40 / 70
本編
33
しおりを挟むそんな道中で、私とアルは精神的疲労が溜まっていましたが、無事、エリンスフィールへと到着しました。
お爺様とお祖母様の住む屋敷まで送り届けて貰うと、私とアリスはお土産を屋敷の者達へと配り始めます。
お土産として買ってきたものは、使用人達にはエリンスフィールにはない、食用バラを使用したクッキーです。
お祖母様には、紅茶と薔薇の花を模した角砂糖です。
お爺様には、疲労回復の効果があるお茶と薔薇で香り付けをしてあるお酒です。
お祖父様はあれでもかなりの酒好きですから丁度いいと思ったのです。
「これは、酒か!
ありがとう、エリス」
「ありがとうございます、エリス。
わざわざ私達の分まで用意しなくても良かったのですよ?」
お爺様は嬉しそうに、お祖母様は申し訳なさそうな表情を、浮かべ受け取りました。
「お爺様とお祖母様にはお世話になっていますから。
このくらいはさせてください。
お土産を選ぶのも楽しいですから。
それとも、気に入られなかったでしょうか?」
お祖母様の好みはあまりよく分かりませんでしたから無難なものにしてしまったのです。
なので、気に入られなかった、ということも考えられます。
だとするのならば申し訳ありませんね。
ハーネスにその辺の情報を集めて貰うべきだったでしょうか?
あの時は公爵方がアポ無しで訪れる、などということもありそのようなことを考える時間が無かったのです。
「そんなことはありません。
可愛い孫娘が選んだものですもの。
気に入らない、なんて言うことはありませんよ。
ですが、向こうでは大変だったようですからね。
心配していたのですよ」
先程の表情を浮かべた理由、それはお祖母様の優しさからだったようですね。
気に入られなかったのかもしれない、と思ったのは杞憂だったようですね。
ですが、まだお祖母様やお爺様には報告していないはずですが。
いえ、あのお祖母様ですし、独自の情報網を持っていてもおかしくはありませんね。
お祖母様は、エリンスフィールの王族でしたから。
「ご心配をお掛けしてしまい申し訳ありません。
ですが、その件でしたら問題なく解決致しました」
「ええ、そう聞いています。
よく頑張りましたね、エリス。
婚約についての話も聞いていますよ。
殿下ならば、問題はないでしょう」
お祖母様に婚約についての話まで知られている、そう思うと少々恥ずかしくなりますね。
ですが、まだ正式な決定ではないので安心は出来ません。
……安心出来ない?
何が、でしょうか。
安心もなにも、私は別にアルのことを好き、という訳では無いのですから関係ないはずです。
にも関わらず、安心出来ない?
それでは、それではまるで私がアルのことを好きなようではありませんか。
「エリス?
疲れているのだろう、部屋で休みなさい」
「はい、ありがとうございますお爺様。
失礼致します」
モヤモヤとした気持ちを抱えながら、私は部屋へと戻りました。
そして、部屋に着き、お茶を入れると、アリスを呼び問いかけました。
「アリス、私はアルのことが好き、なのでしょうか?」
「え?
エ、エリス様、な、何を仰っているのですか?」
アリスの表情には、滅多に見せない戸惑いの色が見えます。
変なことを聞いてしまいましたね。
「分からないのです。
私は、確かにアルに好意を抱いています。
ですが、それが親愛なのか、異性としてなのかが、どうしても分からないのです」
この想いは、友人としてなのでしょうか。
それとも、異性に対しての『好き』なのでしょうか。
私には、それが分からないのです。
「いえ、変なことを聞いてしまいすいません。
少し、疲れているようですから休みます」
私は、困り果てるアリスにそう告げると、少し移動し、窓の外を眺めました。
0
あなたにおすすめの小説
放蕩な血
イシュタル
恋愛
王の婚約者として、華やかな未来を約束されていたシンシア・エルノワール侯爵令嬢。
だが、婚約破棄、娼館への転落、そして愛妾としての復帰──彼女の人生は、王の陰謀と愛に翻弄され続けた。
冷徹と名高い若き王、クラウド・ヴァルレイン。
その胸に秘められていたのは、ただ1人の女性への執着と、誰にも明かせぬ深い孤独。
「君が僕を“愛してる”と一言くれれば、この世のすべてが手に入る」
過去の罪、失われた記憶、そして命を懸けた選択。
光る蝶が導く真実の先で、ふたりが選んだのは、傷を抱えたまま愛し合う未来だった。
⚠️この物語はフィクションです。やや強引なシーンがあります。本作はAIの生成した文章を一部使用しています。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
答えられません、国家機密ですから
ととせ
恋愛
フェルディ男爵は「国家機密」を継承する特別な家だ。その後継であるジェシカは、伯爵邸のガゼボで令息セイルと向き合っていた。彼はジェシカを愛してると言うが、本当に欲しているのは「国家機密」であるのは明白。全てに疲れ果てていたジェシカは、一つの決断を彼に迫る。
結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
ぱんだ
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる