転生したら守護者?になり称号に『お詫び』があるのだが

紗砂

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魔族襲来

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次の日の放課後、俺とリュークとレクトの3人は申請を出しに行った。


「カイ、リューク、勿論優勝するんだろうな?」

「当たり前だろうが」

「当たり前だ」


レクトは俺達の答えに満足そうに笑った。
その表情はただ優勝を望んでいるだけではないようにも見える。


「何かあるのか?」


思わずそう聞いてしまう程だ。
だが、その瞬間、レクトは

『は?何言ってんだこいつ?』

という様な表情になった後、俺の肩をがっしりと掴んできた。


「し、知らないのか!?
団体優勝のグループは対校戦に出られるんだぞ!?
各学年6人しか出られないんだ。
下のクラスの奴もクラスが上がるかもしれないという事でかなり手強くなってくるんだ。
そんな対校戦への切符が手に入るんだぞ!?」


と、どうやらそういう事らしい。
……とにかくそのことに対して俺が思うことは…。


「「面白そうじゃねぇか!」」


という事のみだった。

大変そう?

そんなん知るか。
絶対にその対校戦とやらへの切符を手に入れてやる。


「絶対に優勝してやろうぜ」

「おう。
そんな面白そうなイベントをみすみす逃してたまるかっての!」


俺とリュークはガシッと腕を組むと決意を口にした。
俺達の行動理念の大半は『面白そう』なのだ。
つまり、今回の件は俺等にとっての行動理念に当てはまったということだ。


「そうと決まれば特訓だよな!」


残念な事にリュークはこの短い間に脳筋となってしまっていた。
前はもっと……少し、馬鹿という程度だったのに、だ。

俺はリュークをこんなんにした犯人、リヴィアを思い浮かべたがすぐに頭を地に擦り付けたくなった。

……これも全てリヴィアによる特訓という名の地獄が原因であった。
よし、レクトもリヴィアの特訓に巻き込むか。


「丁度、依頼も溜まってたし……丁度良いだろ」

「あー……そうだな。
レクトもそれでいいか?」

「あぁ、それでいい。
私が合わせたほうが楽だろうしな」


レクトの了解が貰えたので、そのまま俺達はギルドへと向かい、依頼を受けようとした。
だが……。


「カイさん、リュークさん、ランクアップです!
おめでとうございます!
このランクアップによりパーティーランクが1つ上がりました!」


ここに来てまさかのランクアップ。

心当たりはこの前のオーク戦しかない。
だが、それならば前の段階でランクアップするのではないか……そうとも思ったものの深くは尋ねないことにした。

……まぁ、どうせリヴィアのせいだろうしな。

と、いうことでまぁ、晴れて俺とリュークはAランクに、月の旅人はSランクパーティーになったわけだが……。
そうなると俺達はCランク以下の依頼が受けられなくなるのだ。
……授業にも支障が出るが…まぁ、食料調達も楽しいので良いとしておこう。


「じゃあ、B、A辺りでなんか良い依頼とかないか?
あったら凱旋して欲しいんだが…」


元々Bを受けるつもりだったのだがリュークはサラッとAランク依頼にまで手を出していた。


「ワイバーン討伐なんてどうでしょうか?
Aランク推奨依頼なので丁度良いかと思います!」


あぁ……絶対受ける奴がいなかったな。
そう思いながらも俺達はその依頼を受けると早速準備を始めた。


「……おい、お前達のランクは…」

「Aになったぞ?」

「Aだ」


ランクを聞かれたので至って普通に流れるような軽い口調で答える。
すると、レクトはピタリと足を止めた。
そして、信じられないものを見るような視線を投げかけてきた。

……失礼なやつめ。

いや、本来ならそれが正しいのだろうが。
だが、レクトは実習の時に俺のカードを見ているのだ。


「お前達……本当に何者なんだ……?」

「何って…ただの農民の子に生まれたちょっと変わった盾職と…」

「戦闘職だな。
まぁ、カイが変わってんのはちょっとどころじゃない気もするけど……」


それしか答えようが無かった。
いや、勇者と守護者とも答えられるのだが…流石にここではまずいだろうと思ったのだ。
そのため盾職と戦闘職という言い方にした。
それより、だ。


「俺より絶ってぇ、リュークのほうが変わってるからな!?」

「いや、カイのほうだ!!」


いや、俺はステータス上でしか変わったところがないはずだ。
…………多分。
だから絶対にリュークのほうが変わっているはずだ。


「…まぁ、いいさ。
それでいいにしておくとも」


……変に強調された今は、という部分が気になるが…ここは気にしないでおくべきだろうか?
それとも知らないフリをしておくべきだろうか?
と言うか、今絶対面倒だから止めたよな。
まぁ、いいのだが。


「…ワイバーンか。
急げば間に合うか?」

「全然余裕だろ」

「……今更ながらにお前達2人と組んだのは失敗であったと感じるのだが…」


俺とリュークはそんなレクトの言葉を華麗にスルーしてから必要最低限のものを手にし、外門の外へ出るとそのままワイバーンのいるだろうと言われている山へと向かうのだった。



ーレクトールー


何故私は今、こんな所に居るのだろうか。

いや、途中までは良かったのだ。
ギルドで何か依頼を受ける、というとこまでは……。
そこまでならば理解できるからな。

だが、誰がこんなことを予想出来ただろうか?
いや、誰にも予想出来ないはずだ。

こんな、軽く行くはずであった依頼がまさかのAランク推奨依頼である、ワイバーンの討伐依頼になるとは……。

おかしい。
どこかおかしい。
そう思ってはいても口には出せるはずもない。

口に出したら最後、リュークとカイはそうか?
などと言いつつも更に上の依頼を受けるだろうと予想出来たからだ。
そんなことをされれば私は普通であることが曲げられてしまう気がする。
そんな変わり者になってたまるものか。


「……リューク、職業をそろそろ教えてはくれないか?
そうでなければ作戦を立てようにも立てられないからな」

「ん?
言って無かったっけ?
俺、職業は勇者だから」

「そうか。
勇……勇者!?」


勇者……魔王を討伐するために戦うと言われるあの勇者の事を言っているのだろうか?
ありえない。
勇者が、勇者がこんな……!?
しかもなぜそんなにも軽いんだ!?

私がショックのあまり口を開いたままでいるとカイが苦笑をもらした。


「気持ちは分かるが…。
俺も、これでも一応職業は守護者だしな。
ついでに守護神とジジイの加護持ちな」


何故だろうか?
カイとリュークの職業を聞いた瞬間、とてつもない不安とワイバーンの討伐に対する安心感が湧き出てきた。
……その不安とは、リュークとカイの2人がやり過ぎないか、という心配であり、私の胃に穴を空けたいのかとさえ思う程のものであった。

それにしても、ジジイと言うのは誰なのだろうか?
加護、と言うことは神なのだろうが……。


「レクト?
どうしたんだ、そんな複雑そうな顔して」

「そうだぞ。
そんな辛気臭い?顔してるとキィの果実が逃げてくぞ」

「……いや、そこは幸福と言うべきところじゃないのか?」


キィの果実が逃げてくなんていうのは今まで一度も聞いたことが無かった。
そういったところが馬鹿っぽいところだと思いつつも私は自然と笑顔となっていたのだった。

こんなバカが勇者でいいのか、などとも思っていたが。
なぜだろうか。
勇者に対する憧れが一気に冷めていった。
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