【完結】サイレント、ナイト ~その夜のはじまり~

Fred

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本編

本編4.イン・ザ・トレイン

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薄暗い室内でミシンの乗る机に突っ伏して寝息を立てているルイコ。
ミシンの電灯がその髪の毛を照らし、赤く光らせている。
そして少し開いたカーテンの間から差す薄明かりが室内をぼやっと浮き立たせる。



外からは時折スズメの鳴き声が聞こえ、業務用バイクの音が過ぎていく。
水槽では熱帯魚がひらひらとしたり、動きを止め沈んだりと落ち着かない素振りで舞っている。


「ん、ん~っ」


顔をしかめ、どこか苦しそうな声を上げるルイコ。
それでも唇の端を上げ下げしただけでまた静かに呼吸に肩を揺らす。

その時、ベランダから『バサバサッ』という音とともに、『カァ、カァ』とカラスの鳴き声が聞こえる。
『カァ』といえば『カァ』と返すように、複数のカラスがお互いを確かめ合うように鳴き合っていた。
そして、『バサバサッ』という飛び立つカラスのひときわ大きな羽音で、薄く目を開けるルイコ。


「ん、ん~、あれ?」


ルイコはあたふたと窓、ミシン、縫いかけのコートの順に素早く2度、3度と目線を映し鋭角な三角形を描く。


「わっ、わっ」


ハッと立ち上がり、時計を見ようとスマホを手に取り電源ボタンを押すが電池残量なしの表示。


「もぅ!」


部屋の片隅にあるミニコンポまで駆け寄って時計を確認すると、午前5時に近い。


「わっ。やっばぁ」


ルイコは持っていたスマホを充電器に置き、電源スイッチを入れる。
すぐさま電気スタンドのスイッチを足で踏んで歩みを進めようとしたとき、床にある魔女の置物を蹴飛ばしてしまう。


「いやっ、痛っ。もぉ~!」



置物を一度恨めしく見つめると、ドスンとミシンを前にして椅子に座り、再びそれを回し始める。


「はやく、はやく、でも丁寧に」


ルイコは呟きながら、必死に布をすべらせる。
ところが間もなくルイコの後ろでスマホが光り、電源が復帰する。
そして、メッセージ通知が表示される。

ルイコはミシンを止め、溜息をついて立ち上がると、スマホを手に取ってそれを確認する。
カズヤからのメッセージ、着信履歴がある。


━━画面に『ルイコ、どうした?』の文面。


「あっ、ごめん!」

ルイコはとっさに呟き、素早くメッセージを打つ。

『ごめんね。昨日は仕事で遅くてスマホの電池も切れちゃってたの。今日は約束通り、7時に行くからね』とパコパコ流れるようにタイピングして送信。

そして再びスマホを充電器に置き、さえない表情のままミシン台に戻り、目の前のデザイン画を見つめる。

無数に飛ぶハート。


「ふぅ」


再びミシンを回し、作業を再開するルイコ。



━━カズヤの部屋。

壁の一面にはROCKなメッセージが書かれたTシャツがきちんとディスプレイされているかのように並んで掛けられている。

低い、黒いシェルフの上には、古い、図体の大きなオーディオセットが緑色の細かい光を全体にちりばめて光りながら鎮座し、両脇を大きなスピーカーが挟む。



ターンテーブルが一台あり、赤いLEDに照らされたレコードがクルクルと回る。

針は盤の一番内側を出口なくなぞっている。

床には数枚のLPジャケットが散乱し、裸のレコード盤も無造作に横たわる。

カズヤはベッドの上でTシャツにパンツ姿で口をあけたまま枕を抱いて口と鼻で辛うじてイビキにならないほどの寝息を立てている。


「すぅ、すぅ……」


ベッドの傍らにあるロー・テーブル上には口を開けたままのバーボンの瓶の底が1cm程度だけ琥珀色に光り、水のあるコップ、つまみのパッケージ等が散乱している。
そして、コップの底からうねった筋をなす結露の水がテーブル端から一滴づつ落ちている。




『オキロ! オキロ! バカッ! オキヤガレッ!』

突然、カズヤのスマホが叫びだす。

腫れた瞼を薄く開いて手を伸ばし、画面をタッチしてアラームを止める。


「あぅ」


カズヤの身体は店の棚卸の次の日のように重かった。
でも今朝は身体が疲れているのではない。
いやおうなく打ちひしがれた心が身体を重くしているのだ。
カズヤは薄い目のまま、また元の位置に戻り再び眠ろうとするが、ハッと飛び起きてスマホを掴み、メッセージをチェックする。


━━ルイコからの受信。送信時間・午前5時。


カズヤは目をこすりながら、画面を凝視したと思えば、すぐにスマホをソファに投げつける。

もう、嘘はゴメンだ。
どんな理由があろうとも。



ルイコの部屋のカーテンは明るい外光に照らされ、それが部屋の奥までを明るくしている。
水槽の熱帯魚は水面あたりに口を出し、せわしなく泳ぎ回っている。

ルイコは、手縫いで袖の釦をつけている。
余った糸を歯で噛み切る。


「よし、できた!」


ルイコはコートに袖を通し、姿見鏡の前で両手を広げたりクロスさせたりとご満悦。
そして、両袖を鼻に寄せ、すぅ~っとにおいを嗅いだ。
ふと我に返った様子で、テーブル上の布切れを勢いよく退けると、急いで包装紙を広げ、ラッピングし始める。


