82 / 87
パーティー
しおりを挟むそして、天也と共に兄に渡すプレゼントを買ってから少し経ち、父と母も久しぶりに帰国し、兄の誕生日パーティーとなった。
「お兄様、誕生日、おめでとうございます!
今年は色々な人に手伝ってもらいながら選んだんです」
「ありがとう、咲夜。
大切にするよ」
「はい!」
今度こそは使ってもらえるだろうと笑って返事を返すと兄はしゃがみこんだ。
そんな奇行にも、もう慣れたものだ。
「可愛い、可愛すぎる!!
咲夜が天使!!
分かってたけど僕の天使が可愛い!!」
「お兄様!
恥ずかしいのでやめてください……」
恥ずかしいのは変わらないけどね。
誰だって思うはずだ。
こんなところを見られるのは嫌だ。
コレが兄だと思われたくない、と。
それを何年も続けられるこちらの見にもなって欲しい。
「お兄様もそろそろ婚約者を選ばなければいけませんね……」
「あぁ、それなら問題無いよ。
今日には発表するつもりだからね」
「えっ?
私、何も聞いてませんでした……」
兄からその件について何も聞かされていなかったのは少しショックではあるが、そういった相手が見つかって良かったという思いもある。
そして、ほんの少しだけ寂しさもある。
だが、何より心配なのは相手が見つかったのにも関わらず、この相変わらずのシスコンっぷりでいいのだろうか。
「ごめんよ。
でも、きっと咲夜も喜んでくれるはずだから。
楽しみにしてて」
「……お兄様がそう仰るのでしたら。
では、私は先に行きますね。
お兄様、改めておめでとうございます」
「あぁ、咲夜。
プレゼント、ありがとう」
「はい!」
兄の優しい笑みとその言葉に私も笑顔で返した。
兄の選んだ相手ならば人格は問題ないだろう。
というか、相手の方が心配だ。
あの兄に付きまとわれるのはかなりキツイから。
精神的にも肉体的にも。
まぁ、何となく予想は着くけど。
「咲夜ちゃん」
「お母様」
「まだ時間はあるし、久しぶりに髪を弄りましょうか」
「お願いします、お母様」
母の髪結いの技術はすごい。
清水よりも上手いのだ。
「今日の咲夜ちゃんには、そうね~」
と、弄られていく。
迷っていた割にはすぐに終わったのだが……。
長い髪を上にあげ、触覚を出す。
最後に白い生花をさして完成だ。
「大人っぽくアレンジしてみたのだけど、どうかしら?」
「ありがとうございます、お母様」
私は笑顔で母にお礼を告げると、時間的にもそろそろだと言うことで2人で移動した。
会場入りした私たちだが、すぐに母とは別れ、友人達のもとへ向かった。
「紫月」
「咲夜」
「奏橙はいないんですのね。
紫月と居るのだと思っていたんですが……」
「そういう咲夜こそ、婚約者とは居ないんですのね」
2人で互いの婚約者の話を出すとクスリと笑って別の話を始めた。
内容は今度の文化祭についてだ。
「咲夜のところは何になったんですの?」
「私のところはカフェですわ。
紫月のクラスは何に?」
「こちらはプラネタリウムに。
展示系の方が当日に回れるだろう、という事でそうなりましたの」
何となくではあるが、奏橙がやった気がする。
自分が楽したいというのと紫月と回りたいという2つの理由から。
もう1つ、そこに付け加えるとすれば、面倒事を避けるため、となるだろう。
「咲夜、紫月、何の話をしていたんだ?」
「やぁ、2人で何を?」
私と紫月が合流し、話している間天也と奏橙は2人でいたらしい。
相変わらず仲がいい2人だ。
少しだけ羨ましいと感じてしまうが。
「咲夜嬢」
「あら、黒羽様……?」
厳格な雰囲気を醸し出す男の人は凛と似ているような気がした。
どこが、とは言えないが。
やはり2人は親子なのだと感じる。
「咲夜嬢、娘がご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ありませんでした」
「凛の事でしたら私は気にしておりませんわ。
以前はどうであれ、今は大切な友人ですもの」
これは偽らざる私の本心だ。
天也がどうであれ、私のこの思いだけは変わらない。
色々やられはしたものの、私も一歩間違えば凛と同じようになっていただろうから。
「咲夜嬢、ありがとうございます。
娘の事をお願い致します」
「私の方こそ、よろしくお願い致しますわ」
最後にはうっすらと笑みを浮かべると、凛の父親らしい表情を見せ、離れていった。
「あら、黒羽様がいた、ということは凛もいるはずですわよね?」
まぁ、いずれ来るだろう。
しばらくして来なければ探しに行くことにしよう。
4人で話していると、バッと照明が消えた。
と、いうことは……だ。
ついに兄の誕生日パーティーが始まる。
そして、当主が指名される。
どうせ決まりきった事ではあるのだが。
父と兄がそれぞれ挨拶をし、ケーキが運ばれてくる。
ちなみにこのケーキ、司が作ったもので中にはClameで売り出されているお茶が混ぜこまれている。
あ、勿論飲食スペースには私の好物であるマカロンもあるよ?
海野家主催のパーティーだから当然といえば当然だけど。
「さて、ではお待ちかね、海野家当主の指名を行う」
その父の言葉で会場はシンと静まり返る。
「当主は、悠人。
ただし、咲夜にはホテル運営の権限を与える」
「お兄様、おめでとうございます!
