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▶喜多遊子コネクト【#9.3】
しおりを挟む3年前。
宇宙銀河留置所にて。
説明しよう。
宇宙銀河留置所とは。
宇宙銀河連盟に帰属する惑星のうち、自惑星外生命体同士の争い、また自惑星民を巻き込む闘争が行われた場合、宇宙銀河連盟保護条例に乗っ取り、事件当事者達を一時的に保管・捕捉する場所である。
「初めまして、喜多遊子さん」
「・・・誰?」
真っ白い部屋に、同じ色の四角いテーブルに椅子。そんな味気ない椅子にぽつりと一人座る喜多がいた。そんな彼女に向き合うよう、徐に若い男が腰を下す。
彼女の前に、初対面なはずなのに、絶対的安心、そう思い浮かばせるような満面の笑みを向ける男がいた。
「僕はワン、ワン・リルだ。宇宙銀河連盟協会所属、地球コロニー12オムニバスの代表だよ」
「!」
「昨晩、君が働いている居酒屋に襲撃事件があってね」
喜多は思わず立ち上がる。
「うちは生まれも育ちも『地球人』だ!」
「あー・・・うん。宇宙人はそうやって言うよね」
「本当だってば! ただ・・・」
「ただ?」
「・・・うちのような障害を持った人間が、どれだけ職探しが大変か、普通の人間達には分からないだろうね!? ただバイト先のお客様や従業員の皆が、ちょこぉ~っと、いや嘘ついた、すっごく変わった人達、だなぁとは、思ってはいたけど・・・」
「・・・店長が君は目が見えないことをいいことに、たまたま『宇宙人御用達』の飲食店に勤務オッケーってね」
「そうなんだ! だから」
「そう、最初はそれだけのはずだった」
「え?」
「ただの人間が、最初はホール担当だったのが、君の『味覚』が評価されて、いつしか厨房長になった」
「そうなの! 凄いでしょ!」
さすがのワンも頭を抱える。
彼女の前にいる男が、どれほど大いなる存在か。それが分かるのは大分先のことである。
「ぃや~えっと、それって、『どうして』だと思う?」
「え? そんなの、うちの料理が、うちの味が美味いからでしょ?」
「ウン、ウン、それはそうだよね」
「なんか、見た目はヤバすぎだけど、味は最高なんだって。よくお母さんに味音痴だって言われてたけど、バイト先じゃ絶賛されたんだよね」
「そう。その理由は、いやその理由を、君は考えたことがあるかい?」
「え? 料理上手になったから」
ずべっ。
喜多の前にいるワン、同じ一室内にいる記録者、その彼らをガラス越しで見届ける、お偉い役人達が肩透かし。
「・・・なるほど、君の個性が分かってきた、なるほど。だからあんな所に5年もいることが出来たんだね」
「あんな所!? あそこはうちの第二のホームなんだ! 両親が死んで、親戚もいない独りぼっちのうちを、快く住み込みで働かせてくれたんだ!」
喜多遊子の両親は、『表』では事故死とされている。その死の本当の理由を、彼女は知らない。
「両親の死にはお悔み申し上げる。だからこそ、君は、君には真実を知る権利がある」
「? 真実? 何その本当は事実でっち上げみたいな」
「そうだからだよ。両親の死は事故死ではない。他殺だよ」
「!?」
「正確には、宇宙人に殺された。そして、昨晩、両親を殺した者達に君が殺されそうになった所を、我々が間一髪で助けた、というわけだけど」
「うえっ!? そうだったの!?」
ずべべっ。二回目。
「・・・えっと、君は『あの』状況に何とも思わなかったのか?」
「え?」
「あの場は宇宙人達の混戦、銃声や兵器の爆音が鳴り響き、悲鳴と雄たけびが」
「え? そうだったっけ? いつも騒がしいし・・・。うち居酒屋だし皆よく酔っぱらって殴りあってるよ?」
「ぃや血の匂いが」
「厨房で知らない生物解体してたし、いつも血生臭いからどうってことないよ! おちゃのこさいさいよ!」
「・・・ッスゥ・・・」
ワンはとりあえず深呼吸に専念する。
「・・・単刀直入に言おう」
もう埒があかないと判断したのだろう。
「はい?」
「君のご両親、正確には君のお父上は宇宙人で、君は地球人のお母上とのハーフ」
「ほっ、ほぅ・・・」
「かつ、お父上は種族の純血種、直系の一族なんだ」
「へ、へぇ・・・」
喜多は頷く。
「ん~あのぅ~すいません」
「何だい?」
「因みに、どういう宇宙人?」
「ブラッディア惑星血人族」
「・・・と、いうと?」
「・・・吸血一族だ」
「!」
初めて、喜多は目を丸くした。
「うち、ヴァンパイア!」
全く、動揺の「ど」の字も無かった。
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