6 / 32
巫女のお披露目会、らしい
しおりを挟む
私達が王宮に来てから1ヶ月くらいたった日のことだ。
私たちはダンスレッスンで予定が詰まっていた。
巫女とダンスって何の関係があるんだ!
と思ったのは3週間くらい前のこと。
先週突然私のお披露目会があると言われた時はかなり焦った。
私は前世の記憶を頼りにダンスレッスンに打ち込んだ。
エリーは私よりも大変だったはずだが私たち姉妹はギリギリで及第点を貰えた。
ちなみに魔法や歴史については順調に進んでいる。
私は聖属性と水、風ならば最上級を使えるようになった。
他のものに関しては確率で上級が発動する程度。
無属性に関しては中級までしか使えない。
「巫女様のエスコートはどなたにしていただきますか?」
先生が私に訪ねてくる。
……なんと、エリーは既に決まっていた。
魔法騎士として剣の訓練もしているエリーは同じく魔法騎士としての訓練を始めたという男爵家の少年にエスコートしてもらうらしい。
と、なれば問題は私なのだが……。
「ルーシャ様のエスコートは私が…」
「お断りさせていただきます。
私は巫女とはいえ平民の出。
王族の方にエスコートしていただくなど滅相もございません」
……と、いう状況なのだ。
しかも王族が誘っているということもあり他のお誘いはない。
「巫女様、そう言われましても他にいるのですか?」
そんな人、いるわけがない。
……仕方ない、のか。
「ルーシャ様」
「……お願い致します」
「ありがとうございます、ルーシャ様」
「ケルヴィン殿下のお相手もお決まりになられたようでよろしゅうございました」
……何故だろうか?
嵌められた気がしてならないのは。
事実そうなのだろうけど。
そして、翌日の夜。
お披露目会という名のパーティーが始まった。
私のドレスは白を基準に水色と緑の布を使用したものだった。
髪飾りは黒。
首飾りには全属性の色の宝石が使用されていた。
エリー達は先に向かってしまった。
私は主役ということで一番最後に出るらしい。
そして私は幸か不幸かケヴィンと2人きりだった。
「お嬢様」
「殿下、そう呼ぶのは……」
「今は私たちだけですから……」
何度言っても2人きりのときだけケヴィンは私の事をお嬢様という。
私は、もうお嬢様ではないというのに……。
「お嬢様、髪を結ってもよろしいでしょうか?」
私が頷く前からケヴィンは私の髪へと手を伸ばす。
その手を払いのける事は簡単だが、私にはそれが出来なかった。
「もうやっているでしょう?」
「お嬢様の髪がお綺麗でしたので……」
それから暫く、私とケヴィンの間には沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのは私でもケヴィンでもなく使用人だった。
「殿下、巫女様、お時間です」
扉の向こうから聞こえてくる声に私は柄にもなく緊張してしまう。
「あぁ」
「えぇ、今行きます」
私が立ち上がるとケヴィンは愛おしげに髪から手を離した。
そして、そのまま私に手を差し出す。
私はその手をとり、歩き出す。
「……遅くなりましたがとてもお似合いです。
ルーシャ様」
「…そう。
ありがとうございます、ケヴィン殿下」
毒殺犯にエスコートされるだなんて、何か不思議な気分だ。
会場に入ると着飾った貴族達の試すような視線が集まってくる。
巫女という称号を持ったからには仕方のないことなのかもしれないが多少の恐怖を感じてしまった。
王族にエスコートしてもらっているというのも一つの原因なのかもしれないが。
私はケヴィンにエスコートされながら壇上へ上がった。
集まっている人のあまりの多さに緊張感が押し寄せる。
「ルーシャ様なら大丈夫です」
隣でケヴィンがそんな事を言ってくれる。
私は深呼吸をしてから一歩前に出て挨拶をする。
「本日は、私のためにお集まりいただき真にありがとうございます。
巫女の称号をいただきました、ルシャーナと申します。
平民の出ではありますが巫女という称号に恥じぬよう、精進していきたいと思います。
未熟者ですので皆様からご指導いただけたらと思います」
出来るだけゆったりとした口調を心掛ける。
それ以上に穏やかで、害の無さそうな笑みを浮かべるのに注意する。
だが、それはエリーを見ているだけでなんとかなった。
……愛する妹の力は絶大である。
ちなみにその後の国王の話は頭に入って来なかった。
私がホールへ降りると貴族達が寄ってきた。
早速私を利用しようなどと考えているのだろうか?
「巫女様、私は伯爵家の」
「巫女様…」
「巫女様……」
はぁ……ウザイ。
誰か助けてくれないかな?
……無理だよなぁ…。
「ルーシャ様、お久しぶりです」
「アンリ様、お久しぶりです。
お元気そうで何よりです。
あれから皆様の様子はどうですか?」
私は2日目以来教会には行けていなかったのだ。
あれからは殆ど防御魔法や攻撃魔法を学んでいたからだ。
それと、ダンスレッスンにが手こずったせいでもある。
「ルーシャ様が治癒を施した者は皆、元の生活へと戻りました」
「それは良かったです」
失敗してないようで良かったという安堵と助ける事が出来たという嬉しさから至って自然な笑みが零れる。
「ルーシャ様が魔法を創作した時には本当に驚きました。
それどころか属性神を呼び出すだなんて……」
「あの方が精霊神だったと知った時には私も驚きました」
なんて笑い合っているとエリーがパートナーと共に近付いてきた。
「お姉ちゃ……お姉様、ご紹介致します。
この方はフィール・レスター様です」
「ご、ご紹介に預かりました。
フィール・レスターと申します!