えっ?」
「……へぇ」
流石の父の言葉に、招待客は勿論、私や兄までもが唖然とする。
……何故、私にホテル運営の権限が与えられるのか。
イマイチよく分からない。
いや、全くもって理解できない。
おめでとうございます、なんて他人事ではなかった。
何故か巻き込まれていた。
うん、おかしい。
絶対におかしい。
だが、私が言えることは1つだった。
「ご期待に添えられるよう、精進します」
「……謹んで、お受け致します」
すんなりと言葉が出てきた兄とは異なり、私は少し返事が遅れてしまった。
それだけ予想外のことだったのだ。
だって、誰がこんなこと予想していただろうか?
「父上、少々お時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
「好きにしなさい」
ここに来て、兄が動きだす。
きっと婚約者についての事だろう。
兄は、ゆったりと相手のもとへ向かうと、その人の前に跪いた。
その光景は、まるで乙女ゲームの1シーンのようだ。
……まぁ、兄は乙女ゲームの攻略対象者なんだけどさ。
だが、私としては予想はしていたとはいえ、兄の選んだ相手の方が驚きだった。
それ以上に嬉しいとも思うが。
「如月さん、僕の婚約者になって頂けませんか?
僕に、ずっとあなたの横で守らせてください」
そう口にする兄の表情は微笑んでいた。
前々から計画していた事がわかる程に。
その微笑みは、ずっと傍にいた私だからこそ分かる。
イタズラが成功した時や、兄が誤魔化そうとする時に見せるものと同じだった。
言葉やタイミングはいいのに……。
脅迫じみていて怖い。
だが、そんな兄に対し皐月先輩さ少し呆れたような表情ではいたものの承諾した。
「やった……!」
兄より先に小さな声ではあったもののつい喜びのあまりに声をあげた。
「皐月先輩がお義姉様……。
初めて……。
いえ、久しぶりにお兄様に感謝致しますわ……」
「おい」
つい口に出してしまっていたらしい。
……残念度が高いが色々とスペックは高い兄だ。
皐月先輩には頑張って欲しい。
婚約決定と言うことで更にお祝いムードが高まると、私は皐月先輩のもとへ挨拶に向かった。
「皐月先輩、ありがとうございます」
「咲夜さん……」
おめでとうございます、と言うはずだったのに『ありがとうございます』になってしまった。
ついうっかり口が滑ってしまっただけであり、他意はない。
「皐月お義姉様、とお呼びした方がよろしいでしょうか?」
「咲夜さんが義妹ですか。
こんな可愛い妹が出来るなんて、嬉しいですね」
やはり皐月先輩は可愛い。
可愛いのに綺麗とか……ズルい。
私に少しくらい分けて欲しい。
まぁ、皐月先輩が兄の婚約者になってくれて本当に良かった。
そして、これを機に兄の妹至上主義という病気が良くなる事を祈っていようと思う。
10
あなたにおすすめの小説
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【コミカライズ企画進行中】ヒロインのシスコンお兄様は、悪役令嬢を溺愛してはいけません!
あきのみどり
恋愛
【ヒロイン溺愛のシスコンお兄様(予定)×悪役令嬢(予定)】
小説の悪役令嬢に転生した令嬢グステルは、自分がいずれヒロインを陥れ、失敗し、獄死する運命であることを知っていた。
その運命から逃れるべく、九つの時に家出を決行。平穏に生きていたが…。
ある日彼女のもとへ、その運命に引き戻そうとする青年がやってきた。
その青年が、ヒロインを溺愛する彼女の兄、自分の天敵たる男だと知りグステルは怯えるが、彼はなぜかグステルにぜんぜん冷たくない。それどころか彼女のもとへ日参し、大事なはずの妹も蔑ろにしはじめて──。
優しいはずのヒロインにもひがまれ、さらに実家にはグステルの偽者も現れて物語は次第に思ってもみなかった方向へ。
運命を変えようとした悪役令嬢予定者グステルと、そんな彼女にうっかりシスコンの運命を変えられてしまった次期侯爵の想定外ラブコメ。
※コミカライズ企画進行中
なろうさんにも同作品を投稿中です。
プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)
犬野きらり
恋愛
私、ミルフィーナ・ダルンは侯爵令嬢で二年前にこの世界が乙女ゲームと気づき本当にヒロインがいるか確認して、私は覚悟を決めた。
『ヒロインをゲーム本編に出さない。プロローグでケリをつける』
ヒロインは、お父様の再婚相手の連れ子な義妹、特に何もされていないが、今後が大変そうだからひとまず、ごめんなさい。プロローグは肩慣らし程度の攻略対象者の義兄。わかっていれば対応はできます。
まず乙女ゲームって一人の女の子が何人も男性を攻略出来ること自体、あり得ないのよ。ヒロインは天然だから気づかない、嘘、嘘。わかってて敢えてやってるからね、男落とし、それで成り上がってますから。
みんなに現実見せて、納得してもらう。揚げ足、ご都合に変換発言なんて上等!ヒロインと一緒の生活は、少しの発言でも悪役令嬢発言多々ありらしく、私も危ない。ごめんね、ヒロインさん、そんな理由で強制退去です。
でもこのゲーム退屈で途中でやめたから、その続き知りません。
公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。
木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。
時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。
「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」
「ほう?」
これは、ルリアと義理の家族の物語。
※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。
※同じ話を別視点でしている場合があります。
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる