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【#18】畑山光一3
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こほん。
鬼姫が咳ばらいをする。
「さて、本題じゃ」
あっ、ようやく本題に行けるようだ。
「わざわざこんな騒ぎを起こしたというのに、ここの責任者は現れんのかえ?」
なるほど。
そういう意図でこんなことを起こしたのか。でもスク水は中々のマニアックだ。
ここの責任者・・・。となるとワンだろうか。えー、コロニーリサーチ。まだ医療室にいるようだ。
「あー、すいません。責任者ワンは今取り込み中ということで、自分が代理で来たッス。『彼女』が来るから迎えて差し上げろと」
「ほぅ? わしが来ることを想定していたと?」
畑山が喜多氏に歩み寄る。
「ワン様から言伝ッス。その子の親権について、どうするかは君が決めろ、と」
「・・・え?」
喜多氏はまじまじとトウヤきゅんを見つめる。
うむ? 鬼姫の訪問とトウヤきゅん。この二つの因果関係とは?
「・・・鬼灯・・・」
ハッと喜多氏は鬼姫を見やる。
「もしかして、この子をお探しにいらっしゃったのですか!?」
鬼姫は不遜の笑みを浮かべる。
「わしは人狼など知らん」
「いいえ! この子は元は鬼人です。名前はホオズキ・トウヤ。ワンが保護した子供です。心当たりがある、違いますか?」
「・・・・・・」
鬼姫は無言で喜多氏に歩み寄った。
「あぁっきゃ・・・」
「・・・・・・」
トウヤきゅんはにっこり微笑む。
「まんまぁ」
「っ!?」
!?
そうだよね、皆びっくりするよねぇ!?
「え、まま・・・? あの・・・」
「『彼女』が来るって。この子の母親が来るってことだったんスか!?」
「違う! この子は!」
「鬼姫しゃま・・・」
「鬼姫様・・・」
鬼姫は下唇を噛んだ。
「わしの33番目の旦那の、浮気相手の娘の子じゃ!」
鬼姫の目に涙が浮かぶ。
「・・・・・・」
沈黙が続く。
「んー、えっと?」
「娘っ子が産んですぐ死んでしまい、ナンバー33・・・えほん、旦那の・・・エ・・・じゃない? サト・・・違う。あっジロウが育ててくれって! このわしにぃ!」
床に膝をつき、へたり込みおよよと涙を拭う。
旦那を「ナンバー33」の番号付けで呼んでる・・・? しかも33人もおったら名前忘れるわな?
鬼姫は多夫一妻システムを取り入れた惑星、なのかな? 33番目の「旦那」、だからね。恋人、違うしね。
「わしは・・・わしは・・・っ」
なるほど。
そりゃぁ複雑な心境になるよね。浮気相手のお子さん、だもんね。
「わしは人狼なんて育てたことはないんじゃ!」
「そこぉっ!? そこッスか!?」
「何がじゃ! わしは真剣なんじゃ! 目を離した隙にトウヤは何処ぞに行ってしまうし! 気が付いたら! 狼になってるし!」
ワンは何処で保護したのだろうか。
「紛れもなく、この子は吸血狼に噛まれて、後天的に人狼にさせられた被害者です」
喜多氏は深く、頭を垂らした。
「わたくしの一族がこの子の人生を狂わせてしまいました。本当に、申し訳ございませんでした」
鬼姫はようやく立ち上がる。
「・・・やはりか、そなたが吸血一族の」
「はい」
「名は?」
「喜多遊子です」
「喜多遊子、か。いいじゃろう、覚えておこう」
「あの、この子は責任を持ってわたくしが育てます、いえ、育てさせて頂けませんか?」
うんうん。
ワンに言われるまでもなく、トウヤきゅんを腕に抱いた時から。きっと喜多氏はもう覚悟していたんだね。
「嫌じゃ」
「でっでも!」
「そこの! 光一!」
「ふぁいっ!?」
何故自分が呼ばれたのか、分からない様子だ無理もない。彼は蚊帳の外だったし。
「光一、わしはお主を気に入ったがじゃ」
「は、はぁ・・・」
「トウヤをわしとお主で育てるがじゃ」
「・・・・・」
沈黙。
「いや自分関係無くないッスか!?」
全くだ。
「お主は今日からわしの34番目の旦那に任命しようぞ」
「はぁいっ!? 旦那って任命されることッスか!?」
「『旦那』は職業じゃろう? よいか。これは王たるわしの命令じゃ。さ、わしと契約、するがじゃ。今日はここに泊まる。部屋を準備せよ部屋を」
「いや、え、あ、えぇっ!」
「光栄に思えボンバー頭。今日から鬼姫しゃまのものだ・・・あっ、にゃん」
「はよ案内せんかこの地球人鬼姫様をてこずらせるんじゃないよ全くはよ動けこっちかこっちでええのんかえぇ?」
ポカンとする喜多氏に、鬼姫はにかっと微笑む。
「まぁ、お主にも力添えを頼むじゃろうて。よろしくなぁ喜多よ」
「えっ、あっ、はい!」
「トウヤ! いつまでそこにいるつもりじゃ! はよぅこんか!」
ふと、喜多氏の腕からぴょんっと、トウヤきゅんが這い出て、綺麗に二本足で着地を決める。
「せわになったぞ、きた! またな!」
「え・・・」
喜多氏にウインクして、とととととトウヤきゅんは、普通に、あの、二足歩行で、走って行かれた。
ゴクリ。
喜多氏は唾を飲み込む。
「凄い・・・。言語達者な三歳児・・・。将来有望だわ」
喜多氏。・・・そこじゃない。
鬼姫が咳ばらいをする。
「さて、本題じゃ」
あっ、ようやく本題に行けるようだ。
「わざわざこんな騒ぎを起こしたというのに、ここの責任者は現れんのかえ?」
なるほど。
そういう意図でこんなことを起こしたのか。でもスク水は中々のマニアックだ。
ここの責任者・・・。となるとワンだろうか。えー、コロニーリサーチ。まだ医療室にいるようだ。
「あー、すいません。責任者ワンは今取り込み中ということで、自分が代理で来たッス。『彼女』が来るから迎えて差し上げろと」
「ほぅ? わしが来ることを想定していたと?」
畑山が喜多氏に歩み寄る。
「ワン様から言伝ッス。その子の親権について、どうするかは君が決めろ、と」
「・・・え?」
喜多氏はまじまじとトウヤきゅんを見つめる。
うむ? 鬼姫の訪問とトウヤきゅん。この二つの因果関係とは?
