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スターチスは突として
4-a.私たちは「あお」色を必要とする
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「ようこそ。ジェシーさん、ゆっくりしていってね。」
ついにアイラスが来たのだ!待ちに待った3日間、エリック様に遊びに行きたいと言われたが、フィールと協力して必死に止めたのが懐かしい。いや、一昨日のことだったわ。時が経つのが早く感じる。歳かな。
「庭園でお茶にしましょう!ジェシーさんに見てほしいの。」
「こ、これは!...すてき。」
ホッ。よかった。
そう、この3日間の間にエーデルの持つ魔法を使って少しだけ庭園をいじくったのだ。アイラスの髪色と同じ色の花をたくさん咲かせてお花のパワーでアイラスには笑ってほしかった。中でも力を入れたのはオオイヌノフグリを咲かせることだ。
「素敵な庭園ですね。ずっとここにいたいくらいです。」
「ふふふ。ありがとうございます。魔法を頑張った甲斐あります。」
「え!リバランス様が創ったんですか!?」
「ま、まぁね。」
アイラスの目はとてもキラキラとしていて少し幸せな気持ちになった。アイラスは美少女なんだから笑っていたほうがかわいいのにな。
フィールだけを残して侍女に下がってもらった。
「フィールは信頼できる人間だから安心して大丈夫ですよ。単刀直入に言います。どうして『殺してほしい』だなんて言ったんですか。もしよろしければ教えてくださいませんか?」
「はい、いいですよ。」
よかった。まずは第一関門突破。
「ジェシー侯爵家は代々強力な力を手に入れようとしてきた家系です。私の祖父であるルゲベジアおじい様が権力を持っていて、私もおじい様に、公爵家か王家の人間と結婚しなさいと言われて育ってきました。兄であるガイダーお兄様には「自然と階級の高い令嬢が寄ってくるから婚約者探しはしなくてもいい。」とおっしゃっていたのに私には、アイラスは「自分で見つけなさい。」と言うんです。政略結婚をするのはわかっていたことなのですが、出来ることでしたら一度でいいので恋愛がしたいと思っていました。学園に入学してしまったら、きっと政略結婚をするか捨てられに決まっています。そこで私が命を張ってでもこんな婚約は嫌だという気持ちの表示をすれば変わると思うんです。ですが、自分で命を落とすので足りないのです。公爵家の方か王族の方にお願いしたいのです。階級が高い人間が私のことを捨てたという事実が欲しいのです。おじい様の耳に入ればそれでいいのです。お願いします。」
そんな事が...。アイラスにも色々と考えていることがあるんだ。わたし、考えが浅かった。もっとアイラスに寄り添うってことを忘れていた。
そうだ、ここは貴族の世界。政略結婚は当たり前。そういう世界なんだ。ここは甘い世界ではない。改めて実感した。
「言ってくれてありがとうございます。そんな理由があったんですね。わたしには何も力になれないかもしれないけれど何か手伝わせてください。」
わたしには手伝えることは少ないかもしれない。それでもこの世界に転生したものとして出来ることは全部するって決めたんだ。
「ジェシーさんがよろしければ少しお散歩に行きませんか?きっと喜ぶと思います。」
アイラスが頷いてくれたので場所を移動することにした。
「フィール、騎士のだれか連れてきて。」
リバランス家は「ピィファウル騎士団」という王国トップレベルの騎士団を持っているのだ。持っているだけでお兄様が騎士団に入団するとかそういうことはないのだが。
「え!?リバランス様どこへ行くのですか?騎士様を連れて行くほどの場所に行くんですか?」
「えぇそうよ。騎士はいてもいなくてもいいのだけれども、今はお客様がいるからね。」
来たのは初めて見た顔の騎士だった。名前なんだろう。
「ライザ・ジレイトですよろしくお願いします。」
「よろしくね、ライザ。警備頼んだよ。」
わたしたちは屋敷の一番奥にある部屋に向かった。
屋敷の一番奥にある部屋は基本的に公爵家のものしか入れない決まりがある。公爵家の人間が許可したものなら入ってもいいという一応のルールがある。
(この屋敷に住むすべての精霊たち、今ここで神獣森への扉を開けてください。)
眩しい光とともに光で出来た扉が現れた。
「ライザは少し待っていて。」
扉の向こうには草原が広がっていた。何回ここに来ても飽きないな。
ライザには部屋の警備として留守番してもらうことにした。
「ねぇジェシーさん、せっかくだから少し一緒にお散歩しましょう。」
「あ、はい。」
ここは「神獣の森」。代々リバランス公爵家が所持してきた森で名前の通りここには神獣が住んでいる。リバランス公爵家はここにいる神獣のおかげで成長したといっても過言ではない。
「あ、あそこにいるのは子犬人間の」
「かわいい。...初めまして。あっ。」
アイラスは一匹の子犬のもとにさっと近づき仲良くなろうとしていた。ふふ。アイラス、とってもキラキラしている。
「わたしは少しあちらを見てくるから自由にしててもいいですよ。」
こくこくっと顔を振るアイラスの顔は目の前にいる子犬みたいにかわいらしかった。
さて、ここがどんな場所なのかじっくり見て回るぞ!