エリアス様とは魔法騎士の称号を持つ者として仲良くさせていただいております!」
フィールは緑の瞳に青の髪の少年だった。
かなり緊張している様子で少し不自然な動きになっている。
「私はエリーの姉のルシャーナと申します。
エリーのこと、よろしくお願いします」
そう言って微笑みかけると少年、フィールは恥ずかしそうに俯いた。
小動物のようで面白い。
「ルーシャ様」
「……ケヴィン殿下」
私の声のトーンは自然と数段低くなってしまう。
だが、この方が嫌っているように見られて都合がいい。
「ルーシャ様、私と踊ってくださいませんか?」
そう言ってケヴィンは手を差し出してくる。
隣を見ると同じようにフィールがエリーにダンスを申し込んでいた。
緊張しているようなフィールにエリーは可笑しそうに笑っている。
「……ルーシャ様」
「……お受けいたします」
私はケヴィンの落ち込んだような表情とその声に負け、ダンスの誘いを受ける。
すると、途端にケヴィンは嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうございます」
ケヴィンに嵌められた気がしてならないが、まぁいいにしておこう。
私もこのパーティーを楽しむとするか。
「ケヴィン殿下、今回だけですよ?」
そう釘を刺しておくことを忘れない。
私の言葉にケヴィンは悲しげに微笑むが何も言わなかった。
曲が終了すると令嬢達に囲まれるケヴィンを置いて一人、ベランダに出る。
ベランダからはこの国の王都が良く見えた。
村にいた時とは違うこの景色は少し前までは見慣れたものだったはずなのに不思議だ。
今は全く別のもののように感じる。
「お隣をよろしいですか?」
「えぇ、勿論です」
男の声に私は少しだけ警戒をする。
全く、巫女なんてめんどくさいものになったものだとつくづく思う。
「本日の主役がこのような所にいてよろしいので?」
「……もう少ししたら戻ります」
確かに主役がこんな所にいてはいけないだろう。
……いくら貴族達が私に取り入ろうとしていても。
「……巫女様は来年度、魔法学園に入学なさるのでしたよね」
「えぇ、試験に合格出来たら、ですが……」
エリーは大丈夫かな?
条件を果たせるといいな……。
……私がエリーを信じないとだよね。
私はエリーのお姉ちゃんだもん。
って、エリーよりも私の方がヤバい部分もあるんだった……。
「……巫女様は魔法学の中ではどの属性を一番に選ばれるのかと思いましてね」
属性、か。
私なら聖属性か闇属性…それか無属性だよなぁ……。
でも、闇属性はリオがいるしなぁ……。
リオがいるからって油断しちゃうのも駄目だし……。
無属性は苦手だけど苦手を無くすって意味ではなぁ。
聖属性は誰かを守るためにもなるから気になるんだよね。
火と土は攻撃魔法の使い手として戦場とかにいかされるかもしれないから却下。
風と水は前世でやったから他のものにしたいし。
「…聖属性か、闇属性、無属性のどれかにしようとは思いますがまだ決められていません」
『えー!
闇属性、オススメだよ?
……やっぱ今の無しで!
だって闇属性にしたら僕が頼ってくれなくなっちゃう!!』
相変わらず騒がしいリオに呆れながらも闇属性という選択肢は消す事にした。
……聖属性と無属性、どちらの方がいいだろうか?
『……ふむ、私は聖属性を勧めておくとしよう。
その方が私を呼び出す数も増えるだろうからな。
……なぁ?
あ1箇月1箇月ヶ月近く経っておろうに未だに呼び出す事のないルシャーナよ。
あまりに退屈すぎて来てしまっただろう』
「……何故此処にいるのですか…」
拗ねているらしいアマテラスは私の前に浮遊している。
……突然来るのは心臓に悪いのでやめてほしい。
『お前がいつまで経っても呼び出さぬから私から来ただけのこと。
何か問題でもあるのか?』
問題と言われ少しだけ考えてみる。
それからアマテラスの姿を見ると頷き、口を開いた。
「……今はパーティーなのでドレスを着て降りてください」
「巫女様、そこではないと思うのですが……」
すぐさまツッコミが入るが気にしないでおこう。
『ふむ、了解した』
アマテラスは優雅にベランダに降り立つと指を動かした。
すると、アマテラスの周りで輝いていた魔力らしきものは消え、ドレスへと変わっていた。
「ふむ、こんなもので良いか?」
「えぇ、ありがとうございます」
アマテラスは得意げに笑みを浮かべ、手すりの上に座った。
「そうだな、人間の中に交じるのなら私の事はラスと呼べ」
「分かりました。
では、私の事はルーシャと」
「了解した、ルーシャ」
「……巫女様、何故そう平然となされているので?」
貴族の男は顔を引き攣らせながらそう聞いてくる。
私は少し考えた後、こう答えた。
「ラスとは前に1度だけ会った事がありますし、私の知り合いにうるさ……。
いえ、面倒な者がいますから…」
『面倒って何さ!?』
私は誰とは言っていないのだが。
リオ、自覚はしているんだ…。
「巫女様…………」
「そろそろ私は戻りますね。
それでは失礼いたします」
私はドレスの裾を摘み、令嬢と同じような礼をすると会場へと戻っていった。
……今度はラスと共に。
「巫女様、お初にお目にかかりまする。
私はレアニール・ギルスティンと申します。
巫女様がいらっしゃらないようで心配しておりました」
名前も知らない奴に心配される覚えはないんだけどな。
そんなにも弱くはないし、いざとなったらリオがいる。
そんな事を思いつつも私は笑顔で対応する。
「申し訳ありません。
このようなパーティーは初めてでしたので少し酔ってしまったらしく休ませていただいておりました。
ギルスティン様、ご心配いただいたようでありがとうございます」
「いえいえ、巫女様の身を案じるのは当然の事。
ところで、そちらの女性は何処の家の方でございましょう?」
はぁ……。
自分の知らない人だったから自分よりも下の家の者とみたな。
そうであればラスを遠ざけて自分の家の者を私に近付けてやろうって魂胆が見え見えだ。
本当、貴族って面倒くさい……。
「この方は、私の大切な友人(?)のラスです」
「アマテラ……ラスだ。
ルーシャとはただの友人よりも深い関係にある。
よろしく頼む」
ラス……。
もう少し口調をどうにかして欲しいのだが……。
まぁ、属性神のラスだし仕方ないのだろうか?
