前世乙女ゲームの製作者だった公爵令嬢は「悪役令嬢」と「結婚」は厄介そうなので、憧れの「先生」を目指します

彩多 花音

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スターチスは突として

5-a.いつだって挑戦する心は忘れない

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 少し寝不足。でも仕方ないのだ。夜遅くまで手紙の内容を考えて考えて考えてやっとな思いで描き切った頃にはもううっすらと窓から光が差し込んでいたのだ。
 前世は24歳だったけれど今は13歳(あと少しで14歳だが。)のピッチピチのなのだ。夜更かしはよくない。のだけれども今は緊急事態、未来のためにも頑張るのだ。
「フィール、今日の予定は?」
「今日はですね、特にありません。」
 そっか。なら二度寝しちゃお。お休み~。

 次に起きたのは昼前だった。
 お腹すいたな。遅めの朝ごはんでも食べよう。ゆっくり朝ご飯を食べるのなって久しぶりすぎる。
「お食事中申し訳ありません。アクアルータ公爵家より手紙が届いております。」
 返事早すぎ! え? 手紙出したの朝だよね? そんなに家近くないはずなのに。
 えっと、どれどれ。手紙には「3日後、14時頃にアクアルータ公爵邸でお会いしましょう。」とだけ書かれていた。短いな。まぁそこはゲームと一緒だな。改めてゲームの世界に生きているのだと実感した。
 朝ご飯を食べ終わった後、シートル宛に返事を書いて届けてもらった。今度はそんなに長くなかった。了承の返事だからね。
 そして、アクアルータ公爵邸に行く準備とともに魔獣の件についても進めていくことに午後の時間は使われた。

 夕食の時間、今度開かれる貴族会議のことをお父様は話していた。
「今度の貴族会議、魔獣が議題なんだよ。うちには魔獣の森とつながる扉があるだろ。絶対何か言われるよね。もうどうすればいいかな。カトリーナ。」
「私に聞かないでください。」
「ありがとう。頑張るよ! カトリーナは優しいなぁ。」
 え、なんでお父様はそんなにこにこ笑顔なの。それにお母様も。全然わからない。
「そういえばお父様。魔獣のことなんですけど。」
「ん? 何かあったの? 」
「ジェシー侯爵家のアイラスさんが魔獣の森いる魔獣と契約したのですが。...よくなかったでしょうか? 」
 実はお父様に内緒であんなことしちゃったけれど。問題ないあったかな。
「エーデル、よくやったね。おめでとう」
 よ、よくやった、おめでとう? 怒られないのかな。
「ところでどの魔獣が契約したの?」
 えっとどんな子だったけ。というか、あれって人間だったような。
「スカイブルーのような髪色でライトグレーの瞳の子犬だった気がします。多分。あ、でも直接契約を見たのは人間の姿でした。」
「人間の姿か。珍しいな。後で少し話せるかなカトリーナ。」
「書室でよろしいでしょうか。」
「あぁ、あれも持ってきてくれ。」
 何のことかわからないけれど、とりあえず重要なことだということは分かった。わたしも自分なりに魔獣について調べてみようかな。
 って、今日は早く寝なくては! うん。寝不足は美容の天敵。その前にストレッチもしておかなくちゃ。なんだか最近少し太ってきたきがするのよね。やばいかも。ドレスが入らなくなっちゃうよ。とりあえず筋肉痛にならない程度で頑張ろう。体系維持してきた人ってすごすぎるよ、わたしにも秘訣教えてください。

 いよいよ決戦? の日。シートル攻略対象
 言い訳になってしまうがこれは自分のためでもありアイラスのためでもあるのだ。わたしたちの未来を少しでも良いものにするために。
「フィール。どうしてこんなに不安な気持ちで押しつぶされそうなのに少しだけ、心のどかでワクワクするんだろうね。」
「エーデル様...。噂がどうであれエーデル様にはわたくしがついておりますから。」
 噂? よくわからないけれど、フィールありがとう。頑張るよ。

 目を開けると馬車の中にいなかった。
 あれ? さっきまで馬車に揺られてたはず。この景色はもしかして。
「ちょうどよかった。あなたに話しておきたいことがあったのよ。」
 エーデルのいる世界! でもどうして今?
「いろいろと調べていくうちにわかったの。きっとあなたの魂がある体の中に私の記憶が残っていると思うの。直接わからなくても、礼儀作法や身の回りのことに簡単に対応できているのはその記憶があると思うの。不快かもしれないけれど頑張ってよね。」
 だから転生してきたのに、この世界での礼儀作法や生活方法にすぐ慣れることができたのか。ありがとうエーデルの記憶! 一つ謎が解決したよ。
「ねぇ、シートル・アクアルータ様について何か教えてほしいのだけれど。」
 ぜひともここで有力な情報をゲットしてから会いたいものだ。
「そうね、あの人は小動物には弱いと思うわ。特に揺れてるもの。」
 揺れてるもの? しっぽか何かなのかな?
「ゆれてるも」
「エーデル様、まもなく到着しますよ。起きてくださいませ。」
「時間ね。また何かあったら教えるわね。それじゃあごきげんよう。」
 あ、待ってエーデル。聞きたいことがまだあるのに...。

 ここは、アクアルータ公爵邸? もう着いたんだ。
 ゲームの中でちらりと映った家と全く一緒だ。すごい。
 馬車から降り、目の前に軽く挨拶をする。
「本日はありがとうございますシートル様。今日はよろしくお願いします。」
「いえいえ、こちらこそ本日は。」
 にこにことした表情の裏に何か黒くどんよりとしたものを感じる。よくわからないが圧を掛けられているような感じだ。
 シートル様の案内で客間と思われる部屋にやってきた。さすが、公爵家。装飾品はどれもキラキラといやギラギラと輝いていてまさに豪華絢爛。そして、代々水の魔法属性エレメント保持者の中でトップクラスの魔力を持ち、この国の水のエレメント関係を取り締まってきた一族の家であるだけあって、水関係の装飾品がとても多い...気がする。
「それで、婚約者の話とはどういうことでしょうか?」
 そういうシートルの顔はどこか探りを入れようとしている顔だった。まぁ無理もない。第三者の目から見たらわたしがシートル様に婚約を申し込もうとしているように見えるかもしれない。そもそもこの世界では女性から男性に求婚するなんてありえないような話だし、まずわたしには一応エリック殿下と婚約をしている。ただし公表はしていないけれど。
「簡単な話ですよ。えっと婚約者を作らないんですか? その、想い人の方と。」
 正直無理やりシートルとアイラスをくっつけるような真似はしたくないから出来るだけ自然な形で二人が結ばれるといいのだけれど。
「冗談はよしてくださいよ。この話は幼馴染である貴方が軽はずみに話すものではないですよね。」
 シートルの顔は少し赤く声も苛立っている感じがした。これはやばい奴だ。今のは完全にわたしが出しゃばった結果のやつだ。悪役令嬢になんかなりたくないと思いでわたしが勝手に入ってはいけないところに踏み込んだ。最低な奴だわたし。
「俺には想い人なんかいませんし、婚約者はいりません。」
 え? アイラスは。確か初恋の相手じゃなかったの。
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