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第2章 異世界生活はじめました。
夢の中で、からの初めまして
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「…キ、…イブ…伊吹…。」
誰かが俺を読んでいる。悪い、今凄く眠いんだ。
「…ブキ、伊吹頼む。…を開けてくれ。頼む…。」
なんだろう、腕が妙にあったかい。手を誰かに握られてる?
誰だ?エリアラさん?もう朝?それとも夜這いですか?いやいや、俺にはアストがいるからダメですよ…。
いてッ!なんか抓られた。ぁあ、起きたくないんだけどなぁ…。
「わかったから。起きるから…。」
ゆっくりと重い瞼を開けると、目の前には人影。でも、まるで霧がかってるように薄ぼんやりとした輪郭しかない。
「誰だ?よく見えない…。」
その人影はゆっくりと腕を伸ばし、俺の頬に手を置くと顔を近づけてきた。
キスをされると思った。でも、そのまま相手の顔は俺の口を通り過ぎて耳元にたどり着く。
「…ぅで…、のギョクに…。ブキの…流して。それ…、助ける…カラに…。どうか、届いて…。」
えっ、何だって?なんで俺、声が出ないんだ?
人影は何かを伝えるとそっと体を離し、俺の手を取り自分の頬に置いた。そのまま手に触れる頬をこすりつけてくる。まるで猫みたい…。
あぁ。俺は、これを知っている。温かい…。誰だった?大事な…。
取られた腕に巻いてあった紐のその先…。丸い飾りが一瞬強い光を放つと、人影はそのまま静かに遠ざかっていく。
待ってくれ…、なんで離れていくんだ?頼む…、行かないでくれ…。
「イブ…、ぁいし…る。」
いくら必死に腕を伸ばしても全く届かない。もどかしい…、悲しい…、切ない…。
「俺も、愛してる…。」
はたして、俺の声は聞こえたのだろうか?
そして、あっという間にその人影はいなくなった…。
「いやぁ、おれって結構一途だったんだなぁ。あはは。」
起き上がると重力に従うように瞳から涙が零れた。
はっきりとしない頭を覚醒させるように振る。涙はまだとめどなく流れていく。
窓を見るともう日が高くまで登っていて、サンサンと太陽の光が部屋を照らしている。外からは色んな鳴き声がや、人の声もちらほら音も聞こえてくる。寝すぎたせいか少し体が重い。
今のは夢だったのだろうか?なのに触られた感触ははっきりと残っている。どういう事なのだろうか…?
この夢の意味を理解する必要があるはず…。でも、何故か気持ちとは裏腹に頭がぼやけた感じで考えがまとまってくれない。
「いつもは、こんなに寝起き悪くないんだけどな…。やっぱり、あの夢のせいかな…?」
確かに、夢のせいでもあったが、エリアラの置いた眠りの香も影響しているとは知らない伊吹は、どんよりと重い頭をクリアにするべく顔を洗おうとベットからのろのろとはい出た。昨日、エリアラに貰った桶と手ぬぐいを手に部屋を出て水場を探す。
二階はドアが三つあり、一番奥が伊吹が使わせてもらった部屋だったが流石に他のドアを開けるわけにもいかず、とりあえず、一階に降りた。階段を降りると玄関がみえそこを背に見ると奥にこじんまりとしたリビングと暖炉が見える。そのまま暖炉まで行くと右手を見れば、壁をアーチ型にくり抜いたような入り口があった。
その入り口を覗くとキッチンだったのでそこに使用済みの水を捨てると二つあるシンクの様なところの一方に甕が置いてあり、そこに入ってる新しい綺麗な水が常にはられている状態になっている。
