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裏切り
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しおりを挟む「……涼、大丈夫か?」
俺の寝るベットの横には心配そうに見つめる冬夜がいた。
あの日、俺が魔族となった日の翌日からその強大な力に体がなれず、ずっと熱がでていた。
「おー、問題ねぇ……」
とはいうものの、体調が悪い事は確かなのでベットから出ることはないが。
「あー……ダリィ……」
もう39℃くらい出てんじゃないかと思うくらいだ。
「……カイ」
「んぁ……ふぇいる……か?」
「……あぁ。
兄さんの事、礼をいう」
ぼんやりとする視界の中、俺は丁寧に頭を下げるフェイルの姿を見ていた。
「兄さんはずっと1人だったからな……。
お前が居てくれて良かった…」
フェイルもフェイルなりに冬夜の事を心配していたのだろう。
冬夜の事を口にするフェイルの表情は穏やかだった。
いい家族に恵まれてんじゃねぇか。
などと思いながら俺は目を閉じた。
◇◇◇
それから1年がたち、俺は冬夜の右腕として魔界中に名を馳せていた。
「冬夜、んじゃ、行ってくる」
そう言って俺は背から翼を出した。
今から行くのは見回りだ。
偶にやっかいな魔物が紛れ込んでいることがあるため間引き含めて定期的に見回りに行くのだ。
「あー…やっぱ慣れねぇなぁ……」
この翼を動かす感覚がいつまで経っても慣れないのだ。
背骨を動かすような感覚とは言われたが。
「……ん?
なんかいる?」
そこには戦闘の後があった。
面倒だとは思いつつもそこへ降り立つと周りを見渡す。
倒されているのは中位の魔物。
ただ、剣を魔族が使うことは滅多にないので人間だろう。
「……はぁ、冬夜に報告……の前に一応確認してくか」
俺は、翼を仕舞うと跡を辿り歩き出す。
今の俺なら大抵のものには負けないが念の為、警戒するのを忘れない。
「ぐっ……そっち、頼んだぞ!」
「えぇ、任せなさい!」
その声は、聞き覚えのある奴らの声で。
俺は、もう会うことがないと思っていた奴らの声。
そして、もう、会いたくないと思っていた奴ら。
そいつらが戦っていたのは上位の竜、炎竜だった。
あいつらには荷が重い。
そう思った俺は、気が付けばあいつらの前に出ていた。
「……テメェ、誰に手を出してやがる」
俺が軽く威圧を掛けるとそいつは少し怯んだようだった。
だが、身を弁えずに俺に襲いかかってきた。
「消えろ、そう言っているのが分からないか?」
更に威圧を掛けると炎竜は俺に背を向け飛び立った。
「魔族……」
「ありがとうございます……!」
「助けてくれてありがとう」
「礼を言う」
「ありがとうっす!」
リュークだけが重く、魔族と呟いた。
他の4人は俺と気付かずにお礼を口にする。
そして、気付かれないのをいい事に俺はこの場から逃げようとした。
だが……。
「……久しぶりだな、カイ」
リュークにはバレていたようだ。
「……何しに来たんだよ、お前ら……」
「カイを助けに来たに決まってるでしょ!」
相変わらず気の強いカリンに懐かしく感じる。
「帰れ。
俺は、俺は…ここを離れるわけには行かないんだ。
それに、もうそっちには戻れないからな」
「何でよ……!!」
俺の知っているカリンよりも小さい気がした。
何が…とは分からない。
だが、俺の知るカリンであってカリンではない。
そんな感じだ。
「カイ……頼むよ…。
また皆で……」
「そこまでにして貰おうか」
「……冬夜」
空から降り立ったのは冬夜だった。
この様子だと随分怒っている。
「涼…カイは俺のだ。
人間には返すつもりはない」
「冬夜、大丈夫だ。
俺はどこにも行かねぇって言ったろ?」
「……だが」
「それに、俺の居場所はもう、ここしかねぇ。
分かってんだろ、冬夜?」
「あぁ……済まない」
冬夜はやはり、まだ精神的に不安定なようだ。
まぁ、それも仕方ないと思うが。
「……リューク、カリン、ティード、レクト、リナ。
悪ぃ、俺はコイツの事を受け入れちまったから……」
「馬鹿っ……!!
