53 / 87
デート?
しおりを挟む今日は天也と約束していたデートの日だ。
まだ付き合ってはいないけど。
そのせいか朝から私は浮かれていた。
「清水、ほ、本当にこれでいいのかしら…?」
私は先程から清水の選んでくれた服を着て鏡の前で見ていた。
「お嬢様の可愛らしさが十二分に発揮されているかと思います!」
「……そ、そう?
天也も可愛いと言ってくださるかしら……」
「お嬢様でしたら大丈夫です!」
清水がそう言ってくれるのなら大丈夫な気がしてくる。
私は深呼吸を何回かしたあと、清水に車を出してもらい予定時間よりも少し早くに待ち合わせ場所に到着した。
時間を見ると7時30分……まだあと30分もある。
「……まだ、時間がありますわね」
そうは呟いたもののする事もないので取り敢えず座っている事にした。
残り30分、暇だなぁ……などと思いつつも楽しんでいる私がいる事に驚く。
「咲夜」
「……った、天也……おはようございます」
「あぁ、おはよう」
天也は私を見るとフッと微笑んだ。
私はそんな天也の顔にやられてしまいそうになる。
分かっていてやっているのだとしたら脅威的だ。
「早くありませんの?」
「咲夜も同じだろう……。
まだ30分もあるぞ?」
それは、確かにそうだが。
「まぁ、咲夜に会いたかったからな」
「……そうですか」
私は少しだけムッとした様に口にしたがすぐに笑みを浮かべ立ち上がった。
「悪いな。
遅くなったが…その服、似合ってる。
可愛いと思うぞ」
少しだけ顔を赤く染めたながらも口にした天也の言葉に私まで顔を赤くさせられそうになる。
「……ありがとうございます」
私は、あまりの恥ずかしさについ俯いてしまうがそれでも天也は嬉しそうに目を細めた。
「咲夜、今は素でいいんだぞ?」
「そう、だね。
じゃあ、お言葉に甘えて…」
「あぁ、行くぞ」
「うん」
私は天也が差し出してきた手を取ると歩き出した。
前回はまだ恋愛感情なんていうものを理解していなかったこともあり全く緊張などしなかったのだが今は理解してしまったせいか緊張で押し潰されそうになる。
こうして、天也と2人で歩いている、それだけなのに恥ずかしくなってくるのはデートという特別な時間だからだろうか?
「咲夜、さっきから俯いてるが……どうかしたか?」
心配そうに見つめてくる天也に私はしまったと思いバッと顔をあげ、おずおずと理由を口にした。
「……別に。
ただ、今回は少し緊張するなって思っただけ。
前回は全然気になんなかったのにね」
「っ……俺は前回の時も緊張したんだぞ?」
天也の意外な言葉に私は戸惑う。
そして口にしたのが……。
「それは……まぁ、ごめん……?」
「何で疑問形なんだよ…」
天也にツッコまれ、ついつい笑ってしまうと天也も私につられて笑っていた。
私は幸福感をおぼえながら遊園地へと向かうのだった。
「それにしても……咲夜が遊園地へ行きたいなんて意外だったな…」
「……本当は何処でも良かったんだけどね」
私は天也に聞こえない程度の声で呟いた。
確かに天也の言う通り、私は遊園地にはあまり興味はない。
…んまぁ、楽しいとは思うかもしれないが。
そんな中、私が天也を誘った理由はただ1つ。
デートをしたかっただけだ。
そんなこと、天也に言える訳もなく……。
デートならばやっぱり天也を振り回してやろうと選んだのが遊園地だっただけだ。
「私だって偶にはそういうところに行きたいと思うし…」
だって、前に清水にデートスポットとか聞いたら遊園地や水族館って言ってたし…。
それに、確かに前世でもデートスポットとして聞いた事あったし……。
客船の下から魚が見れたので水族館は今回やめておいた。
その結果が遊園地なのだ。
「……私にとっては天也こそ意外だったけど。
まさか付き合ってくれるとは思って無かったからね」
天也は遊園地では断るかな、と少し心配していたのだ。
まぁ、杞憂に終わったが。
「俺は咲夜とならどこにでも行くさ」
「っ……だから!
そういうのはズルいって…」
突然そんな事を言われるとこっちが恥ずかしさのせいで死ぬ。
ただでさえ恥ずかしいってのに……。
まぁ、最初よりは幾分マシになった方だと考えよう。
「俺は咲夜のいうズルい事に何年も耐えてきたんだがな……」
「うっ……仕方ないじゃん。
気付かなかったんだもん…」
確かに気付きそうなところは幾つもあった……ような気もするがあの時の私は乙女ゲームという事で私に恋愛フラグなんて立たないと思っていたのだ。
しかも容姿も頭も人並み以下しかない私の事を誰が好きになると思うだろうか?
しかも、攻略対象の天野天也だ。
絶対に無い。
普通、攻略対象者ならヒロインである愛音を好きになるだろう!
という思いもあったせいだと思う。
それとあれだね、私の死亡フラグも気になってたし。
それらが重なってなければ私だって気付いた……はず!
……気付いた、よね?