伊吹が昨日皿洗いをしたものの、泡を流すのに困っていたらエリアラに簡単にそう説明された。
桶に新しい水を汲むと同じく昨日使った布を洗うと、また水を捨て、もう一度水を汲み直す。そして、その水で顔と軽く頭も洗い流すと布で拭いた。本来ならキッチンでやる事ではないとちらっと思ったりもしたが、下手にうろうろして家探しをするよりはよっぽど良いだろうと自分を納得させる。
しかし、常に新しい水が出るっていったいどういう仕組みなのか…。時間が出来たら詳しく聞いてみようと頭の隅にメモっておく。
顔と頭だけでもスッキリした事により、頭も徐々に通常通りの働きをしだす。
とりあえず、桶などもこのままここに置いて置く訳にもいかず、もう一度抱えると部屋に戻ることにした。
「あ、今気づいたけど、俺この格好でうろうろしてちゃダメじゃん。」
頭がすっきりしてまず、気が付いたのは自分の格好だった。
ダボダボのシャツは、大きいとはいえ伊吹の引き締まったお尻や艶々の太ももをかろうじて隠している程度で歩くたびにと見えそうで見えないチラリズムのエロさを醸し出している。
「これって巷でいう【彼シャツ】とか言うやつ?相手まったく知らんが…。せめて下はいてくりゃ良かったな。どこまでぼんやりしてたんだか…。あの二人に会う前に急いで部屋に戻らないとだな。こりゃ…。特に、あのじじぃに見つかったら何言われるか分かったもんじゃない!」
無駄に早歩きで急いで部屋に戻ると桶をテーブルに置いて、とりあえず履かないよりマシだとエリアラに貰ったダボダボズボンを裾を折って着ることにした。
「ウエストは、紐でで助かった。歩いてたら脱げるとか間抜けなことにはならないみたいだな。」
一旦、両腕を頭の上に伸ばし、ストレッチをするとバフっともう一度ベットに倒れこんだ。
クリアになった頭で今朝と言ってももう昼過ぎだと思われるが…、見た夢の出来事を思い出すためゆっくりと目を閉じた。
まず、目に浮かんだのは、薄ぼんやりとしと浮かんだ細身のシルエット。そして、途切れ途切れだったが俺の耳をくすぐる可愛らしいあの声…。
あれは、あの姿は俺の愛しい神様。絶対にアストだった…。
せっかく会えたというのにちゃんと姿を見せてくれないなんてなんて意地悪なやつなんだ。なんてふと思ったりもしたが、即その考えを否定する。
そんなことある訳無いな。だってあいつ真面目だし。素直だし。きっと何か理由があってのことだろう。
しかし、それでも俺に伝えなきゃいけない事があって、アイツなりに必死だったって感じが凄くした…。
じゃあ、何故アストは俺のもとに来て必死に何かを伝えようとしたのか…。
そういえば、夢の中で目を覚ました…ってあってんのか分かんないけど、その直前俺はどこに違和感を感じていたっけ…?
あぁ、そうだ腕だ。
そっと誰かに掴まれてるみたいで、その後なんだかポカポカと温かかった。くすぐったくて、もしかしてエリーさんが夜這いに来たのかって喜んでたら手を抓られたんだよな…。
んで、観念してやっと俺は目を開けた…。
目を開けたものの、見えたのは薄ぼんやりとした影で、いったい誰だか最初は見当もつかなかった。それが、付かずいてきてドキドキしてたらスカ食らったんだよなぁ…。
聞こえてきた声は、何言ってるか分からないしどうしたら良いもんかと思ったらあのスリスリだもんなぁ。
あれは、卑怯だろう…。あ、卑怯と言えばあのエロい約束もちゃんと聞く間もなく逃げたんだよな。
アイツ…。絶対今度会ったときは死ぬほどアンアン言わして、抜かずの潮吹きさせてやる…!
