転生したようなので妹のために奮闘することにしました

紗砂

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決意したらしい

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私が気付くとそこはやはりリオの世界だった。
この広く、何もない世界で、正面にいるリオを見つめる。


「ルーシャ…なんであんなにも危険な事をしたのさ……。
僕がどれだけ心配したとっ!!?」


リオは涙をためながら私にすがり付いてくる。
そんなリオを見て私は狼狽えてしまった。


「嫌だ…嫌なんだ!
失うのはもう嫌なんだ!
ルーシャ、今度こそ、今度こそはルーシャを守りたいんだ…!!」


何…それ?
またって…今度こそって何……?
意味が分からない。
それじゃあ、何回もやり直しをしているような……。
やり直し…?

その時、私の頭の中に『転生』という言葉が浮かんだ。


「ねぇ……またって、何?
今度こそって……それじゃあまるで…」


何回と繰り返しているようじゃないか。


「あはっ……バレ、ちゃった……。
僕が繰り返したのは…これで315回目。
……ルーシャが死ぬ度、僕は繰り返す。
ルーシャが選定されて…契約した時から。
ずっと、ずっと……」


何……それ……?
私が死ぬ度に繰り返すって……。


「何…それ……ふざけ、ないで……。
ふざけないで!!
私は、私は!!
そんなこと望んでない!
なのに、何で……」


昔、誰かに言われた事を思い出した。
それは、私がまだ、ルーシャだった頃。
その、子供の時だった。


『何で憤怒の悪魔は契約者を持たないんですか?』


私がそう尋ねると、その人は悲しげに微笑んだ。


『…憤怒の悪魔は案外臆病なのかもしれないね。
契約者を失う事が怖くて怖くてたまらない、だから…契約者を持とうとせずにさまよい続けているんだよ。
悪魔と人では寿命が違いすぎるんだ。
人間の寿命はあまりにも短すぎる。
だから、1人が怖い。
自分が置いていかれるのが怖い。
……だからかもしれないよ』


そう、私に教えてくれた優しい人。
私の兄の様な存在だった。


『人間は、悪魔になれないのかな……?
そうすればずっと一緒にいれるのに……』

『方法は、あるよ。
簡単だよ。
その、悪魔の血を飲めばいいんだ。
そして、その悪魔の魔力を受け入れればいい。
それだけで、その人は人間から悪魔に変わるんだよ。
でも彼の寿命は他の悪魔よりも余程長い。
その分、魔力の質も高いんだ。
だから、彼と共に生きるにはある程度の魔法を使えるようにならないといけないんだよ』

『ふーん……。
私、研究者になる!
それでね、いつかその悪魔が寂しくないように一緒にいてあげるの!
そのためにね、研究者になって魔法をいっぱい使えるようになりたい!』


私は、そう誓った。
すると、彼は笑顔で答えてくれた。
いや、今なら分かる。
人ではない、悪魔だと。
その外見は、まるでリオのようだった。
否。
リオそのものだ。
まさか、まさか……本当に…


「リオン……?」


私がその名を呼ぶとリオは悲しげに、それでいて嬉しそうに微笑んだ。
そのちぐはぐな笑みはリオがリオンである事を意味していた。


「……自分の、事…だったんだ……。
臆病で、1人が怖いって……」

「……ルーシャ…。
君は、本当に研究者になろうとした…。
僕が記憶を消しても。
目的を忘れても、君は僕との誓いを果たそうとした。
君が死んだ時、僕は君の近くに居たんだ……」


……それで、か。
これで転生した理由も納得がいった。


「リオ、私は…」

「分かってる!
分かって、るんだ……。
ルーシャが答えてくれない事くらいっ!」


その悲痛な叫びはリオの苦しみを私に伝えるには充分なものだった。


「リオ、私が卒業したら血を頂戴。
それが私への卒業のプレゼント。
それで許してあげる」


私はとびきりの笑顔でそう言った。
…エリーやリマと同じ時を生きられなくなるのは嫌だと思うがそれでも、こんな顔をするリオを放っては置けなかった。
それに、元々私が研究者になろうと思ったのはそれが原因だったようだし。


「…え……?
ルーシャ……?
それじゃあ……」

「……いいよ。
私は、リオといる。
リオが寂しくならないように一緒にいてあげる」


リオは、本当に嬉しそうに…笑った。
その笑顔を見て、私は 共に長い時を生きるのもそう悪くもないかもしれないと思い微笑んだ。


そして、私の意識は浮上した。
ちなみに、最後に聞いた話だが、皆の記憶は消し、私達が破壊したものは元に戻したらしい。


「ルー、何を寝ているんですの!」

「魔力の回復を、ね?」


私は誤魔化すように笑った。
そして、記憶が消えたというのであれば…私はもう一度、今度はちゃんとリマに伝えようと決めた。


「あれ…私の相手ってあの氷の貴公子(笑)さん!?
あ、そうだ!
リマ、これ、次の試合私にかけておいて!」

「もう……。
仕方ありませんわね…。
分かりましたわ」


リマにお礼を言うと私は固まった体を解し始めた。


『次の試合は、氷の貴公子こと3年、レアン・ダルヴィン対、光の結界師、1年、ルシャーナだぁ!!』


うわっ!?
光の結界師とか恥ずかしいから辞めてくれないかな?
まぁ、私は聖属性だけじゃないって見せようじゃないか!


『始め!』

「……リタイアは…」

「先輩こそ、リタイアはしないのですか?」


私は不敵に微笑んだ。
そんな私に対し、レアン先輩はこめかみを微かに動かした。


「……すぐに終わらせてやる」

「負けるつもりはありません」

「……前回と同じと思うなよ。

『冷たく凍った水達へ。
私の願いを届けよう。
その願いは未だ叶わず。
私は願う。
全ての世界が凍てつく事を。
全ては私の願いのもとに。
私の魔力を糧とし凍てつけ』」


これは不味そう?
…なら、燃やす?
初めてだから不安だなぁ……。
よし、幻術にしよう。
光の屈折を使えばそれっぽく見せられたはず!


「物は試しって言うし…やっちゃおう!

『夢、礎となりてここに願い奉る。

夢へと誘うその華は何を望み何を願い何を見る。
その先に繋がるものは何も無く。
あなたは過去をさまよい歩く。
さぁ、お行きなさい。
全ての夢の集うあの先へ』」


様々な夢が私を通り過ぎる中、私が望む光景を探す。
私へと氷が迫ってくるのが分かる。
それでも私は探し続ける。
その中で、見つけた。
ようやく決まった。


「『夢への扉は今
ここに開かれる。
さぁ旅立って。
全ての夢見る者達よ!』」


…ギリギリだが間に合った。
私の前に火焰が輝き冷たく凍る会場を溶かしていく。
その火焰は以前、Sクラスである生徒が使用したものだった。
これを探すのに本当に苦労した。

これはただの幻術でしかない。
ただ、不思議だよね?
術者の思い1つで簡単に魔法は打ち消される。
…今回はそれを狙っただけ。


「……火属性、使えたのか……」

『凄い、凄いぞ!?
1年、ルシャーナは火属性まで使えたのか!?』

「残念ながら、これは火属性じゃありませんよ?
ただの幻術ですから」


私がパチンと指を鳴らすと魔法は解除される。
そして、私の本当の位置がバレる。
だが、すでに遅い。
何故なら私はレアン先輩の背後にいるのだから。
私は風で先輩を縛り上げ身動きが取れないようにした。


『な、ななな何と!!
優勝候補、氷の貴公子レアン・ダルヴィンが……1年、光の結界師ルシャーナに敗北したぁぁぁぁぁ!?
どうなっているんだ!?』


そんな実況が入ったのを確認して、私はステージを降りた。


「……待て。
お前は…無属性持ちなのか?」

「先程のものは聖属性の応用ですよ?」


そう答えて今度こそ、私は控え室に戻った。


「ルー!
見ましたわ!
何ですのあれは!」

「お姉ちゃん、お疲れ様!」

「ありがとう、エリー。
幻術は聖属性の応用。
まず、結界を貼ってからパウルの魔法をコピーした絵を結界に貼り付けただけ。
それを本物っぽく見えるように結界の形状を不安定にしながら幾つも重ねたんだよ。
火花に関してはその貼り付けた結界を上に貼ってそれを粉々に砕きながら散らしていただけ。

……ね?
簡単でしょう?」


私はニッコリと笑うとリマはポカンとしていた。
……変な事でも言っただろうか?


「……おかしいですわ!?
何かおかしいですわ!
本来であれば難しいと感じるものが簡単のように聞こえますわ!!
はっ……ま、まさかルーに侵されて!?」

「リマ、それはさすがに酷くない?」


地味に傷つく……。
リマは思い出したように袋を取り出した。
その中にはお金が入っていた。


「…ルーに頼まれ、買っておいたものですわ。
引き換えまで済ませておきましたの」

「ありがとう、リマ!」


リマから袋を受け取ると私はその半分を残し残りは転移で自分の部屋に置いた。
それを見ていたリマとエリーはため息をつくと、リマは次の試合へと向かった。


「…じゃあ、リマの券買いに行ってくるよ」

「あ、私も行く~!」


私とエリーはそれぞれリマの券をそれぞれ100枚買うと控え室に戻らずリマの応援をすることにした。
リマの相手は2年らしい。
見てみるとどうやらリマが押されているようだった。


「リマ!
頑張れ~!!」

「リマーニさん!」


私とエリーが応援している事に気付いたのかリマはうっすらといつもの笑を浮かべた。


「…こんなところで負ける訳にはいきませんの!

『清き水達よ。
私に力を貸してください。
私の願いは友の声に答えること!
偉大なる水達よ
私の魔力を糧に私の声に答えてくださいまし!』」


そんなリマの声に従うように水は大きな波となり2年生に襲いかかった。
……結果は場外という事でリマの勝ち。
私とエリーはすぐに控え室へと戻った。
リマを労うために。


「リマ!
お疲れ様。

『優しき光よ。
私の願いのもとに彼女の傷を癒して』」


少しだけ省略し魔法を使用した。


「……今更だけどさ…。
光の結界師ってどうにかならないかなぁ……?」

「……私も南海の女王というのはやめて欲しいですわ……」


……なんとも言えない表情をする私達だった。

そして、エリーの試合は簡単に決まった。
火で剣をつくりそのまま首元に当て終了だ。


……そんなエリーの呼ばれた名は…。

『炎剣の騎士』

だった。
……帰ってきたエリーは蹲っていた。

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