「……申し訳ありませんが、どこの家の方かな?
ラスという令嬢は何処の家の者にも居なかったと記憶しているのだが……」
「家名という事か?
それならば無い。
私にはその様なものは必要ないからな。
……だが、そうだな。
ルーシャが家名を名乗るというのであれば私もその名を名乗らせて貰うとしようか?」
その貴族……名前なんだっけ?
ま、いいや。
その貴族は顔を顰め、気持ち悪い笑みを浮かべていた。
ラスはラスで私の家名を名乗るって。
『いいな!
僕もルーシャの家名を名乗る!』
悪いけど、私は家名を名乗る気はないよ?
「……巫女様といえど身元の保証出来ぬ者と付き合うのは注意なされた方がよろしいと存じますが」
それはラスの事を侮辱しているのだろうか?
だとしたら私はこの貴族を許さないだろう。
「その様な身元のあやふやな者よりも我が家の者の方が巫女様の身をお守りする事もでき、巫女様の名を汚すことがないかと……」
あぁ、つまりラスよりも私に相応しい者がいると…?
……ばかばかしい。
「その口を閉じなさい」
ついに私は耐えきれなくなり、笑みを崩した。
ラスは平気そうにしていたが私が許せなかったのだ。
ラスと会うのはこれで2回目とはいえ私を手助けしてくれた人?なのだ。
そんなラスを悪く言うのは許せなかった。
何より、ラスが手助けしてくれなければあの青年は救えなかったかもしれないのだ。
そんなラスを侮辱したのだ。
多少とはいえ怒っても仕方が無いだろう。
「は……?
巫女様、今何と仰られましたか?」
「その口を閉じなさいと、そう言ったのです。
それとも貴方には理解出来ませんでしたか?」
私はこの貴族を許すつもりは毛頭ない。
この貴族は私に宣戦布告したのだ。
私の大切な友人を侮辱するという形で。
ならば私はその喧嘩を言い値で買ってやろうじゃないか。
「いくら巫女様といえど許せぬ事があります」
「えぇ、私も貴方に対しては許せない事があります。
貴方の方から仕掛けてきたこと。
何をされても文句はございませんよね?」
そう微笑みかけるとその貴族は怒りで顔を赤く染め上げた。
そして、そんな貴族の背後で可愛い妹が慌てていた。
フィールに宥められ、落ち着いた様だがその表情からは
『あぁ、お姉ちゃんを怒らせちゃったよ……』
などという言葉が感じられる程だ。
「なっ……私がいつ仕掛けたと仰られるので?
もしや、巫女様はギルスティン家を侮辱するおつもりですかな?」
いつの間にか私とラスと貴族の男、ギルスティンは人目を集めていた。
それは仕方のない事かもしれない。
ただでさえ私は巫女という立場であり、今回のパーティーの主役。
そうでなくてもこのギルスティン家は相当の立場の貴族らしい。
そんな者と騒ぎになっているのだ。
注目しない方がおかしいだろう。
「皆様、申し訳ありません。
このようなパーティーを台無しにしてしまうこと、お詫び申し上げます」
周りの招待客にそう謝罪をすると私はギルスティンと向き合った。
「ふむ……?
ルーシャ、お前が私のために怒ってくれるのは嬉しいが……。
私は特に気にしていないぞ?
それがお前であれば大いに気にしたかもしれないがな。
ルーシャ、私はお前と居られれば良い。
人の子が何を言おいとどうでも良い」
……ラスの最後の言葉、告白のように聞こえるのだが。
「ラスが気にしなくとも私が気にするのです。
私の友人であり、恩人でもあるラスを侮辱したのですよ?
