転生したようなので妹のために奮闘することにしました

紗砂

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巫女の魔力は強すぎるようです

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そして、私達が王宮に暮らすようになってから2日。
魔法についてや、国について、歴史などの勉強が始まった。
特に魔法に関してはエリーよりも私がヤバい。
何故かって?
それはエリーは三属性なのに対して私は全属性だからだ。
……特に無属性が難しいのだ。


リオは闇属性だったらしく闇属性はリオに聞けばなんとかなった。
聖属性はアンリの屋敷で本を読んだし、色々と教えてもらったので問題ない。
水と風は前世の属性だったからいいとして。
火と土についてはエレメンタルという事もあり軽く学んでいたからまだ理解できる。
だが、無属性はそうとはいかない。

今からの時間は確か聖属性だったはずだ。
……無属性じゃなくて良かった。


「巫女様、エリアス様、本日は聖属性の中でも初級治癒魔法の練習に参ります」


エリアスの属性は火 風 聖  なのだ。
そのためその三属性は私と共にやっている。
それ以外の属性の時は騎士に交じって訓練をしているらしい。


「ここでやるのではないのですか?」


昨日の時点で聖属性の事について教わった後、軽く魔法の展開、発動までを行ったのだ。
初級だけだったが。
ちなみに私は今の時点で、治癒魔法ならば中級、防御魔法ならば初級を扱える。


「ここでは練習になりませんから。
ですから教会へ参ります。
許可はとってあるのでご安心ください」


なら、いっか。

という事で私達3人は馬車に揺られ教会へ向かう。
アンリさん、いるかなぁ?


「巫女様、エリアス様、初級の治癒魔法の発動方法は覚えていらっしゃいますか?」

「えぇ、大丈夫です」

「私も大丈夫です」

「それでしたらよろしいのですが……」


初めて実際に使うからね。
昨日発動したのも緑の球体が出来たらOKだったし。


「着いたようですね」


うわっ。
多いなぁ……。
しかもさ、なんか教会騎士多くない?

私達が馬車から降りるとアンリが前に出てきた。


「ようこそおいでくださいました。
ルーシャ、エリアス様、お元気そうで何よりです」


少しだけ、ほんの少しだけ違和感があったのだ。


「ルーシャ?」


あぁ、と頷く。
アンリじゃないな、と思う。
アンリはもう少しゆったりとした口調だ。
だからこいつはアンリじゃない。
…どういうつもりだろうか?


「お名前を伺っても?」

「え…えぇ…。
アンリミテッド・デスタナートと申します」


何この人?
私を舐めているのだろうか?
…そうとしか思えない。


「お姉ちゃ…お姉様、どうかなさったのですか?」


エリーは、気付いていないの?
私だけ?


「……私は、あなたの名前を聞いたのですよ?」


私の口調は自然と鋭くなっていく。
それと同時に視線まで鋭くなって行くのを感じる。


「ですから、アンリミテッ……」

「アンリはあなたのような方ではありません。
このような事をするのは私が子供だから、でしょうか?」


私の言葉にアンリの皮を被った彼は肩を震わせた。
他の者は顔をしかめたり、疑問を浮かべたりしている。
その反応からするにアンリでは無いことは知らなかったのだろう。
……となると、アンリがこんな事をするとは思えない。
先生はこの事を知らなかった。
と、なると……アンリが危険か。


「アンリは何処ですか?」

「……ですから、わた…」

「そう、ですか…。
ならば私にも考えがあります」


私はエリーと先生の前に出る。
そして、片手を上にあげ目を瞑る。


「エリー、私の前には出ないで。

『自由を尊ぶ風達よ
私の声に応え眼前の敵を捕らえよ』!」


途端に風が吹き荒れる。
……私の風の適正は前世と同じかそれ以上に高いらしい。
それとも魔力が高いのか。
とにかく、暴風がアンリの皮を被った何かに襲いかかる。


「っ!?
風!?
巫女は魔法をまだ使えねぇんじゃなかったのかよ!」

「私は、風の魔法のみであれば大抵の魔法は使えます」


そんな中、今更リオの声が届く。


『ルーシャ、そいつ呪いがかけられてる。
少し荒いところがあるけど、一応上級かな』


上級、か。
私じゃ解除出来ないかぁ……。


『んー、出来ると思うよ?
やってみる?』


出来るの!?
ならやる。


『じゃあ、僕の言った事復唱して!
魔力に関しては気にしなくていいよ!
勝手に使うから』


勝手に使うとは。
任せるしかないけど。


『うん!
行くよ?

