脇役だったはずですが何故か溺愛?されてます!

紗砂

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夕食を……

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気付くと辺りは暗く染まり、お腹も空いてきた。
私と同じ思いであったのか天也は少し言いにくそうに口を開いた。


「さ、咲夜……その、よ、良かったら夕食を……いや、何でもない」


そこでやめるのか、などと天也のヘタレ具合にクスッと笑みを零すと私が天也に誘いかけた。


「お腹がすきましたわ。
もしよろしければどこかで夕食を取りませんか?」

「……あぁ」


天也は少し不本意ながらも頷いた。
そんなところでさえも好きだと感じてしまうのだから恋というものは本当に恐ろしいものである。

天也のススメで私達はフランス料理の店にきた。

……予約してあったのなら、そう言ってくれれば良かったのに。
そこが、天也らしくもあるのだが。

どうやらこの店には個室があるらしく、私達はそこに案内された。


「咲夜……ドイツで他の男にうつつを抜かしたりは……」

「しませんわよ!!
天也は私を何だと思っていますの!?」


失礼な奴だ。
いや、確かに私が好きだとかそういった事を口にすることは少なかったかもしれないが……。
だが、だからといって流石にそれは酷いのではないだろうか?
今日、告白したばかりだというのに。


「悪いな……ただ、俺がそばにいられないからな……心配なんだ。
悪い虫がつくかもしれないからな」

「……それを言うのでしたら、天也もですわ。
天也は、人気もありますし……」


私よりも天也の方が心配な事が多い。
天也は世界的にも有名な天野家の人間だし……。
格好良いし……可愛いところもあるし……ヘタレなとこもあるけど優しいし……。

そんな事を考えれば考えるほど私の鼓動は早くなり、体温が上がっていくのを感じる。


「俺には咲夜だけだ」


酷く、甘い声だった。
蕩けそうな程に甘く、優しい声は私の胸をギュッと締め付ける。
余計に鼓動が早くなり、顔が赤くなっていくのを感じる。

そして、改めて理解する。
いや、そう、理解させられる。

私は、どうしようもないくらいにこの人が……天也の事が好きなんだと。
愛してしまっているのだと。

そう思うとストンと心に入り、心が軽くなった気がする。
それなのに、その天也の表情を見るだけで再び取り乱してしまう自分がいる。

あぁ、本当に恋というものは厄介だ。


「俺は咲夜以外を好きになるつもりはないし、愛せるとは思えない。
咲夜だけが俺の特別だ」


その言葉と笑顔、雰囲気……全てが私を深くまで墜す。
苦しくて甘い、恋という名の穴へと突き落とす。
その先にあるものへ私はただ手を伸ばし、より深くへと堕ちていくのに気付きながらもそれを止める事はない。
ただされるがままに深く嵌っていく。


「……わ、私も、私も、天也だけですわ。
天也以外が私の隣にいるだなんて……考えられませんわ」


私はうっすらと、笑みを浮かべる。

羞恥で顔を赤く染めながらも口にした言葉は私にとって大きな勇気が必要であった。

そんな私の言葉に目を見開いてから天也は嬉しそうに笑った。


「嬉しい、な……。
悠人先輩の気持ちが分かる気がするな……」

「お兄様のようにはならないで欲しいですわ」

「それは無理な話だ」


たわいもない話だったがそれだけで心が満たされたように感じるのは決して気の所為では無いのだろう。


「それにしても……本当に嘘のようですわ……」


あの、初等部での最初の出会いと比べると、とても現実だとは思えない。
それ程までに、私は天也が好きだし、天也との距離も近くなっていた。


「あぁ……最初の頃は避けられていたからな……」

「そ、それは忘れてください!
それに、仕方ないじゃありませんの……。
あの頃は面倒だと思っていたんですもの……というか、気付いていたのに近付いて来ていたんですの!?」


だって、天也と居ると天也のファンから目をつけられるのだ。
それで面倒事に巻き込まれた事が何度あっただろうか……。
特に兄の暴走によるものではあったが。

だが、気付いていたのに近付いてくるとは……余程神経が図太い人ではないと出来ないだろう。
逆に、天也の神経が図太くなければ、私たちは今の関係にはなっていなかったということだろう。
そう思えば申し訳ないと思うよりも嬉しさの方が勝ってしまう。


「……まぁな。
それより、面倒って……本人の前で言うか?」

「昔の事ですもの。
今は、その『面倒事』も楽しんでいますし」


何故なら、その面倒事は天也の想いが私にあるからこそのものなのだ。
ならばそう悪く考える事はない。
負け犬の遠吠えだと考えてしまえばいいのだ。
私に嫉妬しているだけなのだ。
そんなもの放っておいて何の問題もない。

まぁ、あまりにやりすぎると兄が暴走するので止める事はしないといけないのだが。
今は天也も兄と一緒になってやりそうなのでそれが怖くもあるがそれだけ愛されているという事なのだと考えると嬉しくもある。


「俺としては心配しかないんだがな……」

「ふふっ、私を好きになってしまったんですもの。
仕方ありませんわ。
諦めて振り回されてください」

「本当に……咲夜は俺を振り回すのが好きだな」


私は冗談交じりに明るく悪うと、天也は呆れたように口にする。
私を墜したのだ。
それくらいは耐えて欲しい。


「だが……咲夜に振り回されるのなら悪くない。
思う存分、振り回してくれ」


天也は心からそう思っているようだった。
本当、天也と話していると調子が狂わされる。
しかも、本人がそれを意識していないのがまたムカつくところだ。

そこで、料理が運ばれてきて、私達は優雅に食事を始める。
普段であれば全くと言っていいほど気にしない食事マナーも今ばかりは大いに気にしていた。

ただ、店内のBGMだけが流れている。

食事が終わるにつれ、もっと一緒にいたい、もっと話していたい、もっと……。
そんな思いが私の胸の中で渦巻いて、胸の奥をギュッと締め付ける。

今まであった幸福感がまるで嘘のように消え去り、ただただ苦しみ、寂しさだけがこみ上げてくる。

あぁ、恋がこんなにも苦しいものだっただなんて……。

ついこの前まで恋なんて知らなかったのに。
こんな想いなんて知らなかったのに……。
これも全て、天也のせいだ。
天也がいなければ、私は恋なんてものは知らないままだったのだから。


「私は、既に振り回していますわ」


もう十分なくらい振り回しているし、振り回されてもいると思う。
だがそれは幼馴染という域を出ない程度に、だ。
婚約者、恋人という域であればまだ足りないくらいなのかもしれない。


「だが、俺はもっと振り回されたい。
咲夜はもっと甘えてくれてもいいんだがな」

「……恥ずかしいですわ。
もう、高校生ですのよ?
それを、この歳で甘えるなんて……」


しかも中身は更に歳がいっているのだ。
天也は知らないとはいえ……流石に躊躇われる。
というか、私が嫌だ。
それが許されるのは小学生、中学生くらいまでだと思うし。







そして、食事は終わり、心臓に悪い1日は終わりを告げたのだった。

やはり、寂しさが残るがそれは天也のせいとして気付かなかったことにしよう。
私は、天也からの贈り物を優しく握り、穏やかに眠りについた。
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