちゃん……」
呆れる様子のエリーに片目を瞑りシッと言うように手を口元におく。
「なっ!?
ち、違う!
違うんだ!
ルーシャ、違うからね!?
僕はルーシャの事、面倒くさいなんて思ってないよ!?
ベルゼブブも何でそんな事いうのさ!!
あ、あのあのあの、ルーシャ、だから、泣かないでよぉ……」
あ……やりすぎちゃった?
なんて思っているとベルゼブブと目が合った。
ベルゼブブは目が合うと私に近付いてきた。
2人で頷きあうと、
「「イェーイ!」」
と言ってハイタッチを交わした。
するとようやくリオも気付いたのか顔を赤くした。
「うわぁぁぁ!
酷いよぉ!」
「リオが遊んで欲しいって言ったから遊んであげたのに……」
「……お姉ちゃん、そんな性格だっけ?」
あ……。
カッコイイお姉ちゃん像がぁ!!
「……余がいること、忘れられてないか?」
「「「「あ……」」」」
やばっ。
忘れてた……。
「おい!?
ベルゼブブ、お前もか!?
他の者ならまだ分かるが…契約しているお前が忘れるか!」
「……父上、お呼びでしょうか?」
そう言って入ってきたのは国王と同じ白銀の髪に、王妃と同じ金の瞳の男の子だった。
雰囲気からして王子だろう。
「……お嬢、様?」
「っ……!?」
彼のその小さな呟きは私とエリーにしか届かなかっただろう。
だが、それは私にとって大きな意味のある言葉だった。
彼は美しい白銀の髪をたなびかせ、私の前に膝をついた。
「ルーシャ様、私と結婚し……。
いえ、結婚を前提とし、お付き合いしてくださいませんか?」
馬鹿……。
馬鹿ケヴィン。
遅いよ……。
ずっと、ずっと待ってたのに……。
何でそう、いつも遅いの……?
「……私は、私はあなたのしたことを忘れた覚えはありません」
私は、平民でケヴィンは王族。
無理だよ。
昔なら、まだなんとか出来たんだよ?
なのに、何でそんな遅いの?
私の心情を知らずに彼の瞳は悲しげに揺れる。
「……私は、あの時からいえ、それよりも前からあなたの事が、ルーシャ様の事だけを愛しておりました。
ですが、私にとってあなたは高嶺の花。
あの方法しか思い浮かばなかったのです。
あなたは、私と共に逃げて欲しいと伝えても断るでしょうから。
酷い人です……」
ケヴィン、あなたは……。
何故?
何故あなたはここまでするの?
分かっているでしょうに。
私があなたの思いに答えられない事くらい。
なのに、何故……。
「酷い人で結構です」
「……2人は知り合いだったのか?」
……何でこう、面倒くさい事ばかりあるかな?
まぁケヴィンに会えて嬉しかったのは確かだけどさ。
「はい、父上。
ルーシャが、巫女様なのですよね?」
「あぁ」
「でしたら、問題ありませんよね?
私とルーシャの婚約を認めて欲しいのです」
……いや、無理でしょ?
だって、巫女とはいえ平民だよ?
無理だって……。
「いいだろう」
「ふぇっ!?」
「良かった……」
認められた?
しかも、こんな簡単に?
……はぁぁぁぁ!?
「……お姉ちゃんは渡さない!」
「ルーシャは僕のだ!」
えっと……。
エリー、リオ?
私は答えてないからね?
勝手に決めてるけど、私、認めないからね?
「ルーシャ様は私のものです。
ルーシャ様のために私が何年待ったと……」
え……何それ。
初耳なんだけど!!
というか、ケヴィン、私を待っててくれたんだ……。
嬉しいなぁ……。
……ハッ!!
違うし!
私は認めない、認めないんだ!!
ケヴィンのお嫁さんとか惹かれる……けどならないし!
「お姉ちゃんは私のお姉ちゃんなの!
あなたには勿体無さすぎる!」
「ルーシャは僕の契約者なんだ!
