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真夜中にだってお仕事です(7)
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「ここは暗いから一人じゃ怖かっただろ。明るくて人の多いところに送ってやるからな。この姉ちゃんが」
「わ、私? あ、そっか、私か」
「ボケてんじゃねえよ」
「いきなりだったからだもん」
私たちのやり取りを黙って聞いていたけーすけくんが小さく噴き出した。さっきまでの大泣きと叫び声はどこへやら、コロコロと可愛く笑う。鈴の音みたいな笑い声に私とクロノさんが顔を見合わせると、けーすけくんが口を開いた。
「仲良しなんだね!」
「仲良し? 私とクロノさんが?」
「俺とヨミが?」
「仲良しかなあ? 私の名前はこよみなのに、ヨミって呼んでくるんだよ……」
私の言葉を聞いて、けーすけくんは自分のことを指さした。
「僕はね、けーちゃんなんだよ」
けーちゃんって、そう呼ばれてたってことかな。
「ママがね、仲良ししたい人にはニックネームをつけるって言ってたの。僕はけーちゃん。二人も仲良ししたいんだね」
「……いいママだったんだね」
「うんっ!」
けーすけくんの体がぽわっと淡い水色の光に包まれた。瞬く間に光の玉になったけーすけくんが、大人しくベッドのふちで私の案内をまっている。ランドセルが勝手に開いて、クロノさんが丁寧にけーすけくんを両手ですくい上げた。
「あっちに行ったら、歩けるようになるからな。またな」
私の後ろに回ったクロノさんが、けーすけくんの魂をランドセルの中に入れた。水色の光が診察室の中を照らして、すぐに静かになる。
「うん、案内完了!」
私の声に呼応するように、ぱちんとランドセルの鍵がしまった。
「けーすけくん、安心したかな?」
「珍しく本当に迷子なだけだったな……怖かっただろうに」
「そうだね」
少しの沈黙の後、クロノさんの顔を見上げると、少し気まずそうに視線を逸らされた。
「クロノさんのこと、クロちゃんって呼ぼうか?」
「怒るぞ、お前」
「クロノさんは私と仲良くしたかったんだね!」
「調子に乗んな」
クロノさんが私の髪の毛をぐちゃぐちゃにかき回す。ひどい、ひどいです。髪が乱れる。
「たいして整えてもないだろ」
「女の子の髪はとっても大事なんだからね! クロノさん絶対モテなかったでしょ!」
「はっ、モテモテだったね。それはもう俺が歩いたら女の子の悲鳴で地面が割れるってくらい」
なんですかそれ、怪物じゃないの。嘘を吐くにしても、もっとまともな吐き方をしたらいいのに。
「さて、まだ魂はいそうか?」
「どうして私に聞くの?」
「もしかしてさっき、本気で勘で当てたと思ってたのか?」
勘でって言ったのはクロノさんじゃないの。
私が首を傾げると、ちげえよ、と彼が言葉を続けた。
「お前がどこに魂がいるのか分かったのは、タマジョとしての能力だ。ちょっと集中してみろ。わかるはずだから」
驚いて声も出せないでいると、上から降ってきた手に半ば強引に瞼を閉じられた。
集中、集中ね。よくわからないけど、私にそう言うことができるなら、とりあえずやってみるよ。
「どうだ? わかったか?」
聞くのが早いでしょ。まだ五秒もたってないよ。
「無意識ではできているからな。あとは意識的にやるだけだ」
その意識を遮らないでくださいってば。
「かくれんぼで音のするほうに向かうような感覚かな」
そんなに言うならクロノさんがしてください。
せっかく人が頑張って集中しようとしているのに、話しかけられたら余計な事ばっかり考えちゃう。
「大変仲がよろしいんですね。魂一個にずいぶんと時間をかけていたようですが、それも仲良くするための秘訣ならば、ぜひ教えていただきたいものです」
ああ、もう。うるさいうるさい。
「いい加減にして! 集中が乱れるって言ってるでしょっ!」
耐えきれなくなって叫ぶとあたりがシンと静まり返った。
ようやくわかってくれたのね。ここまで言わないと分からないなんて、本当に大人なのかな。ちょっと待って、最後に聞こえた声はなんだか違ったような。
「あ、あれ……?」
うっすらと目を開くと、私の視界にうつったのは呆然とする赤髪の男の人と、お腹を抱えて笑い声をおさえている黒髪の男の人。ってことは、さっきの声は……。
「アカツキさんっ?」
「集中が乱れるってよ、アカツキィ」
う、うわあ、クロノさんってば悪い顔。アクションヒーローの悪役も真っ青だよ。
呆然としていたアカツキさんの顔がどんどん険しくなって言って、次第に肩がプルプル震え始めた。気が付かなかったとはいえ、私ってばまずいこと言っちゃったんじゃないの?
