脇役だったはずですが何故か溺愛?されてます!

紗砂

文字の大きさ
69 / 87

誕生日

しおりを挟む


遂に、真城の誕生日がやってきた。
今日真城には、店の事を頼んである。
そっちには清水も付けておいたので多分、問題無いだろう。
最悪清水が引き止めておいてくれるはず。

司はケーキ作り、ロイさんは飾り付け、私とヴィルは学校だ。
ヴィルにも一応、話は通してあるので何の問題も無い。


「咲夜、この後は何か予定はありますの?」


そして、ようやく授業が終わり帰ろうとしたところだった。
こんな日に限って誘いがある訳で……。


「えぇ、今日は外せない用事が……」

「そう、ですの……。
咲夜さえよろしければ新しく出来たカフェに……」

「それは……もしかして裏通りの?」

「知っていたんですのね……」


……うん、確定だ。
私達の店だね。

そこに行こうってことかな?
なら、今度の土曜がいいよね。
今度の土曜なら休みになってるし開けられるはずだ。
少なくとも司がいれば問題ないだろう。


「ふふっ……でしたら、その埋め合わせに今度の土曜、家に来てください。
とびきりのものを用意致しますわ」

「……さ、咲夜がそう仰るのなら……」


紫月と奏橙の婚約パーティーが近いが……問題はない。
再来週だしね。
それに、プレゼントも店で用意出来る。
日本に店もないし限定品なら丁度いいだろうし。

「では、土曜に」

「えぇ」


私はシャルと約束を取り付けるとヴィルと共に急いで下へ降り、屋敷へと向かった。
迎えは勿論、清水ではなく別の人。

少し急いで戻ると、素早く着替えを済ませ、ロイさんが飾り付けをしてくれた私の部屋……の隣の空き部屋へ向かい、最終チェックを済ませ、全て終わった事を確認すると、清水に連絡をし、真城と共に帰ってきて貰った。
真城には30分後にここへ来るように伝え、その間に着替えを済ませた清水と合流しクラッカーを手にする。


「今日はお疲れ様でした。
真城が来たあとは……皆で楽しみましょう」

「はい」

「えぇ」

「あぁ」

「はい!!」


それぞれが返事を返してくると、真城が扉をノックする音が聞こえる。


『お嬢、来たぜ』

「どうぞ」


私はそれに微笑んで入室の許可を出し、真城が扉を開けた瞬間、クラッカーの紐を引っ張った。


「「「「真城(さん)誕生日おめでとうございます!」」」」


皆で声を合わせ、お祝いの言葉を口にすると、キョトンとした真城が目に入る。
その表情に私は笑いが堪えきれず、クスリと笑みを零す。
それは清水も同じようで、いつもと比べ柔らかな笑みが浮かんでいる。


「……あぁ、ありがとな。
お嬢、今年も悪いな」


ニッと笑う真城に皆が笑みを浮かべている。


「私が勝手に皆を巻き込んでやったんですもの。
気にしないでください。

……それよりも、主役も来たことですし……。
楽しみましょう」


私は長い髪を揺らすと、皆の顔を見渡してそう口にした。

皆で1枚、写真を撮ってからそれぞれ自由に話し始める。


「真城、私からの誕生日プレゼントですわ」

「これは……ショコラか。
サンキュー、お嬢」


真城は私の渡したものがショコラだと分かると満面の笑みになった。
嬉しそうなその笑顔に私もつられて笑みを浮かべる。

その後、清水もきちんと渡したらしく、私の時よりも少し嬉しそうに見える。
やはり、真城は清水の事を好きなのだと思うと少しだけ寂しい気もするが、それ以上に2人の仲を応援したいと思う。
何せ、ずっと私に仕えてくれている2人のことだ。
応援するに決まっているし、他の知らない誰かと恋仲になるよりもあの2人が恋仲になってくれたほうが私も安心出来る。


「それにしても、お嬢。
よくここまで準備出来たな……。
わざわざ俺のような使用人にこんなことしなくてもいいんだぜ?」

「私がやりたかったからやっただけですわ。
それに、私は使用人としてではなく、友人として、家族として見ています。
ですからこうして皆で祝うのは当然のことでしょう?」


私のためにいつも働いてくれている皆のことを偶には労いたいのだ。
それに、こういう時しか全員が揃うことなんてないのだからいいだろう。
そんな思いもあるが、やはり一番は友人や家族の誕生日を祝わないのは嫌だっただけだ。
大切な人の誕生日を祝うのは当然だとそう思うからこその行動である。