っと、ついついあの可愛らしいデレ顔を思い出したら脱線しちゃったじゃんかよ。
こほん、あの時聞こえたアストの愛らしい声は、ずいぶん焦っているようだった。途切れ途切れでキチンとは伝わってこなかったが、でも、当分会えないと言っていた筈なのに夢とはいえ会いに来てくれた。
それだけ大事な用件だってことは分かった。
「思い出せ、アストは何て言ってた?思い出せ…。」
ハラリと顔にかかる髪をかき上げた時、ふと夢の中で掴まれた左手が目に入る。
そこにあったのは、赤くなった抓られた痕…。思わずクスッと笑ってしまう。
「この痕、消えずにずっと残ってればいいのにな…。」
そっと痕をさすりながら、視線をその先に延ばすと、温かいと感じていた腕の場所にあったのは餞別にとアストに貰った髪飾りの組み紐。
その紐には紺・銀・水色とアストを象徴するかの様な色あいの綺麗な玉が三つ垂れ下がっていたるのだが、それを見た伊吹は違和感を覚えた。
「あれ?この玉って…。」
よく見ると俺が貰った時は、向こう側が透けて見えるビー玉の様なガラス玉だったはず。
だが、今は、玉一つ一つの中心に何か靄のような動く物が見える。その靄はドクドクとリズムを刻む様に揺れていてまるで呼吸をしている様だった。
「触るとあったかい。なんか生き物の卵みたいだな…。」
眺めていた玉がキラッと光を反射したその時、その瞬間、伊吹にはアストの声がはっきりと聞こえたような気がした。
思わず『ガバッ』とベッドから起き上がると縁に腰かけ直し、姿勢を正してしまう。
そうだ、アストはこう言っていたじゃないか…。
「「腕の髪飾りの玉に…。伊吹の魔力を流して…。それで、お前を助ける力になる。どうか、届いて…。」」
そうだ…、そう言っていた。
ん?って事はこの玉に最初くれるって言ってたサポートの核時みたいに力を流せばいいって事か?
んじゃぁ、そうと分かればやる事は一つだ!
「今からやる事はまずは集中すること…!んで、イメージ…。きっとできる。大丈夫。アストも見守ってくれてるはず。」
自分を叱咤激励すると、アストの努力を無にしない様に気合を入れた。
『パンッ』っと両頬を叩くと、俺は、左手を自分の目の前に出して、右手でぶら下がっている玉を握りしめた。
目を閉じて、ゆっくりと深呼吸をする。大事なのはそうしっかりとしたイメージ。
血の流れは気の流れ、そう…、全身の血の巡りは、気の巡り。
体の隅々まで神経を研ぎ澄まして流れの先を【玉】へと集中させる。
集中を途切れさすことなく続けていくと、掌の【玉】が段々と熱を帯びていくのが分かった…。
体が熱い。心臓が煩い。耳鳴りがする。
しんと静まり返った部屋の中で聞こえるのは自分から発せらる音のみ。逆に空気が張り詰めて耳が痛いほどだ。
…どのくらい、時間がたったか分からない。ふと、何故かもうこれで大丈夫だと確信できた。
目を閉じたまま何度か大きく深呼吸をする。すると次第に心臓の音が徐々に落ち着いていった。
目を静かに開ける。まだ、ぼんやりとする視界を元に戻す様に何度か瞬きをした。
瞬きをしたらそこには…。
「はぁっ?何だよこれは⁈」
クリアになった視界に入って来たのは金色の粒子が蛍の様に部屋いっぱいにキラキラと舞い踊り、光輝く摩訶不思議現象だった。
そのあまりにも綺麗な光景に驚きの声を上げたものの、その後は一切声も出ず、ただただ茫然としばらく眺めていた。
しかし、突然、楽し気に舞い踊っていた光がピタっと止まってしまう。
「え?何?どうした?ってかそう言えば【玉】はどうなった???」
金色の粒子の美しさに見とれていてすっかり忘れていた【玉】の存在を思い出したその時。
いきなり浮遊していた光が一気に集約したかと思うと、掌の中の【玉】に突っ込んでいった…。
直後【玉】閃光を発して、伊吹の目を容赦なく真っ白に塗りつぶした。
「うわっ!」
脳まで焼かれるかと思うほどの強い光に、頭はクラクラし、なかなか目を開けることが出来ないでいた。
すると、『トタッ』と何かが床を軽く踏んだ音と、『バサッバサッ』と普段こんなに近くで聞くことのない羽音が伊吹の耳に入ってきた。
…伊吹は、目を開けて唖然としてしまった。
なぜなら、彼の目の前にはこの部屋にいるはずのない物が居たからで…。
そのいるはずのない物は、伊吹の膝の上と肩の上に乗るとこう言ったのである…。
「「初めまして、ご主人様。宜しくダワサ。ナリ~。」」
こうして、アストのお陰で伊吹の夢が早速一つ叶う日が来るのであった。
誰かが俺を読んでいる。悪い、今凄く眠いんだ。
「…ブキ、伊吹頼む。…を開けてくれ。頼む…。」
なんだろう、腕が妙にあったかい。手を誰かに握られてる?
