【完結】パラダイス

MIA

文字の大きさ
上 下
1 / 19

〈序幕〉

しおりを挟む
2XXX年

世界各地で突如産まれた『特殊能力保有者』。
それは、あまりに突発的で。
あまりに現実離れした現象であった。

ー前世記憶保持者ー

その名の通り、前世を記憶されたままに産まれた者たち。
これは極めて稀であり、大抵の場合が著名な人物であることが特徴だ。

そこまでは、まぁ良い。
問題となったのは、この者たちが備え持つ『特殊能力』。
すなわち『前世スキル』であった。

その対応は国によって様々。
ある国は一斉摘発、ある国は完全放置。

日本はこの能力者が発生した第一号国であった。
その為どの国よりも一足先に対応に迫られて今に至る。

現在日本では三種類のカテゴリーに分類されている。

『有益使用者』…スキルを正しく使用する者
『無害非常者』…スキルを発動させない者
『悪用犯罪者』…スキルを悪事に使用する者

それぞれ、黄色・青色・赤色で色分けされた特殊なリングを成人の際に、手首に取り付けられる。

例えば青色(無害使用者)がスキルを発動した場合。又は黄色(有益使用者)がその力を悪用した場合。
これらは即刻、赤色(悪用犯罪者)に格付けされるシステムだ。

では、この赤色リング者たちはどうなるのか。

我が国では新たに『前世スキル管理法』という法律が設置されている。
これを犯した者は『前世悪用罪』に相当し『前世記憶保持者専用収容所』へと送還される。

そこでは能力を一切使用できない牢に入れられ、何百年という、実質終身刑に値する期間を過ごすこととなる。

では、なぜこの法律が出来たのか。

それは忌まわしき最初の発生者が大きく関わっていた。

世界でも最初の能力者。
今では知らぬものはいない、歴史を塗り替えた事件。

ーT・S事件(大蔵・斎藤事件)ー

斎藤大蔵〈サイトウ タイゾウ〉
前世…『リンカーン』
コードネーム…『国民の父』
前世スキル…『人民の人民による人民のための…』
能力…自分の演説を聞かせることで100%の洗脳を可能とする。その範囲は声が届くまでとし、定期的に行わなければならない。

能力に気付いた大蔵は、スキルを使い大規模なカルト教団を立ち上げた。
この力は強大であり、洗脳された者たちは言われるがままに行動を起こす。

これにより各地で教団絡みによる、詐欺・拉致監禁・テロ行為・集団自殺・挙げ句に殺人事件が相次いだ。
その被害総数、数百万人以上。

大蔵は逮捕後、死刑となっている。

が。その後もあらゆる場所で似たような事件が勃発し、日本中を震撼させた。

そうした先に判明した『前世記憶保持者』という存在。

皮肉にも、あの時のリンカーンが絶命し、新たなリンカーンが産まれたことにより解明された形となる。

前世記憶保持者は転生し、同じスキルを受け継いだ者が産まれてくるのだった。



以降、リンカーンは代々この収容所の総管理官に任命されている。
まるで負の精算かのように…。

そして、生まれながらにして未来が決まっている者がもう一人。

最初にこの法律を作り、収容所を作り、管理官補佐という役職に代々任命される歴史を作った者。
リンカーンとは相対するように、そのスキルを善事に使用した者。

初代、管理官補佐。
柿崎龍太〈カキザキ リュウタ〉
前世…『ヒトラー』
コードネーム…『カリスマ暴君』
前世スキル…『絶対服従』
能力…触れた能力者のスキルを消すことができる。再び触れると返すことも可能である。

このスキルを持ってして、あらゆる前世スキル犯罪者を摘発した。



前世記憶保持者はどんなに偉人であっても。どんなに凶人であっても。
必ずしも悪人、善人とは限らない。
悪に染まることもあれば、善を行うこともあるのだ。

リンカーンとヒトラーは、収容所設立以降、タッグを組み頂上にあり続ける。

二人のスキルは、他の強力な能力者たちを管理するには最適。
まさに、脱走不可の強靭な要塞を作り出すことができる。



そして、今。
特別会議にて現総管理官、管理官補佐の口から公表された一大計画。

ーパラダイスー

その全容が明らかとなる。

しおりを挟む

処理中です...