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24.造られし桃
桃の花嫁修行。
なるほど。女性は日々こうやって表世界に繰り出しているのか。
「化粧って、すげぇんだな・・・」
見てよこれ。ごく平凡な普通フェイスの俺が、まぁ可愛いかなって思えるほどになるんだからな。化粧で化けるってこれな?
「あぁ、羽桃李様・・・♡」
俺に化粧という名の塗装を施してくれるメイクアップの先生がうっとりこの表情。いえ、貴方の方がうっとりされるご容姿といいお尻、されてるんですはい。
「おまえは普通の顔だから化粧するとより化けて見える。何? ギャップって言うの?」
それ、褒めてねぇな。隣で慣れた手つきで自分で化粧をする花先輩。
「おれさまは容姿もいいから化粧なんてしなくてもいいけど、一応身だしなみ、でな」
「あぁ、そう、そうですね・・・」
瞬き一回するだけでキラキラ眩しいもんね。
こんな、まさか人生で化粧を覚える日が来ようとは思ってもいなかったけど。
「日焼け止めに下地にコンシーラーにアイライナーにマスカラ、フィニッシュパウダーにリップにチーク。女性はすげぇ。こんなに身だしなみして他人様の前に出てるんだな。なんか申し訳なくなってきた」
「これは女のアイデンティティみたいなもんでこれが普通って好きでやってんだからいいんだよ。あ、これおすすめのクッションファンデ」
っていう花先輩も化粧が日常なんだ。
「言っておくけど化粧は毎朝すんだぞ」
「へぇ~」
「お・ま・え・も・な?」
「? なんでですか」
「なんでっておまえ、鬼に失礼だろうが」
はて?
「言っただろ、ここは桃月院、桃の聖地。セレブの鬼に見染められる為に桃は自分磨きをするところだって」
また桃月院の説明が増えた。
「人外達の中でも、とびっきりの鬼に好いてもらえるのが・・・」
「・・・?」
ふと花先輩の顔が曇った。
「・・・桃の幸せなんだよ」
おや? おやおやおや? 俺の何の確証もないセンサーが、第六感が反応している。
俺、自分の直感だけは信じてる。
「先輩」
「なに」
「俺が言うのもなんですけど」
「あ?」
「自分の幸せは自分で決めるもんすよ。こんなに沢山の人間がいて、どれか一種に決めてそれに巻かれるのは政略結婚みたいじゃないですか・・・」
あ。自分で言った言葉に気が付いた。
「もしかして、先輩、許嫁がいるんですか」
花先輩の目が明後日の方を見た。ビンゴ。
「そうですよね。桃の名家で三位って言われたら許嫁の一人や二人・・・」
ふと、突然周囲がざわついた。
「っ!?」
なんだ!? なんだこの先生とは違う、鬼圧なるものを感じる!
ハッ!
その気配がこっちに近づいて・・・。
「・・・花」
背中にビンビンヒシヒシと感じた正体は。
「はぁうわっ」
思わず声が漏れてしまうほどのその美しすぎる美貌に目がくらんだ。銀色の長いストレートの髪に、青い瞳。すらっとした体格に長いまつ毛がパシパシ瞬くたびにほらぁ!
「まっ眩しっ」
また美青年来たわ。
「おや? 見かけない子だね」
美青年の彼に控えている男が、ひそひそと囁く。
「あぁ、君が桃太郎の」
桃太郎の、で止めないで貰えますかね。
「おわっ」
突然花先輩に腕を引っ張られた。
「行くぞ」
「せんぱ・・・」
「花」
そう呼ばれて、先輩が立ち止まる。
「また、ね」
「・・・・・・」
また先輩がズンズン歩み始めた。
先輩の様子がおかしい。
もしかしてだけど。
「先輩、さっきの王子様みたいな人」
「王子なんかじゃねぇ」
例えなんだけども。
先輩の足が止まった。
「おれさまのこと好きでもないくせに。おれさまなんかのような桃と婚約することで、鬼の権力を手に入れようとする蛮族だよ」
おれさま「なんか」のなんかが気になる。
「本当に政略結婚ですか」
なるほど。避けては通れぬ道のようだ。
「おまえはいいよな」
「え?」
「おまえは【天然桃】なんだから」
「て、天然?」
「そ」
先輩はちょうど窓から見える沢山の生徒達を眺めた。
「おれさまは【人工桃】なわけ」
「・・・・・・?」
また新たな用語が、しかも今回は差別用語が登場した。
「ちょ、え? 人工? 人工ってあの?」
「そうだよ。後天的に造らされた桃だよ」
「・・・・・・」
俺が瞬時に浮かんだ疑問はただ一つ。
「なんで?」
「知ってっか? 日本は桃になれば4ケタ万円の支援金が入りかつ鬼の子を産めば将来は安泰。それを知った人間、ここいらの界隈では猿人って呼んだけど、桃月院の手を借りて自分の子を桃人にしようってさ」
この世界はそんなに桃桃桃桃桃桃っ!?