誰だ?エリアラさん?もう朝?それとも夜這いですか?いやいや、俺にはアストがいるからダメですよ…。
いてッ!なんか抓られた。ぁあ、起きたくないんだけどなぁ…。
「わかったから。起きるから…。」
ゆっくりと重い瞼を開けると、目の前には人影。でも、まるで霧がかってるように薄ぼんやりとした輪郭しかない。
「誰だ?よく見えない…。」
その人影はゆっくりと腕を伸ばし、俺の頬に手を置くと顔を近づけてきた。
キスをされると思った。でも、そのまま相手の顔は俺の口を通り過ぎて耳元にたどり着く。
「…ぅで…、のギョクに…。ブキの…流して。それ…、助ける…カラに…。どうか、届いて…。」
えっ、何だって?なんで俺、声が出ないんだ?
人影は何かを伝えるとそっと体を離し、俺の手を取り自分の頬に置いた。そのまま手に触れる頬をこすりつけてくる。まるで猫みたい…。
あぁ。俺は、これを知っている。温かい…。誰だった?大事な…。
取られた腕に巻いてあった紐のその先…。丸い飾りが一瞬強い光を放つと、人影はそのまま静かに遠ざかっていく。
待ってくれ…、なんで離れていくんだ?頼む…、行かないでくれ…。
「イブ…、ぁいし…る。」
いくら必死に腕を伸ばしても全く届かない。もどかしい…、悲しい…、切ない…。
「俺も、愛してる…。」
はたして、俺の声は聞こえたのだろうか?
そして、あっという間にその人影はいなくなった…。
「いやぁ、おれって結構一途だったんだなぁ。あはは。」
起き上がると重力に従うように瞳から涙が零れた。
はっきりとしない頭を覚醒させるように振る。涙はまだとめどなく流れていく。
窓を見るともう日が高くまで登っていて、サンサンと太陽の光が部屋を照らしている。外からは色んな鳴き声がや、人の声もちらほら音も聞こえてくる。寝すぎたせいか少し体が重い。
今のは夢だったのだろうか?なのに触られた感触ははっきりと残っている。どういう事なのだろうか…?
この夢の意味を理解する必要があるはず…。でも、何故か気持ちとは裏腹に頭がぼやけた感じで考えがまとまってくれない。
「いつもは、こんなに寝起き悪くないんだけどな…。やっぱり、あの夢のせいかな…?」
確かに、夢のせいでもあったが、エリアラの置いた眠りの香も影響しているとは知らない伊吹は、どんよりと重い頭をクリアにするべく顔を洗おうとベットからのろのろとはい出た。昨日、エリアラに貰った桶と手ぬぐいを手に部屋を出て水場を探す。
二階はドアが三つあり、一番奥が伊吹が使わせてもらった部屋だったが流石に他のドアを開けるわけにもいかず、とりあえず、一階に降りた。階段を降りると玄関がみえそこを背に見ると奥にこじんまりとしたリビングと暖炉が見える。そのまま暖炉まで行くと右手を見れば、壁をアーチ型にくり抜いたような入り口があった。
その入り口を覗くとキッチンだったのでそこに使用済みの水を捨てると二つあるシンクの様なところの一方に甕が置いてあり、そこに入ってる新しい綺麗な水が常にはられている状態になっている。
伊吹が昨日皿洗いをしたものの、泡を流すのに困っていたらエリアラに簡単にそう説明された。
