転生したら守護者?になり称号に『お詫び』があるのだが

紗砂

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裏切り

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「カイ…お前また来たのか?」

「まぁな!
んじゃ、今日も頼むぜ!
隊ちょー!」

「……仕方ないな」


とは言いつつも隊長は笑っていた。
魔王軍、第1番隊隊長。
それが意味することは魔王軍全体の頂点、まぁつまりは一番強いって事だ。

俺はそんな魔王軍の第1番隊で毎日のように剣や魔法を受けていた。
これはアイギスを使いこなすための訓練であり、何より、魔力量を底上げするためにやっている事だ。


「あっ…今日もやってんのかぁ……」

「ん?
あぁ、丁度いい。
お前も参加しろ、メルヴェル」

「カイ相手にかぁ…ま、いっか…」


何故か2人を同時に相手する事になった。
……酷くね?
俺は普通の人間だというのに……この仕打ちは一体。


「カイ、準備はいいな?」


と、合図も無しに動き出した。
合図くらいしろ!
というのが俺の気持ちだが始まったものは仕方ない。

俺はアイギスを展開した。
それと同時に地面へいくつかの仕掛けを施す。


「アイギス、頼むぜ!」


すると、アイギスは俺に答えるように展開した。

そして、それにぶつかる寸前で回避をとった隊長とぶつかったメル。
それだけで身体能力の差が伺える。

とはいえ、魔族というだけあり、無駄に頑丈なメルはすぐに体制を立て直した。


「カイ!
お前それずるっ…ギャァァァァァ!!」


何か言っていた気もしないでもないが気にしない事にしてトドメをさした。
隊長は既にメルを見捨てたようで、呆れの色が交じった溜息を吐きながらも冷静に見極め俺を仕留めようとしている。

緊張感が高まる中……。


「カイ」

「っ……陛下!」

「んぁ…と…ディナート……?」


俺らを止めたのはディナートだった。
仕事が一段落ついたのだろう。


「レイダス、済まない。
カイを借りてもいいか?」

「はっ!
問題ありません!」


体をもっと動かしたい気もするが冬夜との時間の方が貴重だし文句を言うのはやめておこう。
やはり少し残念な気もするが……。
……そう思っていたが、不意に……。


「…はぁ…分かった。
だからそんな顔をするな……。
カイ、相手は俺でもいいか?」

「マジで!?」

「ったく……お前は顔に出すぎなんだよ。
さっさとやるぞ。
レイダス、済まないがこれを頼めるか?」


そう言って冬夜が隊長に渡したのはいつも着ている黒の長い上着だった。
隊長はそれを恭しく受け取ると数歩下がり、俺達の勝負を見届ける。

隊長の合図と同時に俺は炎蛇の陣を描く。
勿論、アイギスの展開はしたままだ。
アイギスの発動が安定すると、もう1つ、風嵐の陣をアイギスに付与する。
冬夜がどれ位の実力なのかがわからない分、防御は固めておきたかった。


「涼、全力で防げよ?」

「っ……アイギス!」


俺は冬夜の声とその表情に何か危険なものを感じ、全ての魔力をつぎ込むように防御結界を一点へと集中させる。
それと同時に展開していたアイギスを更に広げた。

次の瞬間、かなりの衝撃に襲われる。
グッと堪えるが少しでも気を抜けばすぐに吹き飛ばされそうだった。


「アイギスを展開して、強化もかけてんのにコレかよ……!!」


認めよう。
冬夜は今の俺じゃあ届かないくらい高いところに1人で立っていると。

そして、俺は理解した。
冬夜は苦しんでいるのだと。
なら……俺は、俺はお前に追いつこう。
冬夜の親友として、お前を1人にはさせないために。

だとしたら、ここで負けるわけにはいかない。
これは、冬夜の本気じゃないから。
ここで負ければあいつが1人だって事を認める事になるんだ。
きっと、冬夜は俺を傷つけるのを怖がって近付かなくなるだろう事は目に見えている。
負けるとしても、だ。
冬夜に全力を出させて、だ。