何で、何でアンタは……。
私…ずっとカイの事が好きだった…!!」
突然の告白に驚く。
それがまさかのカリンだったのだ。
カリンが俺を好きだと、そう言ったのだから。
「……悪い、カリン。
俺はもう人間じゃねぇから」
「何で……」
「……カイ、俺との約束は何だったんだよ。
信じてたんだぞ!?」
「……リューク」
ズキリと心が痛む。
それは、罪悪感からの痛み。
だが、この罪悪感は何に対するものだろうか?
約束を破った事か、本当に裏切る事になってしまった事か、それとも………。
「りょ……カイとの付き合いは俺の方が長い。
お前らの方が後から入って来たんだよ。
勇者、お前はカイから話を聞いているだろう?」
冬夜はリューク達を突き放すように言葉を口にする。
「……転生…」
「あぁ。
俺はとカイはお前らとは違う」
「冬夜!!」
「カイを渡す気はない。
だが……カイの友人だ。
今日は泊まっていくといい」
きっと冬夜なりの考えがあったのだろう。
俺がケジメを付けられるように。
そう考えてくれたのかもしれない。
そして、冬夜はこの場にいる全員を魔王城と呼ばれる自宅へと転移させた。
「カイ、兄さん、そいつ等は?」
「……カイの友人だ」
「昔の、な」
フェイルはスっと目を細めると先程よりも数段低い声を出した。
「……カイ、裏切る気は……」
「ねぇよ、馬鹿」
「ならいい」
フェイルは俺の答えに満足したのかフッと微笑んで自分の仕事へと戻った。
冬夜も自分の仕事を放り出してきたようで、すぐに仕事へと戻る。
俺の仕事は一応、もう終了しているためいつものように自室へと戻る。
ただし、リューク達を連れて…だが。
「……カイ、この1年で何があった?」
しばらく口を開いていなかったレクトが俺にそう尋ねる。
その声は最初の頃と同じように鋭く、冷たく感じた。
「……取り敢えず、入ってくれ」
俺は自室への扉を開き皆を招待すると、適当な場所へ座るように口にした。
ちなみに、部屋はここに来た最初の頃よりもランクアップして、更に広くなった。
……要らねぇ…。
「まぁ、まずは久しぶりだな。
元気にしてたか?」
わざと明るい声を出すがノリが悪い。
皆、ただ黙っているだけだった。
「……はぁ、もうちょい明るく行こうぜ……。
まぁ、いいや。
…取り敢えず、さっきここに連れてきた奴いたろ?
アレが俺の昔からの友人で、元人間、今魔王やってるディナートこと、冬夜」
「……は?」
「……え?」
「……あぁ……」
「……カイっすからね……」
「まぁ、カイだしな」
おい、待て。
最後の3人、酷くねぇか?
「で、俺ここで冬夜の右腕として色々やってんだよ。
まぁ、主に人間との話し合いとかだけどな」
「話し合い……?
そんな事全く聞いてないぞ!?」
「……こっちが平和を望んでるってのが向こうにとっては到底受け入れ難いって事だな」
まぁ、そういうことだ。
そのせいで俺は向こうには戻れない。もう、後戻りは出来ないのだ。
「……分かったわ。
カイ、でもこれだけは聞かせて。
種族とか身分とかが関係なければ私の告白を受け入れてくれたのかしら?」
「……さぁな」
口ではそう言うものの受け入れたに決まっている。
俺は、カリンの事が好きだと自覚はしているのだから。
ただ、それを認めたくないだけで。
認めたら迷ってしまうから。
ただ、そんな理由で俺はカリンへの想いに蓋をした。
いつか、忘れるだろうと思って。
「……そ。
じゃあ、最後の質問。
どうやって魔族になったのよ?」
「冬夜の血を飲んでから魔力当ててもらっただけだな」
「……そう、分かったわ。
リューク、私は外に出ているからゆっくり話していなさい」
「あ、あぁ……」
一体何がしたいのか分からないが……。
まぁ、向こうが諦めたというのならば何の問題もない。
そこからはまるで、失われた1年の時間を補うように、それでいて互いを守るための情報交換をしていた。
まぁ、俺の方は魔族にとって困るような情報を与えていないが。
それはきっとリュークの方も同じだろう。
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