━━ミシンと壁のデザイン画。


シャワーを浴びているルイコ。
鏡の中の自分の顔を見る。


「ひっど……」


目のクマの濃さ、窪んだ目、やつれた頬、どれもが今日の日を飾れるような顔ではなかった。
風呂場から出ると、タオルで髪の毛を拭きながらコンポの時計を見る。
既に午前9時を過ぎていて慌てた様子。


「きゃーっ」


小さな悲鳴を上げるルイコ。

白いキャビネットのあちこちから洋服を引っ張り出しては放り投げるルイコの手。


━━テーブル上に置かれたラッピング済の包み。


ルイコは化粧道具の入ったポーチのジッパーを開けるが、一瞬動きが止まる。


「あ、いいや」


ポーチを閉め、トートバッグの中に放り込む。
床に散らばった洋服を次から次へ身に着けていくルイコ。
そして着替えを終えると姿見に全身を映してから、顔を近づけて目のクマをなぞってみる。


「やっぱひっど……」


ルイコはトートバッグをひっつかむと、玄関のドアを開けて颯爽と飛び出していく。
それを見送ったドアがバタンと閉まる。
そのとたん、そのドアが荒っぽく開き、目玉を丸くしたルイコが部屋に飛び込んでくる。
片方の靴を脱ぎきれず、ケンケンをしてテーブル上のコートの包みを引っつかみ、胸に抱いて深呼吸をする。
そして、ニンマリとした顔をする。

ドアが閉まり、鍵を閉める音が『ガチャッ』。


━━床に倒れたままの魔女の置物。

━━充電器の上に置かれたままのスマホ。




駅前交差点にあるランドマークのビルに掲げられた大画面から放たれる波のような光。
それはカズヤのはるか頭の上を越えて夜の地面を動かしながら照らしている。

オルゴールの入った紙袋を提げ、仏頂面でビルのガラスに寄りかかり立つカズヤ。
もう夜。
誕生日も残すところ何時間か。

ルイコ……来るのか? 来ないんじゃ?
いやいや、そんなことは絶対無い。
カズヤはそう何度も繰り返し考える。
その前を左右から人が交わるようにして足早に通り過ぎていく。


カズヤは寄りかかった背中のガラスの冷たさが、ジワジワと身体の上下に広がってくるようなに感じ、逃れるようにきちんと2本足で立った。
そして振り返ると、ビルの中のカフェに人が溢れ、まるでアイリッシュ・パブのような雰囲気だった。

暖かい。

これから出かける相談でもしてるんだろう、カズヤはそう想像した。

だが、その想像は求めている暖かさとは異質のものだった。

混沌としたこの街、この人々、それとは分け隔てた暖かさ。
カズヤはそれを求めていた。

見渡す限りのネオンやビジョンのまぶしい光、人々の上気した話声、サンタ・クロースの仮装をした人たち……どれも違うのだ。
カズヤは目前のすべてを避けるように空を探した。

空はあった。

周りの明るさに星は見えづらかったが、カズヤは一つだけオレンジ色に大きく輝く星を見つけた。




カズヤは喧騒を逃れ、あの星になって街を見下ろしてみたいと思った。
あの星の下、自分もルイコも今、同じ地上で生きている。
あの星になれたら容易に線でつなぐことができるだろう二人、自分とルイコ。
でも、この地上にいる限り二人の位置関係さえあやふやに思える。
そして、同じく自分の前を、この街を歩いている人々もまた同じ星の下にいる。
それだけじゃない、あの駅にも、あのビルにも、あの道路を走り抜ける多くの車にも、その先に続く住宅街にも、この東京という巨大な都市にはとめどなく人々が存在し、暮らし、途切れることなく広がっている。

カズヤはそう考えると、強くつながっていたもの、自分の信じるものが、この人混みに、街に迷い、離れ、二度とつながることがないかのように思えて弱い震えを感じた。


「違う違う。んー、どんな顔すっかなぁ」


カズヤは悪いほうに転がっていた頭を何とか軌道修正しようと考えた。
今の自分では、その時どんな顔をするのか。
思い出したくなくても思い出してしまうだろう、この困惑のすべてが。

ルイコに問いかける?
せっかく会えたのにいきなりそんな話なんてできない。
大丈夫、きっとルイコは笑顔で俺の心配なんてどこかにやってくれるはず。
輝いて、しびれさせてくれるはず。


交差点の向こう、駅前広場の白いクリスマス・ツリーが見える。



カズヤはルイコがそのツリーのさらに向こう、あの駅の出口から出てきて、笑顔でまっすぐ自分のほうへ向かってくることを想像し、頭に塗り込もうとした。

いや、笑顔のルイコは飛ぶようにやってくるんだ。
月の上を歩くように、ピョ~ンピョ~ンと人々の上を軽く飛び越えながらやってくる。
ああ、蝶々のようにひらひらと危うく上下左右に揺れながらも、それが楽しそうに、まるでもったいぶるように遠回りしながららやってくるのかな。

