12 / 42
学園
6
しおりを挟む授業とティードの罰が終了し、俺達パーティーは街へと来ていた。
「あー、カリンとリナは冒険者登録がまだだったよな?」
「えぇ」
「はい」
「んじゃ、まぁ先にギルドへ行っとくか。冒険者登録は必須みたいだからな」
一応、皆にも確認をとると文句は無いようだったのでそのままギルドへと向かう事にした。
だが、このとき俺は大切なことを忘れていた。
ギルドに行くと、俺達は早速捕まった。
ギルドマスターであるリヴィアに。
「よく来たな、カイ、リューク」
「うげっ……」
「お、おい! リューク、それは……」
悪手だ。俺がそういうまでもなく、リヴィアは冷笑を浮かべた。
そして、俺とリュークの肩に手を置くと段々と力を込めていく。
やばい、かなり危険だ。
リヴィアから早く逃げなければという思いはあるのだが、肩に置かれている手の力が強すぎて逃げられなかった。
背中にいやな汗がだらだらと流れる。
「ほぅ? そんなに手合わせしたかったのか。
いいだろういいだろう。お前のお望み通り久しぶりにやろうじゃないか」
「か、カイ……」
「今のはリュークが悪い」
リュークが助けを求めるような目を向けてくるが俺にはどうもできない。
「リヴィア、俺は二人のギルド登録の方に行ってくるからリュークを頼む」
「ん? そっちは安心していい。三人でやった後に登録をするさ」
どうやら俺の逃げ道も無くなったらしかった。
リュークを見ると、安心したように胸をホッと撫で下ろしていた。
「カイ! 今日こそは勝とうぜ!」
「……あぁ、そうだな。俺もコイツがあるしな」
こうなれば開き直るしかない。
そう言って服の下に隠れたアイギスを指す。
リュークもそれに気付きニヤリと笑みを浮かべる。
「カリン、リナ、悪いが……」
「えぇ、いいわよ。どうせ、そんな急いでいるものでも無いしね」
「私もいいですよ。お二人の戦いも見てみたいですし……」
「ファイトっすよ! 自分たちは観客席から応援してるっすから!」
ということで俺とリュークは手合わせの準備を始め、そのうちに三人は上の観客席へと上がっていく。
準備が出来たところで意を決して訓練場の中へと入るといつもと同じように他の冒険者達が見ていた。
俺達がやるといつもこうなるのだ。
「合図は、そうだな。ラギア、お前がやれ」
「はぁ……。分かりましたよ。準備はいいですか?
……いいですね? はぁ。では、始め!」
その合図で俺はアイギスに魔力を込めていく。
「そっちが来ないならこちらから行かせて貰おう!」
リヴィアは相変わらずの速さで俺達に襲いかかってくる。
だが、その直前で俺はアイギスを発動させた。
「アイギス!」
アイギスは俺の声に応えるように大きくなっていく。
その大きさは俺とリュークを隠しきれる程に。
だが、それに比例して俺の魔力がどんどん吸い取られていくのを感じる。
「リューク!」
「おう!」
リュークは前に踊り出て、リヴィアに剣戟を浴びせる。
だが、それでも流石は元Sランク冒険者の現ギルドマスター。
まだまだ余裕があるようで、口元は弧を描いている。
俺は一度アイギスの大きさを戻すと、リュークがリヴィアの気を引いている間に俺は魔法陣を描いていく。
描いている魔法陣は重複魔法と呼ばれる魔法で、幾つかの魔法陣を積み重ねる事で発動する陣だ。
今回使用する陣は、炎蛇と風嵐、そして俺が無の魔方陣を弄って作り出した『波』の魔法陣だ。
波の魔法は俺が他の魔法陣を描いた時、間違えて出来たものだ。
この波を組み合わせる事で魔力酔いを引き起こす事が出来る。
まあ、効果はそれだけではないのだが。
ようやく魔法陣を描き終わり、俺はリュークに合図を出した。
「リューク、下がれ!」
「やっとか!」
リュークは既に限界が近付いていたようで素早く下がった。
俺はそれを確認してから魔法陣を発動させるトリガーを口にした。
「発動しろ!」
炎蛇は上級の魔法だったせいか、それともアイギスを使ったせいか魔力切れを起こしそうな程に吸いとられる。
「っ……!?」
「カイ、こんな魔法まで覚えてたのかよ……」
リヴィアの切羽詰まった声とリュークの声が聞こえた。
そんな声のおかげか俺は魔法の維持に集中出来る。
「……ほぅ? 私がこんな小手先のもので負けると思われるなど、心外だな」