「・・・鬼灯・・・」
ハッと喜多氏は鬼姫を見やる。
「もしかして、この子をお探しにいらっしゃったのですか!?」
鬼姫は不遜の笑みを浮かべる。
「わしは人狼など知らん」
「いいえ! この子は元は鬼人です。名前はホオズキ・トウヤ。ワンが保護した子供です。心当たりがある、違いますか?」
「・・・・・・」
鬼姫は無言で喜多氏に歩み寄った。
「あぁっきゃ・・・」
「・・・・・・」
トウヤきゅんはにっこり微笑む。
「まんまぁ」
「っ!?」
!?
そうだよね、皆びっくりするよねぇ!?
「え、まま・・・? あの・・・」
「『彼女』が来るって。この子の母親が来るってことだったんスか!?」
「違う! この子は!」
「鬼姫しゃま・・・」
「鬼姫様・・・」
鬼姫は下唇を噛んだ。
「わしの33番目の旦那の、浮気相手の娘の子じゃ!」
鬼姫の目に涙が浮かぶ。
「・・・・・・」
沈黙が続く。
「んー、えっと?」
「娘っ子が産んですぐ死んでしまい、ナンバー33・・・えほん、旦那の・・・エ・・・じゃない? サト・・・違う。あっジロウが育ててくれって! このわしにぃ!」
床に膝をつき、へたり込みおよよと涙を拭う。
旦那を「ナンバー33」の番号付けで呼んでる・・・? しかも33人もおったら名前忘れるわな?
鬼姫は多夫一妻システムを取り入れた惑星、なのかな? 33番目の「旦那」、だからね。恋人、違うしね。
「わしは・・・わしは・・・っ」
なるほど。
そりゃぁ複雑な心境になるよね。浮気相手のお子さん、だもんね。
「わしは人狼なんて育てたことはないんじゃ!」
「そこぉっ!? そこッスか!?」
「何がじゃ! わしは真剣なんじゃ! 目を離した隙にトウヤは何処ぞに行ってしまうし! 気が付いたら! 狼になってるし!」
ワンは何処で保護したのだろうか。
「紛れもなく、この子は吸血狼に噛まれて、後天的に人狼にさせられた被害者です」
喜多氏は深く、頭を垂らした。
「わたくしの一族がこの子の人生を狂わせてしまいました。本当に、申し訳ございませんでした」
鬼姫はようやく立ち上がる。
「・・・やはりか、そなたが吸血一族の」
「はい」
「名は?」
「喜多遊子です」
「喜多遊子、か。いいじゃろう、覚えておこう」
「あの、この子は責任を持ってわたくしが育てます、いえ、育てさせて頂けませんか?」
うんうん。
ワンに言われるまでもなく、トウヤきゅんを腕に抱いた時から。きっと喜多氏はもう覚悟していたんだね。
「嫌じゃ」
「でっでも!」
「そこの! 光一!」
「ふぁいっ!?」
何故自分が呼ばれたのか、分からない様子だ無理もない。彼は蚊帳の外だったし。
「光一、わしはお主を気に入ったがじゃ」
「は、はぁ・・・」
「トウヤをわしとお主で育てるがじゃ」
「・・・・・」
沈黙。
「いや自分関係無くないッスか!?」
全くだ。
「お主は今日からわしの34番目の旦那に任命しようぞ」
「はぁいっ!? 旦那って任命されることッスか!?」
「『旦那』は職業じゃろう? よいか。これは王たるわしの命令じゃ。さ、わしと契約、するがじゃ。今日はここに泊まる。部屋を準備せよ部屋を」
「いや、え、あ、えぇっ!」
「光栄に思えボンバー頭。今日から鬼姫しゃまのものだ・・・あっ、にゃん」
「はよ案内せんかこの地球人鬼姫様をてこずらせるんじゃないよ全くはよ動けこっちかこっちでええのんかえぇ?」
ポカンとする喜多氏に、鬼姫はにかっと微笑む。
「まぁ、お主にも力添えを頼むじゃろうて。よろしくなぁ喜多よ」
「えっ、あっ、はい!」
「トウヤ! いつまでそこにいるつもりじゃ! はよぅこんか!」
ふと、喜多氏の腕からぴょんっと、トウヤきゅんが這い出て、綺麗に二本足で着地を決める。
「せわになったぞ、きた! またな!」
「え・・・」
喜多氏にウインクして、とととととトウヤきゅんは、普通に、あの、二足歩行で、走って行かれた。
ゴクリ。
喜多氏は唾を飲み込む。
「凄い・・・。言語達者な三歳児・・・。将来有望だわ」
喜多氏。・・・そこじゃない。
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