「あぁ、でも鈍感って調べてきた時は驚いたな」
私はその時の事を思い出して顔を背けた。
あの時は何を言っていたのか意味が分からなかったのだ。
今はそんな事はないと言える。
「まぁ、そういうとこも可愛いと思うが…」
「だ・か・ら!!
そういう事は言わないでってば…!」
そういいつつも私の表情は明るかった。
それはそうだろう。
好きな人に可愛いと言われて嬉しくない者なんていないだろう。
「パートナーを申し込んだ時点で気付くと思ってたんだが…俺がパートナーを頼んだ時どう思ってたんだ…」
私はその時のことを思い出し、正直に口にした。
「……頼める友人がいないんだなぁって。
それと、他の令嬢から逃げるためには立場的に私が丁度良かったのかなぁ…って思ってたよ」
「それであの目か!?」
あの目、とはきっと可哀想なものを見るような目のことだろう。
私は何も言えずに視線を逸らした。
「俺にだって友人くらい1人や2人いるぞ」
「…それでも少ないと思うけど」
「なら、咲夜は何人いるんだ?」
「…7、8人くらい?」
私と天也は無言になった。
自分で口にしておきながら友人の少なさに傷ついているのだ。
まぁ、あまり気にしない……わけがない。
大いに気にする。
「……忘れるか」
「…そうだね」
私と天也は即刻記憶から消し去った。
友人は量より質だよね!
…はぁ。
遊園地に着き、チケットを買うと中に入る。
「咲夜、どれから乗る?」
「うーん……どうしよっか?
天也って絶叫系大丈夫だっけ?」
「あぁ、大丈夫だ」
「じゃあ、絶叫系行く?」
「いいぞ」
と、いう事で、だ。
私達はジェットコースターに乗っていた。
上まで来るとこの辺の景色が見渡せる。
だが、流石に少しだけ肌寒いと感じながらも私達は落ちていくのだった。
「咲夜、行きたいところがあるんだがいいか?」
「勿論。
行こ、天也」
私が笑いかけると天也もフッと笑った。
その表情に少しドキッときたのは内緒だ。
「……って、お、お化け屋敷…」
私は少しだけ顔を引き攣らせていた。
当たり前だろう。
私はそういったものが苦手なのだから。
「あ…こういうのは苦手か?」
当たり前だ。
私はホラー系が大の苦手だ。
だが、子犬のような目をしている天也に誰が言えるだろうか?
「そ、そんな事ないよ。
行こ」
その結果…私は自らお化け屋敷の中へと入ることになった。
「……咲夜」
「……ありがと」
中に入ると、私が物音に敏感になっている事が分かったのだろう。
天也が手を差し出してきた。
私はビクビクしながらもその天也の手を握る。
少しひんやりとした空気の部屋という事と苦手なお化け屋敷の中だという事もあり、いつもよりも天也が頼もしく感じる。
そんな時だった。
壁の向こうからドンドンと叩くような音が聞こえてきた。
「ひゃっ!」
その音に敏感に反応した私は咄嗟に天也に抱きついてしまったのだ。
「さ、咲夜!?」
天也の慌てた声すらも届かなくなるほどに私は怯えていた。
私はブルブルと小刻みに震えていたのだが、ポンと私の頭に天也の大きくて暖かな手がのった。
「咲夜、大丈夫か?」
私は天也の優しい声にコクリと無言で頷くと今更ながら抱きついていた事に気づきバッと手を離した。
そんな私にククッと面白そうに天也は笑うと先程よりもしっかりと私の手を握って歩き出す。
そこに天也なりの気遣いを感じ、嬉しく思うのだった。
10
あなたにおすすめの小説
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
料理スキルしか取り柄がない令嬢ですが、冷徹騎士団長の胃袋を掴んだら国一番の寵姫になってしまいました
さら
恋愛
婚約破棄された伯爵令嬢クラリッサ。
裁縫も舞踏も楽器も壊滅的、唯一の取り柄は――料理だけ。
「貴族の娘が台所仕事など恥だ」と笑われ、家からも見放され、辺境の冷徹騎士団長のもとへ“料理番”として嫁入りすることに。
恐れられる団長レオンハルトは無表情で冷徹。けれど、彼の皿はいつも空っぽで……?
温かいシチューで兵の心を癒し、香草の香りで団長の孤独を溶かす。気づけば彼の灰色の瞳は、わたしだけを見つめていた。
――料理しかできないはずの私が、いつの間にか「国一番の寵姫」と呼ばれている!?
胃袋から始まるシンデレラストーリー、ここに開幕!
王宮の万能メイド、偏屈魔術師を餌付けする
葉山あおい
恋愛
王宮で働く勤続八年のメイド、エレナ・フォスター。仕事は完璧だが愛想がない彼女は、いつしか「鉄の女」と呼ばれ恐れられていた。
そんな彼女に下された辞令は、王宮の敷地内にありながら「魔窟」と呼ばれる『北の塔』の専属メイドになること。そこの主である宮廷魔術師団長・シルヴィス・クローデルは、稀代の天才ながら極度の人嫌い&生活能力ゼロの偏屈男だった!
