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▶喜多遊子コネクト▶コネクト終了【#9.5】
しおりを挟む宇宙銀河連盟協会の地球コロニー12オムニバスの代表、ワン・リル。喜多には見えてはいないが、紫色の髪に闇を宿した漆黒の瞳、着慣れたグレーのスーツのその若き紳士さから、地球の「顔」として選ばれたオンリー「ワン」。
「・・・クッ」
そのカリスマ的存在の彼が、眉根を寄せて、苦渋の苦悶の表情で、せっかくの顔面偏差値の高い美顔が崩れてしまっている。
正確に言うと、しょっぱい顔をしている。
「そっかー! ヴァンパイアだったかー! どおりでいろんな血が美味しいと感じるんだなぁー」
「!? き、君は・・・そういうことを感じても尚、疑問に思わなかったのかぃ?」
「え? だって、うち見えないし」
「ぃや見えないからこそ! 不安に思うから人一倍警戒をだね・・・」
「・・・・・・」
初めて、喜多は口を閉ざした。
一瞬、一瞬だけ。
「・・・警戒ばかりしてから、心、壊れちゃうじゃん。護ってくれる人もいない、護れるのは自分だけ」
喜多はたった十歳で両親を亡くしている。身寄りがいないのは、血人族が他宇宙人の『狩り』の獲物とされているからだ。生きるために身を隠し、地球保護協会も保護はしているが全てではない。
「だから、自分を信じるしかないんだ。生まれた時から目が見えない分、他の感覚が人より鋭いと思う、直感も。だから、自分は自分の全てを絶対的に信頼を置いてるから」
「・・・喜多さん・・・」
彼女なりのこの生きずらい人生を、たった一人で生きようとしているのだ。
「いっやぁ、でもそっかぁ。半分宇宙ヴァンパイアだったのかぁ・・・かっこよ!」
怖くないのか。
そうこの場にいた者は彼女に聞くであろうその台詞も、自分に絶対的信頼を置いているのならば、それは杞憂に終わる。
「あ、あのさ」
「はい」
「・・・昨晩、店が襲われたんだよね?」
「はい」
「・・・そ、それって、う、うちのせい?」
「・・・どうしてそう思う?」
「・・・急に、店長が隠れろって言われて」
「・・・あぁ、『狩人』が来たからだね」
「狩人?」
「あぁ、どの惑星も悩まされている宇宙人狩りをする者達のことだ。まぁ、調べるに、彼らは彼らなりの『正義』がある故」
「タイホしないんだ」
「僕は宇宙警察じゃないよ」
「でも影響力はありそう」
「・・・どうしてそう思う?」
「え、直感」
「・・・はぁ~・・・・・・」
今までにない重い溜息だ。
「・・・君といい高野由利亜といい。どうして女性はそう直感を働かせそれを信じるか。あぁ、ティータも自身の占いという非科学的根拠のないものを信ずるか・・・」
「えっ!? 何? 誰?」
「僕の管理する地球コロニー12に所属する仲間達だ」
「わぁへぇ・・・かっこよ」
「そこで本題だ」
「ふぉっ」
「今後の君の取り扱いだが・・・」
じっと凝視するワンに、さすがの喜多も自身を抱きしめ、身震いをした。
「ハッ! そういう、そういうことね!? うちをどうするつもり!? 娼館に売って、稼いで来いって!? どこぞの若手シャチョウサンみたいな顔して、やっぱり男だね! このエッチ! 変態っ!」
ードゴォォンッ!