そんな声と共に、俺は魔力切れを起こし気を失った。
目が覚めるとギルドの医療所にいた。どうやらあの後ここに運ばれたらしい。
リュークはあの後、すぐに剣でやられたらしい。
……リヴィアは一体どんな化物だ、という話になるのだが。
身体の節々が痛むがそれもリヴィアと戦った弊害だ。
「やっぱSランクは強ぇか……」
俺とリュークは一ヶ月の間にBまでは上げたもののAランクにはまだ届かない。
その上となるSランクには全然だ。
AランクとSランクの間には大きな力の差があるのだから当然と言えば当然だろうが。
まぁ、パーティーだけならばAランクには到達したのだが……。
「カイ、やっぱリヴィアには遠いよな」
「あぁ。だが、学園卒業までに追いつけるさ。俺とリュークなら、な」
そうだよな、とリュークは無理したような笑みを浮かべた。
俺はそれに顔を顰めると溜息をつく。
「……リューク、あまり気負いすぎんなよ。
リヴィアはSランクだ。俺等とは違う。
一ヶ月前に本格的に始めた俺等とは、な。
だが、ここまでやれているんだぜ?」
「……経験の差が違うってことか」
「そういう事だ」
「サンキュー、カイ。それが分かったなら後は簡単な話、だよな?」
「おう!」
いつものリュークに戻ったようで俺は安心しつつ、自分の非力さを痛感していた。
もっと俺が魔力配分に気を付けていれば、もっと魔法を覚えていれば。
もっと魔力を増やす訓練をしていたら……。どうしても、そんな後悔が拭えない。
「なぁ、カイ。今度から俺と朝に手合わせしてくれないか?」
「いきなりどうしたんだ?」
「いや、手っ取り早く強くなるにはってのと、さっきの経験が足りないってやつ。
それを思ったらカイとやるのがいいんじゃねぇかって思ったんだよ」
あぁ、確かに俺が盾職としてリュークの攻撃を受けながら攻撃も出来るようにすれば…。
それに、リュークとしてもいい練習になるのか。
俺がアイギスを使いこなせるようになればもっと俺は、俺たちは強くなれる。
「おう、いいぜ。けど、絶対に起きろよ?」
「……善処する」
絶対起きない気がする。
そんな事を思いながら俺は他の3人の事を聞いたのだがどうやら登録をしているらしい。
って事はあれからそんなに経っていないって事だな。
「リューク、そろそろ行こうぜ」
「あぁ、そうだな」
俺とリュークはリヴィアの部屋へ行き、登録が終わったらしい二人とティードにパーティー登録をする前に話をした。
「パーティーなんだが……。
俺とリュークが作ったところに入るか、新しく作り直すかどっちがいい?」
「2人が作ったパーティーに入ればいいじゃない。
一々作り直すのも面倒でしょうし。
リナもそれでいいわよね?」
「はい。
それでいいと思いますよ」
二人が良いらしいのでそのままパーティー登録をすると自分のカードに記載されたパーティー名を見て声をあげた。
「……はぁぁぁぁ!? ちょ、ちょっと待ちなさい!
つ、月の旅人って言ったら一ヶ月前から頭角を現したっていう最近有名な二人組のパーティーじゃない!
しかもAランクパーティーだったはずよ!?」
「どの月の旅人かは知らないが……。まぁ、一ヶ月前って言ったら俺らか?」
「そうじゃねぇか?」
因みにこの月の旅人ってのはリヴィアが付けたんだけどな。
「何でそんな平然としてるんすか!?」
「いや、だって俺とカイだぜ? 職業考えてみろよ」
「……そうだったっすね」
「今更ですけど凄いパーティーに入っちゃった気がしますね」
リナはフフッと笑い、ティードは諦めたように肩を落とした。
まぁ、本当に今更だからな。
そして、この日結成された勇者のパーティーは、月の旅人という名と共に表舞台へと立つことになるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~
存在証明
ファンタジー
不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?!
はたしてカイは運命をぶち壊して幸せを掴むことができるのか?!
火・金・日、投稿予定
投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』
転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる