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本編
エール王国
しおりを挟む私は、修道院送りとされそうになったところを男と2人で逃げていた。
そして、追手を巻いたところで、ギリッと歯を噛み締める。
「なんなのよ、あの女!
いつもいつも、私の邪魔ばかりして!
やっとの思いであの女から奪ってやった王子も役に立たないし」
私が一番嫌いな女、エリス・フィーリア!
あの女だけは何があろうと許すつもりはないわ。
あの女がいなければ今頃私は王妃になっていたのに!
悔しい悔しい悔しい!
「お嬢、そんなに憎いなら、俺がやってやろうか?」
その、低い声に私は笑みを浮かべた。
あぁ、そうだったわ。
私にはまだ、この男がいる。
えぇ、そうね。
それが一番楽で、わかりやすいじゃない。
「あの女、エリス・フォーリアを殺してちょうだい。
簡単に死なせないで。
苦しませてからよ?」
「おー、怖い怖い。
だが、そんなことならおやすい御用だぜ」
男はつい最近になって私が助けてあげた暗殺者だ。
私に命を救われたからこそ、何があろうと決して裏切らない私の犬。
エリス・フォーリアを潰すには丁度いいわ。
「ふふっ、エリス・フォーリア。
私を敵に回したこと、後悔させてあげるわ」
*
「ちっ、演技とはいえどエリス様に牙を向くようなことを言わなければならないとは。
エリス様を殺す?
苦しませるだと。
そんなこと、このエリス様の忠実なる部下であるこの私、レスト・ラーグヴィスがやるはず無いだろう。
……さて、まずは報告だな」
レスト・ラーグヴィス、ラーグヴィス家の三男にして、フィーリン商会で働く彼にとって、バカな女一人騙すことは簡単なことだった。
師がハーネスであったことも関係してか、他の者よりも暗殺能力が高く、こうして諜報部員としても行動している。
「はぁ、エリス様に会いたい。
こんな奴よりもエリス様にお会いして出来ることならばお茶を……」
あの、美しくキメ細やかな白い肌に緩やかに波打つ金髪、そしてあの美しく澄んだ、穢れを知らないような瞳。
そして、優しげなその表情。
その全てがエリス様を引き立たせている。
たまに見せる困ったような表情も美しく……。
「いや、それよりも早く報告をしなければ。
そして早くこの任務を終わらせ、エリス様にお会いするのだ」
だが、例えエリス様のためといえどもエリス様を傷付け、陥れようとしただけでなく、フィーリン商会でエリス様を侮辱したうえ、アリス殿まで傷付けエリス様を心配させたような奴のそばにいて、従わなければならないなど。
許されることであれば今すぐ殺してやりたい程だというのに。
「レスト」
「ハーネスさん、何故ここに?」
「教え子を心配するのは師として当然のことだとエリス様から言われているので。
それと、私達の敵を見てみたかったこともありますし」
この師匠、ハーネスさんの本音は絶対に後者であると言える。
エリス様を害する存在を許すとは到底思えないし、敵、と言った時だけ冷たく鋭い声になったからだ。
そんな師匠を見ていると、やはり私はまだまだなのだと感じさせられる程に、殺気が包み隠されていた。
「それと、もうすぐコレも終わるので」
「ということは!」
「エリス様が再びエールへ戻られた時。
それがあの女の終わりです」
その師匠の言葉に、胸が歓喜で震えた気がした。
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