桶に新しい水を汲むと同じく昨日使った布を洗うと、また水を捨て、もう一度水を汲み直す。そして、その水で顔と軽く頭も洗い流すと布で拭いた。本来ならキッチンでやる事ではないとちらっと思ったりもしたが、下手にうろうろして家探しをするよりはよっぽど良いだろうと自分を納得させる。
しかし、常に新しい水が出るっていったいどういう仕組みなのか…。時間が出来たら詳しく聞いてみようと頭の隅にメモっておく。
顔と頭だけでもスッキリした事により、頭も徐々に通常通りの働きをしだす。
とりあえず、桶などもこのままここに置いて置く訳にもいかず、もう一度抱えると部屋に戻ることにした。
「あ、今気づいたけど、俺この格好でうろうろしてちゃダメじゃん。」
頭がすっきりしてまず、気が付いたのは自分の格好だった。
ダボダボのシャツは、大きいとはいえ伊吹の引き締まったお尻や艶々の太ももをかろうじて隠している程度で歩くたびにと見えそうで見えないチラリズムのエロさを醸し出している。
「これって巷でいう【彼シャツ】とか言うやつ?相手まったく知らんが…。せめて下はいてくりゃ良かったな。どこまでぼんやりしてたんだか…。あの二人に会う前に急いで部屋に戻らないとだな。こりゃ…。特に、あのじじぃに見つかったら何言われるか分かったもんじゃない!」
無駄に早歩きで急いで部屋に戻ると桶をテーブルに置いて、とりあえず履かないよりマシだとエリアラに貰ったダボダボズボンを裾を折って着ることにした。
「ウエストは、紐でで助かった。歩いてたら脱げるとか間抜けなことにはならないみたいだな。」
一旦、両腕を頭の上に伸ばし、ストレッチをするとバフっともう一度ベットに倒れこんだ。
クリアになった頭で今朝と言ってももう昼過ぎだと思われるが…、見た夢の出来事を思い出すためゆっくりと目を閉じた。
まず、目に浮かんだのは、薄ぼんやりとしと浮かんだ細身のシルエット。そして、途切れ途切れだったが俺の耳をくすぐる可愛らしいあの声…。
あれは、あの姿は俺の愛しい神様。絶対にアストだった…。
せっかく会えたというのにちゃんと姿を見せてくれないなんてなんて意地悪なやつなんだ。なんてふと思ったりもしたが、即その考えを否定する。
そんなことある訳無いな。だってあいつ真面目だし。素直だし。きっと何か理由があってのことだろう。
しかし、それでも俺に伝えなきゃいけない事があって、アイツなりに必死だったって感じが凄くした…。
じゃあ、何故アストは俺のもとに来て必死に何かを伝えようとしたのか…。
そういえば、夢の中で目を覚ました…ってあってんのか分かんないけど、その直前俺はどこに違和感を感じていたっけ…?
あぁ、そうだ腕だ。
そっと誰かに掴まれてるみたいで、その後なんだかポカポカと温かかった。くすぐったくて、もしかしてエリーさんが夜這いに来たのかって喜んでたら手を抓られたんだよな…。
んで、観念してやっと俺は目を開けた…。
目を開けたものの、見えたのは薄ぼんやりとした影で、いったい誰だか最初は見当もつかなかった。それが、付かずいてきてドキドキしてたらスカ食らったんだよなぁ…。
聞こえてきた声は、何言ってるか分からないしどうしたら良いもんかと思ったらあのスリスリだもんなぁ。
あれは、卑怯だろう…。あ、卑怯と言えばあのエロい約束もちゃんと聞く間もなく逃げたんだよな。
アイツ…。絶対今度会ったときは死ぬほどアンアン言わして、抜かずの潮吹きさせてやる…!