到底許せる事ではありません」
すると、ラスはふっと笑って私の頭を撫でてきた。
「ラス、何を……」
「私は気にしないと言ったのだ。
ルーシャ、私に免じて許してやってはくれぬか?」
ラスにそう言われ、ことが収まりかけたその時だった。
またもやあのギルスティンが要らぬ事を口にした。
「……巫女とはいえ平民ごときがこのような場所にいるのがおかしいのだ。
平民なんぞの卑しい生まれの者は礼儀すらもままならぬのだな……」
そう呟いたのだ。
その途端、ラスはより一層笑みを深めた。
ただし、先程の優しげな笑みとは異なり怒りが満ち溢れていたが。
「……ほぅ?」
「……あはっ!」
「……へぇ?」
「……ふぅーん」
ラスとリオ、私、エリーの声が重なった。
ラスとリオは私が侮辱された事への怒り。
エリーは私を侮辱された事への怒り。
私はラスとエリーを侮辱された事への怒りを抱いた。
後ろで静かに見守っていたエリーだったが、笑顔でこちらへと近付いてきた。
そんなエリーをフィールは止める事なく共に近付いてくる。
実はフィールもエリーを侮辱されたと感じ、怒っているらしい。
この時、私達の他にあと2人程怒りを抱いていた人物がいた。
ケヴィンとアンリだ。
ケヴィンは私が侮辱された事に関して怖い程の殺気が漏れていた。
アンリは関わりのあった私とエリーを侮辱されたと感じ、笑顔で静かに怒っていた。
「……私だけならば別に良かったのだがな。
我が愛し子たるルーシャを侮辱したとなれば話は別だ」
「ラスだけではなく、エリーまで侮辱しましたね?」
「……お姉様を侮辱するのは許しませんよ?」
「僕のルーシャが、何だって?」
この時の私はリオが実体化していることにすら気付かないほど怒りに満ち溢れていた。
「……本当のことを言って何が悪いと言うのだ」
「……ねぇ、ルーシャ?
少しだけ力使っていい?
いいよね?
まぁ、許可をもらえなくてもやるけど」
私は考える間もなく頷いた。
「いいよ。
足りない分は私の魔力をあげる」
「ありがと!
ルーシャ!」
「……私も少々、解放するとしようか」
「……風の魔法が暴走してしまう事くらいありますよね?
貴族様が言った通り、平民ですもの」
「平民ですもの。
魔法が暴走して強化を施してしまうことくらいありますよね?」
「……そうですね。
子供ですから魔法が暴走してしまう事があっても仕方ありません。
ですから結界をはっておきましょう。
……それが間違えて強化の結界になってしまうこともありますよね。
えぇ、私も歳ですから」
などと5人で笑顔で言うとアンリは結界を貼り、エリーは無詠唱で強化を施し私もエリーと同じように無属性で風を生み出しそれを使い渦を作る。
これで脱出不可能の監獄の出来上がりだ。
あとは二人に残しておこう。
だが、強化された風は鋭くその身を傷つけていく。
しかし、ちゃんと調整はしてあるため傷つけると言ってもかすり傷程度のものだ。
「ならば、次は私だな。
安心しろ。
私はただ、簡単には死ななくてすむよう回復用の結界を貼ってやるだけだ。
……ただ、回復には致命傷を負わなければならないがな。
回復するとはいってもその3倍の痛みを伴うものだが丁度いいだろう?」
そう言うとラスは本来の姿へと戻り魔法を行使した。
1つは先程口にしていた結界。
もう1つは光を集め作った槍である。
そしてもう1つは光のビジョンてある
その槍の数は数十はあり、ラスはその槍を私の作り出した風の渦へ投入した。
すると風に乗った槍がギルスティンの体を傷つける。
その度に悲鳴があがり、致命傷を負った時にはそれ以上の悲鳴が上がっている。
……ラスのビジョンで渦の中のギルスティンの様子が分かるが正直見たくはなかった。
「あはっ!
最後は僕の番だね!!
ルーシャ、少しだけ借りるね!」
リオがそう口にだした瞬間、ドッと魔力が抜かれる。
一体何をしようとしているのか。
「あはっ!
ルーシャを侮辱したんだもん!
僕、かなーり怒ってるんだぁ……。
だから、ね?
あはっ!!
少し派手にやってあげる!
七つの大罪の一柱、憤怒の名を持つ僕の契約者を侮辱した罪、その身で贖え。
『七つの大罪の1人、憤怒の王の名において命じる!
我の怒りに触れし愚か者に死よりも辛い罰を与えよ!
罰は死までとする!
以上を憤怒の悪魔、サタン・エスカリオスの名において承認する!!』」
すると、渦の上に大きな契約書のような紙とリオの魔法陣が浮き上がった。
紙にリオの魔法陣が吸い込まれるとギルスティンが今までで一番大きな悲鳴をあげた。
私はそこでようやく魔法を解き、それに合わせてアマテスも魔法を解く。
「……リオ、さっきの魔法は何をしたの?」
「さっきの?
んー、あれはねー!
僕が怒った奴に対してだけ発動するんだけどね~、罰はランダムなんだ!
ただ、その人にとって死より辛い事が起こるようにしてあるから大丈夫!
期間は僕が指定した期間だけど、今回はねぇ死までって指定したから安心して!」
リオの話のどこに安心できる要素があっただろうか?
さすがは憤怒の悪魔と言われるだけある。
酷い事が起こりそうだ。
リオは出来るだけ怒らせないように気を付けようと思う。
私たちはダンスレッスンで予定が詰まっていた。
巫女とダンスって何の関係があるんだ!
