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【#19】便利屋
しおりを挟むとてとてとて・・・。ぽてっ、べちゃっ。
「ああああいでぇぇぇぇ!」
短くて小さい可愛らしいおみ足で走り、何もないところでで盛大にコケるトウヤ・・・きゅん? トウヤ・・・『氏』? は涙をぼろぼろと流す。
「あぁぁぁ・・・いろんなぁ、しるというしるがでやがるこのからだぁ・・・」
溢れ出る涙と鼻汁を袖で拭う姿は可愛いのに。その『中身』が不釣り合いだ。
「はいはいはい」
ひょいっと優しく持ち上げ、慣れた感じで抱っこする畑山君だった。
「トウヤさん、この体にまだ慣れてないんですから。赤ん坊練習まだッスよ」
「ぐすん。なんでおれさまがこんなこんな、ぐすっ」
おやおや?
二人は知り合いのようだ。畑山君の話し方を鑑みるに、トウヤ氏は彼より年上に感じる。
「喜多は追っては来てないじゃろうな?」
「はい。もうここまで来れば大丈夫かと」
三人はエレベーターに乗る。
「に、しても。光一は『演技』が上手いのぅ?」
「さすがにスク水で来られるとは思って無かったので、素で初心の対応出来ましたッス。どれだけ虜にしたら気が済むんスか全く」
「・・・本当に、よいのじゃな?」
「えぇ、自分のような普通の人間じゃぁ、アレには勝てませんから」
「・・・ワンは? あやつは何と?」
チーン。
エレベーターが『UNKNOWN 』で停止する。
「そりゃもぅ『こっち』においでと、そう言われましたッスよ」
三人はエレベーターを下り、導かれるように、レッドカーペットを歩く。
「ふん。おれさまがこんなんにならなければ、おれさまこそなんばーずになれたのに」
「それぞ、運命、じゃろうて」
そして、大きな金色の扉が待ち構える。
扉が開き、姿を現したのは。
「はぁ~い♡ 待ってましたよぉ」
ローサ・ベルベットだった。しかしナース姿はではない。これこそ、シスター。エンジェルローサはシスターにもなるのか。
「まさか、教会とやらに足を踏み入れることになろうとはのぅ」
ここは教会だった。
しかし、奉られているものは女神でも十字架でもない。
一本の剣だ。
「すいません鬼姫様。そういうしきたりだって、ワン様が煩くて・・・」
「僕が何だって?」
「だからワン様のこだわりが強いなって、言ったんス」
「分かってるじゃないか光一。儀式、って感じがするだろう? まず形から入らないとね」
「は、はぁ・・・」
ワンはトウヤ氏を抱き上げ、最前列の椅子に腰を下す。
「さて、僕達は未届け人だよ」
「ふん」
「トウヤ、喜多にはバレなかっただろうね?」
「あ? とうぜんだろ。このおれさまのきゃわゆいえんぎにめろめろだったぜ」
「あーあ。君が下手こいて吸血狼に噛まれて、後遺症で幼児化しなければ。光一は人間を辞めることは無かったのにね」
剣を前に、ローサと鬼姫さん、そして畑山君が並ぶ。うーむ、まるでそうだな。神父ポジがローサ、鬼姫さんと畑山君が新郎新婦のようだ。
「はっ、もうかこのはなしさ。こういちがそういううんめいだったのさ。そんなことより、はやくもとのからだにもどるくすりをつくってくれよな」
「さっきローサに頼んだばかりだよ」
「新郎、畑山光一。汝は鬼姫、紅蘭を妻とし、34番目の夫となり、彼女の力を得、彼女の為に彼女の生涯配下となることを誓いますか?」
え、やっぱり、これは、結婚式!?
