【休止】天の声、実況、す。

佐橋 竜字

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NUMBER’S CONSCIOUSNESS

【#高野由利亜】4

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 あらかた校舎を回り、最後に来たのは体育館だった。
 京子と待ち合わせの下駄箱にも行ったが、宝石すら落ちてなかった。
 あの子、何処に行ったのかな。
「いたいた」
「? 何が・・・」


【んごっ!?】


 いや、その反応由利亜だし。なんでおまえが驚くねん。
 体育館に豚が一匹いる。正確には、豚の顔の二足歩行人。
「豚がいる」
「正確には俺らは『キメラアント』っていうんだけど。やべ、俺ら、とか。あんな奴と一緒なんてヤダ」
「ふぅん。豚人間ね。『獣人』とは違うの?」
 ライオン丸は目を瞬かせた。結構まつ毛、長いじゃん。嫉妬。
「詳しいね。そういう感じ。地球言語ではそう呼ばれるんじゃないかな」
「・・・ほーん」
 最高じゃん。獣人、大好きな属性なんだけど。ライオン丸とはこれからも友好関係を築こう。
 あ。
 豚足ならぬ豚手に宝石がある。
「うっそ。あんな手で宝石持てるの?」
 スマホのカメラモードで、拡大してみると。これまた器用に爪に挟んで持ってんじゃん。


【ぶぁかにするなぁ地球人!】


「なんて?」
 宇宙人言語、勉強しないと。でも宇宙は広いし、全部共通じゃないよね? まずは何から学んだ方がいいのかな。
「馬鹿にするなって。地球人は豚を食用にしてただろ、だから怒ってんだよ」
「だって、そういう文化だったって話じゃん。そうやって昔の人は生きてきたんだから。今はもう食べてないじゃん」
 何? 恨まれてんの? 豚さん、めっちゃ鼻息荒いんだけど。
「だけどそうは問屋が卸さないんだよな」
 もう地球人が豚を食べなくなって一体何百年経ってると思ってんのよ。歴史で習ったわ。でもどういう理由で食べなくなったかは載ってなかった。
 つか由利亜食べたことないし、食べてみたい。
「何で? もう過去の話じゃないの?」
「だって、宇宙で豚は崇められる存在なんだよ。それはこれからも未来永劫、現在進行形だからさ」
「豚がっ!?」
 なんということだ。
「豚族はそれはもう権力が強い。だから、地球は『バチが当たったんだ』」

 バチが当たる。

「もしかして、『断罪の剣』のこと?」
「ご明察。地球は数多惑星から処された。あの、大きな剣がその証」
 いつでもどこからでも見える。
 地球にぶっ刺さる巨大な剣。
 断罪の剣。
 二百年前に、一度、地球が滅びかけた事件。こんなものがいきなり空から降ってきて。ぐっさーって刺さったらそりゃ地球ヤバいわ。
 何とか復興して今に至るんだって。
 授業だと長年の大きな環境破壊で神様の怒りを買ったとか。神の怒りの鉄槌だの、勇者からの宣戦布告だの、結局推論でしかないものを学んだ。
 ま、これで解明したわ。地球は宇宙で嫌われているんだってさ。悲しいね。
「でもまさか豚を食べてただけで嫌われ者?」
「まっさかぁ。それだけじゃぁないだろさすがに」
「他に理由知ってんの?」
「知らない。でも、月人も地球にご立腹なのは知ってる」
 月人か。彼らは一体どんな形をしているのかな。兎、だったりして。


【何をペラペラと!】


 豚さんが由利亜に銃口を向けた。なんか変わった銃だけど。


【おまえも宝石になるんだ!】


 んー。これはヤバいかな。
「由利亜は下がって」
 ライオン丸が前に出てくれるんだけど。もっといい方法がある。
「大丈夫」
「え?」
 大きく息を吸った。
「京子!」
 久しぶりにこんなに大声出したわ。
 いつまでも遊んでいる友を起こす。
「あんたいつまで宝石になってるつもり!?」


【ブギャッ】
ーパァンッ!


 あらあら。運の悪い。豚さんの持っていた宝石が京子だったようだ。
 その宝石が真っ赤に輝いて砕け、破片が液体となり蠢く。

 
【ぐびゅっ】


 紅い液体京子が、豚さんの首を絞めた。
「京子。その豚さん使えるから、殺さないで」
 そう言うと、紅い液体京子がこっちをみた。
『そ』
 それだけ言うと。


【んぐうがぁぁぁぁぁぁぁぁ!】


 あちゃー。またやったわこの女。
 京子は豚さんの穴という穴に入り込み、体を支配した。
 豚さんの瞳がきゅぴんと紅と灯す。
 目をキラッとさせて、Vサイン。
「乗っ取り、完了でぇす」
「・・・あんた好きねぇ」
 この子は母星が分からないので、由利亜が面倒を見てる。変幻自在の多分スライムちゃんだ。ただ、普通のスライムではないんだ。変身するにも、相手の『血』を摂取しないといけないの。だから「吸血スライム」と由利亜は呼んでる。
「・・・まさか! ラムラ族!?」
「え?」
「由利亜、この子と知り合いか」
「拾った」
「は?」
「拾われた☆」
 そう言いつつ、ふと豚人京子は眉根を寄せて、自身の体の匂いを嗅ぎだす。
「何してんの?」
「・・・この体、くさぁぁい」
 ライオン丸が頭を抱えた。

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