あいつを1人にさせないためにはこの手抜きの攻撃は何がなんでも耐えなければいけない。


「っ……」


とはいえ、そう簡単に耐えられるようなものではなく、諦めそうになる。
だが、そんな時、あいつらの顔が浮かぶ。

苦しみ、泣きながら勇者になり、皆を守る事を選んだあいつを。
負けるわけにはいかないとひたすら走り続けていたあいつを。

そして、何故かあの強気で、まっすぐなあいつ……カリンの事を思い出す。
カリンならなんていうだろうか?


『カイなら出来るでしょう?』


なんて言って背中を押してくれるだろうか?
いや、違うな。
あいつなら…。


『何諦めてんのよ、この馬鹿。
そんなとこで諦めるだなんてあんたらしくないじゃない。
ほら、さっさとやっちゃいなさい!』


なんて言うんだろうな。
あぁ、確かにここで諦めるなんて俺らしくない。


「アイギス、やれるか?
いや、やれるよな?」


俺がアイギスに声を掛けると、それに答えるかのように、結界が強くなる。
……いや、どこにそんな力隠してたんだよ。
最初からやってくれよ……。


「冬夜、お前に負けるつもりはあるけどねぇ!!」

「はっ…!?
いや、打ち消すとか何なのお前!?
っていうか、あるけどないってどっち!?」

「あぁぁぁぁぁ……疲れたぁぁ!!」


俺はさすがに疲れ果て、ゴロンと寝転ぶと冬夜は何が面白いのか笑い出した。


「…くっ……くくっ……はははははっ!!
あー、やっぱ涼は面白いなぁ……。
アレ、防げる奴って魔族にもいないぞ?
さすがは涼、ver.2と??だけあるな」

「ぐっ……それは関係ねぇだろ……」

「ははっ」


寝転んだままではあるが俺は冬夜に文句を口にする。
だが、冬夜はそれでもただ面白そうに、楽しそうに笑うだけだった。


「なぁ、涼……お前、ずっとここに居ろよ。
俺の魔力と血を使えばお前も俺等魔族と同じくらいには寿命もこと延びる」

「……冬夜」


冬夜の側には居てやりたい。
だが、俺にはお袋や親父も居る。
それに、カリンやリュークだって……。


「……場所、移動するぞ」

「……あぁ…悪い、涼…いや、カイ」

「気にすんな、ディナート」


俺等が場所を変えようと歩くと、当然のように隊長も着いてくる。
……まぁ、冬夜の事が心配なんだろうな。


「……レイダス、お前は……」

「陛下、私は陛下の護衛です。
陛下の側を離れるわけには……」

「レイダス、2度言わせる気か?」


冬夜から冷ややかな空気が流れる。
思わず、身構えそうになるそれは、紛れもなく殺気だった。


「冬夜、俺の事を気にしてんなら別にいい。
隊ちょーは信用出来るからな」

「……はぁ、分かった。
相変わらず甘い気もするが……。

レイダス、許可する。
だが、これからの話は他言無用とする。
その契約を結べるか?
かけるものは互いの命だ」

「はっ、問題ありません」


わざわざそこまでする程かとは思うがそれでいいならば俺が口を挟むわけにはいかないだろう。
ってか、俺は部外者だしな。
ってか、命までかけるのかよ。
いや、それが魔族の流儀だって言われたらそれまでなんだけどさ。

2人が契約を結んだところで話は始まった。


「涼」

「冬夜、お前……一体何があったんだよ?」

「俺はっ……もう、何も失いたくないんだ…!
頼むよ、涼……。
人間を捨てて俺と同じ時を生きてくれ……!!」


今の冬夜は俺の知っている冬夜よりも大分弱っていた。
体は丈夫になったのに、心が…精神が酷く脆い。

人間だった頃と今の魔王としての違いが冬夜を苦しめているように感じる。
人間として生きてきた冬夜と魔王として生き、行動しなければならない現在。
頭では理解しているのに体が行動を否定する。
そんな感じなのだろうか。

