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【#08】喜多遊子
しおりを挟む「はーい、角豚丼定食お待ち~」
「うぃーっす」
「次、姫蝶の卵オムライスー」
「はーい、ありがとう」
地球。
この惑星の特性として、「食事」にも力を入れている。
そしてここ、コロニーオムニバス食堂には、伝説の料理人がいるのだ。
「あ、いたいた」
仕事を終えたシスターティータがこの食堂で、誰かと待ち合わせをしていたようだ。
時刻は午後5時半。うう~ん、お腹がペコペコの時間帯だ。
「悪い、待たせたな由利亜」
あれ? 口調と声音が全然違う。男っぽいんだが!? 何だか、いやまさか、でもこの間「ボク」って言ってたし。ってこの下り前回もやったな。えっと、シスターティータじゃなくて、ティータ氏と変えよう。うん。
「ううん、お疲れ様、ティー」
そして待ち合わせの相手があのヤクザの娘の由利亜嬢ではないか。しかも「ティー」て。この二人、仲が良かったのか、メモメモ。
「あの人んとこ行こうか」
「うん」
あの人?
も、もしや!?
あの、伝説の料理人に会いに行くのか!?
二人は食堂の、さらに奥に向かっていた。その真っ白な通路に人影が無く、むしろシンと静まりかえっている。
その通路を抜けると、小さなダイニングキッチンのある一室についた。
二人は赤いチェックのテーブルクロスがかかった席に座る。
「あぁ、いらっしゃい」
ふとキッチンから、ポニーテールの女性が顔を出した。
おや? 何ということだろう。
目をバンダナで覆っている。・・・赤いエプロンの狂気を感じるくまちゃんのイラストも気になるけども!
「こんばんわ喜多さん」
「こん」
喜多・・・、検索中。
なるほど、名前は喜多遊子。
生まれた時から盲目だが、その他の機能が優れているらしい。特に「舌」が、絶対に「美味い」と言わせる料理を、個々一人一人に作っているらしい。年齢も由利亜嬢やティータ氏達のように若い子組で、話が合うのかもしれない。
か、彼女こそが、伝説の料理人、なのか。
「今日のおすすめは?」
「えっとね、緑マムシの天ぷらに、金豚の肝臓の煮物と虹兎の唐揚げだよ。デザートは黒水晶のシャーベットに旬の雑ま芋乗せだよ」
「ぜっ・・・んぜん分からないからそれでいいよー」
「・・・結構コアな食材だな、まぁボクもそれでいいかな」
「おすすめ二つ、はぁりまぁす」
るんたるんたとスキップして、喜多さんはキッチンへ戻っていった。
すいません。
わたくしも地球の食べ物は熟知している方ですが、最初から全く何を言っているのか分かりませんでした。検索をかけた所によりますと、どうやら宇宙からの食材のようです。まだ進化の遂げてない地球人が、そんなものを食べて、本当に大丈夫でしょうか。かなり不安ではありますが。
「ティー、食材知ってるの?」
「少しな」
「教えてよ」
「あー緑マムシは、自然の多い惑星グリーンティアに生息する、地下迷宮にしか存在しないSSレアな鉱物甲殻虫」
「へぇ・・・」
「血液サラサラ、美容にいいらしい」
どういった成分で!?
「うっそ! ヤバいね! 由利亜これ以上綺麗になっちゃうの!?」
「金豚は雨の降らない砂漠の惑星ガルロに生息する豚だ。普段は砂の中でその巨体を隠しじっとして、獲物が引っかかったらその鼻の吸引力で砂ごと吸い上げ、牙と歯のある鼻で食べる怪物だ。鼻が本体だ、色は紫色と茶色に深緑のマーブルカラーで視覚的にもエグい。だが臓器は一級品。調理すると格別に美味だ」
ぶぅーたぁーさぁーぁぁぁぁんんんんん!
「可愛くない豚は食べた方がいいね」
いや可愛い豚普段食べられてますよね地球人!?
「骨、関節に効能あり、視力も良くなる」
「結構この職場肉体労働だから、助かるね」
由利亜嬢を観察していると・・・そうですね、肉体、労働・・・うぅん。
「虹兎は地球でいうクラゲみたいなもんだ。くらげの頭部に兎の耳を生やして水中でぷかぷかしてると思えばいい」
「へぇ~可愛い、虹色なんだよね」
「怒らせると、だな」
「じゃぁ怒らせて、ヤッちゃえばいいね」
由利亜嬢。ヤることに躊躇しないんですね。
「こいつは髪にいい。こいつの素材を使ったシャンプーとコンディショナーは格別だ。実はボクもそれを使ってる」
ティータ氏は金髪のキューティクル万歳のサラサラヘアを揺らす。
「サイトのURL教えて」
「・・・・・・送った」
「ありがと」
最近の子はSNSの扱いが早くて驚く。
「最後の黒水晶のシャーベットは知らないから、楽しみだな」
「ふぅんそっか。早く食べたいね」
「あぁ」
ティータ氏、結構知ってますやん。
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