「しつけのなっていないタマジョですね。品のないクロノによくお似合いです」
「そりゃあしつけなんてしてねえよ、タマジョはペットじゃねえんだから」
「クロノの業績が悪いのも頷けます。私たちは魂を二個回収いたしましたが、そちらはずいぶんと手間取ったようですね」
「ああ、そうだな、俺たちは一人ご案内したよ」
アカツキさんとクロノさんのやり取りを聞きながら視線を動かすと、レイくんとかち合った。綺麗な瞳が、少しだけ悲しそうに見えて首を傾げる。
「たった一個回収したくらいでそんな顔をされましてもねえ」
「一人ご案内って言ってんだろ」
「何が違うというのです」
狭い診察室の温度が下がっていく気がする。
「わ、私? あ、そっか、私か」
「ボケてんじゃねえよ」
「いきなりだったからだもん」
私たちのやり取りを黙って聞いていたけーすけくんが小さく噴き出した。さっきまでの大泣きと叫び声はどこへやら、コロコロと可愛く笑う。鈴の音みたいな笑い声に私とクロノさんが顔を見合わせると、けーすけくんが口を開いた。
「仲良しなんだね!」
「仲良し? 私とクロノさんが?」
「俺とヨミが?」
「仲良しかなあ? 私の名前はこよみなのに、ヨミって呼んでくるんだよ……」
私の言葉を聞いて、けーすけくんは自分のことを指さした。
「僕はね、けーちゃんなんだよ」
けーちゃんって、そう呼ばれてたってことかな。
「ママがね、仲良ししたい人にはニックネームをつけるって言ってたの。僕はけーちゃん。二人も仲良ししたいんだね」
「……いいママだったんだね」
「うんっ!」
けーすけくんの体がぽわっと淡い水色の光に包まれた。瞬く間に光の玉になったけーすけくんが、大人しくベッドのふちで私の案内をまっている。ランドセルが勝手に開いて、クロノさんが丁寧にけーすけくんを両手ですくい上げた。
「あっちに行ったら、歩けるようになるからな。またな」
私の後ろに回ったクロノさんが、けーすけくんの魂をランドセルの中に入れた。水色の光が診察室の中を照らして、すぐに静かになる。
「うん、案内完了!」
私の声に呼応するように、ぱちんとランドセルの鍵がしまった。
「けーすけくん、安心したかな?」
「珍しく本当に迷子なだけだったな……怖かっただろうに」
「そうだね」
少しの沈黙の後、クロノさんの顔を見上げると、少し気まずそうに視線を逸らされた。
「クロノさんのこと、クロちゃんって呼ぼうか?」
「怒るぞ、お前」
「クロノさんは私と仲良くしたかったんだね!」
「調子に乗んな」
クロノさんが私の髪の毛をぐちゃぐちゃにかき回す。ひどい、ひどいです。髪が乱れる。
「たいして整えてもないだろ」
「女の子の髪はとっても大事なんだからね! クロノさん絶対モテなかったでしょ!」
「はっ、モテモテだったね。それはもう俺が歩いたら女の子の悲鳴で地面が割れるってくらい」
なんですかそれ、怪物じゃないの。嘘を吐くにしても、もっとまともな吐き方をしたらいいのに。
「さて、まだ魂はいそうか?」
「どうして私に聞くの?」
「もしかしてさっき、本気で勘で当てたと思ってたのか?」
勘でって言ったのはクロノさんじゃないの。
私が首を傾げると、ちげえよ、と彼が言葉を続けた。
「お前がどこに魂がいるのか分かったのは、タマジョとしての能力だ。ちょっと集中してみろ。わかるはずだから」
驚いて声も出せないでいると、上から降ってきた手に半ば強引に瞼を閉じられた。
集中、集中ね。よくわからないけど、私にそう言うことができるなら、とりあえずやってみるよ。
「どうだ? わかったか?」
聞くのが早いでしょ。まだ五秒もたってないよ。
「無意識ではできているからな。あとは意識的にやるだけだ」
その意識を遮らないでくださいってば。
「かくれんぼで音のするほうに向かうような感覚かな」
そんなに言うならクロノさんがしてください。
せっかく人が頑張って集中しようとしているのに、話しかけられたら余計な事ばっかり考えちゃう。
「大変仲がよろしいんですね。魂一個にずいぶんと時間をかけていたようですが、それも仲良くするための秘訣ならば、ぜひ教えていただきたいものです」
ああ、もう。うるさいうるさい。
「いい加減にして! 集中が乱れるって言ってるでしょっ!」
耐えきれなくなって叫ぶとあたりがシンと静まり返った。
ようやくわかってくれたのね。ここまで言わないと分からないなんて、本当に大人なのかな。ちょっと待って、最後に聞こえた声はなんだか違ったような。
「あ、あれ……?」
うっすらと目を開くと、私の視界にうつったのは呆然とする赤髪の男の人と、お腹を抱えて笑い声をおさえている黒髪の男の人。ってことは、さっきの声は……。
「アカツキさんっ?」
「集中が乱れるってよ、アカツキィ」
う、うわあ、クロノさんってば悪い顔。アクションヒーローの悪役も真っ青だよ。
呆然としていたアカツキさんの顔がどんどん険しくなって言って、次第に肩がプルプル震え始めた。気が付かなかったとはいえ、私ってばまずいこと言っちゃったんじゃないの?
「しつけのなっていないタマジョですね。品のないクロノによくお似合いです」
「そりゃあしつけなんてしてねえよ、タマジョはペットじゃねえんだから」
「クロノの業績が悪いのも頷けます。私たちは魂を二個回収いたしましたが、そちらはずいぶんと手間取ったようですね」
「ああ、そうだな、俺たちは一人ご案内したよ」
アカツキさんとクロノさんのやり取りを聞きながら視線を動かすと、レイくんとかち合った。綺麗な瞳が、少しだけ悲しそうに見えて首を傾げる。
「たった一個回収したくらいでそんな顔をされましてもねえ」
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