だから誰にも渡さない!!」
「ルーシャ様は私のルーシャ様です。
おじょ……ルーシャ様と共にいるのは私です」
子供に見えてきた……。
やばい、可愛い。
「エリー、リオ、おいで。
エリー、私は何処にも行かないから。
だからそう身構えないで?
リオも。
どうせ契約で離れられないんだからそう怒らないの」
「お姉ちゃん、大好き!」
「ルーシャ!」
うん、やっぱり可愛い。
手のかかる妹と弟みたいだ。
そしてケヴィンは小さく舌打ちした。
それについては追求しないでおこう。
「……陛下、これからの王宮は騒がしくなりそうですね」
「ふっ、そうだな。
息子の恋は実らないようだが、な」
そう、楽しそうに笑ったのを私達は知らなかった。
私達は王宮にいた。
「お姉ちゃん……」
「大丈夫、私がいるから。
エリー、前を向いて。
教わったことを思い出してやれば大丈夫。
あとは私がカバーするから」
不安がるエリーに優しく声をかける。
『つまんないなぁ。
ルーシャ、僕と遊んではくれないんだもん!』
頭の中に響き渡るのは子供の癇癪のようなうるさい声。
三日前からこの悪魔は遊んで遊んでとうるさく騒いでいる。
あぁ、本当面倒くさい。
『ちょっと!
さすがの僕も傷つくんだからね!?』
「ルーナ、エリアス様、行きましょうか」
「は、はい」
「えぇ、分かりましたわ」
私はすぐにスイッチをいれる。
元貴族として、そしてエリーの姉として失態は出来ないと糸を張り詰める。
私は警戒心を最大限に上げる。
私は巫女とはいえ平民なのだ。
エリーに限っては巫女という盾もない。
だからこそ、失敗するわけにはいかない。
「エリー、何があっても口を開かないようにね」
「は、はい、お姉様」
緊張している様子のエリーの頭を優しく撫でる。
そして国王陛下が来ると、私達は深く頭を下げる。
「頭を上げよ」
その威圧感の溢れる声を聞き私は頭を上げる。
「……名は?」
「ルシャーナと申します。
こちらは妹のエリアスです」
エリーは私の紹介に合わせ頭を下げる。
私の後ろにいるためその姿は見えないが大丈夫だろうか。
そのせいか私の心臓はバクバクとうるさいくらいだ。
『あはっ!
ルーシャ、ルーシャ!
遊ぼ?』
……何故だろうか?
急に緊張よりも怒りが湧いてきた。
あぁ、きっとこの声のせいだ。
この、空気を読まないこの声のせいだ。
「そなたが巫女、か……。
巫女よ、お前は何を望む?」
「私が望むは、家族の日々の平穏を。
妹の無事と、その安全を。
大切な人の未来を、望みます」
私のその答えに満足したのか国王は笑みを浮かべた。
「ふっ…。
面白い。
気に入っ」
「はぁ?
僕のルーシャに何しようとしてんの?
ふふっ……。
僕のルーシャに手を出そうとするならさぁ……殺すよ?」
ふふっ。
ふふふっ……。
「リ・オ?
言いませんでしたか?
私の許可なくやらないと、約束、しましたよね?
それを、それをたった5日で破るだなんて……。
後でじっくり話す必要があるようですね?
リオ」
「ひっ……。
ご、ごごごめんなさいぃぃぃ!
で、でも、でもね!
ぼ、僕だってさ、耐えられなかったというかなんというか……。
ルーシャは僕の契約者なんだ。
そのルーシャに手を出されるなんて……」
怯えるリオに対し私は笑顔で問い詰める。
「で?」
私のたった一言でリオは正座した。
「ご、ごめんなさい……。
ぼ、僕ね、ルーシャに手を出す奴なんて殺しちゃえばいいと……」
「リオ?
約束を破った事について弁明はないかしら?」
そう問い詰めるとリオはヒッと息を詰まらせた。
「……ごめんなさい」
結局リオは私に対して土下座を決め込んだのだった。
「……リオ、詳しい事は後で話しましょう。
一旦戻ってもらえる?