と思ったのは3週間くらい前のこと。
先週突然私のお披露目会があると言われた時はかなり焦った。
私は前世の記憶を頼りにダンスレッスンに打ち込んだ。
エリーは私よりも大変だったはずだが私たち姉妹はギリギリで及第点を貰えた。
ちなみに魔法や歴史については順調に進んでいる。
私は聖属性と水、風ならば最上級を使えるようになった。
他のものに関しては確率で上級が発動する程度。
無属性に関しては中級までしか使えない。
「巫女様のエスコートはどなたにしていただきますか?」
先生が私に訪ねてくる。
……なんと、エリーは既に決まっていた。
魔法騎士として剣の訓練もしているエリーは同じく魔法騎士としての訓練を始めたという男爵家の少年にエスコートしてもらうらしい。
と、なれば問題は私なのだが……。
「ルーシャ様のエスコートは私が…」
「お断りさせていただきます。
私は巫女とはいえ平民の出。
王族の方にエスコートしていただくなど滅相もございません」
……と、いう状況なのだ。
しかも王族が誘っているということもあり他のお誘いはない。
「巫女様、そう言われましても他にいるのですか?」
そんな人、いるわけがない。
……仕方ない、のか。
「ルーシャ様」
「……お願い致します」
「ありがとうございます、ルーシャ様」
「ケルヴィン殿下のお相手もお決まりになられたようでよろしゅうございました」
……何故だろうか?
嵌められた気がしてならないのは。
事実そうなのだろうけど。
そして、翌日の夜。
お披露目会という名のパーティーが始まった。
私のドレスは白を基準に水色と緑の布を使用したものだった。
髪飾りは黒。
首飾りには全属性の色の宝石が使用されていた。
エリー達は先に向かってしまった。
私は主役ということで一番最後に出るらしい。
そして私は幸か不幸かケヴィンと2人きりだった。
「お嬢様」
「殿下、そう呼ぶのは……」
「今は私たちだけですから……」
何度言っても2人きりのときだけケヴィンは私の事をお嬢様という。
私は、もうお嬢様ではないというのに……。
「お嬢様、髪を結ってもよろしいでしょうか?」
私が頷く前からケヴィンは私の髪へと手を伸ばす。
その手を払いのける事は簡単だが、私にはそれが出来なかった。
「もうやっているでしょう?」
「お嬢様の髪がお綺麗でしたので……」
それから暫く、私とケヴィンの間には沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのは私でもケヴィンでもなく使用人だった。
「殿下、巫女様、お時間です」
扉の向こうから聞こえてくる声に私は柄にもなく緊張してしまう。
「あぁ」
「えぇ、今行きます」
私が立ち上がるとケヴィンは愛おしげに髪から手を離した。
そして、そのまま私に手を差し出す。
私はその手をとり、歩き出す。
「……遅くなりましたがとてもお似合いです。
ルーシャ様」
「…そう。
ありがとうございます、ケヴィン殿下」
毒殺犯にエスコートされるだなんて、何か不思議な気分だ。
会場に入ると着飾った貴族達の試すような視線が集まってくる。
巫女という称号を持ったからには仕方のないことなのかもしれないが多少の恐怖を感じてしまった。
王族にエスコートしてもらっているというのも一つの原因なのかもしれないが。
私はケヴィンにエスコートされながら壇上へ上がった。
集まっている人のあまりの多さに緊張感が押し寄せる。
「ルーシャ様なら大丈夫です」
隣でケヴィンがそんな事を言ってくれる。
私は深呼吸をしてから一歩前に出て挨拶をする。
「本日は、私のためにお集まりいただき真にありがとうございます。
巫女の称号をいただきました、ルシャーナと申します。
平民の出ではありますが巫女という称号に恥じぬよう、精進していきたいと思います。
未熟者ですので皆様からご指導いただけたらと思います」
出来るだけゆったりとした口調を心掛ける。
それ以上に穏やかで、害の無さそうな笑みを浮かべるのに注意する。
だが、それはエリーを見ているだけでなんとかなった。
……愛する妹の力は絶大である。
ちなみにその後の国王の話は頭に入って来なかった。
私がホールへ降りると貴族達が寄ってきた。
早速私を利用しようなどと考えているのだろうか?
「巫女様、私は伯爵家の」
「巫女様…」
「巫女様……」
はぁ……ウザイ。
誰か助けてくれないかな?
……無理だよなぁ…。
「ルーシャ様、お久しぶりです」
「アンリ様、お久しぶりです。
お元気そうで何よりです。
あれから皆様の様子はどうですか?」
私は2日目以来教会には行けていなかったのだ。
あれからは殆ど防御魔法や攻撃魔法を学んでいたからだ。
それと、ダンスレッスンにが手こずったせいでもある。
「ルーシャ様が治癒を施した者は皆、元の生活へと戻りました」
「それは良かったです」
失敗してないようで良かったという安堵と助ける事が出来たという嬉しさから至って自然な笑みが零れる。
「ルーシャ様が魔法を創作した時には本当に驚きました。
それどころか属性神を呼び出すだなんて……」
「あの方が精霊神だったと知った時には私も驚きました」
なんて笑い合っているとエリーがパートナーと共に近付いてきた。
「お姉ちゃ……お姉様、ご紹介致します。
この方はフィール・レスター様です」
「ご、ご紹介に預かりました。
フィール・レスターと申します!