【汝にかかりし呪を今、解き放つ】』


「『汝にかけられし呪を今、解き放つ』」

『【我が名において命じる】』

「『我が名において命じる』」


私はリオを信じ、復唱する。


『最後!!

【我が名はルシャーナ
我が魔力を代償とし呪よ 退け】』


ありがとう、リオ。
心の中でリオにお礼を伝える。


「『我が名はルシャーナ!
我が魔力を代償とし呪よ 退け!!』
っ……思ってたより、キツっ……」


倒れそうになる直前、ようやく魔力の放出が止まった。
途端、怠さが襲う。
私はその場に倒れてしまった。

「お姉ちゃん!?」


エリーが慌てて私を支えてくれる。
お礼を言おうとするが怠さのせいかそれもままならない。


『わわっ!?
ちょ、ちょっと待って!』


私の中にいるリオが慌てて魔力を流してくれる。


『だ、大丈夫?
ルーシャ、ルーシャ……』


大丈夫だよ、リオ。
少しだけ魔力が足りなくなっただけだから。
だから、そんな泣きそうな声を出さないで?


『でも、ルーシャが、ルーシャがぁ……』


大丈夫だってば。
心配症だなぁ。


「なっ……嘘、だろ……。
消えた?
呪いが……あ、あぁ…」

「大丈夫、ですか?」

「あ、あぁ……。
ありがとう、ありがとう……」


大丈夫そうで良かった……。


「お姉ちゃん!
大丈夫なの!?」


エリーを心配させちゃったな……。
……あれ?
そういえばもうなんともないや。
というか体が軽い気がする……。
リオ、何かした?


『やってないよ!
ルーシャはもともと魔力が多いから馴染んでない部分もあったんだよね。
それに、僕と契約した事で更に魔力の質が上がったからってのもあったのかも。
まぁ、その魔力がようやく馴染んだって事じゃないかな。
あ、でもそのおかげで使えなかった分の魔力も使えるようになったから調整が大変になるかも!』


あぁ、そうなんだ。
とにかく大丈夫そうって事だね。


「大丈夫、です。
ようやく魔力が馴染んだとリオも言ってますから」

「あ、良かったです……」


閑話休題。


「ルーシャ、エリアス様、申し訳ありません…。
私の責任です」


そのゆったりとした口調にようやく会えたなと感じる。

話を聞いたところだと、闇属性の者にいきなり捕らわれたらしい。
呪いを掛けられていた人の方もアンリと同じように捕われ私を殺したら呪いを解いてやると言われたようだ。

つまり……私を殺そうとしている奴がいると…。
あぁ、面倒臭い……。
だから私は巫女なんて嫌だったんだ。


「アンリ、気にしないでください。
私もエリーも無事ですから。
ですから、本来の目的である怪我人のもとへ案内してください」

「ありがとうございます。
では、こちらへどうぞ」


アンリは優しげに笑みを浮かべ、私達を怪我人のもとへと連れていった。


「こちらです……。
奥に行くほど重症の者となりますので……」


奥から順にやっていきたいな……。
重症って事はそれだけ死に近いという事だし、それなら重症の人から治療していきたい…。
けど、中級じゃあ無理だ……。
上級を早く使えるようにならないと……。
魔法陣なら覚えてるんだけどな……。


「巫女様はデスタナート様とご一緒に、エリアス様は私と共に行動致しましょう。
その方が効率がいいですわ。
それに、私では巫女様のお力にはなれないようですから……。
デスタナート様、お願いしてもよろしいでしょうか?」