何があったとしても、絶対に出てこないようにしてください」
「は、はいぃぃぃ!!」
本当、あれで七つの大罪(笑)の一員なんだから本当に笑えてくるよね。
と、そんな事言ってる場合じゃないな。
「……先程の者はなんだ?」
「私の契約悪魔ですわ。
この場であのような失態を起こしてしまった事、私の責任です。
申し訳ありません」
私の背後でエリーが悔しそうに唇を噛み締めたのが分かる。
だが、私にはこれしか出来ない。
カッコ悪いお姉ちゃんでごめん。
そう、心の中で謝る。
これも全てリオのせいだと言いたいがそうもいかないだろう。
「……あの悪魔、リオと言ったか?
私の記憶の中にはそのような名の悪魔などいない」
不味い……。
悪魔の名を覚えていたなんて……!
どうする、新しい悪魔と言っておく?
いや、その場合だとリオの力の説明が出来ない。
かと言って知らないのでは、なんて言ったら立場が尚悪くなる。
どうする?
本当の事を言う?
いや、駄目だ。
この場では、言えない。
ここにいる者が信用できるとは思えない。
『ルーシャ、アールリオスと言っておけばいいよ。
僕が活動しやすいように中級から上級くらいの悪魔として名乗ってたんだ』
リオ、ありがとう。
使わせてもらうよ。
「リオは私がつけた愛称なのです。
アールリオスと名乗っておりました」
「アールリオス……?
それは、偽名では無かったか?」
リオ、バレてるんだけど!?
『あ、あれ?
おかしいなぁ?』
「も、申し訳ありません。
10日前に契約を交わしたばかりなので……」
これでどうにかなればいいのだが。
「ふっ……お前と違い面白いな。
なぁ、ベルゼブブ?」
『俺を呼ぶなっての!
テメェのせいだぞからな』
うわぁ……。
蝿の王であり、暴食の悪魔であるベルゼブブか。
『あぁ、あいつがいるのか。
……ごめん、ルーシャ。
バレてるっぽいや』
そうらしいね。
私は深くため息をつき、その後、ハッとしたように国王を見上げた。
「ルシャーナ、エリアス、貴殿らも素で話して構わぬ。
そして、貴殿の悪魔を呼び出してはくれぬか?」
私は少しだけ考えた後、その言葉に従う事にした。
……あの蝿は蝿で可愛いよね?
特にあの目が。
「……なら、お言葉に甘えて。
それと、リオ実体化してもらっていい?」
「勿論さ!
それと、ルーシャの感性は僕には分かんないよ……。
あんな奴が可愛いとかさ……」
えー?
可愛くない?
特にあの目!!
「いや、分かんないよ!?
そんな人、ルーシャ以外に居ないと思うよ!?」
「えー、よく見たら可愛いと思うんだ」
何で分かってくれないかな?
可愛いのに……。
「もういいし!
ねぇルーシャ、遊ぼうよぉ!
僕さ、もう限界!!
こんな奴と顔を合わせただけでも嫌なのにぃ……。
それに、僕はルーシャと遊びたいの!」
「後にして」
ウザイなぁ……。
しかも五月蝿い……。
「……ルーシャのケチィ!!」
「五月蝿い」
あ、やばっ。
つい口に出しちゃった。
「ルーシャのバカァァァァ!!」
「ま、いっか」
「おい、サタン。
そういやお前、契約者なんてめんどくさいもん作んねぇとか言って無かったか?」
私がリオを見るとリオはビクゥッと震わせていた。
それを見てつい、私は笑みを零す。
「へぇ……?
そうなんだ?
面倒くさい契約者なんて思ってたんだ……」
私は後ろを向いて泣くふりをする。
「お姉ちゃん……」
呆れる様子のエリーに片目を瞑りシッと言うように手を口元におく。
「なっ!?
ち、違う!
違うんだ!
ルーシャ、違うからね!?
僕はルーシャの事、面倒くさいなんて思ってないよ!?
ベルゼブブも何でそんな事いうのさ!!
あ、あのあのあの、ルーシャ、だから、泣かないでよぉ……」
あ……やりすぎちゃった?
なんて思っているとベルゼブブと目が合った。
ベルゼブブは目が合うと私に近付いてきた。
2人で頷きあうと、
「「イェーイ!」」
と言ってハイタッチを交わした。
するとようやくリオも気付いたのか顔を赤くした。
「うわぁぁぁ!