エリアス様とは魔法騎士の称号を持つ者として仲良くさせていただいております!」
フィールは緑の瞳に青の髪の少年だった。
かなり緊張している様子で少し不自然な動きになっている。
「私はエリーの姉のルシャーナと申します。
エリーのこと、よろしくお願いします」
そう言って微笑みかけると少年、フィールは恥ずかしそうに俯いた。
小動物のようで面白い。
「ルーシャ様」
「……ケヴィン殿下」
私の声のトーンは自然と数段低くなってしまう。
だが、この方が嫌っているように見られて都合がいい。
「ルーシャ様、私と踊ってくださいませんか?」
そう言ってケヴィンは手を差し出してくる。
隣を見ると同じようにフィールがエリーにダンスを申し込んでいた。
緊張しているようなフィールにエリーは可笑しそうに笑っている。
「……ルーシャ様」
「……お受けいたします」
私はケヴィンの落ち込んだような表情とその声に負け、ダンスの誘いを受ける。
すると、途端にケヴィンは嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうございます」
ケヴィンに嵌められた気がしてならないが、まぁいいにしておこう。
私もこのパーティーを楽しむとするか。
「ケヴィン殿下、今回だけですよ?」
そう釘を刺しておくことを忘れない。
私の言葉にケヴィンは悲しげに微笑むが何も言わなかった。
曲が終了すると令嬢達に囲まれるケヴィンを置いて一人、ベランダに出る。
ベランダからはこの国の王都が良く見えた。
村にいた時とは違うこの景色は少し前までは見慣れたものだったはずなのに不思議だ。
今は全く別のもののように感じる。
「お隣をよろしいですか?」
「えぇ、勿論です」
男の声に私は少しだけ警戒をする。
全く、巫女なんてめんどくさいものになったものだとつくづく思う。
「本日の主役がこのような所にいてよろしいので?」
「……もう少ししたら戻ります」
確かに主役がこんな所にいてはいけないだろう。
……いくら貴族達が私に取り入ろうとしていても。
「……巫女様は来年度、魔法学園に入学なさるのでしたよね」
「えぇ、試験に合格出来たら、ですが……」
エリーは大丈夫かな?
条件を果たせるといいな……。
……私がエリーを信じないとだよね。
私はエリーのお姉ちゃんだもん。
って、エリーよりも私の方がヤバい部分もあるんだった……。
「……巫女様は魔法学の中ではどの属性を一番に選ばれるのかと思いましてね」
属性、か。
私なら聖属性か闇属性…それか無属性だよなぁ……。
でも、闇属性はリオがいるしなぁ……。
リオがいるからって油断しちゃうのも駄目だし……。
無属性は苦手だけど苦手を無くすって意味ではなぁ。
聖属性は誰かを守るためにもなるから気になるんだよね。
火と土は攻撃魔法の使い手として戦場とかにいかされるかもしれないから却下。
風と水は前世でやったから他のものにしたいし。
「…聖属性か、闇属性、無属性のどれかにしようとは思いますがまだ決められていません」
『えー!
闇属性、オススメだよ?
……やっぱ今の無しで!
だって闇属性にしたら僕が頼ってくれなくなっちゃう!!』
相変わらず騒がしいリオに呆れながらも闇属性という選択肢は消す事にした。
……聖属性と無属性、どちらの方がいいだろうか?
『……ふむ、私は聖属性を勧めておくとしよう。
その方が私を呼び出す数も増えるだろうからな。
……なぁ?
あ1箇月1箇月ヶ月近く経っておろうに未だに呼び出す事のないルシャーナよ。
あまりに退屈すぎて来てしまっただろう』
「……何故此処にいるのですか…」
拗ねているらしいアマテラスは私の前に浮遊している。
……突然来るのは心臓に悪いのでやめてほしい。
『お前がいつまで経っても呼び出さぬから私から来ただけのこと。
何か問題でもあるのか?』
問題と言われ少しだけ考えてみる。
それからアマテラスの姿を見ると頷き、口を開いた。
「……今はパーティーなのでドレスを着て降りてください」
「巫女様、そこではないと思うのですが……」
すぐさまツッコミが入るが気にしないでおこう。
『ふむ、了解した』
アマテラスは優雅にベランダに降り立つと指を動かした。
すると、アマテラスの周りで輝いていた魔力らしきものは消え、ドレスへと変わっていた。
「ふむ、こんなもので良いか?」
「えぇ、ありがとうございます」
アマテラスは得意げに笑みを浮かべ、手すりの上に座った。
「そうだな、人間の中に交じるのなら私の事はラスと呼べ」
「分かりました。
では、私の事はルーシャと」
「了解した、ルーシャ」
「……巫女様、何故そう平然となされているので?」
貴族の男は顔を引き攣らせながらそう聞いてくる。
私は少し考えた後、こう答えた。
「ラスとは前に1度だけ会った事がありますし、私の知り合いにうるさ……。
いえ、面倒な者がいますから…」
『面倒って何さ!?』
私は誰とは言っていないのだが。
リオ、自覚はしているんだ…。
「巫女様…………」
「そろそろ私は戻りますね。
それでは失礼いたします」
私はドレスの裾を摘み、令嬢と同じような礼をすると会場へと戻っていった。
……今度はラスと共に。
「巫女様、お初にお目にかかりまする。
私はレアニール・ギルスティンと申します。
巫女様がいらっしゃらないようで心配しておりました」
名前も知らない奴に心配される覚えはないんだけどな。
そんなにも弱くはないし、いざとなったらリオがいる。
そんな事を思いつつも私は笑顔で対応する。
「申し訳ありません。
このようなパーティーは初めてでしたので少し酔ってしまったらしく休ませていただいておりました。
ギルスティン様、ご心配いただいたようでありがとうございます」
「いえいえ、巫女様の身を案じるのは当然の事。
ところで、そちらの女性は何処の家の方でございましょう?」
はぁ……。
自分の知らない人だったから自分よりも下の家の者とみたな。
そうであればラスを遠ざけて自分の家の者を私に近付けてやろうって魂胆が見え見えだ。
本当、貴族って面倒くさい……。
「この方は、私の大切な友人(?)のラスです」
「アマテラ……ラスだ。
ルーシャとはただの友人よりも深い関係にある。
よろしく頼む」
ラス……。
もう少し口調をどうにかして欲しいのだが……。
まぁ、属性神のラスだし仕方ないのだろうか?
