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【#11】喜多遊子4
しおりを挟むふぅ。
何とかカフェを出られた。
出た先は喜多氏の部屋のリビングだ。
なるほど、お風呂に入ったけど濡れていない。あれは単なるゲートに過ぎないんだ。
ううむ。あれ、絶対わたくしのことを見た気がするんだよねぇ。地球人はまだそこまでのサイキック能力が無いはずだし、いやこれも思い込みなのかなぁ。でも『居られるの困る』って言ったよね?
ワン・リルか。彼も要注意人物だ。
っと考えていたら、喜多氏が部屋を出て職場である食堂のキッチンに戻っていくようだ。
「あ、おかえり・・・」
人狼のジンジャーがお皿を洗っていた。黒いエプロンがまた引き締まって見える、似合うなぁ。
「・・・ただいま・・・」
ジンジャーが喜多氏の腕の中にいる真っ白い可愛い人狼をかなり凝視していた。
「そっ・・・?」
ジンジャーのその瞳がまん丸で、相当驚いているようだ。えっと、人狼ちゃん・・・トウヤきゅんだっけ。
「あ、あーっ!」
トウヤきゅんもジンジャーを見るなりバタバタ暴れだした。
「あ、こっこの子なんだけど・・・」
ジンジャーは徐に近づくと、濡れた鼻をふんすふんすとトウヤきゅんの顔に鼻ぺちゃをする。
「きゃいうふふ~」
嬉しそうに笑うトウヤきゅんに、ふっとジンジャーも微笑む。
「俺と似た境遇の子か」
「・・・察しがいいね」
「いや、匂いで。最初は隠し子かと思った」
「馬鹿おっしゃい! んなわけあるか!」
「いや分からんだろ」
「何でよ」
「おまえは俺のことを全部知っていても、俺はおまえのことをほとんど知らないから」
「はぁ? ずっと一緒にいるじゃない。知らないわけない」
ジンジャーのジト目が返ってきた。
「・・・大分良くなったけど、根本は楽観的でPONで後先考えない行動力が先行するタイプ。ワン様一途な吸血鬼のクイーンってことぐらい」
「ふぐっ・・・」
「ふぎゅっ」
どうやら、否定できないらしいとみた。真似するトウヤきゅん可愛過ぎか。
「次はその子の『親』になるのか」
「・・・まぁ」
「・・・そうか」
ふとジンジャーは寂しそうに笑う。
「ま、そろそろかと思ってた。俺もいい歳だし独り立ちか」
「そっ、そのことなんだけど」
「?」
喜多氏の目が泳いでいる。
「ワンからジンに、ベビーシッターの任務、追加で」
ジンジャーは目を瞬かせる。
「へ? 俺が?」
「うん」
「また何で?」
「今の任務、終わったんでしょ? じゃぁいいじゃない」
「あ、あぁ護衛の任期は終わったけど」
「ならいいじゃない」
「いやよくないよ。これじゃあ、いつまで立っても離れられないだろ」
「離れなくたって、いいじゃん! ワン様の命令なんだよ!?」
「そ、そうなんだけど。あー・・・、いいや。俺からワン様に連絡取るから」
ジンジャーはお皿を洗い始める。
「はぁっ!? 何でっ!?」
「俺もいつまでも子供じゃない。育ての親であるおまえにいつまでも引っ付いているわけにはいかない」
なるほど。ジンジャーも考えていたのだ。
「・・・そんなに、うちが嫌?」
え?
「え?」
ジンジャーも同じ反応。そうだわ、だって何で急にそうなるんだって話。
「は? 何でそういう話になるんだよ」
「だってそうじゃん。離れたいんでしょ? それってうちが嫌なんじゃん。最近一緒にお風呂入ってくれないし!」
!?
「!?」
ええええっ!? 何? どういうこと!?
「一緒に寝てくれないし!」
「いやいやいやいや考えろよ!? 俺はもう成人してんだって! そこだよそこ! 俺を子供扱いしてんの!」
「うちがあんたを育てたんだから、最後まで責任を取るのは当たり前でしょ!?」
大きな溜息を零して、ジンジャーは頭を抱えた。
「分かった、この際はっきり言おう」
「ぁい」
何故かトウヤきゅんが頷く。
「親子の前に俺は男でおまえは女。しかも血は繋がってない。男女の関係になってもおかしくないってことだ、分かるか? なぁにが一緒に風呂に入ってくれない~寝てくれない~だ、ふざけんな、俺の理性を試してんのか」
ボンッと、喜多氏の顔が真っ赤になる。
これって、ほぼ告白に近くない? わたくしだけかなそう思うの。
「おまえは俺にとって『母親に近い存在』であって、『母親』だとは一度も思ったことはない。それくらい察しろよなぁ、はぁ・・・ったく」
「・・・それって」
「何だよ」
「うちのこと、好きってこと?」
まぁ、母親じゃなくて女として見てるって言ってるから。結果そういうことだよねぇ。こういう展開もいいねぇ。
「ライクの方じゃなくてラブの方な? はぁ、ここまで言わないと、あんた分かんないだろうし」
「!!」
さらに真っ赤になる。どうやら分かっていなかったようだ。そのご様子に、さすがのジンジャーも苦笑せざるを得ない。
「だから、俺はあんたから卒業しようと思って、ここに来たんだけど」
「!? 何でっ!?」
「何でって。おまえ、ワン様が好きだろ」
「? す、好き、だけど?」
「おまえの、彼に対する視線は、あれは尊敬の念だけじゃない。きちんと恋慕してる目だよ」
「えっ!? そ、そう!?」
「そうそう。悪いけど、俺じゃ勝てそうにないからさ。負け戦は目に見えてるし」
おいおいおいおい! 好きな女なんだろー! まだ戦ってもないのに諦めるのかよジンジャーっ!
ジンジャーはポンと、喜多氏の頭を叩く。
「じゃ、次の任務、連絡待ってますよクイーン」
ジンジャーが去っていく。
離れていく。
「・・・・・・」
喜多氏は動かない。
いいのか! 君はそれでいいのか喜多氏!
「・・・・・・っ」
彼を引き留めろ引き留めるんだ! 今ならまだ間に合う!
「っ! ジンっ!」
行けーっ! 喜多氏!
「あぅ? あっあー」
ふとトウヤきゅんが別の方に気をやる。
ーガゴォンッ!
刹那、キッチンが爆破した。
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