「初めまして。私、アイラス・ジェシーって言います。よろしければお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「名前、ない。」
名前がないのね。せっかくここで会えたこの子と仲良くなりたいと思ったのに名前がないならどうお呼びすればよろしいのでしょう?
「よろしければ名前を付けさせていただいてもよろしいでしょうか。」
「どうでもいい。」
そういうこの子の顔は少し優しい顔になっていた。きっと大丈夫という意味なのでしょう。それでしたら、
「あなたの名前は『ツァイト』です。いかがでしょう。」
「気に入った。ありがと、アイラス。」
か、かわいいです。子犬のかわいらしさ全開ですね。
淡いスカイブルーの毛並みにライトグレーの瞳が美しい。
「アイラス、手、出して。」
手?訳も分からずとりあえず手を出した。
私とツァイトが手を合わせると、私の手の甲に、模様が浮かんできた。
これは、なんの模様なのかしら。
あ!消えちゃった。
そして目の前にいたのは淡いスカイブルーの髪の少年?がいた。
「見て!アイラス。どう?」
え!?え!?この状況は何?私何をすればいいの?
私が焦っているとリバランス様が戻ってきた。
「リバランス様ぁ~。私、何をすればよろしいのでしょう。目の前にいた子犬が突然人に!」
「落ち着いてジェシーさん。事情を説明するから。」
事情?え、なんか大変なことなのかしら?
ついにアイラスが来たのだ!待ちに待った3日間、エリック様に遊びに行きたいと言われたが、フィールと協力して必死に止めたのが懐かしい。いや、一昨日のことだったわ。時が経つのが早く感じる。歳かな。
「庭園でお茶にしましょう!ジェシーさんに見てほしいの。」
「こ、これは!...すてき。」
ホッ。よかった。
そう、この3日間の間にエーデルの持つ魔法を使って少しだけ庭園をいじくったのだ。アイラスの髪色と同じ色の花をたくさん咲かせてお花のパワーでアイラスには笑ってほしかった。中でも力を入れたのはオオイヌノフグリを咲かせることだ。
「素敵な庭園ですね。ずっとここにいたいくらいです。」
「ふふふ。ありがとうございます。魔法を頑張った甲斐あります。」
「え!リバランス様が創ったんですか!?」
「ま、まぁね。」
アイラスの目はとてもキラキラとしていて少し幸せな気持ちになった。アイラスは美少女なんだから笑っていたほうがかわいいのにな。
フィールだけを残して侍女に下がってもらった。
「フィールは信頼できる人間だから安心して大丈夫ですよ。単刀直入に言います。どうして『殺してほしい』だなんて言ったんですか。もしよろしければ教えてくださいませんか?」
「はい、いいですよ。」
よかった。まずは第一関門突破。
「ジェシー侯爵家は代々強力な力を手に入れようとしてきた家系です。私の祖父であるルゲベジアおじい様が権力を持っていて、私もおじい様に、公爵家か王家の人間と結婚しなさいと言われて育ってきました。兄であるガイダーお兄様には「自然と階級の高い令嬢が寄ってくるから婚約者探しはしなくてもいい。」とおっしゃっていたのに私には、アイラスは「自分で見つけなさい。」と言うんです。政略結婚をするのはわかっていたことなのですが、出来ることでしたら一度でいいので恋愛がしたいと思っていました。学園に入学してしまったら、きっと政略結婚をするか捨てられに決まっています。そこで私が命を張ってでもこんな婚約は嫌だという気持ちの表示をすれば変わると思うんです。ですが、自分で命を落とすので足りないのです。公爵家の方か王族の方にお願いしたいのです。階級が高い人間が私のことを捨てたという事実が欲しいのです。おじい様の耳に入ればそれでいいのです。お願いします。」
そんな事が...。アイラスにも色々と考えていることがあるんだ。わたし、考えが浅かった。もっとアイラスに寄り添うってことを忘れていた。