「ヒッ!」
隣のコンクリートの壁が物凄い音をたてて軋み、振動した。パラパラと砂が零れ舞う。
止めろ、そう言わんばかりに、徐にワンは軽く右手を挙手。
「なっ、何今の?」
「すまない。僕のボディガードが君の先ほどの発言に激怒したようで」
「えっ」
「・・・言っておくが、これでも司令の役を担っている身だ。・・・へ、変態呼ばわりをされるほど落ちぶれてはいないつもりだよ」
喜多はワンが挙手した方のコンクリートを見やった。
「っ!」
何かを感じたのか、喜多は身をこわばらせる。そして喜多は口をへの字に曲げ、首を垂らして反省。
「・・・すいません。図に乗りました」
「構わない。君のような子は活気があって助かっている。そこでだ、君のその能力を信じて、僕のコロニーで働いて貰いたい」
「!」
「念入りにまずは検査ばかりだが、君のその『舌』は、血人一族の中で知る者が少ない能力らしいんだ」
「うちの『舌』?」
「あぁ、血は勿論、恐らく、その舌は存在するものの情報を読み取れる力があるのではないかと。如何せん文献が少ない故、これから君が生き証人にあるわけだが」
「は、はぁ・・・」
「君は恐らく、味見やらなんやら料理をする過程で自分の手や指を、舐めてはいないだろうか?」
「舐めてますね凄く」
「君の絶対的自分信頼は、自身の指を舐め、自身の情報を無意識に入れ、知り、自分肯定感に繋げている。無意識化で、君は自分を受け入れている。それは、当たり前のようで簡単には出来ないことだ。自分が好き、だけどナルシストとは違う、自分が自分を肯定しようとする意志、それは自分をより強くする」
「・・・・・・なんとなく、ですけど、今うちは褒められている、気がします」
ふっと鼻で笑い、ワンは頷く。
「そんな君を羨ましいと思う。そういう自分を大事にできる人間は信頼に置ける。だから、君を僕のコロニーに迎えようと思ったんだけどね」
「・・・うちは、うちで良かったってこと、ですか?」
「その通り」
ワンは右の人差し指を差し出した。
「・・・全ては『見せない』が、君には僕を知って貰おう。僕だけ君を知っているのもフェアじゃないしね」
まじまじと差し出された綺麗な指を凝視する喜多。
「・・・え? ど、え? まさか」
「あぁ、そのまさか、だ」
「いやいやいやさずがにダメですよ!」
「何故? この方が、君が一番に知らないといけない自分の能力を知ることができるんだよ。プラス、僕のことも大いに知ることができる」
「ぅえ、ほ、本当ですかっ!? ワンさん、カッコいい、ですもんね? え? 知ってもいいんですか? やっでも~ミステリアスな貴方には興味がありますねはい。じゃ、じゃぁ・・・や、でもこれ・・・やっぱ、ちょっと、エッチじゃ、ありません?」
ードゴォンッ!
「ヒィッ! ごめんなさぁい!」
二度目の振動。
「・・・ミュール、止めろ」
先ほどから壁から漏れていた殺気がかき消された。
「さ、ほら」
「ぅ」
「パクっと行けばいい。別に舐めろとは言ってない」
「いいいい今言いましたけどね!?」
「君の直感はどう言ってる?」
「早くいけって」
「ならさぁ、ほらほら」
「~っ!」
パクッ。
喜多の体が一瞬痙攣を起こすと、ばたりと机に倒れた。
「・・・刺激が強過ぎたか」
ビーガシャンッ。
ワンと喜多のいる部屋が開錠された。
「わん!」
早々に彼に抱きつく女性。
漆黒のコートに真っ赤な髪、金色の瞳。そして、コートから見える繊密な鱗の尾。
「この、おんな、しつれい、みゅーる、わかる!」
シャーっと牙をむくミュールを、ワンはなでなでと宥めた。
「彼女は優秀だ、この先もずっとな」
「みゅーるは!?」
「あぁ、勿論ミュールは最高に強いさ。彼女には、僕のもう一つの脳として働いて貰うことにする」
「ぶれいん?」
「あぁ、頭脳担当ってこと」
ミュールが涙を浮かべる。
「みゅーる、やくに、たたない?」
「何を言ってるんだミュール。君は僕の唯一無二の最初で最後の右腕だ。そう約束しただろう?」
「・・・うん」
「彼女は僕の左腕にするだけだ」
「! このおんな、わんのにばんめのおんな!?」
ずべっ。
「・・・えっと?」
「みゅーる、しってる、ちきゅうの、ちじょうのもつれ! ちきゅうじん、あいじん、いっぱい、つくる!」
ワンは頭を抱えた。
「・・・聞くけど誰から聞いた?」
「ゆりあねぇさま! みゅーる、わんのつがいになるため、に、もっとおんな、みがくの!」
「・・・クッ・・・ッつ、辛い」
ワンは痛む胸を押さえ、一粒の涙を流した。
▶コネクト終了
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