「はい、誓います」
「新婦、鬼姫紅蘭。汝は畑山光一を34」
「誓おう! 我が初物の地球人を夫に娶ろうぞ!」
「んも最後まで言わせてよぉ!」
「さぁ、さぁさぁ光一!」
心なしか、息が荒い。
「はいはい」
苦笑を浮かべ、畑山君はしゃがんだ。彼の目線の先には鬼姫さんがいる。
ペロリ。
鬼姫さんは頬を染め、それはもう嬉しそうに鋭利な牙を露わにした。
「さぁ、これでお主はわしのものじゃ」
ぶっちゅう。
「っ」
畑山君の口腔を貪るようなあつ~い口づけをした。
「・・・・・・」
鬼姫さんがゆっくりと離れた。
「刻印、完了したぞ」
鬼姫さんの渾身の舌なめずりを見た。
「ぐう」
胸を抑える畑山君の目が、瞳の色が、真っ紅に染まる。
「風神雷神、そやつから離れるのじゃ」
「はいにゃん」
「はいです」
君達、何処に行ったかと思ったら、ずっと畑山君のアフロの中にずっといたのか。
「・・・・・・」
畑山君を見守る皆だったが、何か起こるわけでもなく、スッと彼は立ち上がる。
「はぁ、終わりましたッスかね。これで自分も今日から鬼ッスね」
「確認しまぁす。舌、出して?」
「あー」
エンジェルローサは畑山君の舌を確認していた。拡大、あぁ、なるほど。彼の舌に何やら印が描かれていた。これが結婚という名の、配下の証の刻印なのか。
ワンが拍手をしながら、畑山君に歩み寄る。
「おめでとう。今日から君も称号持ちだ」
「うッス」
「そして、このわしの34番目の夫じゃぞ」
「はいッス。お嫁さん」
「っ!? おっ、嫁さん、じゃと!?」
「はい、鬼姫様だと今までどおりでなんら変わらないですし、じゃぁお嫁さんかなぁと。どうッスか?」
みるみる鬼姫さんは顔を真っ赤にしていく。
「お、お主、・・・やるよのぅ。このわしを喜ばせる術を知っておるな」
にかーっと畑山君は微笑む。
「いつも見てましたから。いやぁ、ようやくこのポジションに来られたなぁ」
「満足かい光一?」
「えぇ。これで、ワン様もいい駒が出来てご満悦ッスか?」
「あはは、人聞きが悪いなぁ、否定はしないけど」
「そうッスよね」
「じゃぁ早速だけど、念の為ローサの健康チェックを受けて。その後にまた指示を出すから」
「了解ッス」
去り際さりげなく、畑山君は鬼姫さんの左頬にチッスを残す。
「じゃぁお嫁さん。これからいつでも呼んでください。何処にでも駆けつけますから」
「~っ!」
極めつけのウインク。
キザだぜぇ。でも鬼姫さんはメロメロだぜぇ。
「・・・天然たらしって、怖いよね」
「あぁ~ん、アフロなのにかっこいぃ♡」
「痴れ者! わしの夫じゃ! フンっ」
照れている鬼姫様が可愛く見える。
「さすがは光一だ。死ぬかもしれないこんな儀式、二つ返事で決断するなんて。よっぽど成功する自信があったんだね」
「・・・あやつはわしに昔から従順ぞ」
「まぁ、いつ何処で知り合ったかとか知りたいね。追々聞くことにするよ」
「ん~? これで良かったのかしら?」
「彼が鬼姫との契約をすることも、僕の駒になることも、選んだのは彼自身なんだから。力を得るにはそれ相応の対価が必要なことも知ってるはずだ」
「わしはお主に協力したんじゃ。その対価を払ってもらうぞワン」
ワンは苦笑を浮かべた。
「・・・では、メイド喫茶へ・・・、の前に、着替えましょうかね。目に毒だから」
「毒っ!? おぬおぬおぬしはっ!」
「まぁまぁ。お着換え、しましょう? 鬼姫様にいいコスチューム、用意してあるんですぅ」
「いいだろう! さぁ案内せよ!」
「うんうん行きましょ行きましょ」
女子チームを見送り、ワンは独り吐息を零す。
ワンの目がこちらを・・・・。
ザザッ。
おっと。
これはこれは。機械の故障かな?
あぁ、もうこんな時間か。わたくしも会議の時間が来てしまったようだ。
今回の実況はここまで。
またこれを見てくれている君達との再会を楽しみにしているよ。
次回を楽しみに待っていてくれ。
じゃぁ、また。
【Profile.No.001021 畑山光一 称号:便利屋】
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