脇役だったはずですが何故か溺愛?されてます!

紗砂

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お礼まわりと兄

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そして、次の日。

私は早めに登校した。
理由は3人にクッキーを渡すためだ。
愛音はまだいいとしても天也と奏橙に渡すのが大変になってしまうのだ。
あの2人が令嬢達に人気な理由は私にはやはり理解出来ないのだが……。

やはり家だろうか?

天野家は世界進出している財閥だし、神崎家は世界有数のホテル会社だし。
そう考えれば私の人気もそこそこあるのが分かる。
私の家は客船会社で更にはリゾート開発などのこともやっているし。

教室に入ると天也が初めに私に気づいた。


「おはよう、咲夜。
いつもより早くないか?」

「そうだね…。
よくあの悠人先輩が許したよね…」

「おはようございます、咲夜」


奏橙の兄へのイメージどうなってるんだ……。
……シスコンだろうね、分かっているとも。


「おはようございます。
今日は皆さんにお渡ししたいものがあったので少し早めに来たんです」


そう言って私は鞄の中からクッキーの包みを3つ取り出した。


「先日はご迷惑をお掛けしたのでお詫びに作って来たんです。
良かったら食べてください」


天也と愛音は驚いたようだったが奏橙は何故かニコニコしていた。
それぞれ渡していくと奏橙がこんな事を訪ねてきた。


「これ、咲夜の手作り?」

「えぇ、そうですわ。
あ……もしかして手作りのものは駄目でしたか?」

「あ、そういうわけじゃないんだ。
ありがとう、後で食べさせてもらうよ」


焦ったぁ……。
天也や奏橙には手作りのものとかあげた事なかったんだよなぁ…。
誕生日には大抵お店のお菓子でいいにしちゃうし。
だから潔癖症とかだったらどうしようって焦ったぁ……。


「咲夜の…手作りか…」


……何故か天也が嬉しそうだった。
良くわからないけど…手作りのものの方が良かったのか?
なら誕生日のプレゼントとか手作りのお菓子の方がいいかな?


「天也……嬉しいのは分かるけど少しは隠したらどう?」


……奏橙が苦笑しながら天也をからかうように口にすると天也は慌てて私に弁解した。


「い、いや!
違う、違うぞ!?
そ、そうだ!!
ただ、手作りの方が作った奴の気持ちが篭ってるみたいでいいってだけだからな!
勘違いするなよ!?」


その慌てように思わず笑ってしまうのは仕方ないと思う。
何を勘違いするのかは分からないが、私が笑っているのを天也は困ったように、だがどこか嬉しそうに微笑んだ。


「ふふっ…天也がそんな事を言うだなんて珍しくてつい笑ってしまいましたわ。
ですが喜んでくださったようで良かったです」

「っ~!!
まぁ、咲夜から手作りのものを渡されるなんて初めてだったからな…」


そんな事を言う天也の顔は心なしか赤くなっているような気がした。
その様子にふふっと笑うと何も言わずにそっとしておいた。
色々と恥ずかしかったのだろう。

そして、いつものように昼食の時間、先輩達と食事を共にする。

……やはり兄は大学で食事をとる気は無いようだ。
そして、それに巻き込まれる先輩達にも申し訳ないものを感じるのだが。


「咲夜さん、クッキーありがとうございます。
美味しく頂かせていただきますね」

「海野さん、僕にまでありがとう。
悠人が
『僕の可愛い天使が作ったクッキー。
涼太には勿体ないものだけど…』
なんて渡してきた時には驚いたけど……」


兄よ……。
もう少し渡し方があっただろうに……。
それと私は天使じゃない。


「あ、僕もそれ言われた。
僕の時は家宝にしろ、とも言ってたなぁ…。
遅くなったけど、咲夜ちゃんありがとう。」


……兄に頼んだのがいけなかったのだろうか?
家宝にしろとかさすがにおかしすぎはしないか!?
というか、家宝にしたら腐る!
材料が勿体ないじゃないか!!


