【休止】天の声、実況、す。

佐橋 竜字

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NUMBER’S CONSCIOUSNESS

【#高野由利亜】7

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 視界に飛び込んで来たのは。
「むむむむ虫ぃっ!?」 
 しかも、人間のように眼鏡かけての二足歩行。なんならヘルメットを被って、反射シートのついた第一安全と書かれたベストを着て、話したりパソコンや見たことのない装置を操作してる!
 ヘリコプターが格納庫らしき場所に収納された。
「ひっ」
 由利亜の乗るヘリコプターの扉を、虫人間が叩いた。スーツ着てる? お偉いさん?
 バシュッと扉が開いてしまった。

【ようこそワン様と、高野氏の子息女様】

「ちょっと、あたしは歓迎してくれないの?」

 え? 何て? つか京子、こいつの言葉、分かんの?

【あぁ失敬。如何せんラムラ族とは長き戦いで恨み妬みもありますわって、まぁ、今の貴方には関係のないことですね】

「そうよ。地球しかしらない地球オタクの宇宙人なんだから」

【左様で。では、歓迎致します京子殿】

「うむ」

 何か先にその虫人間の手を平気で取って、京子がエスコートされて降り始めたんだけど。
「オリバー、悪いが由利亜には君の言語が分からない。日本語で話してくれるか」
 オリバーさん? お名前、あるのね。
 あ、触覚がピコンって動いた。
「これはこれは失礼致しました」
「! 日本語、上手!?」
「ふふ、ありがたいお言葉です。どうぞ、高野嬢もお降りください」
「あっ、自分で降りるから」
「左様で」
 ぎったぎたのなんか汁に溢れた手を出さえる前の先手必勝。
「う……わぁ……」
 何処まで続くのかこの天井は。
「ここは断罪の剣の解析をメインに行ってる。その解析からコロニー開発やら武器や人材育成にまで発展できた。最初はこの剣をどうするかで数十年悩んで。それで、彼ら、機械昆虫族達が星々を回ってる最中、偶然に地球に来てくれて、この断罪の剣の情報をくれたんだよ」
「機械、昆虫?」
 ただの虫人間にしか見えないけど。
 由利亜の表情が顔に出てたのか。
「ひぃっ」
 カポっと、オリバーは額から上の皮膚を持ち上げた。その中に、エレクトリカルに輝く機械の脳みそがあった。目を見開き過ぎて目ん玉がカッピカピになる勢いだわ。
 由利亜の一瞥を確認すると、カポっとまた元に戻す。アンビリバボー。
「お分かり頂けましたでしょうか」
「うんうんうん。どうしよう京子」
「何が?」
「やっぱり宇宙は広かった。由利亜、そのうちリアクション芸人になりそう」
「なれば? あっちもいいリアクションって喜んでくれるってぇ」
 そのうち機械動物だとか出てくるんじゃないでしょうね。機械人間は少し怖いかな。人間に近すぎだもん色んな意味で。
「オリバー、コロニー12に向かいたいんだが」
「あぁ、オムニバス行き、そうですよね。ですが今、少し問題が・・・」
「問題?」
「・・・転送装置ミラーが駄々をこねてまして・・・。何処かにいるとは思うんですが・・・」
 ワン様は右手で頭を抱えた。
「またか・・・」
「何? ミラーって?」
「転送装置のことです。別名機械精霊転写体。私が作ったものなんですが、もう我儘で我儘で」
 機械精霊? 精霊ってあの精霊?
「機械の精霊って何? 我儘? 何それ。まるで生きてるみたいな言い方だけど」
 ワン様とオリバーが由利亜を見つめる。
「そうだったな、言い忘れていた。彼ら機械種の中でも凄い所は、機械昆虫は機械精霊の加護を受けている者が多いということ。そしてその機械精霊は言わば生きた機械の守護者だ。彼ら機械に意識・思念があるんだ」
 もう映画じゃん。そうしたらいずれ人間が滅ぼされる戦争の未来のやつじゃん。その未来を変えるために未来から誰か人間側に立ってくれる機械人間を過去に送ってくれるの? あぁそうやって過去が変わってその過去が変わって、未来も複数の未来が増えて、自分がどの次元の自分か分かんなくならん? あぁそういう映画めっちゃ好きなんだよね。
「安心して。地球の映画のようにはならないから。彼らは独自の惑星があるし、れっきとした宇宙人だ、争う義理はない。地球にはまだ速すぎる文明だからね」
 だよね。そんなのがいたらもう地球ジャックされて、地球は彼らのものになるよね。って待てよ? そんな機械精霊の一種がいない、ということは何処かで悪さ、してるんじゃないの!?
 