不意にポンッと肩をたたかれ、振り向いたら笑顔のルイコがいる。後ろだったか。してやられた。


……などと思いをめぐらしてみるカズヤ。

向かいのビルの時計は、6時57分。
ソワソワして辺りを見回す。



暗がりにぼやっと浮かぶアトリエ・マールのビル。
作業室内ではルイコと同僚達がミシンに向かい、懸命に布を滑らせている。
脇に立つボディには、ヒラヒラとカラフルな衣装が着せられ、スタッフがマチ針を手に微調整をしている。
ルイコは手に持つ洋服から伸びる桃色の糸を咥えながら掛け時計を見ると7時2分を指している。


「すいません、ちょっと」


ルイコは立ち上がり頭を下げると、慌てて自分のトートバッグの中をあさる。


「ん?」


バッグの中身を全部テーブルの上にひっくり返してみるが、そこにスマホはない。


「え~っ?」


━━ルイコの部屋。

━━充電器の上にあるスマホ。


「あっ!」
と声を上げると、口を横に広げ、歯を食いしばって眉毛をハの字にさせるルイコ。
そして何もない壁のほうを向いたまま、手だけが動き、トートバッグに荷物を戻している。

智恵は立ち尽くすルイコに気づき、近づいて肩をさする。


「ルイコちゃん大丈夫?もう少しだから頑張って」


智恵はルイコを気遣い、励ます。


「はい……」


ルイコは席に戻ると、下がった口元を懸命に引き上げようと結んで、布を摘みミシンを回し始める。


「由美さん、これとそれ、先に会場に! あとはもうすぐだって伝えて!」


智恵は仕上がったドレスを届けるようにスタッフに指示した。



ネオンの光がカズヤの顔を赤くしたり緑にしたり青くしたりしている。

「待った?」

同じようにここに立つ人々の待つ相手が次々と到着する。
カズヤは再びビルの柱にに寄りかかったまま駅の方をぼうっと見つめる。


『ごめんね。昨日は仕事で遅くてスマホの電池も切れちゃってたの……』というスマホの文面が頭の中をスクロールしていく。


思い出さないつもりだった。
何も、何も思い出さないつもりだった。
楽しいことだけ考えようぜ、そう心に問いかけた。
何度も頭を切り替えた……つもりだった。

カズヤが眉間を寄せると、狭く開いた目が白く光る。




━━ビルの時計は8時を越した。


『……今日は約束通り、7時に行くからね』


「だからっ!あーっ!」


どうしても同じところに戻ってきてしまう自分に対してもんどりうつように言うと、カズヤは胸のポケットからスマホを取り出した。

我慢していた。
意地もあった。
でも、もう堪えられない。


━━スマホの画面にカズヤの入れた「もう着いてるよ」のメッセージが未読のまま。


カズヤはスマホを耳に当てる。


『プルルル……』


━━ルイコの部屋。

━━充電器上のスマホが鳴っている。

━━水槽の熱帯魚がひらひらと騒がしく上下する。


『プツッ』


「あっ、もし……」


『……ただいま電話に出れません……』


またしても応答メッセージが淡々と流れる。


「ってかさ……」


荒っぽくスマホを切るカズヤ。


「あぁ~っ!」


周りを気にすることもなく、大声をあげる。



━━広い歩道を走っている、か細い脚。



「はぁ、はぁ……」


荒い女性の息遣いが聞こえる。
黒いタイツをはき、細い脚で足の回転が速いのでまるで飛んでいるようにも見える。
俯瞰してみると、人にぶつかり、急に止まってお辞儀したり、両手で抱えた包みを落としそうなのを止まって持ち直したりしながら思うように走っているわけではない。
それでも懸命に前を向き走る女性の身体。


カズヤは、再び時計を見上げると、すでに9時を過ぎている。
紙袋を持つ手を上にあげ、大きく伸びをして口を結ぶ。


━━走る、走る、人を避けながら懸命に走る女性の脚。


「ま、も~う無理っしょ」


カズヤは自分に言ってから辺りを2、3度見回す。

やっぱりおかしいんだ。
最後まで信じたかった。
でももう難しい。
今日は24歳になりました。
そう、ただそれだけの日。
フツーだよ。
なんでもないんだ。

カズヤははじめの一歩は着地点を迷うかのようにゆっくりと踏み出すが、次第に足を速め歩き出す。


━━交差点の歩行者用信号機が赤に変わる。




ビルの大画面に映るコスメのCMでモデルが微笑む。


「すぅ、はぁ、はぁ、すぅ……」


駆けてきた女性の荒い息遣いが次第に不規則に乱れていく。
危うく左右に揺れる女性の脚。
そして、体は少し前屈みで肩を上下させ、胸に抱く包みに回した腕を絞るように、しがみつくように力が入る。


「は、あ、はぁっ……」


━━光がまぶしく放たれホワイトアウト。



⇒本編5へつづく
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