ゴミ屋敷と化した塔をピカピカに掃除し、栄養失調寸前の彼に絶品の手料理を振る舞うエレナ。黄金色のオムレツ、とろける煮込みハンバーグ、特製カツサンド……。美味しいご飯で餌付けされた魔術師様は、次第にエレナへの独占欲を露わにし始めて――?
意地悪な聖女や侯爵夫人のいびりも、完璧なスキルで華麗に返り討ち。平民出身のメイドが、身分差を乗り越えて幸せな花嫁になるまでの、美味しくて甘いシンデレラストーリー。
「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!
野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。
私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。
そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。
【完結】財務大臣が『経済の話だけ』と毎日訪ねてきます。婚約破棄後、前世の経営知識で辺境を改革したら、こんな溺愛が始まりました
チャビューヘ
恋愛
三度目の婚約破棄で、ようやく自由を手に入れた。
王太子から「冷酷で心がない」と糾弾され、大広間で婚約を破棄されたエリナ。しかし彼女は泣かない。なぜなら、これは三度目のループだから。前世は過労死した41歳の経営コンサル。一周目は泣き崩れ、二周目は慌てふためいた。でも三周目の今回は違う。「ありがとうございます、殿下。これで自由になれます」──優雅に微笑み、誰も予想しない行動に出る。
エリナが選んだのは、誰も欲しがらない辺境の荒れ地。人口わずか4500人、干ばつで荒廃した最悪の土地を、金貨100枚で買い取った。貴族たちは嘲笑う。「追放された令嬢が、荒れ地で野垂れ死にするだけだ」と。
だが、彼らは知らない。エリナが前世で培った、経営コンサルタントとしての圧倒的な知識を。三圃式農業、ブランド戦略、人材採用術、物流システム──現代日本の経営ノウハウを、中世ファンタジー世界で全力展開。わずか半年で領地は緑に変わり、住民たちは希望を取り戻す。一年後には人口は倍増、財政は奇跡の黒字化。「辺境の奇跡」として王国中で噂になり始めた。
そして現れたのが、王国一の冷徹さで知られる財務大臣、カイル・ヴェルナー。氷のような視線、容赦ない数字の追及。貴族たちが震え上がる彼が、なぜか月に一度の「定期視察」を提案してくる。そして月一が週一になり、やがて──「経済政策の話がしたいだけです」という言い訳とともに、毎日のように訪ねてくるようになった。
夜遅くまで経済理論を語り合い、気づけば星空の下で二人きり。「あなたは、何者なんだ」と問う彼の瞳には、もはや氷の冷たさはない。部下たちは囁く。「閣下、またフェルゼン領ですか」。本人は「重要案件だ」と言い張るが、その頬は微かに赤い。
一方、エリナを捨てた元婚約者の王太子リオンは、彼女の成功を知って後悔に苛まれる。「俺は…取り返しのつかないことを」。かつてエリナを馬鹿にした貴族たちも掌を返し、継母は「戻ってきて」と懇願する。だがエリナは冷静に微笑むだけ。「もう、過去のことです」。ざまあみろ、ではなく──もっと前を向いている。
知的で戦略的な領地経営。冷徹な財務大臣の不器用な溺愛。そして、自分を捨てた者たちへの圧倒的な「ざまぁ」。三周目だからこそ完璧に描ける、逆転と成功の物語。
経済政策で国を変え、本物の愛を見つける──これは、消去法で選ばれただけの婚約者が、自らの知恵と努力で勝ち取った、最高の人生逆転ストーリー。
王太子に理不尽に婚約破棄されたので辺境を改革したら、王都に戻ってきてくれと言われました
水上
恋愛
【全18話完結】
「君は中身まで腐っている」と婚約破棄されたエリアナ。
そんな彼女は成り行きで辺境へ嫁ぐことに。
自身の知識と技術で辺境を改革するエリアナ。
そんな彼女を、白い結婚のはずなのに「膝枕は合理的だ」と甘やかす夫。
一方、エリアナを追放した王都では、彼女の不在の影響が出始めて……。
プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)
犬野きらり
恋愛
私、ミルフィーナ・ダルンは侯爵令嬢で二年前にこの世界が乙女ゲームと気づき本当にヒロインがいるか確認して、私は覚悟を決めた。
『ヒロインをゲーム本編に出さない。プロローグでケリをつける』
ヒロインは、お父様の再婚相手の連れ子な義妹、特に何もされていないが、今後が大変そうだからひとまず、ごめんなさい。プロローグは肩慣らし程度の攻略対象者の義兄。わかっていれば対応はできます。
まず乙女ゲームって一人の女の子が何人も男性を攻略出来ること自体、あり得ないのよ。ヒロインは天然だから気づかない、嘘、嘘。わかってて敢えてやってるからね、男落とし、それで成り上がってますから。
みんなに現実見せて、納得してもらう。揚げ足、ご都合に変換発言なんて上等!ヒロインと一緒の生活は、少しの発言でも悪役令嬢発言多々ありらしく、私も危ない。ごめんね、ヒロインさん、そんな理由で強制退去です。
でもこのゲーム退屈で途中でやめたから、その続き知りません。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる