婚約破棄?喜んでお受け致します!

紗砂

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私がカインと話している時だった。
騎士団がバタバタとし始めた。
その異様さに私は首を傾げる。


「……何かあったのでしょうか?」


今まで城に来た中で、こういったことは初めてだった。
カインも何やら顔を顰めているし、何かあったことは確実だろう。


「おい、そこの騎士!
一体何があった!」

「は……で、殿下!?
は、はぐれ竜が出現致しました!
現在、動ける者は全て収集され、北門に集められています!」


動ける者全て、そう言われ思い出すのはお兄様のことだった。
私たちの中で、唯一その場に残されたお兄様。
昼間で私が戦力とならない今、この中で一番の戦力になるのは間違いなくお兄様だった。
カインも強いが彼は王太子で、守られる存在だから。


「ヴォルはどうした!」

「先程、レヴィン公爵と共に北門へ向かいました」

「なっ……」

「嘘っ……」


それは、お兄様が戦いの場に向かったということ。
はぐれとはいえ竜は竜。
圧倒的な力の差がある。
そんな所に、お兄様が向かった。
分かっているはずだった。
お兄様が一番適任なことは。


「それは、誰の命令だ?」

「そこまでは……」

「……そうだな。
いや、済まない。
邪魔をした、仕事に戻ってくれ」

「はっ!
失礼します!」


騎士が行った後、私とカインの表情は暗かった。
そして、私は不意に空を見上げた。


「あっ……」


そこには、月が出ていた。
所謂白夜月というものだった。
月が見えているのであれば、私の魔法は使える。


「カイン、私はお兄様とお父様のもとへ行きます。
月が出ているのなら、私はお兄様よりも強いですから」

「……僕も行くよ。
少なくとも、ルナを守ることは出来る。
それに、大切な婚約者を一人で危険なところに行かせることは出来ないからね」

「いけませんわ。
カインは王太子ですもの。
誰よりも守られなければなりません」

「ルナ。
それが認められないのなら、行かせられない。
私は、ルナがいないのならば王になんて興味はない。
ルナをこの手で守れぬのなら王太子の座なんてルイスに渡そう」


カインの表情は真剣そのもの。
とても折れてはくれないだろう。
そのうえ、向こうに行ったとしてもお兄様やお父様から怒られるだけだろう。
ならば、カインと共に行った方が安全ではあるだろうし、矛先も……。


「……分かりました」

「じゃあ、急いで向かおうか。
馬車よりも走った方が早い。
ルナ、大丈夫……じゃなさそうだね」

「走るよりももっと早い方法がありますから。
……転移します。
少々心もとないですが、そのくらいならば問題なく使えるはずです」


転移は歴代の月持ちの中でも使えた者はかなり少数だ。
私はその原因は教会にこそあると思っているが。
まぁとにかく、使えるのなら使っておこう、ということだ。
2人ならばそう消耗もしないので問題はない。
問題があるとすれば、痕跡が残るということだけ。
教会にバレるかもしれない。
だが、それでもお兄様を見捨てるよりずっといい。


「は?
いや、ちょっと待て、ルナ」

「……申し訳ありません、カイン。
もう既に発動してしまいました」


私はカインの静止を聞かず、無詠唱で転移魔法を行使した。


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