「……お嬢、サンキュー。
やっぱ、俺はお嬢と出会えて良かったよ。
こうしてお嬢の専属になれてラッキーだった」


真城の心からの言葉に私は微笑んだ。

こうして、真城の誕生日パーティーは無事成功に終わった。


真城の誕生日パーティーが終わった後、私は既に日課となりつつある電話をかけた。
その相手は勿論、天也だ。


『咲夜』

「天也、そちらの様子はどうですの?」


天也の声を聞いただけで何故か幸福感がある。
だが、どこか疲れたような天也の声に心配になってくる。


『……相変わらずだな。
咲夜は再来週の婚約パーティーに出席するんだろう?』

「えぇ、そのつもりですわ」

『……その時にようやく会える。
あぁ、黒羽も残念ながら来るようだ。
守るつもりではいるが……咲夜、気を付けろよ。
アレの頭はおかしいからな……』


黒羽凛……アレは一体どれだけやらかせば気が済むのだろうか。
天也がこんな疲れている風なのはきっと黒羽凛のせいなのだろう。
……先輩はいい人達なんだけどなぁ。


「あら、私に手を出すような馬鹿はいないと思いますわよ?
……お兄様も出席するようですし、清水や真城も当日は控えていると言っていましたもの。
手を出したくても出せないと思いますわ」

『……そうか。
そうならばいいが……。
それにしても、あの悠人先輩にあの2人か……。
大変そうだな』


大変そうだな、というのは誰に対しての言葉だったのか。
相手か、それとも私か……もしくは天也か。
いや、その全てだろう。

相手、黒羽凛にすれば、私を敵視しただけで兄か清水が手を出し、真城が情報操作をして評判を落とすだろう。

天也の場合、清水と真城は手を出さないだろうが兄が大変面倒なことをするだろう。
例えば、私と会うことを妨害してくるだとか、さりげなく黒羽凛を手伝ったりだとか……。
とはいえ、黒羽凛が私を侮辱した時点でその後の結末は決まってしまうのだが。

そして、私からしてみればその3人を止めなければいけないので大変になってくるのだ。
考えてみて欲しい。
冷酷無慈悲な兄と私が関わると猛獣のようになる清水、そして裏から手を回し相手を破滅させようとする腹黒要員の真城。
その3人を止めないといけないのだ。
それは他の人には頼みたくても頼めないので自分で何とかするしかない。
考えるだけで気が重くなってくる。


『悠人先輩の前で余計なことをしてくれなければいいが……』

『そうですわね……』


楽しい時間のはずが何故か重い話になってしまった。
全く、何故私はこの時期に留学なんてしてしまったのか。
せめて私が天也の近くにいれば牽制なりなんなり出来たというのに……。

などということを考えていると、天也がフッと笑う声が聞こえた。
その、耳元で囁かれているような感覚に顔が赤くなっていくのがわかる。
ここに天也がいなくて良かった、そう安堵の息を吐くと、私は顔を抑えた。


『まぁとにかく、咲夜が元気そうで良かった』


最初よりも軽くなったように感じる天也の声に先程とは違う、安堵の息が漏れる。

「えぇ、天也も……気をつけてください。
では、また明日」


元気、とは言えない声に一瞬言葉に詰まった。
が、1番今の状況にあうのはこの言葉だろうと口にする。


『……あぁ。
おやすみ、咲夜』

「おやすみなさい、天也」


優しげな天也の声に穏やかな気持ちになり、私は眠りについた。


天也の声はホットミルクよりも効果的かもしれない。
ただし、心臓に悪いという欠点はあるが……。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」 公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。 忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。 「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」 冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。 彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。 一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。 これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。

『異世界転生してカフェを開いたら、庭が王宮より人気になってしまいました』

ヤオサカ
恋愛
申し訳ありません、物語の内容を確認しているため、一部非公開にしています この物語は完結しました。 前世では小さな庭付きカフェを営んでいた主人公。事故により命を落とし、気がつけば異世界の貧しい村に転生していた。 「何もないなら、自分で作ればいいじゃない」 そう言って始めたのは、イングリッシュガーデン風の庭とカフェづくり。花々に囲まれた癒しの空間は次第に評判を呼び、貴族や騎士まで足を運ぶように。 そんな中、無愛想な青年が何度も訪れるようになり――?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

勘当された悪役令嬢は平民になって幸せに暮らしていたのになぜか人生をやり直しさせられる

千環
恋愛
 第三王子の婚約者であった侯爵令嬢アドリアーナだが、第三王子が想いを寄せる男爵令嬢を害した罪で婚約破棄を言い渡されたことによりスタングロム侯爵家から勘当され、平民アニーとして生きることとなった。  なんとか日々を過ごす内に12年の歳月が流れ、ある時出会った10歳年上の平民アレクと結ばれて、可愛い娘チェルシーを授かり、とても幸せに暮らしていたのだが……道に飛び出して馬車に轢かれそうになった娘を助けようとしたアニーは気付けば6歳のアドリアーナに戻っていた。

処理中です...