「……申し訳ありませんが、どこの家の方かな?
ラスという令嬢は何処の家の者にも居なかったと記憶しているのだが……」
「家名という事か?
それならば無い。
私にはその様なものは必要ないからな。
……だが、そうだな。
ルーシャが家名を名乗るというのであれば私もその名を名乗らせて貰うとしようか?」
その貴族……名前なんだっけ?
ま、いいや。
その貴族は顔を顰め、気持ち悪い笑みを浮かべていた。
ラスはラスで私の家名を名乗るって。
『いいな!
僕もルーシャの家名を名乗る!』
悪いけど、私は家名を名乗る気はないよ?
「……巫女様といえど身元の保証出来ぬ者と付き合うのは注意なされた方がよろしいと存じますが」
それはラスの事を侮辱しているのだろうか?
だとしたら私はこの貴族を許さないだろう。
「その様な身元のあやふやな者よりも我が家の者の方が巫女様の身をお守りする事もでき、巫女様の名を汚すことがないかと……」
あぁ、つまりラスよりも私に相応しい者がいると…?
……ばかばかしい。
「その口を閉じなさい」
ついに私は耐えきれなくなり、笑みを崩した。
ラスは平気そうにしていたが私が許せなかったのだ。
ラスと会うのはこれで2回目とはいえ私を手助けしてくれた人?なのだ。
そんなラスを悪く言うのは許せなかった。
何より、ラスが手助けしてくれなければあの青年は救えなかったかもしれないのだ。
そんなラスを侮辱したのだ。
多少とはいえ怒っても仕方が無いだろう。
「は……?
巫女様、今何と仰られましたか?」
「その口を閉じなさいと、そう言ったのです。
それとも貴方には理解出来ませんでしたか?」
私はこの貴族を許すつもりは毛頭ない。
この貴族は私に宣戦布告したのだ。
私の大切な友人を侮辱するという形で。
ならば私はその喧嘩を言い値で買ってやろうじゃないか。
「いくら巫女様といえど許せぬ事があります」
「えぇ、私も貴方に対しては許せない事があります。
貴方の方から仕掛けてきたこと。
何をされても文句はございませんよね?」
そう微笑みかけるとその貴族は怒りで顔を赤く染め上げた。
そして、そんな貴族の背後で可愛い妹が慌てていた。
フィールに宥められ、落ち着いた様だがその表情からは
『あぁ、お姉ちゃんを怒らせちゃったよ……』
などという言葉が感じられる程だ。
「なっ……私がいつ仕掛けたと仰られるので?
もしや、巫女様はギルスティン家を侮辱するおつもりですかな?」
いつの間にか私とラスと貴族の男、ギルスティンは人目を集めていた。
それは仕方のない事かもしれない。
ただでさえ私は巫女という立場であり、今回のパーティーの主役。
そうでなくてもこのギルスティン家は相当の立場の貴族らしい。
そんな者と騒ぎになっているのだ。
注目しない方がおかしいだろう。
「皆様、申し訳ありません。
このようなパーティーを台無しにしてしまうこと、お詫び申し上げます」
周りの招待客にそう謝罪をすると私はギルスティンと向き合った。
「ふむ……?
ルーシャ、お前が私のために怒ってくれるのは嬉しいが……。
私は特に気にしていないぞ?
それがお前であれば大いに気にしたかもしれないがな。
ルーシャ、私はお前と居られれば良い。
人の子が何を言おいとどうでも良い」
……ラスの最後の言葉、告白のように聞こえるのだが。
「ラスが気にしなくとも私が気にするのです。
私の友人であり、恩人でもあるラスを侮辱したのですよ?
到底許せる事ではありません」
すると、ラスはふっと笑って私の頭を撫でてきた。
「ラス、何を……」
「私は気にしないと言ったのだ。
ルーシャ、私に免じて許してやってはくれぬか?」
ラスにそう言われ、ことが収まりかけたその時だった。
またもやあのギルスティンが要らぬ事を口にした。
「……巫女とはいえ平民ごときがこのような場所にいるのがおかしいのだ。
平民なんぞの卑しい生まれの者は礼儀すらもままならぬのだな……」
そう呟いたのだ。
その途端、ラスはより一層笑みを深めた。
ただし、先程の優しげな笑みとは異なり怒りが満ち溢れていたが。
「……ほぅ?」
「……あはっ!」
「……へぇ?」
「……ふぅーん」
ラスとリオ、私、エリーの声が重なった。
ラスとリオは私が侮辱された事への怒り。
エリーは私を侮辱された事への怒り。
私はラスとエリーを侮辱された事への怒りを抱いた。
後ろで静かに見守っていたエリーだったが、笑顔でこちらへと近付いてきた。
そんなエリーをフィールは止める事なく共に近付いてくる。
実はフィールもエリーを侮辱されたと感じ、怒っているらしい。
この時、私達の他にあと2人程怒りを抱いていた人物がいた。
ケヴィンとアンリだ。
ケヴィンは私が侮辱された事に関して怖い程の殺気が漏れていた。
アンリは関わりのあった私とエリーを侮辱されたと感じ、笑顔で静かに怒っていた。
「……私だけならば別に良かったのだがな。
我が愛し子たるルーシャを侮辱したとなれば話は別だ」
「ラスだけではなく、エリーまで侮辱しましたね?」
「……お姉様を侮辱するのは許しませんよ?」
「僕のルーシャが、何だって?」
この時の私はリオが実体化していることにすら気付かないほど怒りに満ち溢れていた。
「……本当のことを言って何が悪いと言うのだ」
「……ねぇ、ルーシャ?
少しだけ力使っていい?
いいよね?
まぁ、許可をもらえなくてもやるけど」
私は考える間もなく頷いた。
「いいよ。
足りない分は私の魔力をあげる」
「ありがと!
ルーシャ!」
「……私も少々、解放するとしようか」
「……風の魔法が暴走してしまう事くらいありますよね?
貴族様が言った通り、平民ですもの」
「平民ですもの。
魔法が暴走して強化を施してしまうことくらいありますよね?」
「……そうですね。
子供ですから魔法が暴走してしまう事があっても仕方ありません。
ですから結界をはっておきましょう。
……それが間違えて強化の結界になってしまうこともありますよね。
えぇ、私も歳ですから」
などと5人で笑顔で言うとアンリは結界を貼り、エリーは無詠唱で強化を施し私もエリーと同じように無属性で風を生み出しそれを使い渦を作る。
これで脱出不可能の監獄の出来上がりだ。
あとは二人に残しておこう。
だが、強化された風は鋭くその身を傷つけていく。
しかし、ちゃんと調整はしてあるため傷つけると言ってもかすり傷程度のものだ。
「ならば、次は私だな。
安心しろ。
私はただ、簡単には死ななくてすむよう回復用の結界を貼ってやるだけだ。
……ただ、回復には致命傷を負わなければならないがな。
回復するとはいってもその3倍の痛みを伴うものだが丁度いいだろう?」
そう言うとラスは本来の姿へと戻り魔法を行使した。
1つは先程口にしていた結界。
もう1つは光を集め作った槍である。
そしてもう1つは光のビジョンてある
その槍の数は数十はあり、ラスはその槍を私の作り出した風の渦へ投入した。
すると風に乗った槍がギルスティンの体を傷つける。
その度に悲鳴があがり、致命傷を負った時にはそれ以上の悲鳴が上がっている。
……ラスのビジョンで渦の中のギルスティンの様子が分かるが正直見たくはなかった。
「あはっ!
最後は僕の番だね!!
ルーシャ、少しだけ借りるね!」
リオがそう口にだした瞬間、ドッと魔力が抜かれる。
一体何をしようとしているのか。
「あはっ!
ルーシャを侮辱したんだもん!
僕、かなーり怒ってるんだぁ……。
だから、ね?
あはっ!!
少し派手にやってあげる!
七つの大罪の一柱、憤怒の名を持つ僕の契約者を侮辱した罪、その身で贖え。
『七つの大罪の1人、憤怒の王の名において命じる!
我の怒りに触れし愚か者に死よりも辛い罰を与えよ!
罰は死までとする!
以上を憤怒の悪魔、サタン・エスカリオスの名において承認する!!』」
すると、渦の上に大きな契約書のような紙とリオの魔法陣が浮き上がった。
紙にリオの魔法陣が吸い込まれるとギルスティンが今までで一番大きな悲鳴をあげた。
私はそこでようやく魔法を解き、それに合わせてアマテスも魔法を解く。
「……リオ、さっきの魔法は何をしたの?」
「さっきの?
んー、あれはねー!
僕が怒った奴に対してだけ発動するんだけどね~、罰はランダムなんだ!
ただ、その人にとって死より辛い事が起こるようにしてあるから大丈夫!
期間は僕が指定した期間だけど、今回はねぇ死までって指定したから安心して!」
リオの話のどこに安心できる要素があっただろうか?
さすがは憤怒の悪魔と言われるだけある。
酷い事が起こりそうだ。
リオは出来るだけ怒らせないように気を付けようと思う。
0
あなたにおすすめの小説
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
「不吉な黒」と捨てられた令嬢、漆黒の竜を「痛いの飛んでいけー!」で完治させてしまう
ムラサメ
恋愛
漆黒の髪と瞳。ただそれだけの理由で「不吉なゴミ」と虐げられてきた公爵令嬢ミア。
死の森に捨てられた彼女が出会ったのは、呪いに侵され、最期を待つ最強の黒竜と、その相棒である隣国の竜騎士ゼノだった。
しかし、ミアが無邪気に放った「おまじない」は、伝説の浄化魔法となって世界を塗り替える。
向こう見ずな天才騎士に拾われたミアは、隣国で「女神」として崇められ、徹底的に甘やかされることに。
一方、浄化の源を失った王国は、みるみるうちに泥沼へと沈んでいき……?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる