【完結】また会えるその時は

MIA

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「お前が悪名高い刀狩りか?」

突然呼びかけられて辺りを見回す。

しかし、その声は暗い闇の中から響くのみで肝心の姿形が見当たらない。

「誰だ。」

ここで動じるのも情のない話だ。
俺はどこから斬りつけられても反応できるように、さりげなく立ち方を構える。

「どんなきったない輩がやらかしてるのかと面を拝みに来たが。なかなかどうして。立派ななりをしてるじゃないか。」

真後ろから声。

ー何?!ー

すぐさま振り返り持っていた刀に手をかける。
すると、相手は両手を軽くあげ、笑いながら素早く間合いをとる。

ーバカが。自ら俺の間合いに遠のくとは…ー

その瞬間。
刀を突きつけられていたのは、俺だった。

「反応。遅いって。これは俺の、間合いだ。」

ひやりと冷たい汗が背中を伝う。

ー…死んでた。こいつが刀を振っていたら…。俺は切られていた。ー

暗闇を照らす月明かりの下で笑う。
その男は、まだ幼さの残る。
とても美しい青年だった。

「…名は?」

俺の問いに青年は軽く笑みを零すと、刀を納めながらすぅっと離れた。

「その刀。何本ある?」

こちらの投げかけには応じず問いを投げかけてくる青年。
面白い。
俺は久しく感じた高揚感に心地の良さを覚える。

「999本。貴様ので1000本目、だ。」

最後の言葉と同時に抜刀し、そのまま懐に斬り込む。
が、それはさらりとかわされた。

「デカい図体で、坊さんの格好。落ち果てた僧兵かい?でも…。」

またしても突き付けられる刀の切っ先が喉元に触れる。

ー納めたはずの刀がもう俺の喉元へ。何と言う速さ。目で追えないとは。ー

ならば力比べか。
俺は青年の刀の刃を手で掴む。
したたり落ちる血に今度は青年の方が目をむいた。

「…へぇ。痛みに強いようだ。仏の加護かな?」

「…仏なぞいない。」

本当に加護があるならば。
俺はこんなにも化け物じみた姿形などしていない。
寺を追い出され、僧たちに酷い扱いしか受けていない。

仏なぞ。
所詮は、弱い人間どもが祀り上げた偶像でしかないではないか。

「仏はいるよ。だから俺がここにいるんだから。」

その言葉の意味を考える間もなく、青年の刀が横から斜めにふり上げられる。
それを刀で受け止めると、その重い一撃に思わず唸る。
防がれた刀は返す力で刃を滑り、体を反転させると俺の背後から一振り。
瞬時に間合いを取り刀が空を斬る音が響く。

その先は互いに譲らぬ攻防戦。
こちらが斬りかかれば、まるで蝶のようにひらりひらりと舞う。
こちらが守りに徹すると、その攻めは蜂のように速く淀みなく刃が襲いかかる。

ー強い。ー

青年はどこにそんな力があるのかと不思議でしかないほどに刀は重く、息ひとつ切れぬほどに飄々と駆け回る。

ー俺と対等にやりあえるやつなぞ居なかった。ー

気付けば緩む口元は、真剣なこの場に似つかわしくない笑みを堪えきれずにいた。

生まれたときから怪物と言われていた。
この力を、姿を恐れられ。うとまれ。迫害された。
寺に預けられてからも、それは何一つ変わらなかった。
そして。
平清盛〈タイラノキヨモリ〉による惨殺事件。

くだらぬ。
つまらぬ。
この世はもう腐りきっている。

だから俺は堕ちた…。

この怒りをどう発散して良いかもわからず。
夜な夜な刀を奪い続ける。

飲んでも飲んでも渇き潤うことのない心は、次第に本物の『怪僧』を生み出す。

しかし。
今、俺の心は人の心を取り戻している。
この青年との決闘が。
俺の中の『人』を呼び起こす。

「もう一度問う!貴様の名は?!」

青年は相変わらず涼しい顔をしたままで少し首を傾げると、これまた麗しいその見目でこちらを凝視する。

「お前とはまた会う気がするよ。その時は俺の名を名乗ろう。」

そう言うと、自分の持っていた刀を投げ渡し言い放つ。

「くれてやる。1000本目の刀だ。」

「…っな…」

刀に目を奪われたその瞬間。
顔を上げると、そこに青年の姿はなかった。

誰もいない暗闇を見つめて思う。
あやつは物の怪の類だったのだろうか。
俺は、夢を見ていたのだろうか。

と。
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