そうだ、ここは貴族の世界。政略結婚は当たり前。そういう世界なんだ。ここは甘い世界ではない。改めて実感した。
「言ってくれてありがとうございます。そんな理由があったんですね。わたしには何も力になれないかもしれないけれど何か手伝わせてください。」
わたしには手伝えることは少ないかもしれない。それでもこの世界に転生したものとして出来ることは全部するって決めたんだ。
「ジェシーさんがよろしければ少しお散歩に行きませんか?きっと喜ぶと思います。」
アイラスが頷いてくれたので場所を移動することにした。
「フィール、騎士のだれか連れてきて。」
リバランス家は「ピィファウル騎士団」という王国トップレベルの騎士団を持っているのだ。持っているだけでお兄様が騎士団に入団するとかそういうことはないのだが。
「え!?リバランス様どこへ行くのですか?騎士様を連れて行くほどの場所に行くんですか?」
「えぇそうよ。騎士はいてもいなくてもいいのだけれども、今はお客様がいるからね。」
来たのは初めて見た顔の騎士だった。名前なんだろう。
「ライザ・ジレイトですよろしくお願いします。」
「よろしくね、ライザ。警備頼んだよ。」
わたしたちは屋敷の一番奥にある部屋に向かった。
屋敷の一番奥にある部屋は基本的に公爵家のものしか入れない決まりがある。公爵家の人間が許可したものなら入ってもいいという一応のルールがある。
(この屋敷に住むすべての精霊たち、今ここで神獣森への扉を開けてください。)
眩しい光とともに光で出来た扉が現れた。
「ライザは少し待っていて。」
扉の向こうには草原が広がっていた。何回ここに来ても飽きないな。
ライザには部屋の警備として留守番してもらうことにした。
「ねぇジェシーさん、せっかくだから少し一緒にお散歩しましょう。」
「あ、はい。」
ここは「神獣の森」。代々リバランス公爵家が所持してきた森で名前の通りここには神獣が住んでいる。リバランス公爵家はここにいる神獣のおかげで成長したといっても過言ではない。
「あ、あそこにいるのは子犬人間の」
「かわいい。...初めまして。あっ。」
アイラスは一匹の子犬のもとにさっと近づき仲良くなろうとしていた。ふふ。アイラス、とってもキラキラしている。
「わたしは少しあちらを見てくるから自由にしててもいいですよ。」
こくこくっと顔を振るアイラスの顔は目の前にいる子犬みたいにかわいらしかった。
さて、ここがどんな場所なのかじっくり見て回るぞ!
「初めまして。私、アイラス・ジェシーって言います。よろしければお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
「名前、ない。」
名前がないのね。せっかくここで会えたこの子と仲良くなりたいと思ったのに名前がないならどうお呼びすればよろしいのでしょう?
「よろしければ名前を付けさせていただいてもよろしいでしょうか。」
「どうでもいい。」
そういうこの子の顔は少し優しい顔になっていた。きっと大丈夫という意味なのでしょう。それでしたら、
「あなたの名前は『ツァイト』です。いかがでしょう。」
「気に入った。ありがと、アイラス。」
か、かわいいです。子犬のかわいらしさ全開ですね。
淡いスカイブルーの毛並みにライトグレーの瞳が美しい。
「アイラス、手、出して。」
手?訳も分からずとりあえず手を出した。
私とツァイトが手を合わせると、私の手の甲に、模様が浮かんできた。
これは、なんの模様なのかしら。
あ!消えちゃった。
そして目の前にいたのは淡いスカイブルーの髪の少年?がいた。
「見て!アイラス。どう?」
え!?え!?この状況は何?私何をすればいいの?
私が焦っているとリバランス様が戻ってきた。
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