 ペラッ。


 由利亜のスカートがめくられた。
 この由利亜が!? 気配に、気づかなかったというのかっ!?
 回し蹴りとするも、当たった感触がない。
「いやっはぁ危ない危ない」
 そいつは急に現れた。
「!? なん……」
 なんっで、由利亜の前に由利亜がいるの!?
「黒髪ポニテ、いい体躯、肉付きもいい。顔も好み、胸も最高だ。ミラーは貧乳こそ正義派だから、合格♪」
 拳が奮い立つ。
 由利亜の体で由利亜の顔で由利亜の体を触りこねくり回す奴!
「ミラー! こらっ!」
 オリバーが怒鳴った。あ、虫だけど怒った顔になってるわ。
 こいつがミラーか!
 由利亜の前に、京子の拳が飛んでった。その拳を軽く受け流し、ミラーは京子に擬態する。
「ラムラ族がなんで地球人と?」
 京子の攻撃を交わし続けるミラー。
「あたしなんて!」
「?」
 京子が涙目になる。
「あたしだってぇ! まだ由利亜の体! 触ったことぉ! ないのにぃ! おまえはぁぁぁ!」
 ガバッと、紅いスライムの本体になり、ミラーに襲い掛かる。
「うはっ」
 これは食べる気だ。
 ミラーがいなくなったら困る。
「京子!」
 京子は停止する。
「チキン!」
「クッ」
 京子の大好物の「チキン」。この言葉には凄く弱い。
 京子は元の人間の姿に戻る。
「・・・へぇ、ラムラを飼いならしてる人間は初めてだぁ。ますますうん、気に入ったかも、うん」
 また由利亜に変身して由利亜の顔でにまにましないで欲しいんだけど。
 そのミラーの頭を、ポカンッと殴れた人がいた。
「いたっ」
 鋭利に眼を光らせるワン様だ。
「ミ~ラ~?」
「うぐっ、ご、ごめんなさい・・・」
 ぽんっと、ミラーはもふもふの茶色いテディベアのぬいぐるみになった。背中に天使の羽をつけて、ふよふよ浮いている。
「は、初めましてぇ。断罪の剣パンドラへようこそ。転送装置、ミラーですぅ。よろしくお願いしますぅ。テヘペロ♡」
 急にかわいこぶるなぁ。まぁ、可愛いから許されるからいっか。
「え、何? これが本当の姿?」
 ツンツンツンツン、と頬と、お腹をつついてみた。
「ァアン♡ イヤン♡ エッチィ♡ グエェッ!」
 センシティブな喘ぎからの首絞め嗚咽。
「ミ~ラ~?」
 片手で可愛いテディベアの首を絞めるワン様素敵。躊躇ない、ホント素敵。
「ゴッ、ゴメン、ナサ、ゴホッゴェ」
 中身出てる、口から綿、出てる。
「ミラー、仕事だよ。ワン様達をオムニバスへ転送してくれ」
「ゲヘッ、オエッ。んんんっ、はぁい♡」
 しかし、ミラはにまっと、不遜の方の憎たらしい笑みを浮かべた。
「うっそぴょーん。捕まえてごらんなさーい? あははははー」
 言うだけ言ってパンンッと、姿を消しやがった。
「……」
 あ、分かる。ワン様が凄い怒ってる。
「もももも申し訳ございませんワン様! すぐに! すぐに捕えますのでぇ! 警備隊!」
 うげ。
 機械昆虫達が飛んできた。でもちゃんと警備員の恰好じゃん。自覚、しっかりあるじゃん。
「ミラーを即刻捕えよ!」
「ハハッ!」
 ミラー捕獲大作戦が決行された。



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