っと、ついついあの可愛らしいデレ顔を思い出したら脱線しちゃったじゃんかよ。
こほん、あの時聞こえたアストの愛らしい声は、ずいぶん焦っているようだった。途切れ途切れでキチンとは伝わってこなかったが、でも、当分会えないと言っていた筈なのに夢とはいえ会いに来てくれた。
それだけ大事な用件だってことは分かった。
「思い出せ、アストは何て言ってた?思い出せ…。」
ハラリと顔にかかる髪をかき上げた時、ふと夢の中で掴まれた左手が目に入る。
そこにあったのは、赤くなった抓られた痕…。思わずクスッと笑ってしまう。
「この痕、消えずにずっと残ってればいいのにな…。」
そっと痕をさすりながら、視線をその先に延ばすと、温かいと感じていた腕の場所にあったのは餞別にとアストに貰った髪飾りの組み紐。
その紐には紺・銀・水色とアストを象徴するかの様な色あいの綺麗な玉が三つ垂れ下がっていたるのだが、それを見た伊吹は違和感を覚えた。
「あれ?この玉って…。」
よく見ると俺が貰った時は、向こう側が透けて見えるビー玉の様なガラス玉だったはず。
だが、今は、玉一つ一つの中心に何か靄のような動く物が見える。その靄はドクドクとリズムを刻む様に揺れていてまるで呼吸をしている様だった。
「触るとあったかい。なんか生き物の卵みたいだな…。」
眺めていた玉がキラッと光を反射したその時、その瞬間、伊吹にはアストの声がはっきりと聞こえたような気がした。
思わず『ガバッ』とベッドから起き上がると縁に腰かけ直し、姿勢を正してしまう。
そうだ、アストはこう言っていたじゃないか…。
「「腕の髪飾りの玉に…。伊吹の魔力を流して…。それで、お前を助ける力になる。どうか、届いて…。」」
そうだ…、そう言っていた。
ん?って事はこの玉に最初くれるって言ってたサポートの核時みたいに力を流せばいいって事か?
んじゃぁ、そうと分かればやる事は一つだ!
「今からやる事はまずは集中すること…!んで、イメージ…。きっとできる。大丈夫。アストも見守ってくれてるはず。」
自分を叱咤激励すると、アストの努力を無にしない様に気合を入れた。
『パンッ』っと両頬を叩くと、俺は、左手を自分の目の前に出して、右手でぶら下がっている玉を握りしめた。
目を閉じて、ゆっくりと深呼吸をする。大事なのはそうしっかりとしたイメージ。
血の流れは気の流れ、そう…、全身の血の巡りは、気の巡り。
体の隅々まで神経を研ぎ澄まして流れの先を【玉】へと集中させる。
集中を途切れさすことなく続けていくと、掌の【玉】が段々と熱を帯びていくのが分かった…。
体が熱い。心臓が煩い。耳鳴りがする。
しんと静まり返った部屋の中で聞こえるのは自分から発せらる音のみ。逆に空気が張り詰めて耳が痛いほどだ。
…どのくらい、時間がたったか分からない。ふと、何故かもうこれで大丈夫だと確信できた。
目を閉じたまま何度か大きく深呼吸をする。すると次第に心臓の音が徐々に落ち着いていった。
目を静かに開ける。まだ、ぼんやりとする視界を元に戻す様に何度か瞬きをした。
瞬きをしたらそこには…。
「はぁっ?何だよこれは⁈」
クリアになった視界に入って来たのは金色の粒子が蛍の様に部屋いっぱいにキラキラと舞い踊り、光輝く摩訶不思議現象だった。
そのあまりにも綺麗な光景に驚きの声を上げたものの、その後は一切声も出ず、ただただ茫然としばらく眺めていた。
しかし、突然、楽し気に舞い踊っていた光がピタっと止まってしまう。
「え?何?どうした?ってかそう言えば【玉】はどうなった???」
金色の粒子の美しさに見とれていてすっかり忘れていた【玉】の存在を思い出したその時。
いきなり浮遊していた光が一気に集約したかと思うと、掌の中の【玉】に突っ込んでいった…。
直後【玉】閃光を発して、伊吹の目を容赦なく真っ白に塗りつぶした。
「うわっ!」
脳まで焼かれるかと思うほどの強い光に、頭はクラクラし、なかなか目を開けることが出来ないでいた。
すると、『トタッ』と何かが床を軽く踏んだ音と、『バサッバサッ』と普段こんなに近くで聞くことのない羽音が伊吹の耳に入ってきた。
…伊吹は、目を開けて唖然としてしまった。
なぜなら、彼の目の前にはこの部屋にいるはずのない物が居たからで…。
そのいるはずのない物は、伊吹の膝の上と肩の上に乗るとこう言ったのである…。
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