「えぇ、私でよろしければいくらでもご協力させてください」

「では、お願い致します」


と、いう事は私はアンリと行動か。
……上級治癒魔法、教えて貰おう。


「エリー」「お姉様」

「「お互い頑張りましょう」」


私達は息ぴったりの様子で口にした。
そして、クスリと笑うとそれぞれ行動を始めた。


「ルーシャ、どうなさいますか?」


アンリは私に決断を委ねてくれるようだ。
なら、私は私の我儘をつき通そう。


「……奥からお願いします」


私は確かな意思を持って口に出す。
助けられないかもしれないが、諦めたくは無かった。


「ルーシャ、それは……」

「お願いします。
私は私が無理と判断しない限り、諦めたくないんです!」


私は、諦めたくない。
そんな自分勝手な事でそう口にした。
だが、それでも自分の中には誰かを助けたいという気持ちがある。

それを分かったのか、アンリは諦めたようだった。


「……わかりました。
ですが、絶対に無理をしないでください。
いいですね?」

「はい!」


アンリは1番奥の部屋の前で止まると私に向き直った。


「……心の準備はよろしいですか?」

「大丈夫です」


私がそう答えたのを確認し、アンリは扉を開けた。
その瞬間、鉄の臭いがする。

違う、これは……。
これは、血の臭いだ……。

真っ赤に染まったベットには包帯でグルグルと巻かれた男の人がいた。
片足は既に切断され、片腕からは未だに流血していた。

助けられないかもしれない、そんな事を思っていた自分を叱咤する。
助けられないかもしれないのではない、助けるのだ。
私が、この人を助けるのだ。
そう、言い聞かせる。


「……ルーシャ、分かりましたでしょう。
あなたの手には負えません」


私はアンリの話を聞かずに頭を働かせる。
これは、時間の問題だ。
この状態から助けるにはまず、血を止める必要がある。
それから、切断された部分をくっつける。
この状態では一箇所ずつやっていたら時間が足りなくなってしまうだろう。
ならば、1度に全て治す必要がある。
だが、そんな魔法はない。

ならばどうすればいいか?
答えは簡単だ。
1つの魔法を何重にも積み重ね、発動させればいい。
だが、それだけでは足りない。
だから、他の魔法も1度に発動させる必要がある。
出来るだろうか?
……出来る。
いや、やらなければならない。


「大丈夫です。
私が、あなたを助けます。
……少しだけ、我慢していてください。

『体内を巡る水よ 私の願いを聞き届けて』」


まずは水の魔法を使い、体内の不純物を体外へと摘出する。
それと共に内臓に簡単な治癒を施した。


「ルーシャ!?」

「『私の声を聞き届けし世界よ
慈悲深き聖なる王よ
私の願いのもと 
この者へ慈悲を与えよ
聖なる光よ
私の魔力を代償とし
この者の傷を癒したまえ』」


私の手元に緑の光が集まっていく。
その光の球は次第に大きくなる。
それは、この前に使った中級魔法よりも大きくなっていく。


「なっ……。
ルーシャ、それ以上はあなたの魔力が持ちません!」


暫くすると光は人一人を包み込む程まで巨大化した。
だが、
圧倒的に足りない。
もっと強く、願わなければ……。


『……まさか、人の子が私を呼び出すとはな』


私は何かを呼び出したのにすら気付かずに願い続ける。
この人を助けたい、この人の命を救いたいと。


『……眼中になし、か。
本来ならばそのまま帰るところだが……。
お前の声は、心地良い。
特別だ。
少しだけ協力してやろう』

「……え」


私の頬に何かが触れた気がした。
私は驚いて顔をあげるとそこには金髪に金の瞳の優しい目をした女の人がいた。


『人の子よ、よくやった』

「え?」

『ふっ、見てみれば分かる』


女の人はふっと笑って寝台を指さした。
私は寝台を見ると、穏やかな表情で眠る青年がいた。
その体には包帯が巻いてある。


「あ……良かっ、た……」

『……お前の声はやはり心地良い。
気に入った。
人の子よ。
名は、なんという?』

「……ルシャーナ。
あなた、は?」

『私の名は、アマテラスだ。
ルシャーナ、何かあった時は私の名を呼べ。
余程の事がない限りは汝の助けとなろう』


アマテラスと名乗ったその女の人はそのまま消えてしまった。
何があったのか分からないままだったが、助けられたのならば良かった。


「ルーシャ!
大丈夫ですか!?
魔力は……」

「アンリ、問題ありません。
魔力はあと半分くらいは残っています」

「なら、良かったです…。
ですが、あの魔法は……」


アンリは気付いたらしい。
初級でも中級でも、上級でも無いことに。


「オリジナルです。
私は上級をの魔法を知らなかったので中級の治癒魔法に強化を重ねがけしたものをいくつか作りだし、その全てを1つの魔法として纏めてみたんです」

「なっ!?」


私達は他の病室にいるが怪我人は全て治癒されていた。
……エリー達にも確認をしてみたが、どうやら私の魔法のせいだったらしい。

…リオがいうには


『ルーシャの魔力が強すぎたからだと思うな!』


らしい。
どうやら私の魔力は強すぎるらしい。

ところで、どんどん魔法の研究から離れていくのはどうしてだろうか……?
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