「そ、そんな・・・!? 改造手術? 遺伝し組み換え!?」
「いんや」
「じゃぁどうやって・・・」
じっと花先輩が俺を見つめた。
「桃源郷の桃を食べ続けるだけ」
思わず眉根が寄った。
「副作用なし。桃の適正が無ければただの桃を食べてるだけ。効果があると、誘惑フェロモンと髪が桃色になる」
「あそこの桃にそんな効果が!? 桃適正!? 普通の人を桃化させちゃうってこと!? しかも副作用なしって怖くねっ!?」
「あ、嘘。下痢、腹痛があったわあとアレルギー」
「それはただの食い過ぎだろ! 桃怖っ」
「ここは毎食桃源郷の桃が出る。桃源郷を支えてんのは桃月院なんだよ」
「た、確かに・・・」
やはり世の中お金、マネーだ。
「猿人が桃を食って桃適正になったんが人工桃。その名家が桃園、なわけ」
「な、なるほど・・・」
「でも、鬼の中では天然主義者がいるわけ。その一派の名家がさっきの鬼流院。その次男の聖治」
ん? でも許嫁って言ってなかったっけ? 天然主義者が人工・・・いかんそんな言い方はしたくねぇ。えっと、造られし桃を許嫁?
「次男だから。天然だろうが偽物だろうが、鬼流院内の家督争いでもしてんじゃねぇの? あいつは偽物でも桃ランク三位の『桃園』が欲しいわけ」
ううむ。よく分かった。鬼も桃も名家生まれは何かかしら通過儀礼的な運命、いや宿命があるのかぁ。
「・・・はぁ~・・・、大変だなここも何処も」
「はぁ~、おまえもなー」
そうだったわ。俺、桃の王様だったわ。
なるほど。女性は日々こうやって表世界に繰り出しているのか。
「化粧って、すげぇんだな・・・」
見てよこれ。ごく平凡な普通フェイスの俺が、まぁ可愛いかなって思えるほどになるんだからな。化粧で化けるってこれな?
「あぁ、羽桃李様・・・♡」
俺に化粧という名の塗装を施してくれるメイクアップの先生がうっとりこの表情。いえ、貴方の方がうっとりされるご容姿といいお尻、されてるんですはい。
「おまえは普通の顔だから化粧するとより化けて見える。何? ギャップって言うの?」
それ、褒めてねぇな。隣で慣れた手つきで自分で化粧をする花先輩。
「おれさまは容姿もいいから化粧なんてしなくてもいいけど、一応身だしなみ、でな」
「あぁ、そう、そうですね・・・」
瞬き一回するだけでキラキラ眩しいもんね。
こんな、まさか人生で化粧を覚える日が来ようとは思ってもいなかったけど。
「日焼け止めに下地にコンシーラーにアイライナーにマスカラ、フィニッシュパウダーにリップにチーク。女性はすげぇ。こんなに身だしなみして他人様の前に出てるんだな。なんか申し訳なくなってきた」
「これは女のアイデンティティみたいなもんでこれが普通って好きでやってんだからいいんだよ。あ、これおすすめのクッションファンデ」
っていう花先輩も化粧が日常なんだ。
「言っておくけど化粧は毎朝すんだぞ」
「へぇ~」
「お・ま・え・も・な?」
「? なんでですか」
「なんでっておまえ、鬼に失礼だろうが」
はて?