「咲夜、クッキー美味かった。
サンキューな」


鬼龍院先輩はもう食べたの!?
早くない!?
っていうか、学校で食べちゃ駄目じゃないの!?
大学だからいいのか?


「咲夜、これからお菓子をあげる人はちゃんと選ばなきゃ駄目だよ?
如月さんはともかく…涼太や燈弥、先輩、そこの害ちゅ……天野と神崎には勿体なさすぎるからね」


兄よ…今さらっと天也と奏橙を害虫と言いかけたきがするのだが……。


「…悠人、さすがに本人がこの場にいる時に言うなよ…。
咲夜ちゃんも引いてるぞ……」


ごもっともで。
確かに本人がいる時に言う事じゃないな。

……本人がいなくてもダメだと思うが。
そんな兄に対し、私はいつものようにお願いをする。


「お兄様、駄目…ですか?」

「…咲夜からのものは勿体なさすぎるからね」

「……お兄様に美味しいものを食べていただきたいので試食をお願いするのも駄目でしょうか…?」


物は言いようってよく言うしね。
兄にはこの言い方が1番いいだろうって事は良く知ってる。


「さ、咲夜…!!
そこまで僕の事を…!!」

「……駄目、ですか?」

「仕方ないなぁ…。
試食位なら…勿体ないけど…仕方ないから許すよ」


物凄く機嫌のいい兄はやはりいつも通り私の頭を撫でてくる。
………そろそろ子供扱いするのも辞めてもらいたいものだ。

そんな私達兄妹のやり取りを先輩方は驚いたように見ていた。


「…海野さん、悠人の扱いに手馴れてるね…」

「まぁ、悠人の妹だからね…」

「咲夜が大学にいればいいんだけどな……」


……鬼龍院先輩、兄が何かやらかしてるんですね……。
朝霧先輩はどういう意味ですか!!
白鳥先輩は…うん。
いつもご苦労様です…。
うちの兄がご迷惑をお掛けしています…。

何故か物凄く謝りたくなってきた。


「皐月先輩、後で少しだけ相談したいことがあるのですが……」

「あら…。
えぇ、分かりましたわ。
そうですね……放課後でよろしいですか?」

「はい!
ありがとうございます」


土曜日に兄と水族館に行くときの服装とかアドバイス欲しかったんだよね。
あと、兄の誕生日が近いからどこか夜景の綺麗な店を知りたかったんだよね。
皐月先輩ってそういうの詳しそうだし。
私より全然センス良いし。