俺は、結構非情だ。
自分の知らない奴が苦しんでいても簡単に見捨てる自信がある。
それは誰だって変わらないだろう。
だが、冬夜なら話は別だ。
親友が苦しんでいるのを見捨てる事なんて俺には出来ねぇ。


「……お前、なんて顔してんだよ」


俺はそう言って冬夜に近付き、手首を取った。
そして、持っていたナイフで傷を付け、血を飲んだ。

その冬夜の血に含まれている力の強大さにグラッとするがそれでも俺は気丈に振舞った。
そんなところを見せればきっと冬夜は俺を避けるようになる気がしたからだ。
そうなれば、冬夜はきっと誰も寄せ付けなくなるだろう。
そんなことになれば冬夜は本当に一人になるだろう。


「さっさとしろよ、冬夜。
あんまノロノロしてっと俺の気が変わるかもしれねぇぞ。
俺は気分屋だかんな。
それは、お前のほうが分かってんだろ?」

「っ……お前本当にいいのか……?
人であることを捨てることになるんだぞ……?」


人を捨てる……いつだったかジジイが俺に人であることを捨てる気かと聞いてきた気がする。
そして、それに俺はリュークの為なら、と答えたんだっけ?
それにあのジジイは救えるかも、だか何だか言っていたな。
それは、もしかして冬夜の事だったのだろうか。

まぁ、どっちにしろ答えは変わんねぇけどな。


「それ、お前がいうのか?
俺は親友のためだってならそんなこと気にしねぇっての」

「悪い、サンキュー……」

「おう」


冬夜の魔力に当てられると段々と体の構造が変わっていくのが感じられる。
自分が自分じゃなくなっていくようなその感覚。
だが、それでも親友を見捨てるよりは断然マシだった。
それに、冬夜は俺よりも前に、しかも俺より長く苦しんできたのだろう。
そこには俺のように選択肢はなかったに違いない。

そんな冬夜に対して俺に出来る事ならなんだってやってやるさ。
なんたって親友、だからな。

……後でリュークには謝っとくか。
アイツ、なんていうか。
説教、長くならなければいいが。

俺がここにきて1週間くらいしてから連絡が来たがあの時はかなり怒られたんだよなぁ。
しかも、俺が悪いからなんもいえねぇし……。
リュークに怒られたの、あれが初めてだったんだよな。
だから余計に怖く感じた。
喧嘩じみたことはしたことあったんだけど最終的には物理で勝ったほうが……とかってなっていたからな。


まぁそんなわけで、俺は魔族に仲間入りを果たした。

親友で魔王の冬夜……ディナートのために。
そういや、これって寿命どのくらい伸びたんだろうか?
ってか、魔王陛下、とかって呼んだら冬夜はいったいどんな反応をするのだろうか?

……今度やってみるか。
あれ?
マジで俺ってこれからどんな扱いになるんだ?


「冬夜、さっそくだけど、俺の部屋変え……「ダメだ」……チッ」

「カイ」

「ん?」


俺の視線に冬夜は嫌ぁな笑顔になると地獄の宣告をした。


「これから死ぬまでこき使ってやる。
俺の右腕として、な」

「……冬夜ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
テメエエエエエエエエエエエエ!!
ふっざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


俺の叫びに冬夜は嬉しそうに笑った。
嵌められた感しかないが……まぁ、今回は見逃してやろう。
やはり今度仕事の息抜きと言ってリュークに合わせるのもいいかもしれない。
多分、リュークと冬夜なら気も合うだろうしな。

それに、偶にはそういう観光的なもんも必要だろうしな。


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