【休止】天の声、実況、す。

佐橋 竜字

文字の大きさ
32 / 34
NUMBER’S CONSCIOUSNESS

【#高野由利亜】9

しおりを挟む


 ゆゆゆゆゆ由利亜のママとパパが…。
「はぐ、んぐ、はがっ、あむあむ」
 隣で大食いする京子が危険な生命体なんてことよりも。
「ぷはあぁ、まぁまぁかな。あたしは京子のポテチ衣チキンが食べたい」
 いつから?
 いつから由利亜のパパとママは宇宙人になっていたの? あ、電話、電話しようかな。
「ねぇ由利亜」
「……由利亜のパパは何星人?」
「ねぇねぇ由利亜、チキン」
「ママも何星人…?」
 一体どんな怪物に変身するのかな? 由利亜的には獣人が好みだけど。あ、いっけない。それは由利亜の恋人の好みだった。
「由利亜!」
「わっ」
 口の周りを真っ赤に染めた…危険な香りのする京子の顔がある。あぁ、そっか。喜多とかいう女にご飯、作ってもらって食べてたんだっけ。食堂のさらに奥に扉があって、そこに入ったらまた小さな食堂について。
「……」
 テーブルの上が大皿で溢れかえっているのはどうよ? どんだけ頼んだんだ、それにどんだけ作ったんだあの女、凄くない? 喜多に感謝させなきゃこの大食漢に。
「な、何よ?」
「あたし、由利亜のチッキチキチキンが食べたい」
「えぇ?」
 ふと喜多が超巨大なパフェを持ってきた。
「これで最後。まだ食べる?」
 京子はありがとうとまたパフェをバク食いする。
「えぇっと、この子、由利亜のチキンが食べたいって言うんだけど、キッチン、借りてもいい?」
 喜多は京子を見て一息。
「しめに一番好きなものを食べたい口ね。いいよ、使って」
「あ、のさ」
「何?」
「ポテチ、ある…のかなぁと」
「…うちのキッチンに無いものは無いから安心して」
 無いものは無いって? 何それ名言?
「ごちそうさまぁ」
「京子、喜多……さんにお礼を言いな。こんなに腹いっぱい食べさせてもらって。宇宙人だからっていい気になるんじゃないよ」
「ふぁい」
 京子は立ち上がり、喜多さんに頭を垂らした。
「喜多さん、由利亜のチキンには敵わないけど、ご飯をありがぐはっ!」
 思わず京子の脇腹に肘パンを打ってしまった。
「一言余分なのこのお馬鹿!」
「美味しいご飯をありがとう」
 京子がまたお辞儀したので、由利亜もお辞儀した。ペットの粗相は飼い主の責任だ。
「由利亜からも、その…この子に食べさせてくれてありがとう感謝してる。あ、請求はパパにお願いします」
「ふふ」
 ふふ? ふと頭を上げると、喜多さんが笑っていた。
「あのラムラに頭を下げさせるなんて、由利亜ちゃんは凄いね! こりゃ将来有望だ」
 褒められてる。何か、嬉しい。
「こちらこそ、綺麗に食べてくれてありがとう。キッチンはここ真っ直ぐ行って右にあるから。ワン様が戻ってくるまで、ここにいてくれるかな?」
「分かったわ」
「うん。由利亜のチキン、チキンチキンして大人しくしてるから安心して」
「勝手に言葉を作るな」
「由利亜はチキンを作るんだよ」
「分かってるよ!」
 また、喜多さんに笑われた。
 キッチンに向かうと、本当に、上の棚に色んな味のポテチが置いてあった。
「どれにする?」
 京子は都合のいいスライムになり、ガサッと全種類、一種類ずつ手に取り、並べた。
「……はぁ、なるほど」
 これで悪いことをしない兵器になってくれるなら、いくらでも由利亜はチキンを作ろう。
 冷蔵庫から大きなチキンを選んで来やがったので、それを切るはめになった。また別の棚で見つけた美味しそうな「宇宙一美味しい唐揚げ粉」と鶏もも肉で、ねちょねちょと混ぜ下ごしらえをした後、ポテチ衣付け担当の京子に回す。
「ふんふん~♪」
 慣れたスライムの手つきで複数同時に、袋の中で粉砕させた色んな味のポテチを衣として、むちむち鶏もも肉に付ける。
「何種類あんの?」
「10種類~!」
「……」
 そして満遍なく付けたら、また由利亜が油で二度揚げする。何度も何度も、揚げ続けるんだ。由利亜は、どこぞのチキン屋さん並みに、物凄い量を揚げているのだよ。油であぐむ? 気持ちが悪い? もうそんなラインはとうに昔に越えた。
「衣付け終わったら、どんどん食べに入って。お皿が空いたらまた持って来て」
「うっひょーい! はぁぁい!」
 フードファイター京子はばりばりと音をたて、今日も今日とてチキンを頬張る。
「んん~♡ 美味ひぃぃぃぃ! やっぱり、由利亜のチキンが宇宙一だぁ♡」
「ったく、褒めても何も出ないから」
 ……悪い気はしない。
「…あたしは、京子を護るよ」
「は?」
 突然何を言い出すのか。
「由利亜の一番があたしじゃなくても、由利亜があたしの一番だから」
 それ、盛大な告白じゃん。
「由利亜が望むなら、由利亜が、そんなに宇宙人になりたいのなら…」
 いてっ。あちっ。油が跳ねた。
 京子がもう10個のチキンを乗せてあったお皿を持って来た。
「あたしが由利亜を宇宙人にしてあげる」
「……はい?」
 どういうこと?

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。

ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」 その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

処理中です...