「咲夜、僕じゃ駄目なのかい?
僕はそんなに頼りないのかい?」

「お兄様、すいません、今回はお兄様には秘密です!」

「えっ……。
さ、咲夜!?
僕はそんなに……」


あ……落ち込んじゃった。
相変わらず浮き沈みの激しい兄だなぁ。

兄が落ち込んだまま昼休みが終了し、朝霧先輩と白鳥先輩が2人で兄を運んで行ったのを見送ったあと、4人で教室に戻る。


「咲夜、良かったのか?
悠人先輩の事」

「えぇ、流石にお兄様には言えませんもの」


だって兄の誕生日、サプライズにしたいのに本人に言えるわけないじゃん。
あと、水族館に行く時の服装とか……。


「咲夜……お前、遅い反抗期かなにかか!?」

「違います!
……もうすぐお兄様のお誕生日ですの。
なので皐月先輩に何かアドバイスをいただけないかと思ったんですの。

本来なら朝霧先輩に聞きたいのですけど……お兄様がそれだけは許しませんから」

「「あぁ…」」


天也と奏橙の2人に納得された。
……こうなると兄のシスコンがもう少し和らいでくれたらと願わずには居られなくなるのだが。


「話が変わるのですが……愛音、弟がいましたよね?」

「え?
あ、いますけど……どうかしたんですか?」


愛音はいきなり自分に話を振られ驚いたあと、不思議そうに答えを返した。


「クッキーが余ってしまったので良かったらと思ったんですの」

「え!?
魁斗には勿体ないですよ!」


勿体ないって……兄と同じ事を言ってる……。


「余ったものですから…申し訳ありませんが…」

「…分かりました。
渡しておきますね。
ありがとうございます、咲夜」


愛音は私からもう1つのクッキーを受け取ると大切そうに鞄にしまった。
うん、これでクッキーは片付いた。


そして放課後。
私は皐月先輩に相談にのってもらっていた。


「夜景の綺麗なお店…ですか……。
でしたらスカイツリーの中にあるお店はどうでしょうか?」


話を聞いてみると結構良さそうなレストランだった。
今度誰かを誘って下見にでも行くとするか。


「皐月先輩、水族館に行く時はどのような服装を選んだらいいのでしょうか…?
今度、お兄様と行くことになったのですがよく分からなくて…」


すると皐月先輩はクスリと笑って色々とアドバイスをくれた。
ちなみに、私と兄が今度水族館に行くというのは大学ではほとんどの者が知っているらしい。

……理由は簡単。
兄が話したからだ。
あのシスコン兄め。

兄の大学での様子を聞くたびに私の神経がすり潰されるのはもう仕方ないだろう。
兄のシスコンにも困ったものだとつくづく感じる。


「皐月先輩、今日はありがとうございました」

「咲夜さん、頑張ってくださいね」

「はい!」


兄の機嫌を直すのを頑張ります!
先輩に迷惑をかけないためにも!!

家に帰ると案の定、どんよりと重い空気を漂わせた兄が待っていた。


「…おかえり、咲夜。
頼りなくて駄目な兄でごめんね……。
僕じゃ咲夜の力になれないんだね……」


なんて出迎えられた時には恐怖を感じた。
まさか兄がそこまで思いつめているとは思って居なかったのだ。


「お兄様!
そ、そんな事ありません!
お兄様は頼りなくなんてありませんから!
今回はただお兄様に話せないような事だっただけですから!」

「……咲夜様、流石です。
自然にトドメをさしに行くとは……」


清水が私の後ろでそんな事を言った。
慰めたつもりだったのだが兄は相当のショックを受けたようだった。
……仕方ない、こうなったら片方の相談だけ教えるか。


「…お兄様…わ、笑わないでくださいね?」

「咲夜……こんな駄目な兄に言ってくれるのかい?」


だって言わなきゃ立ち直らないじゃないか!
だったら言うしかないじゃん!!


「…ど、土曜日のお兄様とのお出かけの際の服装のアドバイスをいただきたかったんです……。
変な服装でお兄様に恥をかかせるわけにはいきませんでしたから……」


うぅ……恥ずかしい……!
恥ずかしすぎる!!
だって、これじゃあ私がブラコンみたいじゃないか!
いや、まぁ確かに兄の事は嫌いか好きかって聞かれたら好きだけどさぁ……。


私が相談の内容を明かすと兄は驚いたように目を見開いたあと、嬉しそうに微笑んだ。
そして私を抱きしめてきた。
それはもう、先程までの落ち込んだ様子が演技だとしか思えない程に。


「お、お兄様!?」

「咲夜!
僕の可愛い可愛い天使はどんな服装も似合うに決まってる!!
なのに僕のためにそんな考えてくれているだなんて……!!
あぁ…もう本当に咲夜は可愛すぎる!!」


あ、あ……兄が…兄が遂に壊れたぁ!!
どうしよう?
怖い、怖すぎる!!
兄が怖すぎて辛い!!
誰か助けてくれ!!

助けを求め清水に視線を送ると目を逸らされた。

結局その日は高校生にもなって兄と一緒に寝る羽目になったのだった。

……なんの罰ゲームだ!
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