「言っただろ、ここは桃月院、桃の聖地。セレブの鬼に見染められる為に桃は自分磨きをするところだって」
また桃月院の説明が増えた。
「人外達の中でも、とびっきりの鬼に好いてもらえるのが・・・」
「・・・?」
ふと花先輩の顔が曇った。
「・・・桃の幸せなんだよ」
おや? おやおやおや? 俺の何の確証もないセンサーが、第六感が反応している。
俺、自分の直感だけは信じてる。
「先輩」
「なに」
「俺が言うのもなんですけど」
「あ?」
「自分の幸せは自分で決めるもんすよ。こんなに沢山の人間がいて、どれか一種に決めてそれに巻かれるのは政略結婚みたいじゃないですか・・・」
あ。自分で言った言葉に気が付いた。
「もしかして、先輩、許嫁がいるんですか」
花先輩の目が明後日の方を見た。ビンゴ。
「そうですよね。桃の名家で三位って言われたら許嫁の一人や二人・・・」
ふと、突然周囲がざわついた。
「っ!?」
なんだ!? なんだこの先生とは違う、鬼圧なるものを感じる!
ハッ!
その気配がこっちに近づいて・・・。
「・・・花」
背中にビンビンヒシヒシと感じた正体は。
「はぁうわっ」
思わず声が漏れてしまうほどのその美しすぎる美貌に目がくらんだ。銀色の長いストレートの髪に、青い瞳。すらっとした体格に長いまつ毛がパシパシ瞬くたびにほらぁ!
「まっ眩しっ」
また美青年来たわ。
「おや? 見かけない子だね」
美青年の彼に控えている男が、ひそひそと囁く。
「あぁ、君が桃太郎の」
桃太郎の、で止めないで貰えますかね。
「おわっ」
突然花先輩に腕を引っ張られた。
「行くぞ」
「せんぱ・・・」
「花」
そう呼ばれて、先輩が立ち止まる。
「また、ね」
「・・・・・・」
また先輩がズンズン歩み始めた。
先輩の様子がおかしい。
もしかしてだけど。
「先輩、さっきの王子様みたいな人」
「王子なんかじゃねぇ」
例えなんだけども。
先輩の足が止まった。
「おれさまのこと好きでもないくせに。おれさまなんかのような桃と婚約することで、鬼の権力を手に入れようとする蛮族だよ」
おれさま「なんか」のなんかが気になる。
「本当に政略結婚ですか」
なるほど。避けては通れぬ道のようだ。
「おまえはいいよな」
「え?」
「おまえは【天然桃】なんだから」
「て、天然?」
「そ」
先輩はちょうど窓から見える沢山の生徒達を眺めた。
「おれさまは【人工桃】なわけ」
「・・・・・・?」
また新たな用語が、しかも今回は差別用語が登場した。
「ちょ、え? 人工? 人工ってあの?」
「そうだよ。後天的に造らされた桃だよ」
「・・・・・・」
俺が瞬時に浮かんだ疑問はただ一つ。
「なんで?」
「知ってっか? 日本は桃になれば4ケタ万円の支援金が入りかつ鬼の子を産めば将来は安泰。それを知った人間、ここいらの界隈では猿人って呼んだけど、桃月院の手を借りて自分の子を桃人にしようってさ」
この世界はそんなに桃桃桃桃桃桃っ!?
「そ、そんな・・・!? 改造手術? 遺伝し組み換え!?」
「いんや」
「じゃぁどうやって・・・」
じっと花先輩が俺を見つめた。
「桃源郷の桃を食べ続けるだけ」
思わず眉根が寄った。
「副作用なし。桃の適正が無ければただの桃を食べてるだけ。効果があると、誘惑フェロモンと髪が桃色になる」
「あそこの桃にそんな効果が!? 桃適正!? 普通の人を桃化させちゃうってこと!? しかも副作用なしって怖くねっ!?」
「あ、嘘。下痢、腹痛があったわあとアレルギー」
「それはただの食い過ぎだろ! 桃怖っ」
「ここは毎食桃源郷の桃が出る。桃源郷を支えてんのは桃月院なんだよ」
「た、確かに・・・」
やはり世の中お金、マネーだ。
「猿人が桃を食って桃適正になったんが人工桃。その名家が桃園、なわけ」
「な、なるほど・・・」
「でも、鬼の中では天然主義者がいるわけ。その一派の名家がさっきの鬼流院。その次男の聖治」
ん? でも許嫁って言ってなかったっけ? 天然主義者が人工・・・いかんそんな言い方はしたくねぇ。えっと、造られし桃を許嫁?
「次男だから。天然だろうが偽物だろうが、鬼流院内の家督争いでもしてんじゃねぇの? あいつは偽物でも桃ランク三位の『桃園』が欲しいわけ」
ううむ。よく分かった。鬼も桃も名家生まれは何かかしら通過儀礼的な運命、いや宿命があるのかぁ。
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「はぁ~、おまえもなー」
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