酷いよぉ!」
「リオが遊んで欲しいって言ったから遊んであげたのに……」
「……お姉ちゃん、そんな性格だっけ?」
あ……。
カッコイイお姉ちゃん像がぁ!!
「……余がいること、忘れられてないか?」
「「「「あ……」」」」
やばっ。
忘れてた……。
「おい!?
ベルゼブブ、お前もか!?
他の者ならまだ分かるが…契約しているお前が忘れるか!」
「……父上、お呼びでしょうか?」
そう言って入ってきたのは国王と同じ白銀の髪に、王妃と同じ金の瞳の男の子だった。
雰囲気からして王子だろう。
「……お嬢、様?」
「っ……!?」
彼のその小さな呟きは私とエリーにしか届かなかっただろう。
だが、それは私にとって大きな意味のある言葉だった。
彼は美しい白銀の髪をたなびかせ、私の前に膝をついた。
「ルーシャ様、私と結婚し……。
いえ、結婚を前提とし、お付き合いしてくださいませんか?」
馬鹿……。
馬鹿ケヴィン。
遅いよ……。
ずっと、ずっと待ってたのに……。
何でそう、いつも遅いの……?
「……私は、私はあなたのしたことを忘れた覚えはありません」
私は、平民でケヴィンは王族。
無理だよ。
昔なら、まだなんとか出来たんだよ?
なのに、何でそんな遅いの?
私の心情を知らずに彼の瞳は悲しげに揺れる。
「……私は、あの時からいえ、それよりも前からあなたの事が、ルーシャ様の事だけを愛しておりました。
ですが、私にとってあなたは高嶺の花。
あの方法しか思い浮かばなかったのです。
あなたは、私と共に逃げて欲しいと伝えても断るでしょうから。
酷い人です……」
ケヴィン、あなたは……。
何故?
何故あなたはここまでするの?
分かっているでしょうに。
私があなたの思いに答えられない事くらい。
なのに、何故……。
「酷い人で結構です」
「……2人は知り合いだったのか?」
……何でこう、面倒くさい事ばかりあるかな?
まぁケヴィンに会えて嬉しかったのは確かだけどさ。
「はい、父上。
ルーシャが、巫女様なのですよね?」
「あぁ」
「でしたら、問題ありませんよね?
私とルーシャの婚約を認めて欲しいのです」
……いや、無理でしょ?
だって、巫女とはいえ平民だよ?
無理だって……。
「いいだろう」
「ふぇっ!?」
「良かった……」
認められた?
しかも、こんな簡単に?
……はぁぁぁぁ!?
「……お姉ちゃんは渡さない!」
「ルーシャは僕のだ!」
えっと……。
エリー、リオ?
私は答えてないからね?
勝手に決めてるけど、私、認めないからね?
「ルーシャ様は私のものです。
ルーシャ様のために私が何年待ったと……」
え……何それ。
初耳なんだけど!!
というか、ケヴィン、私を待っててくれたんだ……。
嬉しいなぁ……。
……ハッ!!
違うし!
私は認めない、認めないんだ!!
ケヴィンのお嫁さんとか惹かれる……けどならないし!
「お姉ちゃんは私のお姉ちゃんなの!
あなたには勿体無さすぎる!」
「ルーシャは僕の契約者なんだ!
だから誰にも渡さない!!」
「ルーシャ様は私のルーシャ様です。
おじょ……ルーシャ様と共にいるのは私です」
子供に見えてきた……。
やばい、可愛い。
「エリー、リオ、おいで。
エリー、私は何処にも行かないから。
だからそう身構えないで?
リオも。
どうせ契約で離れられないんだからそう怒らないの」
「お姉ちゃん、大好き!」
「ルーシャ!」
うん、やっぱり可愛い。
手のかかる妹と弟みたいだ。
そしてケヴィンは小さく舌打ちした。
それについては追求しないでおこう。
「……陛下、これからの王宮は騒がしくなりそうですね」
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そう、楽しそうに笑ったのを私達は知らなかった。
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